Space.28「怪盗BN団、解散...」

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 前回が番外編的なドタバタ総集編の様相だったのに対し、今回はショウ・ロンポーの腰以外全編シリアスムード。現代でナーガ救出を目論むチームと、過去に向かったチームとが、それぞれ危機を迎えたまま終了するという、3クール目の導入編に相応しい「転換点」となりました。

 さらに、大物キャスティングが嬉しい、英雄・オライオンも登場。この後どうなるのか、全く予測出来なくて実に良い感じです。

過去チーム

 まずは、ツルギを筆頭とする過去チーム。

 前回、アキャンバーの指令によってインダベーの妨害を受けたことから、ジャークマターにとって過去は探られたくないものだと分かるわけですが、今回は割と容易に過去への移動に成功してしまいます(笑)。

 辿り着いた先は、ちょうどドン・アルマゲにツルギが最終の一太刀を浴びせる直前。ツルギにとっては二度と見たくないであろうクエルボの最期や、これまでその容貌が謎だったオライオンの登場など、これまで何となく浮遊感のあったツルギの過去を補完する内容でした。クエルボの最期については先の回想と同一シーンではありますが、今回は実際にスティンガーたちによって「目撃」されている状況で、回想という曖昧なものから離脱した「事実」となりました。

 「目撃」されたシーンでは、確かにツルギがホウオウソルジャーに変身し、ドン・アルマゲを一刀両断する様が繰り広げられました。ドン・アルマゲ自身も断末魔を上げて滅びていましたので、正に撃破したと言えるシーンです。しかしながら、どこかドン・アルマゲには実体がないようにも見えますし、実景なのに独特の浮遊感を醸し出しているのは、何か意図があってのことなのでしょうか。このあたり、今後の謎解きとともに印象が変わってくるかも知れませんので、「見返す」ために保管しておくのもアリかと思います。

 その場面に同席していたのは、ツルギをコールドスリープさせ、エリスにキュータマを託した英雄・オライオンです。これまでその正体は謎でしたが、まさかの大物キャスティングによって、鮮烈なキャラクターイメージが与えられました。戦隊シリーズでは、「ゲキレンジャー」の師匠たちの人間態や「カクレンジャー」のご先祖様など、キーパーソンの素顔が謎のまま(シルエットや照明を当てないといった手法)になるケースは多く、今回のオライオンもそのパターンでいくだろうと予想していました。ところが、まさかこのタイミングでしっかり登場するとは...!

 オライオン役にキャスティングされたのは、宍戸開さん。特撮出演は多くないですが、円谷作品には出演歴があり、特に印象深いのは「ウルトラマンマックス」でのヒジカタ隊長役。お茶目かつ頑強な隊長像は、「ウルトラマンダイナ」におけるヒビキ隊長と印象が被るところもありますが、体育会系全開のロッキー刑事(ヒビキ)より、何となく文化系の匂いのするヒジカタの方が、よりソフトなイメージで隊長像を構築していました。当初、宍戸さんは「ウルトラマンマックス」の構成等に違和感を覚えておられたという話もありましたが、映像を見る限り、恐らく途中からはノリノリだったのではないでしょうか。後半から急激にエキセントリックなエピソードも増えてきたりしますので、キャスト、スタッフともにかなりの意識転換があったものと思われます。

 話を元に戻します。そんなソフトなイメージは恐らく柔和な容貌からだと思われますが、その体躯は頑強な印象もあるため、オライオンの屈強なイメージにピッタリ。そして、何か腹に隠し持っている雰囲気は、やはり父・宍戸錠さん譲りですよね。このキャスティング自体に何か意味があると見て良いと思います。次回が非常に楽しみですね。

 さて、過去チームは確かにドン・アルマゲ撃破を見たのですが、一方で現代チームが目の当たりにした光景は、墜落し年月を経て朽ちたオリオン号! 驚いたラッキーが過去へ向かうと、過去チームは一様に倒れ、オライオンがそれを見つめているという衝撃の風景が...。そのシーンで、今回は締め括られました。これが一体何を意味しているかは、次回に譲られます。

現代チーム

 過去チームにもかなりのインパクトが訪れましたが、今回のメインは現代チーム。つまり、ナーガ救出チームです。

 私としては、このダークナーガの件も早々に解決するんだろうなと思っていたわけですが、思いっきりしてやられましたね。

 ナーガは解放された感情を暴走させ、自由奔放かつ凶悪に暴れ回ります。これが「操られている」のであれば話は単純なのですが、残念ながらナーガの内面由来なので実にヤバい感じが漂っています。アキャンバーは「ナーガに痛みを与えれば元に戻る」と告げ、ナーガ救済の道を示しますが、実はキュウレンジャーを同士討ちさせる嘘であり、ラッキーたち、そしてバランスもまんまとその罠にはまってしまいます。操られ系であれば解決してしまうようなことが、まるっきり通用しないのが今回の特徴ですね。暴走しているとはいえ、操られているわけではないので、ナーガが発する言はすべてナーガ自身のものであるというのも非常に怖いです。

 そしてサブタイトルには、BN団解散というショッキングな字面が並んでいますが、実はBN団の成立自体、実に危ういものだったということが判明します。

 バランスはかつてナーガの惑星に盗みに入っており、逃亡困難の中、ナーガが彼にとっての「希望」になったという顛末。ところが、当のバランスは、ふと漏らしたナーガの「感情が欲しい」という言葉を利用したに過ぎず、BN団は「ナーガを利用すること」の隠れ蓑の延長に過ぎなかったという衝撃の事実が語られました。

 今でこそバランスは、本気でナーガの「感情を取り戻して一族を幸せにする」という望みに対して真摯に向き合っており、今回のナーガに対する苦悩を重ねる態度にそれは表れているわけですが、BN団はバランスの身勝手な判断で「結成」されたことが判明したのです。そして今回、ナーガの感情という非常に閉じた世界由来の理由によって、バランスとの仲は完全に引き裂かれようとしている...。これがBN団の哀しき構図です。

 ナーガだけに痛みを与えることはできないと考えたバランスが、その痛みを共有しようとする哀しく感動的なシーンに代表される献身振りは、恐らくナーガに対するかつての不義への贖罪が元になっているのではないかと思われます。それを踏まえると、今回の言動はあまりにも哀しい。いわゆる「C調」を地で行くバランスの裏に秘められたネガティヴ過ぎる部分が鮮烈でした。果たしてナーガをどう「取り戻す」のか...注目です!

エキドナ

 ナーガの一族は、個性を捨て去ることで争いを沈静化させたという経緯があり、イメージ映像的にナーガ役の山崎さんが多数の人物を演じているシーンは披露されたことがあるものの、実際にそのうちの一人が現れるのは初めてとなります。しかも女性!

 山崎さんの美形振りが堪能できるとともに、声を担当した恒松あゆみさんのアフレコの巧さをも堪能できる名キャラクターとなりました。感情を持ったナーガの危険性を指摘し、その抹殺を図っているというのも衝撃的で、一族が非常に厳格な規律によってその平和を維持していることを伺わせます。逆に言えば、それは恐怖政治と紙一重とも言えるわけで、ラッキーがエキドナに対して声を荒げるのは、仲間のナーガを失うわけにはいかないという思いからであるのは勿論ですが、ナーガの一族のポリシーがジャークマターに重なるところもあったからではないでしょうか。

 スタートレックシリーズでは、文明不可侵の律を重んじるエピソードが何度も出てきますが、ラッキーはその律に反しているとも言えます。長い戦争をやっとのことで終わらせたナーガの一族のやり方は、批判されるものではないし、ラッキーから非難されるいわれもないわけです。ただし、身も蓋もない言い方をすれば「キュウレンジャー」のアイコンはラッキーなのであり、ラッキーの言い分こそが「キュウレンジャー」の世界観における正当な主張です。SFから多数の語彙を借りつつも、やはり戦隊であることを突き進む今シーズン、潔いですね。

次回

 驚天動地、今度は過去編が動きます。オライオンのポジションが非常に気になるところですね!