ブレイブ31「バーカンス!えいえんのホリデー」

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 久々のノブハル編。しかも、他のメンバーの戦闘不能状態が長いので、ノブハルの孤軍奮闘振りを堪能する事が出来ます。

 最近のエピソードでは、メンバーの精神的な資質が事態を解決していくくだりが多く、今回のように、単なる偶然でノブハルが難を逃れるパターンは珍しいと言えます。それ故に、ストーリーの流れが実にスムーズであり、ノブハルのキャラクター性を存分に描いていました。

 優子が怪力の持ち主だった事が判明し、その優子に片手で樽をぶん投げられ、ショックを与えられたキョウリュウジャーが正気に戻るというくだりや、ソウジとアミィのやけに仲の良いカップル、ノブハルの盆踊り調のテーマ曲をバックに、軽快な名乗りを決めるキョウリュウジャーなど、ビジュアル的にコミカルなシーンもふんだんに挿入されていましたが、それ以上にノブハルの格好良さが印象に残る回だったと思います。

 今回も、前回と同様に秘石を巡る話になるかと思いきや、「厳しい残暑」をデーボモンスターに託すというやり方で、番外編的な一編を作ってしまったのは興味深い処です。

 前回が、秘石の章・第一弾という面を持ちながら、割と番外編的なニュアンスもあったので、今回の流れも特に違和感はありません。それどころか、今回もノブハルが主役だけにコメディ編と思わせておきつつ、キョウリュウジャー自体かなり切迫した状況に置かれており、前回とはまた違ったシリアスな展開が用意されていました。

 今回の肝は、キョウリュウジャーで最も掴み所のない人物であり、妹の優子に戦隊の中で一番頼りない印象を抱かれ、ギャグ担当要員扱いされているノブハルが、いかに「一生懸命か」という事を描く処にあります。ノブハル自身は、キョウリュウジャーの中では随一のパワーを持つ男としてそのポジションを確保しており、そのパワフルな戦闘スタイルにメンバーが助けられる事もしばしば。その戦闘スタイルの裏で、常にノブハルが一生懸命人々を守る為に闘志を燃やしていて、その闘志がパワーの源になっている...といった、劇中では言明されない部分まで納得させられてしまう構成になっています。

 戦隊の歴史において、ノブハルのようにコミカルなブルー戦士というのは、青のカラーが持つ印象もあってかなり少なく、「バトルフィーバー」のバトルフランスを初めとして数人を数えるのみです。そのバトルフランスは、キザな男ながらコミカルな芝居も多いという程度で、それも実はバトルフィーバー隊全員に当てはまる属性なので、除外すべきかも知れません。「デンジマン」のデンジブルーは、前年にバトルケニアを演じた大葉健二さんのコミカルな味がそのまま継承され、はっきりとコミカルなブルーになっている最初の戦士でしょう。その後、「チェンジマン」のチェンジペガサスがデンジブルー寄りのキャラクターであるのを最後に、突出してコミカルな人物は現れていません。

 その後、数年程、ブルーがコミカルなテイストで統一されている時期がありました。「ジェットマン」のブルースワローは、ドロドロ恋愛サークルの外で自由に動き回るお転婆娘、「ジュウレンジャー」のトリケラレンジャーは、現代の生活の楽しさについ溺れてしまい年下の戦士に叱られるような半問題児、「ダイレンジャー」のテンマレンジャーは、愚連隊上がりで情に流されやすく失敗の多い熱血兄貴、「カクレンジャー」のニンジャブルーは、前年のテンマレンジャーをより軟派にしたキャラクターといった具合です。しかし、その翌年の「オーレンジャー」で硬派、真面目、イケメンというブルーが出現し、以降はほぼその印象で統一されているように思われます(「シンケンジャー」のシンケンブルーは、時代錯誤な発言が笑いを呼ぶものの、実質的にオーブルーと同種のキャラクター)。

 これらのコミカルブルーを俯瞰すると、やはりはっきりとしたコメディ要員ではなく、割と面白い人だけど格好良いという属性になっている事が分かります。従って、ノブハルは、むしろ「ゴレンジャー」におけるキレンジャーに近いキャラクターだと言えるでしょう。まぁビジュアル的には、ノブハルは普通にイケメンヒーローの一員なんですが(笑)。

 キレンジャーとの共通点は、パワーファイター(「力持ち」という形容がピッタリ)である事、戦闘中にコミカルな動きがフィーチュアされる事、普段は割とトボケている事が多い事、定番のギャグがある事(キレンジャーはナゾナゾを答えられないという定番が存在)。この辺りでしょうか。ノブハルはカレー好きでも大食いでもないし、太ってもいないという事で、ビジュアルに現れるキャラクター性があまりにも違う為、キレンジャーとの共通点に気付きにくい辺りが、実はキャラクター設計の巧さなのではないかと感じる処があります。

 しかし、キレンジャーとの最大の共通点は、やはり人情派であるという事でしょう。この「人情派」、実は前述のコミカルブルー達にほぼ共通する点であり、いかにコメディ担当キャラクターと「人情」が結合しやすいかを示していると思います。

 さて、そのノブハルの「人情」ですが、今回に関して言えば、それは「人の為に働く」という形でフォーカスされています。

 彼が「夜遅くまで働いていた」が故に、デーボ・バーカンスの影響を受けなかった事に始まり、皆が楽しみにしている秋祭りを絶対に開催すべく奮闘する姿には、「何の為に戦うか」ではなく「何の為に働くか」というテーマが見えてくるのです。

 ノブハルのキャラクター設定が巧いのは、そういった「労働」をテーマにしやすい年齢を設定している処です。ソウジやアミィはもってのほか。ダイゴやイアン辺りでも、まだ「何の為に働くか」というテーマを持ち込むには、「熟れていない」感触があるように思います。空蝉丸は違う時代の人である上、しかも商工を生業とする者ではないので、こちらもピンと来ません。やはり、「労働」、「仕事」というタームが似合うのは、ノブハルだけ。ノブハルだけが、今回の流れの中で自由に動ける最良の人物です。

 従って、ノブハルはデーボ・バーカンスを粉砕する事と、秋祭りを開催する事と、姪っ子である理香を普通に戻す事、それぞれを等価に扱い、どれも大事な事なのでどれに対しても一生懸命に振る舞います。勿論、デーボ・バーカンスを倒せば一気に解決するわけであり、ここで今まで隠してきた(?)ノブハルの素晴らしい洞察力が発揮されます。

 太陽を背にしつつホリデービームを照射する巨大バーカンスこそが本体で、地上に現れている等身大バーカンスは、ホリデービームを反射させて日陰に届ける為の分身。このカラクリにはシビれましたね。久々に頭脳派の作戦ですし、太陽を背にする巨大バーカンスのスケール感も素晴らしいものでした。そして、それを見破るノブハルの「年の功」的な格好良さ。こちらも素晴らしい描写でしたね。作戦が特殊だった事もあり、巨大戦はプレズオーのみで宇宙を舞台に。その後、巨大バーカンスをシュクシュクボールで縮小して等身大戦になだれ込むという特殊な構成でした。

 キョウリュウレッド・カーニバルに関しては、やはりダイゴの単独戦の様相は色濃いものの、ノブハルが鉄球の動きをサポートするカットがあったりと、少しずつ「戦隊」としての描写を強めてきていると思います。カーニバル関連で言えば、エピローグでダイゴがミニティラに叱られているシーンが可愛らしかったですね。

 最後の最後、睡魔に負けたノブハルに向かって優子が礼を言うシーンでは、その後声を出さずに「あおいひと」と言っており、遂に正体がバレた事を示しました。もっと引っ張ると思っていたので意外だったのですが、これは今後のストーリーにおいて「優子に内緒にしている」という要素があまり機能しないという事の証左でしょう。ちょっと残念ですが、「あおいひと」は充分鳥肌モノでした。

 次回はまたコミカルなビジュアルを前面に出していますが...どういう構成で見せてくれるか楽しみですね。