敵の本拠地に突入する、スペースオペラでは正にド王道な展開を導入し、クライマックス感を盛り上げる一編。
「スター・ウォーズ」よろしく、ギリギリで鉄壁の守りを打破していく展開は燃えるものがあります。しかし、大がかりなバリア破壊は冒頭にあっという間に終わり、メインは「ヘルズゲート」なる門を開けるというミッションに移行。残り話数は潤沢とは言えないまでも存在する割に、性急な感も否めず...といった感想を持ちました。
サザンキング
ヘルズゲートの番人たるカローで、元々はアスランと同様、民衆を統率する王だった過去を持っている設定。ここで「王」というキーワードを以てアスランと対比させるあたりがニクいところで、後のアスラン再登場にインパクトを与える意図が垣間見えます。
デザインは...と言いたいところですが、ここでまさかのリデコキャラとは! このサザンキング、ほぼ「黒十字王」のリペイントとなっており、盛り上がりポイントに水を差した感が。たしかに出自は「王」ですけどね(笑)。声が神谷明さんだと別の意味で燃える、あるいは深読みを許す展開になっていたかも知れませんが、浜田賢二さんの格好良い声が吹き込まれることで、逆にキャラクター性が薄まってしまったのは否めないところ。マニアでなければ普通に、みなみじゅうじ座を完璧に体現するカローとして受け入れられたかも知れませんね。
サザンキングの能力は、相手に幻覚を見せて精神を崩壊させるという、「鳳凰幻魔拳」のようなもの。なので、ツルギには通用しない...くらいの展開は欲しかったですが、残念ながらツルギが最もその幻覚攻撃に弱かった(ように見える)という(笑)。この攻撃も内容が薄く、ツルギはクエルボの幻覚に翻弄されるシーンがちゃんと撮られていましたが、他の面々については怯え悶える姿が映される程度に留められており、それぞれの弱さやトラウマが具体的に描かれなかったのは残念でした。ラッキーは、自身の強く信じるアスラン像と異なる幻覚を打破しましたが、そこに至るまでがあまり簡単ではなかったのが却ってその印象を弱めていました。幻覚をいとも簡単に打破した後の方が、例の「ドン・アスラン」と対峙した時の絶望を強められたように思うわけです。
巨大戦は、冒頭でのバリア破壊シーンに委譲されたので、このサザンキングの出番はなし。ちなみに冒頭のバリア破壊は、各ロボが散開して各地点を攻略するという燃える展開で、ビジュアルもかなり豪華となっていました。ガルが、互いにラッキーを慕う者同士としてシーザーと意気投合しており、物凄くはりきっているのが可愛らしく、後の彼の負傷がよりインパクトを放つことになります。
素面アクション!
今回は、ラッキーたちを通すべく、途中の敵を引き受けるという形で数名のメンバーが残り、素面アクションを展開するシーンがありました。
この中で大注目は小太郎です。鋭い蹴りも綺麗でしたし、相手の背中でクルッと回転するアクロバティックな立ち回りも披露。一方で相手の肩に乗って頭をポカポカ殴るといった、少年っぽいコミカルなアクションも見せ、往年の少年ヒーロー、それこそ「ガッチャマン」の甚平のような感覚が嬉しかったですね。田口さんの今後が本当に楽しみです。
ドン・アスラン
山崎銀之丞さん、またまた登場です! しかも今度は怪人のスーツを着てマスクの下の素顔を見せるという、燃えに燃えるシーンも。あのままで終わるのは勿体ないと思っていましたが、ここでこんな登場を果たすとは思いもよりませんでした。
ただ...。
正直、この展開って要りますかね?? というのが率直な感想でした。なんだか、盛り上がりポイントを作りにくいので、ラッキーの思いっきりパーソナルな部分をもう一度引っ張り出して来た感が否めないんですよね。アスランとラッキーの「王位継承」は先のエピソードで完了しており、また掘り返してラッキーに苦悩を強いるというのも何だかなぁ...と思ってしまう次第です。
また、ドン・アスラン自体が「ポッと出」のキャラなので、積み重ねが皆無であり、即ち「お前の父はわしだ」なインパクトが皆無。戦隊シリーズには、白面郎やウルザード、スウグといった、「実は父親」な巨敵が色々と出現し、それぞれ見事なストーリーテリングで魅了してくれましたが、今回はそこまでの存在感を発揮できるかどうか。折角の銀之丞さんなのですから、もう少し何かが欲しいところですね。
あと、ドン・アルマゲが憑依しているという設定も、何となくアスランとドン・アルマゲ双方を矮小化しているように思います。ホシ★ミナトと同様の方式なのですが、あの時もドン・アルマゲがかなり小物に見えてしまいました。唯一無二、真の巨悪はドン・アルマゲのみという方向性は間違っていないと思いますが、そこばかり強調されてドラマの入り込む余地が狭いのは勿体ないと思うわけです。今回で言えば、アスランの事情が入り込む余地が殆どなく、ただ生きていて利用され、息子の前に強大な敵として立ちはだかったに過ぎない...と言えば言い過ぎでしょうか。
ただ、この流れの中で、先に正体を知ったガルが必死でラッキーを止めようとする様子には、大いに感情が入り込む余地がありました。ラッキーの目の前でまともに斬撃を受けたガルを筆頭に、仲間たちが重傷を負って収容される、ちょっとした地獄絵図。自分の父がそれを為したと知り、言い知れない怒りと哀しみに包まれるラッキーの様子は、実に痛々しく演出されていて、見応えがありました。ラッキーに心酔しているガルを矢面に立たせたのは正解でしたね。ガルの男気や優しさといった部分が、非常に良く出ていて、それだけにラッキーの苦悩も深まったように見えました。
次回
今回は、ごく個人的に好みの展開ではなかったので、薄い内容になってしまいましたが、ご容赦のほどを...。
ちょっと先行きが心配になってきた感もあったりするのですが、次回はさらに重い話になりそうなので、そこに含まれるドラマ性に期待したいところです。
天地人
山崎銀之丞さん再登場は、前回が中途半端で終っただけに嬉しいのですが、これまた憑依というのは確かに小物感がありますね。
ジュウオウジャーのように、何かの集合体で、切り売りとかのラストは勘弁して欲しいですけど、我々の予想を上回る展開を期待したいです。
しかし、前回の野球&ゴレンジャーハリケーンネタに続き、今回の総統ネタと来ると、次はどのゴレンジャーネタで来るか期待してしまいますね(違)
それではまた
竜門 剛
自分的には結構好きな流れなんですが・・・。前回のラッキーとアスラン回が淡白だったのも、今回につなげるため、ならば理解できますし。まあ、それにしたって前回はもうちょっとどうにかならんかったのか、と思うところではありますが。今後に期待です。
サザンキングに関しては、完全に狙ってるんでしょう。おっしゃる通り、分かる人だけ分かってネ!という感じで、深く考えないほーが良いと思います(苦笑)。
で、度重なるゴレンジャーネタですが、前作のジュウオウジャーが40作記念作でありながら、あえてその手のネタをスルーしていた分、キュウレンジャーでは積極的にネタにしているのではないかと。そもそもタイトルからしてゴレンジャー的ですから。
後、今更なんですが、突入に必要な4つのキュータマって、ちゃんとギリシャ神話と関連づけていたんですね。ケフェウスとカシオペアはアンドロメダの両親で、そのアンドロメダがいけにえにされそうになった時、助けたのがペルセウスなんですね。さらに、ペルセウスが乗っていたのがペガサスという。
この神話そのものをオマージュしているかは分かりませんが、ペガさんの再登場があるかも!?