ブレイブファイナル「だいばくはつ!さよならキョウリュウジャー」

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 遂に最終回!

 一年間の展開を盛り上げるべく、要所要所にクライマックス風のエピソードを織り込んできた「キョウリュウジャー」ですが、最終回はその中でも最大の盛り上がりと最大の感動を届けてくれました。

 回収すべき伏線は、前回までにほぼ回収していて、残すはデーボス撃破の為のクライマックスバトルとなっていたわけですが、ここに来てダイゴとアミィの物語へと収斂させる事により、単なる大バトル&エピローグではなく、爽やかな感動を呼ぶドラマをも内包させていたのには、驚くばかりです。

 勿論、最終回ならではのファンサービスも登場し、様々な面で、「キョウリュウジャー」というシリーズが示す貪欲さと旺盛なサービス精神に溢れた快作になったと言えるでしょう。

 まずは、前回から引き続く生身のアクション連発。

 氷結城内部で繰り広げられるダイゴとアミィのアクションは、短いながらもツボを押さえた完成度の高いもので、今回は特に華麗でパワフルな足技を多用。途中スタンドインと思しきカットも入りますが、元々アクションポテンシャルの高い二人なので動きの違和感がなく、全体のシーンとしての統一感は見事でした。途中、アミィが獣電池を守ろうとする動作、そしてそんなアミィを庇おうとするダイゴの動作に関しては、スローモーションの効果が効いており、重厚ながらも感情移入のしやすい傑出カットでした。

 アミィを脱出させてからは、ダイゴは基本的に「やられ役」にしばらく徹する事になります。ここでのやられっぷりは、これまでの危機描写と比べて数段上のやられっぷりであり、これが最終回を特別なものにしている要因の一つとなっています。これがあるからこそ、後の大逆転のカタルシスが鮮烈なものとなるわけで、実に最終回らしい「お膳立て」でした。ダイゴは一言も弱気な発言をせず、むしろ「恐竜プラス人間」の力を完全に信頼している様子でしたが、画面からは「勝てる気がしない」雰囲気が迫ってくる感覚で、逆に絶望感を醸し出しているという面白い構図でした。

 イアンは、華麗な銃撃を舞踊のように見せ、バトルが前回から継続しているという事を印象付けるカットような多用。鮮烈なのは、素顔のままで獣電ブレイブフィニッシュを放つカット。スタジオ撮りと思しき合成カットをわざわざ用意する周到さで、たとえ変身能力が失われても、場合によっては遜色なく戦えるという事を、土壇場になって明確に示しました。

 同様に、トリニティストレイザーを合成カットで魅せたのはソウジ。素早い回転を要求される動作を、しかも二刀流でこなす姿には、劇中の成長振りを超えたキャストの成長振りを感じる事が出来ます。合成との相性も抜群に良かったと思います。

 ノブハルは、誰よりも激しい顔面の流血メイクで、その奮闘振りをアピール。文字通り仲間の鎧となるかのように、攻撃に耐えて耐えて耐え続ける姿には、やはり感動を覚えます。そして、瀕死の(あるいはこの時点では死亡していた)空蝉丸を発見した際、その流血メイクが溶け出すかのような、感情の入りまくった泣き顔の素晴らしさ。ここでまず涙腺を思いっきり刺激された方も多いのではないでしょうか。

 イアン、ノブハル、ソウジの三人に関しては、スピリットベース内での戦闘も披露。狭いセット内を動き回り飛び回るアクションは、限定空間でのアクションの醍醐味を凝縮したような画面作りで、迫力満点でした。このスピリットベースでの戦闘は、戦隊シリーズでよくある「基地潜入」のパターンをも踏襲していますが、その危機を実質三人で片付けてしまう辺りが「キョウリュウジャー」らしい処ですね。

 大地の闇では、トリン、ラミレス、鉄砕のアクションもちゃんとフィーチュアされており、カオスと対峙するクライマックスでは、それぞれの必殺技を使用するカットも盛り込まれていました。ここでも合成カットがフィーチュアされており、最終決戦らしい豪華な印象を与えていましたね。

 残念ながら、優子と真也に関してはアクション描写がなく、変身後も未登場でしたが、あくまで当初レギュラー5人(なんと空蝉丸の見せ場すらもカット!)の物語として最終回を描き切るという方針なのだと理解出来ます。

 そんな中、キョウリュウシルバーだけは別格の扱いで、カオスにとどめを刺すという役割が与えられています。しかし、これはカオスが大地の闇を守る為にわざと生命を絶つという衝撃の行為に対するお膳立てであり、むしろカオス側に見せ場が用意されたという見方も出来ます。ただ、大地の闇に出現したカオスの活躍はごく短いもので、こちらはむしろ、ラッキューロの機転で大地の闇に現れたキャンデリラの見せ場を創出。奇しくも最も存在を軽んじていたラッキューロによって敗北を喫する事となってしまう皮肉な結末が見事です。実際、強大な戦力と恐るべき頭脳を持つカオスに関する落とし処は、かなり迷った部分があったのではないかと推測されますが、こういう呆気ない最後が却って鮮烈に映ったのも間違いのない処です。

 そして、孤軍奮闘のダイゴを支える仲間の想い。

 こういったパターンは、ごくありふれたものであると断言してしまえばそれまでなのですが、その味付けの巧さが「キョウリュウジャー」たる所以。構図的にはレッド偏重の最たるものなのに、そう感じさせないのはアミィの存在が大きいと思います。

 地上でダイゴに助けられた事を悔やむアミィは、仲間の励ましで立ち上がり、ダイゴに授けられたメロディを仲間と共に歌う事で、その想いをダイゴに届けるわけですが、重要なのはダイゴとアミィの間に、既に「運命共同体」のような一体感が生じている事でしょう。この分かち難い二人の関係を前回と今回で丹念に描写した結果、アミィ役・今野さんの素晴らしい熱演もあって、戦隊の一体感にまで昇華しています。故に、ダイゴが単独でデーボスと戦っていても、そのすぐ後ろに支える仲間が居るといった感覚を享受する事が出来ます。一時は「女子力が低い」とまで称されたアミィが、そのヒロインとしての存在感を、土壇場で存分に発揮出来たのは喜ばしい処ですね。

 一方、アミィ達が届ける「真の地球のメロディ」が主題歌であったという仕掛けも一級で、凄まじいまでの盛り上がりを見せてくれます。ダイゴは、デーボスを道連れにする覚悟でしたが、何故かそこに悲壮感はなく、勝利を確信しているといった感じ。それだけに、アコースティックギターが奏でるもの悲しいBGMが流れる中、ダイゴが炎に包まれていくシーンは、涙腺を刺激しまくる名シーンとなりました。

 この「ダイゴの殉死」とも言えるシーンを含めて、数度にわたって静と動が交互に展開される事で、徐々にテンションを高めていく手法が採られていると気付きます。最終回でこのような贅沢な構成を採用する事が出来るパワーには、感服せざるを得ません。ダイゴが帰還するエピローグは「静」で締めくくられ、ジワッと感動が染み出す素晴らしいものでしたね。「デーボスの創造主」の存在が明らかになっていても、敢えてそこにフォーカスせず、あくまでダイゴとアミィを中心に据えたエピローグになっていたのは特筆すべき点だと思います。

 さて、今回はもう一つ興味深いポイントがあって、レギュラー5人のドラマに収斂させていたにも関わらず、「歌」のシーンからは弥生が参加しているという点です。これは、単に人気キャラクターにスポットを当てるという意味もあったのではないかと思われますが、弥生の劇中でのポジションを考えると、参加は妥当だったと言えます。

 一つは、弥生が純粋にキョウリュウジャーへの憧れからキョウリュウバイオレットとなった事。最終回での描写は、このようにレギュラーメンバーと肩を並べられるまでに成長した証と言って良いでしょう。もう一つは、ダイゴに恋愛感情を抱いていた事。いわば弥生にとって今回は「失恋話」になってしまうわけですが、それに関するセリフは一切なくとも、涙を溜めた笑顔でダイゴとアミィを見つめる表情や、アミィの元に歩み寄るダイゴを目で追えなかったりといった細かい芝居が素晴らしく、弥生が一歩引いた事を示していました。つまり、美琴に無思慮な敵対心を向けていた頃に比べ、彼女は少し大人になったわけです。

 そう、弥生の物語を終わらせる為に、敢えてレギュラーメンバーの中に飛び込ませたというわけですね。

 こんな具合で、最終回であるにも関わらず、なんとなくいつもの感想とあまり変わらない感じなのですが、それはやはり、今シーズンは各話のパワーが凄かったという事なのではないでしょうか。最初から最後までクォリティが高く、ずっと飽きさせない、実に幸せで素晴らしいシリーズでした。

 戦隊のお約束は裏切る事なく実直に取り入れ、そこに独自の要素や掟破りを盛り込んで、「王道」や「変化球」といった形容が陳腐に思えるようなエネルギーが横溢した「キョウリュウジャー」。確実に一年間楽しませてくれました。

 そしてそして、今シーズンも恒例のVシネマ版が発売されます!

 「ハリケンジャー 10 YEARS AFTER」のパロディっぽいタイトルに、「ダイレンジャー」を彷彿とさせる「子孫」の活躍!?

 これは楽しみですね。スペシャル版には恒例の超全集が付属しています。

 というわけで、一年間お付き合いありがとうございました。

 では、「トッキュウジャー」方面へ出発進行!