ブレイブ47「だいはんげき!さいだいさいごのブレイブ」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 最終話一歩手前!

 という事で、さながらJAC版「里見八犬伝」のような見せ場てんこ盛りの大充実編となりました。

 戦隊に関わらず、あらゆるコンテンツで最終回の直前が一番面白い(最終回だけ独立した話になっているものは除く)のは周知の通りですが、今回も「キョウリュウジャー」の総仕上げといった画面作りが横溢。あらゆる伏線も回収しまくり、空蝉丸編をも取り込み、後はデーボスの元へ向かったダイゴとアミィに全てを託すという、潔さに溢れた展開でした。

 戦隊に限れば、例えば「ジャッカー」とか「バトルフィーバー」といった作品では、最終回よりもその直前のエピソードの方が遙かにテンションが高く、その傾向はほぼずっと継承されているように思います。だからといって、最終話がつまらないかと言えばそうではなく、やはり最終回は「結」としての安定感を求められて然りなので、直前の「転」に高いテンションを割り当てられるのは当然という事になるでしょう。

 しかしながら、近年の傾向として、最終回で全てを語り尽くすのを控える傾向があり、まだ物語が続く余地を残して終わる事が多いように思います。最終回自体も安定感はあるものの、エピローグとして機能するシーンをかなり省略していて、最後の最後まで何らかの仕掛けを用意し「転」のテンションを継続させています。恐らくは、「VSシリーズ」や劇場版への顔見せ等、キャラクターの長期的な活用を見据えての戦略と思われますが、「ジェットマン」や「ダイレンジャー」のような充実したエピローグに期待する向きからは不満があるでしょうし、テレビシリーズにおける決着を高いテンションで見たい向きからは満足出来るものかと思います。

 「キョウリュウジャー」の最終回は、推測するに近年の傾向を踏襲したテンションの高いものとなりそうな気がします。ただ、最終回のセオリーを殆ど本エピソードで披露してしまった事を考えるに、もしかするとエピローグをも充実させる欲張りな構成になっているかも知れません。

 その最終回のセオリーというのは、戦隊シリーズのファンであれば誰もが認識出来る「素顔での名乗り」、「主題歌の省略」といったもので、今回はどちらも印象に残る演出として織り込まれています。

 「素顔での名乗り」は、毎年書いているような気もしますが(笑)、「バイオマン」から恒例となっている「素顔のキャスト本人がスーツアクターを務める」という、一種のお祭りが元となっており、「ダイレンジャー」において中国拳法に基づいた複雑な名乗りを素面でこなすという「掟破り」を経て、半ばお約束と化しているものです。今回は、それぞれの名乗りを戦闘中に、しかも、前述の「里見八犬伝」的に敵を引き受けるシーンで披露。半ば義務的な前例とは一線を画す格好良さで、変身不能となった(この辺のエクスキューズの細かさはお家芸とも言えます)各メンバーの熱い芝居を盛り上げていました。

 ノブハルはそのパワフルな魅力を最大限に発揮して、自らの武器を象徴するかのように己を盾とします。多くは語られないものの、年長者の意地をも感じさせる名演によって、見事に他のメンバーを次のステージへ送り出していました。当然ながらギャグは抑え目でしたが、ノブハルの持つ「強い男気」の真髄を見せてくれましたね。勿論、多数のゾーリ魔を一人で受け止めるアクションは壮絶な肉弾戦となり、次のイアン&ソウジのコンビと鮮やかな差別化が図られています。

 そのイアン&ソウジの出番においては、プレイボーイと木訥な子供というコンビで始まった二人の関係を、肩を並べた名コンビとして完成させるという意図が感じられました。トリンに託された剣を携えたソウジを、イアンは初めて「ソウジ」と呼びます。以前、「もうボーイとは呼べない」と発していたイアンでしたが、この瞬間まで名前で呼ぶのをとっておいたわけで、盛り上がりを計算し尽くした最高のシリーズ構成には頭が下がります。ブラックとグリーンの組み合わせは、「ライブマン」における追加戦士のイメージによって結び付きが強いものとして印象付けられており、「ゴーオンジャー」でもそのイメージを継承、今回は中距離戦(銃撃)と近距離戦(剣術)の組み合わせという、よりタクティカルなイメージでまとめられています。アクションは、イアンの舞踊のような動きを駆使した射撃の美しさと、ソウジの高速の剣捌きを伴う二刀流により、一級の完成度を誇ります。両者とも、出来うる限りスタンドインを使わずにアクロバティックな動きを見せていて、その努力の跡が垣間見られます。

 続いては、空蝉丸がドゴルドとエンドルフを引き受けるシーン。ここでは、エンドルフの下僕に甘んじていたドゴルドが、空蝉丸に鼓舞されて強き者の誇りを取り戻すという「決着」を展開します。

 イアンが、アイガロンとの因縁を「情け」によって解放したのとは逆に、今回の場合はドゴルドが空蝉丸に歩み寄る事で因縁を断つという構造に。この変化の付け方が実に巧い。一度は利用したエンドルフに逆襲され苦汁をなめるものの、ここでまたエンドルフに逆襲をかけるドゴルドの痛快さは、単なる敵側内部抗争の決着とは別種のカタルシスを持ち、知らない間にドゴルドへの感情移入を仕掛けられた事に気付くのです。

 そしてここに至るまでの、空蝉丸による必死の足止めが凄絶であるが故に、ドゴルドの「覚悟」もまた重みを増しており、正にドゴルドは空蝉丸によって「中身を与えられた殻」であったのだと思い至らされます。だからこそ、再び空蝉丸に己を「満たして貰う」事によって、真に自分(=誇り)を得たドゴルドは、エンドルフを一刀の元に斬り捨てる事が出来たのではないでしょうか。その後、空蝉丸に斬られる事で、ドゴルドはやっと先の二人の戦騎のように、傀儡たる戦騎である事から解放される事になったのでした。

 ただし、簡単には終わらないという事なのか、この一連のくだりの最後、空蝉丸に「死」の臭いを与えていました。恐らく存命ではあるでしょうが、衝撃的であるには充分な「締め」でした。

 仲間が開けてくれた道を進み、敵の懐に飛び込むはダイゴとアミィ。通常ならば、レッドたるダイゴ単独で飛び込ませるのが常套句ですが、アミィを伴っているというのが秀逸です。つまり、どこまでも男の代表であるダイゴにとっての、アニマたる存在こそがアミィであるという事でしょう。前回、ダイゴはアミィとの関係を称して「似たもの同士」としていましたが、今回と併せて、二人の関係性を如実に示すものだと言えます。中盤より、アミィがダイゴに対し、恋愛感情ではない何かを常に抱えているような描写がありましたが、それはこの二人が不可分であると共に、恋愛とは一線を画する関係にある事に対し、理解が及びにくかったという事なんですね。

 ここでの二人のアクションは、それぞれの持ち味と身体能力を活かした、シリーズの白眉たる仕上がり。最近封印気味だったアミィの足技も華麗に披露されていました。ダイゴはもうアクションスターの風格でしたね。

 素面アクションで言えば、何故かジェントルが凄まじい身体能力を披露! 今回は他にも色々な衝撃シーンがありましたが、インパクトの面で言えばジェントルが随一(笑)。なんでもジェントル役の島津健太郎さんは体操の経験がおありだそうで(しかも大会で数々の受賞歴があるとか)、アクションが得意でいらっしゃると。土壇場で魅せてくれますね~~。

 で、優子と真也、そしてドクターです。

 ドクターはとっくに変身能力を放棄しているものと思っていましたが、何とバイオレットに変身してプレズオーで参上! さすがに弥生とのダブル・バイオレットとまでは行きませんでしたが、こちらもインパクトとしては充分でしたね。千葉さんご本人の登場は次回に持ち越しという事らしいです(笑)。

 そして、まさかアノ話が伏線になっていたとは...という優子と真也の変身。ラミレスと鉄砕は、トリンに加勢すべく大地の闇に赴く事になりますが、ちゃんと後継者を選んでいたという設定でした。元デカイエローという「先輩」である木下あゆ美さんが、キョウリュウシアンに変身する驚きの展開は鳥肌モノで、兄妹で青系の戦士という計算高さにも脱帽です。しかも、ここでやっとノブハルがキョウリュウブルーである事を知っていたと告白するとは。あらゆるピリオドをこの一点に集中させる作劇の巧さが素晴らしいですよね。

 真也は、出合さんが鉄砕との二役を担当するという事で、別種のインパクトを与えてくれます。この真也、例の漫画のエピソードのみに登場したキャラクターなので、そこを運悪く見逃した方には何の事やらといった処ですが、全く別人のキャスティングでないという措置が、鉄砕と真也の血脈的繋がりをビジュアルで納得させており、ここもまた巧い処だと思います。

 この「継承」によって、キョウリュウジャーが演出上、あくまで6人と4人で区分されている理由が明確になりました。即ち、6人は「前代」がいない勇者で、4人は継承を伴う勇者であったという事です。オープニングにて、単独テロップでクレジットされている6人は、登場時から最後までずっと各々一人で担当するキョウリュウジャーですが、シアン、グレー、バイオレット、シルバーの4人は、少なくとも二人の人物が変身した事になります。今回は、特にシアンとグレーがスピリットレンジャーではなくなった事で、真に10人のキョウリュウジャーが揃いました。最終決戦への段取りとしてパーフェクトだと思います。

 次回、いよいよ最終回です。「キョウリュウジャー」らしいクライマックスに期待しています。