Space.15「海の惑星ベラの救世主」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 ハミィ編...なのですが、ナーガが美味しい(可笑しい)ところをほとんど持って行ってしまう迷編。

 前回が完全にギャグ回だったので、今回もその余韻に預かるのかと思いきや、意外にもシリアスな物語となっていました。プロット自体は、どこかで見たことのあるような話の寄せ集めでしたが、ハミィの正しく戦隊ヒロインな姿にインパクトがあり、選抜メンバーのうち4人が素面キャラになるなど、極めて従来の戦隊らしい画作りが行われた回でもあります。

ゴネーシ

 自ら災いをもたらし、自らが救世主を名乗って献上物を搾取するという、極めて悪質なダイカーンとして登場。「どこかで見たような」と冒頭に書きましたが、戦隊シリーズにおいて類型を思い出すのが困難なタイプでした。どこかに必ず居た筈なのですが、うーむ...本当に思いつきません。「スタートレック5」のような、俗悪な生命体が神を名乗るというパターンもこの範疇ですね。

 極悪なダイカーンではありますが、その施策から窺い知れるように姑息な怪人そのものであり、基本的に戦闘よりも逃走が得意なようでした。頭部の造形を海に投影して救世主を演出するという手段も実に姑息であり、その映像がネッシーに似ているのも楽しいです。巨大な映像を投影するという手法は、「ウルトラマンA」のヒッポリト星人を想起させますね。ヒッポリト星人はエースのソフビの首をはねる映像を超巨大に(ソフビのエースが40m大になるように)見せて人類を動揺させましたが、よくよく考えてみれば日本製のソフビを入手するヒッポリト星人の姿、姑息を通り越してシュールですらありますね...。

 ところで、ネス湖の恐竜ことネッシーは、最も有名な写真が実は捏造で、模型を映したものだったという顛末でしたが、ゴネーシの頭部はその造形物とされたものに酷似。このデザインが本エピソードのプロットから起算されたのか、はたまた逆だったのか、興味あるところです。いずれにせよ、ネッシー自体が現在の子供たちにとって、既に忘れ去られた存在になってしまっているきらいがあるので、単に私の世代あたりが喜ぶものに過ぎないことは確かです(笑)。

 巨大戦は、久々にヒカエオローとキュウレンオーによるオーソドックスな対決となり、ここもまた旧来の戦隊らしい感覚でした。

惑星ベラ

 本格的にチキュウ以外の惑星へ出向くのは久々となりました。ロケ地を海岸のみに限定し、人物の衣装で海の惑星を表現する手法は手慣れたものです。その住人の出で立ちからすると、海の幸を糧とする未開の惑星という印象を受けますが、これならば少人数の集落を描いても違和感がないですし、やっぱりダイカーンが末端でコソコソやっている感が良いですよね。「水戸黄門」的な感覚です。

 村長役として、佐渡稔さんが出演されていたのには驚きました。年齢による変化は別として、私が幼少の頃からずーっとあの風貌の佐渡さん。不思議コメディシリーズの常連さんでした。三谷幸喜さんのお気に入りであり、劇団東京ヴォードビルショーを代表する俳優さんとして、その飄々とした魅力をコメディだろうがシリアスだろうが関係なく発揮する、希有な名優だと思います。ところで、劇団東京ヴォードビルショーと言えば、シシレンジャーこと能見達也さんも在籍されていました。その能見さん、過日突然の訃報を聞くこととなり、大変残念です。謹んでお悔やみ申し上げます。

 海岸ロケはかなりの強風だったようで、役者さんたちの大変そうな表情がカットに収められていましたね。そして、同録と思しき音声が、あの強風の中でよく拾えるものだと感心しました。強風に煽られるハミィが美しい...。

 そのハミィですが、美しいビーチの広がる惑星というイメージが先行して、泳ぐ準備をしているという設定でした。色々と期待が集まったかと思いますが(笑)、何と水着姿を披露したのは、妄想内のラプター! これは色々な意味で衝撃だったのではないでしょうか。ちなみにM・A・Oさん本人は「ゴーカイジャー」当時にグラビアを披露されてましたね。

マアサ

 惑星ベラに出現する救世主の正体を知りつつ、内気なために言い出せないという役回りの少女。今回、ハミィと交流するゲストであり、ハミィの戦隊ヒロインたるを見せるために重要なキャラクターです。

 気弱なので真実を告げられないというシチュエーション自体も頻出パターンですが、ハミィが幼少期の自分と重ね合わせるという展開もまた頻出パターン。新鮮味は皆無と言っても過言ではありませんが、多分、そういった類型の中でどう振る舞えるか(どうキャラを動かせるか)を試行しているのではないかとも思えますね。そして、そのような試みがあったとすれば、それは概ね良い成果を上げていると思います。

 このマアサという少女自体には、特に語られるバックボーンもなく、生贄にされかかるという話にもそれほど危機感がなく、村の宝とされているホキュータマともあまり関わりがなく、ちょっと扱いが軽すぎるようにも思いますが、芝居の巧さでその存在に説得力を生んでいるあたりは演出の妙と言えるでしょう。キャストの篠川さんは、調べてみると小太郎より年下だとか...。結構大人っぽくてビックリしましたね。

ナーガ

 この人は何を考えているのかよく分かりません(笑)。村人になりすましてホキュータマを奪取しようとした様子もなく、救世主の正体に言及する様子もない。ベラに来た目的を簡単に開示してラッキーやハミィたちの立場を不利にしたりと、支離滅裂な言動で笑いを取る役だったと結論付けるしかありませんでした(笑)。

ラッキー

 今回はそれほど派手に活躍しません。ただし、ツキの良さを示す描写は随所に盛り込まれていて、楽しい画を披露していました。ラッキーが悩まない時は、常に幸運に恵まれているということで良いかと思います。

スパーダ

 カジキの面目躍如! 海中を自在に泳ぎ回り、ゴネーシを追い詰めるという大活躍を見せました。また、海中描写がフィルタのかかったスローモーションで表現されるあたりに、ノスタルジーな雰囲気を感じられて良かったですね(それでいて画面自体は海中のリアリティを確保しているところが良い)。

ラプター

 残念ながら(?)、水着姿は妄想の中のみで現実にはなりませんでした。飛翔能力を生かして空からの探査を行うという、適材適所なチョイスが抜群。そもそも、ラプターが選抜メンバーに入ること自体が珍しく、彼女の本分がショウ・ロンポーの秘書、そしてオペレータであることを示しています。「スター・トレック」で、たまに上陸班に意外な人選がなされるようなパターンを踏襲しているのかも知れませんね。

ハミィ

 マアサとの交流に絡め、ハミィ自身の過去が少しだけ描かれました。

 いずこかの星で、忍者の修行をしているハミィ。彼女がシノビスターであることをちょくちょく忘れてしまいますが(笑)、今回は明確に忍者の出自であると示されたことになります。

 幼少期のハミィも、今回のマアサと同様の体験をしており、ジャークマターの襲来をなかなか言い出せずにいましたが、遂に勇気を振り絞って告げることにより、忍者一団の危機は回避できたというわけです。その後の一団がどうなったのかは全く分かりませんが、恐らくハミィはその後、一人にならざるを得ない状況に追い込まれてキュウレンジャーになったのではないかと思います。

 実体験を話して子供に勇気を与える姿は、正に戦隊の正統派ヒロインの姿であり、ビーチを期待してユルい感じに振る舞っている姿と、マアサとの交流で見せる「お姉さん」の貌、そして戦うヒロインとしてのキリッとした表情への変化は、実に素晴らしいものがありました。大所帯ゆえにステレオタイプになりがちな中、こういった多面的な魅力を自然に盛り込んでいく手腕の確かさはさすがですね。今回はドラマの深化という点は重視されていませんでしたが、これならシリアスな方向性でも充分に魅力あるヒロインとして成立するだろうと期待します。

スティンガーとチャンプ、そしてスコルピオ

 一方で、スティンガーとチャンプのコンビについてもちゃんと言及されました。さすがに前回のような振り切ったコメディの中では言及しづらかったのかも知れませんが、今回はエピローグに挿入されても違和感のない構成でしたね。

 現れたカローがスコルピオだと知ったときのスティンガーの表情が秀逸で、明らかに動揺しているのが分かる巧みな芝居。クールな追跡者から、一瞬で弟の貌になる凄味。次回への期待を煽るだけ煽っています。これは凄い「予告」でした。

次回

 というわけで、次回は正に前段エピローグの続きとなるエピソードです。どう考えても鬱展開になりそうではありますが...。どうなるか楽しみです。