劇場版の要素をフィーチュアし...というより、10人勢揃いの一大イベント編を、劇場版の続編という形式で、かつ劇場版のスケールで描いた快作となりました。
10人勢揃いをなかなか成立させず引っ張ってきたのは何故か。その答えは、3クール最終話まで引っ張りたかったという、シリーズ構成上の理由にも求められますが、劇中では、10人勢揃い=メロディの共鳴という答えを提示していました。
メロディの共鳴という解答を説得力あるものに仕上げる為、ミュージカル仕立てであった劇場版に再度スポットを当てたのは慧眼と言え、劇場版の要である天野美琴と獰猛の戦騎Dを招聘しての「続編作り」は完璧なものでした。
劇場版の続編という事は、劇場版の内容が前提となる為、見る上で必然的に敷居が高くなります。
実際、美琴とDに関しては、劇中殆ど情報が与えられず、劇場版未見の私は状況を把握するのがやっと。劇場版公開前の予告編連発等により、それなりにキャラクターの配置は頭に入っていた為、何となく理解は出来ましたが、全く事前情報なしに見るのは、なかなか厳しいものがあったのではないかと思います。
リアルタイム性を重んじるならば、前述の予告編連発は前情報として有効ですし、劇場版DVDやBlu-rayといったソフトの発売に関するCMが今回オンエアされている事もあって、作劇自体妥当なものとして捉えられます。未見の私でもアクション満載の豪華エピソードとして充分楽しめましたから、「今回を続編としてより楽しめる=劇場版に足を運んでくれた観客へのプレゼント」という風に考えられるでしょう。
さて、まずはDに注目してみましょう。
宮野真守さんという、ヒロイックな役柄が非常に似合う声優さんが声を担当。「ガンダム00」に主演し、ウルトラマンゼロを演じ、「ポケモン」で準主役を担当し...と、近年、長寿シリーズの要を常に担ってきた、正に旬の人物です。
その宮野さんが、獰猛の戦騎という肩書きの凶悪なキャラクターを熱演。ニヒルでありながら衝動的なキャラクター性に、これがまたピタリとハマっており、色気と華のある声質が本エピソードの価値を数段押し上げていたと言っても過言ではないでしょう。
また、復元水を酒の如くあおる悪態が鮮烈で、デーボス軍とは一線を画した無頼漢といった趣が強く、その面でも番外編的なニュアンスを強調していました。この「番外編的ニュアンス」が今回の特徴とも言え、ラミレスの回復や、キョウリュウジャーが更なる力を得る為に必要な通過儀礼(メロディの共鳴)が盛り込まれたものでありながら、トバスピノ、スピノダイオーといったスペシャル感満載の要素がより目立つのは、番外編ならではだと思います。
残念ながら、このDは「超豪華な咬ませ犬」でしかなく、「キョウリュウジャー」の「鉄板レギュラー幹部以外は早く片付く」という一つのパターンに完全に則っていました。まぁ、劇場版のメインキャラをテレビシリーズに招聘し、そのまま継続的に活躍させるのは、あまりにマニアックで受容し難いものですから、例え抗し難い魅力があったとしても、仕方ないですよね。
続いては、美琴に注目。
演ずる中村静香さんはグラビアアイドルとして有名ですが、そのアイドル性が美琴という役に良くマッチしています。今回は、物語のキーパーソンであると共に、弥生の嫉妬の対象になるという重要な役どころを兼任していますから(笑)、その存在感は大きくなければならなかったわけですが、及第点以上の存在感だったと思います。
Dの放つ悪の力に囚われ、その姿を「悪の華」とも形容されるスタイルに変化させるくだりは実に格好良く、今回のビジュアル面での白眉の一つでした。個人的には前年の黒いウエディングドレスを着たエスケイプに匹敵する格好良さだったと思います。
坂本組という事もあって、美琴にも、剣を振り回してケレン味のある立ち回りを見せるというアクションの見せ場が用意されており、ゲストとしては破格の扱いでした。また、ご本人の歌唱力については全く存じ上げませんが、クライマックスでトバスピノ充電池に力を与える歌声は、美琴=Meeko=巫女という連想が見事にハマるナチュラルな歌唱で、あまり技巧的な面を感じないのが却って効果を上げていたのではないかと思います。実に素晴らしいですね。
さらには、一方的にダイゴに助けられるのではなく、実は悪の力に囚われつつも、その中で常に歌い続けていたという一節が巧み。美琴もまたブレイブの持ち主であり、ダイゴとの強い共振性を有しているという事を、明瞭に表現した見事な措置でした。
美琴をキーパーソンとするならば、そのカウンターとしての役割を担っているのは、弥生となります。
今回の弥生は、徹底して嫉妬心を前提に行動しており、ある意味トータルイメージとしてのブレイブとは対極にある感情であるにも関わらず、それが事態を収拾していく妙味に満ちています。
冒頭、弥生が美琴の手元を撃ったのは、美琴が悪の力に染められている事を見抜いた...わけではなく、完全にダイゴとの接近を邪魔する為(にしか見えない)。しかしこれがダイゴの身を救う事になります。
その後も、ダイゴと美琴の「特別な関係」にヤキモキしつつ、(ダイゴの事を弥生より理解している)アミィに諭されて、メロディの共鳴を発見。トバスピノ充電池に発生した無尽蔵のエネルギーに、またもや軽い嫉妬を覚えつつも、結果的にはキッチリ片を付けます。
極め付きは、エピローグで美琴とダイゴのデートを阻止すべく、巧みな作戦でアミィと美琴をショッピングに誘うという策士振り。その様子にイアンが少々呆れ気味なのも可笑しい処。
今回を見る限り、弥生は結構なトンデモキャラとなってしまっていますが、彼女の持つ天然な雰囲気と、その裏にある知性派の面が実に魅力的なので、見終わった後には爽快感しか残りません。この辺りは演出の勝利と言うべきでしょうか。
そして、今回最大の魅力はアクションのケレン味。
坂本監督らしく、素面アクションの分量は非常に多め。まず、鉄砕、ラミレス、トリン(彼は「素面」ではありませんが)によるゾーリ魔軍団相手のアクションが圧巻。物量も圧倒的ですが、鉄砕の華麗なアクションが一際目立っていました。いやぁ、格好良いですね。重量級のラミレスは逆にパワーファイト全開で魅せてくれます。後にクライマックスで三人が登場した際、「我々三人相手に千人のゾーリ魔では不足だ」というニュアンスの台詞をトリンに言わせていますが、これがあまりにも格好良くて痺れました(笑)。
その後も、変身しても良いようなシーンで素面アクションの連発。それぞれの見せ場を丁寧に織り込む演出がアクションものとして完璧。ダイゴは軽快かつワイルドなアクション、イアンはアクロバティックな動きをスパイスとした銃撃、ノブハルはパワーファイトでありながら実にスピーディな「らしさ」が盛り込まれました。ソウジは壮絶スピードの剣技に更なる磨きがかかっており、アミィは得意の足技をふんだんにフィーチュア。空蝉丸は正当派の剣劇スタイルで魅せ、同タイプのソウジとしっかり差別化されています。
弥生は変身後と同様に銃撃を中心としたアクションになっていましたが、素面での戦力はやや弱く設定されているようで、それがまた弥生らしさだと言えるでしょう。
そして、10人揃ったキョウリュウジャーのビジュアルは壮観! 変身シーンもスピリットの二人を初めて踊らせる事で「10人勢揃い」の実感を高めてくれました。名乗りも長い(笑)!
それにしても、統一性のあるデザインで、しかも色名のみで10人揃うというのは、戦隊史上初めての事。「獣連者」と字を当てて10人ではない事を強調していた「ジュウレンジャー」から幾星霜、とうとう10人が並び立つ戦隊が登場したわけです。
次回は、ノブハル&キャンデリラという、ある意味最強コンビの誕生か!?
楽しみは尽きません。
天地人
「地獄で忘れちまったみたいだからもう一度教えてやるよ、 それはなぁ、俺達が変態だからだ!」
「おバカさんなんですか、天地人さんは」
・・・なんか違うような気もするんですが、大体あってる様な気も(汗)まあ、それは置いといて
自分も劇場版は未見なんですが、子供の頃に先週の話を見逃してしまったまま、翌週の話を見てしまった感覚を思い出しました。
見ていればより面白く、見ていなくても面白いっていうのはやっぱり凄いですよ。
自分もクライマックスで3人が現れた時のセリフには痺れました。
やっぱりヒーローモノはこうじゃないとですよね。
竜門 剛
私は劇場版を観た組なので、未見の人が楽しめるのかと、少し心配だったのですが、そんな心配は杞憂だったようですね。
観た人間としては、デスリュウジャー(D)の部下だったアーシーとレムネアにも登場してほしかったのですが、流石にそれは無理でしたね。
ちなみに劇場版の感想としましては、面白かったのですが、要素が多すぎて短編で纏めるには少々苦しかったのでは?と思いました。でも、ダイゴと美琴の関係については、劇場版を見ていると更に楽しめたと思います。特にダイゴの鈍感というか無頓着ぶりが良くわかるお約束的なラストシーンは必見です。
それと、私もトリンのセリフに痺れた一人です。
M'sRoad
「策士だ・・・」と言ってるソウジが自分の色恋沙汰には疎くて、弥生の小芝居がなんとなくオヤジ臭い(祖父の影響か?)のがおかしかったですね。
劇場版を見なくてもわかるけど、後から見たくなるという、販促効果は良かったと思います。
Mark
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