ブレイブ27「オ・マツリンチョ!レッドちょうしんか」

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 一週空けての後編。レッドのパワーアップ譚でしたが、肝心のダイゴを中盤まで全く登場させないという変則パターンが光ります。

 そして、登場した途端に見事な脱ぎっぷり(笑)。変身出来ないという状況を作り、各人の素面アクションも満載で、全体的に充実したアクション編の雰囲気を湛えていました。

 また、次回はトリンに関する秘密に触れられるようですが、その前に彼のダイゴに対する「献身」にも似た行動が描かれており、段取りの良さが感じられます。

 今回のパワーアップ譚は、レッドのみというこれまた変則パターンで、これは歴代戦隊でも少数ながら見られたものです。

 最初の例は「ジュウレンジャー」のアームドティラノレンジャーでしょうか。これは、ティラノレンジャーが実の兄であるドラゴンレンジャーより受け継いだドラゴンアーマーと獣奏剣を装備したもので、純粋なレッド専用の追加武器といった趣。ティラノレンジャー自体がパワーアップを果たしたわけではないですが、シンプルな配色のスーツに金色の鎧が加わる事で視覚的にスペシャル感があり、パワーアップが分かり易い秀逸なものでした。

 もう一つの顕著な例は「アバレンジャー」のアバレマックス。これは今回のパワーアップに最も近く、そしてある意味最も遠いものでしょう。アバレマックスは、当初の設定では仲間との一種の「合体」によってパワーアップしたレッド(つまり仲間は戦闘不能)であり、姿も大幅に変わります。この、姿が大幅に変わるという点では、今回のパワーアップに近く、そして仲間の力を吸い取るという点でダイゴのポリシーに最も遠い印象があります。

 私自身は、「アバレンジャー」自体あまりノれずに中盤の視聴を思いっきり省いてしまったのですが、特にこのアバレマックスの超レッド偏重主義にはキャッチアップ出来ませんでした。レッドがストーリーの要になる事は戦隊の性格上当たり前なのですが、それにしてもちょっとやり過ぎの感が否めなかったわけです。

 今回はアバレマックス程ではないものの、ビジュアルとしてはかなり派手なパワーアップとなっており、レッド偏重の片鱗が見られます。しかしながら、これがダイゴのパートナーであるガブティラとの強固な繋がりによるコラボレーションがもたらしたパワーアップであると、説得力ある映像で説明されている為、それほど偏重でもないと思わされるのです。その気になれば他のメンバーにも可能かも知れないし、やはり獣電竜と同じ目線で戯れる精神性を持つダイゴならではだと思わされる部分もあるしで、非常にバランスが良いと思います。

 ちなみに、先に挙げた二例、どちらも恐竜モチーフですね! 偶然なのか故意なのか、面白い類似性を見出す事が出来ます。

 さて、キョウリュウレッドのパワーアップに至るまでには、各人の試練が待っていました。

 前回に引き続き、イアンが陣頭指揮を執っており、基本的にイアンの発案した作戦によって各メンバーが動いていたのは、実に初期戦隊らしい感覚で、ダイゴのスピリットを感じて皆が自然に動く事が様式化されている「キョウリュウジャー」では異彩を放っていました。それぞれの「作戦」が若干の笑いを伴っているのも爽やかな魅力で、特に冒頭の「囚われのアミィ」と、時間稼ぎの為にでっち上げた「空蝉丸のドロロンシノビチェンジ」は爆笑モノ。

 「囚われのアミィ」は、何故かエキゾチックなお姫様風コスプレで行われ、しかもちゃんとキョウリュウレッドが釣れて、しかも嬉しさの余り各人が飛び出した所為で取り逃がすという、完全に「珍獣保護譚」のパロディとして成立しているのが秀逸。コスプレ自体は、わざと無国籍なちょっとセンスを疑う風味になっており、余計に笑えますが、アミィのスタイルの良さが強調されるという良い面も(笑)。

 「空蝉丸のドロロンシノビチェンジ」は、空蝉丸を演じる丸山さん自らが考案したという「力作」で、クソ真面目に可笑しな事をやるというコメディの鉄則を、これまた生真面目に果たしていました。とにかくビシッと決まるポーズと珍妙な腰振りプロセスのギャップがたまらなく可笑しく、空蝉丸のキャラクターにもマッチしていました。ちなみに、「シノビチェンジ」は「ハリケンジャー」の変身コールであり、発売されて間もない「忍風戦隊ハリケンジャー 10 YEARS AFTER」に引っ掛けたのかも知れませんね。

 これらのコミカルな作戦の他は、殆どが変身出来ない状況での苦戦の連続が描かれており、冒頭にも触れたように必然的な素面アクションの増加が見られました。

 各人のアクションスキルは非常に高レベルになっており、スタンドインはトンボを切ったりといった専門スキルを要するカットのみで、基本的な体術は本人によるもの。ソウジの進化した高速な剣捌きに驚く一方、ノブハルのトリッキーな体術に目を見張り、アミィの足捌きはよりスピーディかつ華麗に。イアンのアクションには派手さを抑えつつも知性が垣間見られるようになり、アクションに芝居が入り込む余裕が感じられます。空蝉丸は、長大なザンダーサンダーを力を込めて振り下ろすアクションにより鋭さが感じられるようになりました。

 今回は、弥生がキョウリュウバイオレットとしてクレジットされていなかった事もあり、アクションを期待していませんでしたが、何とダイゴの危機に登場して銃撃を中心とした素面アクションを披露。これは嬉しい誤算であり、都合、現役レンジャー全員が素面アクションを披露する格好となりました。イアンの助言が、弥生に突破口を開かせるという流れも良かったですね。

 そしてダイゴ。

 そのシェイプアップされた肉体美に奥様方の反応も芳しかったのではないかと思いますが(笑)、個人的にツボだったのは、それが祭の熱気を表現する為の手段だった事です。単なるサービスではなく、パワーアップがもたらす高揚感といったものを、事前に表現しておく段取りの良さが見事。関連する回想シーンとして、いつの間にか忘れられそうになっているダイゴの「旅」の一端も描かれ、ダイゴのブレイブの源に迫る優れた映像表現になっていました。

 着衣のない状態でのアクションは結構危険であり、今回のダイゴのアクションは正に身体を張ったものだったわけで、その懸命さに心を打たれました。ダンテツのペンダントがアクセントとなり、更にはそれがシンボリックに機能している事もあって、ビジュアル自体がダイゴのキャラクター性をより深く表現していたように思います。

 ちなみに、肉体アピールをしたレッドの代表は「ダイレンジャー」の亮で、こちらはいかにも格闘家っぽくビルドアップ。亮を演じた和田圭市さんは、「ゴーカイジャー」にもゲスト出演していましたが、当時よりもさらにキレを増したアクションで度肝を抜いてくれましたね。和田さんは顔立ちが穏やかで細面の為に着痩せ度が高く、当時そのギャップに驚いた記憶があります。

 さらに、「ミニティラ」の存在は、商品展開との親和性を感じさせる魅力的なものとして映ります。

 巨大であるが故にダイゴと共に行動出来ないというガブティラの「悩み」は単純に可愛らしい印象であり、それ故にミニティラと化しても全く違和感がありませんでした。ダイゴの掌に乗る事で、ダイゴがパワーアップを果たすというリンケージも見事なもの。難点を挙げるとすれば、ミニティラをガンモードにする際、首を180度回すプロセスがある処で、ティラノサウルスの子孫に例えられる事の増えたニワトリの首をひねっているようでどうも具合が悪い(笑)。変形自体は見事な設計なので、そのうち慣れると思いますが...。

 次回は、トリンの秘密を初めとして色々と動き出しそうです。後半戦も畳みかけてくるので、楽しみが増してきますね。