Space.35「宇宙No.1アイドルの秘密」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 予告が流れた時点では、戦隊恒例のアイドルパロディ回かと思いきや、実はちょっとパロディ織り交ぜつつの正統な潜入モノだったという、驚きの一編。しかも、内容は結構なシリアスムードと来ていて、最終クール前の息抜き編と油断していたらケガをするような切れ味でした。

 シリアスムードとは言え、ハミィ編としての充実度は非常に高いレベルで成立していて、衣装のバリエーションの多さ、セリフの量、過去に触れた回想シーン等、彼女のキャラクター性を存分にアピールする絶好の機会となりました。ハミィがメインとなるエピソードはこれまでも存在しましたが、その総決算(恐らく、最終クールには明確な単独メイン回がないと思われるので...)と呼ぶに相応しいものとなったのではないでしょうか。

アキャンバー

 遂に、アキャンバー退場となりました(公式サイトに載ったので確定)。イエローバスターこと小宮有紗さんの熱演が光った幹部キャラでしたが、正直フクショーグンたちは一様に存在感が乏しい感も否めず、幾度も「退場詐欺」があったからか、今回の退場もあっさり目に映ってしまいました。

 近年は幹部クラスといえどもほぼスーツキャラであり、基本的に顔出しキャストによって演じられることは皆無と言っても良い傾向にあります(近年の例外は「ゴーカイジャー」のバスコ、「ゴーバスターズ」のエンター&エスケイプ、「トッキュウジャー」のゼット...あれ? 意外と多い?)。ただ、それが幹部の魅力のすべてを左右するか否かについては別の話で、「仮面ライダーストロンガー」の、タイタン(ただし人間態の活躍も多い)、シャドウ、そしてデルザーの面々といった具合に、強烈な個性を有したスーツキャラの幹部怪人たちに目が眩むような例もあるわけです。同時期の「ゴレンジャー」に出てくる将軍たちも同様ですね。一方で、顔出しキャストの幹部たちに魅力が乏しい例は、(独断偏見ですけど)ほとんど見られないことにも注意する必要があるかと思います。

 さて今回は、ホシ★ミナトが感情の解放を呼び掛けるくだりがあり、キュウレンジャーによってアキャンバーの関与が疑われるという設定になっていました。実際のところ、アキャンバーはマネージャーに化けているだけで、ホシ★ミナトにはドン・アルマゲが憑依していたという流れになるのですが、この展開によって、アキャンバー人間態が登場するという、思わぬ好要素が転がり込んできました。顔出しキャストの幹部実現です(笑)!

 巧いと感じたのは、ここで人間態として小宮有紗さんをキャスティングしなかったことです。戦隊ファンにとっては、小宮さんが人間態でなかったのは残念だったわけですが、もし小宮さんがキャスティングされていたら、一発でアキャンバーであることがバレてしまうわけで...。アキャンバーの関与を匂わせつつ、実はドン・アルマゲが関与していたという流れを邪魔しないことの方が重要であり、それをちゃんと重視したということですね。

 そして、ここはアキャンバーのイメージに近い、「お姉様的な雰囲気を有した美人女優」をキャスティングして大正解でした。堀有里さんという方ですが、キツいマネージャーという役どころがピッタリ来る芝居の巧さ(普段はこういうタイプの役を演じることがないそうです)で、物語の良いアクセントになっていました。度々人間態として登場願いたかったくらいハマっていたので、今回限定だったのはちょっと残念ですね。ホシ★ミナトの怪しいマネージャーの存在というフックが、もっと前からあれば...と思いました。

 ちなみに、撮影時のオフショットが堀さんのブログに掲載されていましたので、是非ご覧になることをオススメします。

 その最期ですが、散々弄んだナーガによって滅ぼされるという展開は実に熱かったですね。復讐譚と呼ぶのは憚られますが、近い迫力が画面から感じられたのは非常に良かったと思います。ナーガについては、ハミィと心に関する議論を経てより強くなったという流れを丁寧に描写していたので、その強さにも説得力がありましたね。

ホシ★ミナト

 宇宙で最も売れているアーティストとされ、度々劇中にも姿を見せていた人物が、このホシ★ミナトです。演者の松本寛也さんは、「マジレンジャー」のマジイエロー、「ゴーバスターズ」のビートバスターを担当した屈指の戦隊OBの一人であり、今シーズンでは「スーパー戦隊親善大使」の肩書も。正に戦隊を代表する人物の一人として活躍されています。

 戦隊ファンには、松本さんの魅力の一つにダンスのキレを挙げる方も多いのですが、ホシ★ミナトはダンスは勿論、歌にも比重が置かれたキャラクターになっており、その派手な出で立ちと相俟って強烈な個性を放っています。こういう強烈なビジュアルを持ったキャラクターをさらっとこなしてしまうあたりが、松本さんの凄いところですよね。

 そして今回、ホシ★ミナトに関する衝撃の事実が明かされます。それは、ずっとドン・アルマゲに操られていたというもの。つまり、ホシ★ミナトはジャークマターのプロパガンダとして利用されていたということです。ただ、ホシ★ミナトとジャークマターの関係性が匂わされたのは、宇宙竜宮城の件のみで、それほど強調されていたわけではありません。よって、今回の件もインパクト自体はやや薄めでした。

 ホシ★ミナトがドン・アルマゲに利用される前から売れていたのか、それともドン・アルマゲのマネジメント(?)によって売れ始めたのか、このあたりは判然としませんが、劇中の描写と精神性を鑑みるに、ようやく売れ始めた頃にドン・アルマゲに憑依され、その後、全宇宙にその存在を知らしめられたと考えるのが自然でしょう。憑物が落ちた後の「もう一度やり直す」といったニュアンスの発言からも、それは読み取れますね。

ハミィとナーガ

 今回はハミィがアイドル候補生に扮して審査員のホシ★ミナトに接近するといった具合に、潜入モノを正しく踏襲した展開だったのですが、もう一つの流れとして、ナーガとの交流が丁寧に描かれていました。

 先のエピソードで、ナーガに自分で考えて行動することが重要だと説き、それが結果的にナーガを追い詰めてアキャンバーに接近させ、闇の戦士ヘビツカイメタルたらしめたことを、実はまだ引き摺っていたハミィ。一方のナーガは、自分の経験からの判断もあってか、ホシ★ミナトへの疑惑が人一倍強く、その疑惑がホシ★ミナトに特別な思い入れを持つハミィの心を傷つけたと気付きます。ここで、ナーガはハミィに詫びるという行動に出ました。つまり、ナーガは様々な経験によって他人の感情に気付き、理解できるまでに成長していたわけです。互いに後悔の念を開示することで、一歩前に進んだ両者。今回が派手なビジュアルを擁しながらもシリアスな雰囲気を湛えていたのは、このシーンが特に目立った完成度を見せていたからに他ならないでしょう。

 先の闇堕ちエピソードが、ナーガ編でありながら実はハミィが重要な役回りを演じていたのに対し、今回はそっくり反対になっていたのが興味深いところで、アキャンバー関連でリンクさせてきた構成が見事でした。

 さて、メインのハミィですが、かつて故郷を追われて放浪していた過去が語られます。その当時は「心が空っぽだった」と回想しており、正に「感情がなかった」とするナーガにリンクします。

 放浪していた際に、とある場所でストリートミュージシャンをやっていたホシ★ミナトの歌に触れ、満たされる思いがしたといい、それ以来、ホシ★ミナトに特別な思い入れを抱くに至りました。その時の歌をカバーして、今回のオーディションで披露するのがお約束ながらも巧いところで、ホシ★ミナトがその歌を思い出せないという「仕掛け」を以て、ハミィのあらゆる感情を喚起させるあたりが非常に良いです。ここで、ホシ★ミナト自体を斬るという展開に持ち込むのが70年代の特撮TVドラマですが、さすがに現代ではそこまでしない(笑)。ハミィの想いはちゃんと聞き届けられますし、ホシ★ミナトには何ら罪がないことも保証されます。

 様々な衣装に留まらず、様々な表情も披露してくれた今回のハミィ。大久保さんはそのキュートな笑顔が魅力的なのは勿論ですが、シリアスな表情が凄く凜としていることを改めて認識しました。表情の作り方が非常に映画的ですし、これからどんどん映像にチャレンジして欲しいですよね。

コスプレンジャー!?

 ハミィの派手なバックダンサーに扮したラッキーとナーガが、妙な格好良さを発揮しキレのあるダンスを披露していました。ラッキーの赤い髪が似合うことといったら...。一方、ナーガは金髪にすると一瞬誰か分からなくなるのがご愛敬。

 ツルギはプロモーターとかプロデューサーを意識した扮装でしたが、まあ妖しいことこの上ない(笑)。こういう衣装が異様に似合うのは、ツルギがツルギたる所以ですね。若干オリエンタルラジオ入っている感がさらに可笑しさを誘います。

 スパーダはマネージャーのポジションを狙ったのでしょうか。どんな格好をしても人柄の良さが滲み出てしまうのが、スパーダたる所以。オーディション会場で避難誘導する姿がそれをさらに強調していました。こういうポジショニングの巧さはもっと評価されて良いと思います。

 CM前に思わせぶりに画面を横切った二体の動物の着ぐるみ。実は別動隊として潜入していたバランスとラプター。緊急事態に際してバッと着ぐるみを脱ぎ捨てて出現する格好良さ! このテの動物の着ぐるみといえば、宇宙刑事シリーズでは異空間における強敵と相場が決まっていましたが、時代は変わったものです(笑)。

 とにかく、ハミィのみならず色々なキャラクターの扮装が見られて充実のビジュアルでしたね。

ドン・アルマゲ

 ホシ★ミナトに憑依していたドン・アルマゲ。ここで登場するのか!? と驚きましたが、実は複数存在するドン・アルマゲの一体に過ぎないという、これまた色々な意味で衝撃的な事実が明らかに。ツルギが倒したのも、過去編でラッキーが倒したのも、一部の個体に過ぎないということらしいのですが...。

 分身が居て命を分散しているボスと言えば、「シャリバン」の魔王サイコが恐らく頂点でしょう。この時は魔王サイコと戦士サイコラーの二人でしたが、二人同時に倒さないと復活してしまうが故に、ギャバンが参戦しなければならないというロジックは非常に鮮烈でした。アニメ方面では「ゴッドマーズ」のズール皇帝。宇宙にあまねく存在する悪の集合体だったのが強く記憶されるところです。

 さて、ドン・アルマゲはどのような存在として描かれるのでしょうか。今回のように色々な場所に出て来て、その都度倒されていく展開も不気味ではありますが、ボスとしてはちょっと弱々しい印象も。昭和ライダーの首領のように、正体が脆弱な生命体だったというエスプリもアリはアリですが、ツルギの件では強大な存在としてアピールしていましたから、ここからボスとしてのインパクトを再度獲得していくのは、結構大変なのではないかと思います。斜め上の展開を期待したいところですね。

次回

 ラッキーの出自が遂に明らかに? やはり各メンバーのバックボーン回収期間に入ってきたということでしょうね。オライオンの血脈にも言及が期待されますが、果たしてどうなるか...。