怪盗BN団、再結成...。
ナーガとバランスの「再会」を粛々と描きながらも、あらゆるSF要素をぶち込んで派手な画面作りに終始した、感動巨編とも言うべきエピソード。勿論、ツッコミどころも満載でしたが、むしろそのツッコミどころが全体の重さを緩和しているようでもあり、構成の巧さには思わず舌を巻きます。
しかもラッキーに続いて、ナーガも新しい力を手に入れるのが見事。ヘビツカイメタルを単なる「悪モード」に終わらせず、ナーガのパワーアップ形態として使うグリーディな姿勢が実に良いです。
ミクロツヨインダベー
久々にゲスト怪人の章を設けられます(笑)。それほど特殊なエピソードが続いたということでもありますね。ゲスト怪人とは言え、今回は例によってツヨインダベー属なので、やはり大した役割が与えられているわけではないです...。
むしろ、この章を借りて申し上げたいのは、「ミクロの決死圏」ネタが炸裂したことでしょう。
「ミクロの決死圏」は、ミクロ化して人体の内部に潜入し不可能な外科的医療を可能にするというプロットを、世界で初めて説得力ある映像に仕上げた映画として記憶される名作ですが、そこでのリアリティの追求よりも概念の映像化を志向する姿勢が、そのまま日本の特撮における「体内映像」の傾向であると思われます。
日本特撮史上、最も鮮烈な最初の体内映像の描写は「ウルトラセブン」の「悪魔の住む花」でしょう。少女(演ずるは松坂慶子さん!)の体内に巣喰った宇宙細菌を倒すべく、ウルトラセブンがミクロ化して討伐に向かう...というのがクライマックスでした。血管内と思しき空間で白血球を思わせる泡に翻弄されたりと、その映像は幻想的でありながら不思議な説得力を持っていました。
その後、「ウルトラマン80」でも、その対象は「怪獣化してしまった象」ではありましたが、ミクロ化して体内に潜入する描写がありました。セットの完成度や演出の妙味はセブンのブラッシュアップ版とも言えるもので、やはりその雰囲気は素直に踏襲されています。
今回は、バランスが改良を加えたケンビキョウキュータマの能力によって、ラッキーとバランスがミクロ化してナーガの体内に潜入することとなりました。ナーガの鼻腔から潜入するのは、前述のセブン版へのオマージュではないかと思いますが、いかがでしょうか。
体内を巡る描写は短いながらもCGや合成主体で描かれており、さすがは宇宙での活躍を描き続けて来た「キュウレンジャー」だけあります。辿り着いた先は脳ですが、その空間はニューロンを思わせるデコレーションを施されたセットで表現されています。この表現こそがセブンからの伝統を強く感じさせていて興味深いところですね。変な言い方ではありますが、昨今のテクニックを以てすれば、恐らくグリーンバックを用いてもっとリアルな表現に振ることができるでしょう。そこを敢えて「伝統的」なものにして来たのには、意味があったのだと思います。
それは、「舞台装置たるもの」だったのではないでしょうか。非常に舞台的なセット構成によって、否応なく「芝居」の力が生きることに繋がっています。
バランスとナーガ
ナーガの脳内にミクロ化したインダベーが侵入し、感情をコントロールしていたという、まさかのロジカルなエクスキューズに驚き、ナーガのメンタルに訴えられなかったバランスが、密かに現象を詳細に分析して突破口を探していたという、これまた超の付くロジカルな展開にさらなる驚きが! これは本当に凄い展開を持ってきたなと感心しました。
しかし、本当に面白かったのはその先。ナーガの脳内には、囚われた「本来の」ナーガと複数のインダベー、そしてダークナーガが居て、潜入してきたラッキーとバランスとの乱戦を繰り広げるのです。この、「リアル」「ロジカル」からは程遠い描写こそが真骨頂。極めてロジカルに進行してきたナーガ救出作戦が、いざナーガの脳内に潜入した途端、突如ファンタジーに変化する醍醐味。これが東映の、そしてスーパー戦隊のやり方だと言わんばかりです。この描写は、「ゴーグルファイブ」において桃園ミキが絵本の中に閉じ込められた際の描写と同じ匂いが感じられ、「ジュウレンジャー」に散見される試練の異空間描写に程近いものがあります。
そして、原因を排除してナーガを元に戻すという、極めて外科的なアプローチで進められてきたプロットが、ハミィ涙の訴え(ここの芝居が実に良い! 正にヒロインの面目躍如!)で一気に変化。真にナーガを目覚めさせるアプローチは、仲間たちへの想いを思い出させることだった...。
この「答え」によって、バランスとナーガの間にある関係性への理解も促されました。彼らの出会いはお互いの利害一致(つまりロジックのみの関係)に過ぎなかったけれども、共に旅をし、そしてキュウレンジャーに加入して共に戦い、今となってはかけがえのない相棒となった...言葉にすると陳腐ですが、ちゃんと映像として描かれていたわけです。
ロジカルでドライなミッションと、メンタルに訴えるウェットなやり取りが見事なコントラストを描き、そして絶妙にブレンドされてナーガの目覚めへと繋がるあたり、戦隊が紡いできた両極端なテーマ性へのオマージュと発展を感じさせてくれますね。
新生ヘビツカイメタル
ナーガの帰還により、ヘビツカイメタルは期間限定形態になるかと思いきや、なんと「怒りをコントロールできるようになった」と言い放ち、ヘビツカイメタルにチェンジ!
ダークモードとの差別化として、一部デザインが変更されているなど細かい配慮もなされていますが、基本的にはヘビツカイメタル続投となる予想外の措置に驚きました。確かに格好良いですからね。
これまで、リュウバイオレットからリュウコマンダーへとパワーアップするくだりこそありましたが、基本的にフォームチェンジやモードチェンジはラッキーの専売状態になっており、それが前代未聞の多人数戦隊の中においてラッキーに付与された「レッドの特別感」だったわけですが、ナーガが単独でそれを成せるようになったことにより、レッド偏重主義が少し緩和されることになりました。この特殊な形態をどのように駆使していくかにも注目していきたいところですね。
エキドナ
前回ほどの出番はないものの、エキドナも登場していて、ナーガ(ヘビツカイメタル)と直接戦闘するシーンがありました。つまり、山崎さんの声とスーツアクターの芝居により演じられるヘビツカイメタルと、恒松さんの声と山崎さんの芝居により演じられるエキドナが激突という、文にすると何だか分からない状態(笑)。これは山崎さん、相当大変だったのではないかと推察します。一方の脳内対決でも一人二役でしたから、それはもう大変なことになっております...。
いわばパターンとして、エキドナはナーガを赦免し、感情の有益性への気付きを経て去って行くことになりましたが、この件はメインストリームではないため「こういうことがあった」程度になるのではないかと予測しています。ジャークマター壊滅への切り札になる可能性もゼロではありませんが、それ以外にもキャラクターの人数以上の伏線を抱えている本シーズンですから、どうしても取捨選択の結果がラッキー周辺に偏るのも致し方ないのではないでしょうか。
次回
予告のビジュアルはコミカル。しかし、オリオン号はもう稼働不可能な状態であると示されています。果たしてどうなるのか。そしてラプターのフィーチュアしてくるのか、興味は尽きません。
天地人
キュウレンジャーと直接は関係ありませんが、昨年、余命1年と宣告されていたバイオマンのレッドワンこと坂本良介(現亮介)さんが、舞台に復帰したニュースが別の番組で流れてました。
昨年11月に「爆報!THE フライデー」に出演し、食道癌に侵され手術をした(放送時には退院)事を告白し、心配していましたが、やせたものの、元気な姿を見て嬉しかったです。
既に亡くなっている方も大勢いる戦隊シリーズですが、時間帯の変更にも負けず、これからも応援していきたいと思ってます。
今回は、感想ないですが(汗)ちょっと感じた事を書かせていただきました。
それではまた
竜門 剛
本当なら、精神攻撃に対して、いくら身体を小さくしたからと言って、直接攻撃は効果がないはずなんですが、そのあたりの理屈を勢いとビジュアルで押し通してしまうのが、戦隊スタイルなのかもしれません。
細かいネタとしては、明らかに棒演技のツルギたちや、巨大化しても等身大のミクロツヨインダベーが妙にツボでした。
スティンガーが人質救出を担当するなど、相変わらず多人数を生かした役割分担は嬉しい演出ですね。