Space.37「ラッキー、父との再会」

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 ラッキーの生まれ故郷、シシ座系惑星カイエンへの旅。王である父がジャークマターの手先となって民衆を苦しめている...という情報の真偽を確かめるため、ラッキーは仲間と共に父との思い出の地へと向かいます。

 かなり期待値が大きかったので、正直肩透かしを喰らった感が否めないのですが、ラッキーのポリシーを再確認するという点では、一貫したテーマ性の元に構築された物語となっていました。魅力的な駒が揃っていたので、「浪費」が惜しい。実に勿体ないですね。

ジューモッツ

 今回のカローは、メカニカルな外観が特徴的なジューモッツ。ネーミングソースは「銃持つ」か? 肩に装備された物々しいランチャーが凶悪無比ですが、それは直接的な爆撃を行う武器ではなく、スキャンした対象生物のコピーを作り出すツールとして機能。今回の仕掛けの「タネ」となります。

 人間のみならずツヨインダベーをもコピー可能ですが、作り出されたコピーの実体は砂人形であるため水に弱いという欠点があり、こちらも物語の仕掛けの一つとして有効利用されました。物語の結末から逆算的に設計されたと思しき怪人ですが、正にそれは戦隊の伝統芸であり、淀みない筋運びに不可欠な存在と言えるでしょう。

 カローの重要な役割として「圧政」があるわけですが、今回は直接的に権力を行使するのではなく、コピーしたアスラン王に圧政を執り行わせることで実現していました。「キュウレンジャー」ではもはやツッコミ不要となっていますが、偽アスラン王の元に民衆が集うシーンは、かなりのエキストラが集められてはいたものの、どうも片田舎の集落っぽさが出てしまい、「水戸黄門」の諸国漫遊の域を脱してないんですよね...(笑)。

 巨大戦では、ヒカエオロー(巨大化)ではなくモライマーズを操縦。ツルギのギガントホウオーと宇宙空間でバトルを繰り広げました。今回は描かれた精神性とは別に、ドラマパートのビジュアル自体がやや地味だったためか、数々のアクションはかなり派手目に描かれていましたね。この宇宙戦もかなりの充実度であり、いっそのことククルーガと入れ替えた方が良かったんじゃないかと思ってしまいました。

 ちなみに声の担当は辻親八さんで、私の中では「新スタートレック」~「ディープ・スペース・ナイン」のチーフ・オブライエンの人。優秀で実直な仕事振りを見せる、陽気な現場監督といったキャラクターにピッタリの名演でした。

ククルーガ

 フクショーグン最後の一人、ククルーガも今回で遂に退場となりました。土壇場でカイエンを蹂躙した張本人と明かされ、ラッキーの戦いに仇討ちの要素を与えるとともに、民衆の真の解放を印象付ける手法としては歓迎されますが、如何せん土壇場過ぎて印象の薄さは否めないところ。「仮面ライダーX」の最終話で真のボスとして登場した呪博士が、Xライダーこと神敬介の父親とは親友の間柄だったと告白するシーンに印象が重なります。

 「私の名は呪博士。そして君の父親の親友!」

 「親父の親友? 聞いたことがある...悪魔の天才、呪博士の名は!」

 これだけ(笑)!

 今回のククルーガの件も、もっと前から種蒔きして欲しかったように思います。アキャンバーが結果的にナーガの因縁の相手となり、ナーガ自身の成長振りを示すかのように倒されたことを思い出すに、ククルーガは勿体なさ過ぎるキャラクターだと思えますね。何しろ声はデンジグリーンこと内田直哉さんですし、その内田さんが得意とする芸風の一つである「狂気の悪役」が投影されたキャラクターだっただけに、実に惜しいです。

 例によって、「死んだはず」が今回も出ましたが、遂に公式サイトの名鑑に掲載される運びとなりました。図らずも「幹部クラスの浪費」を体現してしまったキャラクターと言えるのではないでしょうか。

アスラン王

 一週空いている間に色々推測していましたが、最も簡単明快なタネで、ちょっとガックリ来てしまったのが、このアスラン王。まさか偽物とは...。

 民衆を守るために敢えてジャークマターの傀儡を演じていたとか、既に亡き者であったがアントン博士の手でサイボーグ化されていたとか、あるいは想像も付かない仕掛けなのか。色々と妄想していたので、あっさりと、しかも今回だけで解決してしまうハイテンポ振りに、何とも残念な気持ちになってしまいました。

 前述のとおり、「キュウレンジャー」が諸国漫遊時代劇の構造を踏襲しているとすれば、主人公グループのトップにポジショニングされるキャラクターのごく個人的なエピソードが、一話完結のボリュームで語られるのも道理なわけで、ちゃんとした完成度が確保されているのは一見して分かります。やはり問題は、諸要素の唐突感でしょう。ククルーガもアスラン王も、ラストにラッキーが戴冠するのも、唐突に見えます。

 そして、ここにも勿体ない要素が一つ。山崎銀之丞さんというキャスティングを得たにもかかわらず、今回登場するのはほぼ偽物としてのみ。回想シーンはありましたが、ラッキーの父親としてどういう人物だったのか、もっと描写が欲しかったですね。そのあたりが少なかったが故に、ラッキーが目の前のアスラン王を偽物と感づいていくプロセスが、これまた唐突に見えてくるわけです。

 なお、山崎銀之丞さんは福岡のラジオ番組を長らく担当されていた経歴があり、私の親戚がその番組の大ファンだったことで、まだ全国区で活躍される前にそのお名前を知っていました。なので、山崎さんの印象はいわゆるローカルタレントだったのですが、後年、東京発信のコンテンツでも名前を拝見するようになって、実は凄い演劇人だったことを知ることになります。ごく個人的な事情ではありますが、「キュウレンジャー」への出演は非常に嬉しかったですね。それだけに今回の扱いはやっぱり残念...。悪役っぷりにフォーカスすると、躊躇ない嘲笑や滅びの瞬間の鬼気迫る様子など、さすがに素晴らしい芝居を連発されていましたので、余計に「善玉」としてのアスラン王を見たくなってしまうわけです。

 アントン博士のうじきさんもそうですが、このアスラン王に関しても、ご本人に登場頂いて、もうワンアクション欲しいところですね。

ラッキー

 生まれ故郷のカイエンに来ても、実感があまりないという様子は実に巧いところ。この「関係の希薄さ」が、今回の唐突さに拍車をかけている一方、希薄だけにグッと故郷との距離感が狭まるダイナミズムもまた醍醐味となっているので、何とももどかしいのです。

 今回のラッキーは、記憶の中のアスラン王とのギャップに絶望し、王が王子を処刑するという地獄絵図を民衆に晒すために囚われるものの、持ち前の強運で偽王の正体を暴き、カイエンを解放することに成功するという流れで活躍します。

 囚われの身となるラッキーの痛々しさは、日曜朝のコンテンツとしてはかなり攻めた描写になっており、偽アスラン王の非道振りが印象付けられることとなります。続いて、自身の涙で偽王の手甲が一瞬溶けかかるのを目撃。アスラン王が偽物と気付いたラッキーは、仲間も同様の気付きをしているはずだと確信しているものと思われます。この信頼が彼の強運の呼び水と一つだというのは、もはや説明不要といったところでしょう。

 その信頼どおり、ツルギが伝説級の推理(?)によってカラクリを暴き、アスラン王に大量の水を浴びせて暴露するという作戦を立案。ラッキーはその類い稀なる強運によって雷雲を呼び寄せて、その作戦実行のきっかけを作ります。ハミィがステルス能力でラッキーを救出するというファインプレーが良いですね。

 シシレッドオリオンとなったラッキーは、ククルーガを圧倒しこれを倒すことに成功。裁縫の達人・スティンガー(笑)の手による装束を身につけ、カンムリキュータマで作り出した王冠を戴き、ラッキーは父の遺志を継ぐ王となりました。ラッキーが王子であることはカイエンの民には当初知られておらず、話が進むにつれ徐々に認知されたようですが、ここも少々唐突な印象は否めず。さすがに王になるのはやり過ぎだと思った次第です。

 ただ、冒頭にラッキーが個人的なことに巻き込むことを詫び、仲間たちがそれを快く受け入れるシーンがあり、この「戴冠式」が純粋に仲間たちの手によって行われたことを考えると、これはカイエンにとっての王の交代というよりも、ラッキーの救いが最重要とされた証と言えるでしょう。アスラン王がすでにこの世にいないことを知ってなお、それを「よっしゃラッキー」と言えてしまうラッキーは、確実に仲間の支えを得てそう言えるのであって、仲間の手によって王の名を戴く、すなわちアスラン王と一体となることで、ラッキーは救われたと考えられます。

 何も事情を知らなかった民衆が、にわかに納得できるか否かは...この際あまり考えなくて良いのでしょう。

次回

 次回はショウ・ロンポー編と思しきバラエティ編になりそうですね。予告で色々と魅力的なカットが先行披露されていましたので、楽しみは尽きません!