戦隊、ひいては特撮ヒーローもの全般の定番、ニセモノ編!
ストーリー運びの構造こそ、オーソドックスなニセモノ編ですが、「キョウリュウジャー」の精神性がダイゴに収斂されていくロジックが見事。色々な面でコミカルな味が噴出していますが、その実、根底に流れる「信頼」というテーマは、非常に深いものです。今回のお話で、ダイゴがキョウリュウジャーのイコンとして存在しているという事が如実になりました。
もう一つ、ストーリーにドライブをかけているのは、カオス VS トリン。
両者には浅からぬ因縁があるようで、その対決では、肉弾戦アクション主体のキョウリュウジャーと異なり、超能力バトルが展開。この辺り、現場的には、アクションに不向きなスーツでの対決を描くという命題に対する答えなのでしょうけど、却って、超越者同士の壮絶バトルという雰囲気が出ていて良かったと思います。しかも、全くアクションをしないのではなく、飛び降りなんかも披露して...凄すぎます。
「ダイゴの忘れ物」というシチュエーションを使っての、採石場(?)のロケーションが活かされた迫力ある爆発等も見所でした。ダイゴが他の4人と分断されるという流れも、オチに繋がる流れとしてバッチリ機能していましたね。
戦隊では既に定番となっているニセモノ譚ですが、仲間同士の信頼関係を壊すというシチュエーションで多用され、今回もそのパターンを踏襲しています。他にも、市民を欺いてヒーローの信用を失墜させるというパターンが多く、いずれの場合も、「誤解を解く」という解決に向かって、個々人が努力、あるいは第三者の助力を得るという流れが殆どです。中でも、市民の信頼を失ってからの第三者による救済というパターンは、かなり「感動編」として描かれる事が多く、「ジュウレンジャー」辺りの同パターン回は、その典型ではないかと思います。
今回も、信頼の崩壊から解消に至る流れはパターン通りとなりますが、崩壊に至る部分も、解消となる部分も、割と新鮮な旨味に彩られていました。
まず、信頼の崩壊に至る部分ですが、ここではニセモノの「完成度」が高い!
大抵のニセモノは、知能がそれほど高くなかったり、立ち振る舞いからしてチンピラっぽかったり、ホンモノの記憶や感情といったものとは完全に断絶されているものですが、何と今回は、相手の感情を読み取った上で、信頼を失わせるような一言を構築して吐かせるという、何とも狡猾かつ知能の高いものとなりました。これにより、「何だかおかしいのに気付かない」といった、ニセモノ譚にありがちな疑問を挟む余地なく、主人公達は追い詰められていく事になります。
これ、実は物凄く恐ろしいシチュエーションなんですけど、その信頼関係の失墜に使われるタームが、「超つまんない」、「格好悪い」、「足太い」、「信用できない」という、何だか分かり易いもので、しかもそれに対するリアクションが各々コミカルに描かれる為、あまり深刻な雰囲気にならない辺り、絶妙なバランス。これらのタームは、後でホンモノ達に周知される事になるので、かなりヤバいのではないかと思うのですが、そこはキョウリュウジャー、ブレイブで払拭する事でしょう(笑)。
一方、危機に陥った4人とは断絶されていたダイゴですが、影響を受けていないダイゴが颯爽と登場してニセモノを暴く...のではなく、もうひと仕掛けあったのが心憎く、またその仕掛けが、ダイゴというキャラクターを象徴させる為に不可欠であったのが素晴らしいわけです。それが、今回の「誤解を解く」場となります。
4人に合流したダイゴが、イアンに預けていた父のペンダントを、そのイアン自身に破壊されてしまうという、衝撃のシーンが登場。勿論、このイアンはニセモノなのですが、ここでダイゴは怒り狂うのではなく(そもそも今回のデーボスは「怒り」を集めるのが目的)、信頼するイアンをそこまで追い込んでしまった自分を恥じるという、とんでもない言動を披露するわけです。
要するに、事件から超然としているのは、「影響を受けない」というフィジカルなものではなく、「仲間を信頼している」というメンタルな部分。そもそもダイゴは、いかなる事象に影響されようと「仲間への信頼」が揺らぐ事は絶対になく、今回で言えば、「信頼しているからこそ、自分に非があるのではと疑う」方向へと向かっていくという、強固な「信頼という意志」の持ち主として描かれる事になりました。
もう一押し、面白さを不可しているのは、「リーダー失格」、「ファザコン野郎」といったイアンのニセモノが投げつける辛辣な雑言を、とりあえず自覚して受け流してしまうという、超然者そのもののコミカルなシーンと、ニセモノがバレた後にホンモノのイアンに投げかけられる、「バカにおいてもキング」というエスプリすらも、褒め言葉として受け止めてしまうシーン。ここでの「バカ」は「信頼バカ」という事なので、厭味も全くありません。
しかも、この一押しで、従来のレッドが振りかざす「信頼の大切さ」に漂う、少々説教臭い部分を完全に払拭してしまいました。つまり、ダイゴは「天然だから信頼バカでいい」という、強烈な肯定でオチを付けられているわけです。さらには、そんなダイゴに信頼してもらっているメンバーは、そのまま信頼をダイゴに返す事で、必然的に仲間との信頼関係も強固となるという、説明しなくても分かるプロセスが「そういう空気」として漂い、「ニセモノにしてやられた」という頭脳での理解よりも、もっと感情的な理解にシフトさせたのが素晴らしいと思います。「俺たちは戦隊だ」というダイゴのセリフが、ロジカルなものではなく、もっとエモーショナルなものだという事が、ここで示されました。
その後のアクションでは、それでもなお、ニセモノを作って襲い来る敵がしつこくてコミカル。で、どうやってその状況を打破するかと思いきや、打破したのはイアン。花をホンモノのベルトに付けておくという、彼らしいキザなやり方が秀逸でした。そんなこんなで、今回は隠れたイアン編だったという事になるのかなぁ...と。
巨大戦では、まさかの戦闘員巨大化からの、まさかのニセ巨大ドゴルド。そこに獣電池による「屁のつっぱりはいらんですよ」な一撃(古くてすみません)。獣電池の何でもありな状況は、獣電池そのものの個性をスポイルしているという矛盾を、早くも見せ始めている気がしますけど、それを惜しみなく戦略として用いるキョウリュウジャーのタクティクスは、近年の戦隊にはあまり感じられなかった「容赦ない感じ」が出ていて良いと思います。トリンの、「臀部から催涙ガスを」という回りくどくオブラートに包んだ言い回しも秀逸で、巨大戦をギャグシーンとして演出する余裕を感じますよね。
さて、今回はカオスがプテラゴードンなる獣電竜を復活させていて、その獣電池をドゴルドが機能させる事が出来たという「引き」まで用意されていました。深読みすれば、色々な事が想像出来ますけど、「キョウリュウジャー」はあんまり深く考えずに見た方が、きっと面白いと思うので、ここでは追求しない事にします。
次回はノッさん活躍編ですね。今のところ、イアン程のネタキャラになっていない、ある意味勿体ないキャラクターなので、弾けて欲しい処です。
天地人
「(投稿ネタが)超つまんない」
グサッ(うっ)
「格好悪い」
なんで分かるんだ(驚)
「足太い」
体型の事まで言われたくないわっ(涙)
「信用できない」
いいんだ、いいんだ、もう・・・(無言)
今回は後に繋がる伏線が張られた回でしたが、偽者のセリフが強烈すぎて、あやうく立ち直れないところでした(汗)
ああっ、いかんまた目眩が・・・それではまた
竜門 剛
馬鹿がつくほど仲間を信頼するダイゴには、「ワンピース」のルフィを彷彿させるところがありました。やっぱり現代における理想のリーダー像なのかもしれません。
真面目すぎる故にギャグっぽいキャラクターになってしまっているトリン。森川さんも本当はもっとハジけたいんじゃないでしょうか。
M'sRoad
「子供の科学」や「初歩のラジオ」を愛読していたのでヤキゴンテの肩に半田ゴテがついてたのは個人的に嬉しかったですね。
ニセモノ篇といえばオリジナルの外観をスキャンするようなシーンがあるのが通常ですが、いきなりコピーですか。高性能だなぁ(笑)
相手が気にしてることを言うのはシンケンジャーでもあったし、プテラゴードン出てくるし、盛り過ぎの感もありますが、ダイゴのキャラが全部持って行ってしまいました。って、全然ピンチじゃないじゃん!
・・・長石多可男監督が亡くなられましたね。東映作品は円谷東宝に比べると格下扱いされることが多いのですが、長石監督が関わられた作品は私の血肉の一部を確実に構成しています。ご冥福をお祈りします。