ブレイブ25「ナニコレ!デーボスぐんのあくむ」

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 前半戦と後半戦とを繋ぐ挿話にして、コミカルでヒロイックな作風が鮮烈な「デーボス軍復活編」。

 メインはソウジ。彼のストイックな性格を全面的に活用したストーリー作りの巧さは特筆モノで、りんの再登場と相俟って素晴らしいソウジ編に仕上がっていました。

 一方で、ラッキューロの奮闘が微笑ましく、キャンデリラとラッキューロの打倒に一瞬の迷いを見せるキョウリュウジャーの心情と巧くシンクロしていて、最後のデーボス全幹部揃い踏みの衝撃を却って増幅させていたのは見事。いわゆる「残党狩り」から、新たな戦いの幕開けに至るまでのスムーズな流れを作り出していて、ストーリーテリングの巧みさを堪能する事が出来ます。

 コミカルな要素を担っていたのは、ラッキューロの作戦。その作戦とは、自らが「頑張って」生み出したデーボ・アックムーンを使い、キョウリュウジャーに悪夢を見せて体力を消耗させるというもの。前半戦で展開された「感情を集める」という目的は失われている為、キョウリュウジャー個々人を直接狙った作戦になっているのが面白い処です。

 冒頭はソウジの悪夢。りんに扮したラッキューロによって、ソウジとりんが既にいい仲になっているというシチュエーション。それに対する嫉妬を爆発させる先輩達...という、カリカチュアライズ全開の悪夢が楽しい。ここで、これまでの喜怒哀(楽)からは逸脱した「嫉妬」が登場し、今回のラストでそれを「恨み」と換言する事によって、新幹部登場に繋げてきます。

 この悪夢の中でのソウジは、狼狽振りが半端でなく、彼の純情なキャラクター性の魅力が全開になっています。この悪夢にりん本人が関わっていないにも関わらず、何となくりんの願望が反映されているのも面白い処で、超鈍感力を発揮するソウジも薄々りんの気持ちに気付いているのではないかと思わせる辺りが良いですね(ラストで思いっきり裏切りますが)。

 ダイゴの悪夢は、アミィに扮したラッキューロに「最低」呼ばわりされた挙句、仲間達全員の罵詈雑言を浴びるというもの。アミィが筆頭になっている辺りは、バイオレット誕生編を少々意識しているのでしょうか。最高の仲間に囲まれて常にポジティヴな精神状態にあるダイゴにとって、仲間に掌を返される事は耐え難いといった処。ただ、これが「恨み」かどうかというとかなり疑問ですけど(笑)。

 イアンは完全にネタ通りという状況で、実は各人の悪夢の中で最も実現可能性の高い悪夢。まぁ、日頃の女性に対する態度を改めるべきですね、イアンは...。

 ノブハルは優子に扮したラッキューロによって、お得意様に追いかけられまくるという悪夢でしたが、キョウリュウジャーの中では一際真面目に「仕事」をしているノブハルにとって、なかなかキツい悪夢ですよねぇ。彼だけ、眠気を我慢出来なくなるシーンが用意され、コメディ要因としての面目躍如も果たしていました。優子本人が出て来なかったのは、ちょっと残念。

 アミィは、頭だけラッキューロになったキョウリュウレッドの悪夢。ダイゴとアミィの悪夢は、純粋にキョウリュウジャーとしての悪夢となっており、微妙にリンクしている処にニヤリとさせられます。お互いを全く恋愛対象として意識していないにも関わらず、弥生に羨望の眼差しを向けられる程「いい関係」として映る二人。こんな感じで、さりげなく二人の関係を主張していくんですかね~?

 ちなみに、アミィだけは当初悪夢の被害に遭っておらず、何か意味があるのかと思ってましたが、特に意味はなく、アックムーンの描写に関する都合だったようです。

 空蝉丸は、こちらもおよそネタ通りで、「御館様」に何かキツい言葉を浴びせられているであろうという悪夢でした。フラフラしていて精彩を欠きまくるキョウリュウゴールドが非常に可笑しく、普段のピリッと颯爽とした姿からのギャップが大きな笑いを生み出していました。アフレコの巧さもピカイチでしたね。

 このように、悪夢一つとっても個性的で、しかも全てが各キャラクターのアイデンティティを裏切らないのは、やはり素晴らしいと思います。コミカルに描かれながらも、睡眠不足が仇となるという「生身の人間」ならではの展開も絶妙で、しかも、睡眠不足だけでなく生気も失っていくという辺りは、古典怪談の「牡丹灯籠」を思わせる空恐ろしさ。ラッキューロが司るとされる「楽」が前面に押し出されつつも、デーボス軍の恐ろしさがちゃんと描かれているわけですね。

 そして、鮮烈なのは逆転劇。

 りんがその逆転劇の鍵を握るキャラクターであるのは、彼女がフィーチュアされている時点で予想出来る事でしたが、「恐ろしくマズい目覚ましドリンク」というキーアイテムの凄まじさと、ソウジが何をしているか(キョウリュウジャーをやっている事)を知らないまま、何とか辛そうなソウジを助けようとするりんの健気さが、何だか少女漫画の典型を見ているようで気恥ずかしいものの、納得出来る展開。定番というものは、ちゃんとした使い方さえすれば、これ以上ない盛り上がりを生むものであると提示するかのような、そんな完成度を持っていました。

 更に楽しいのは、ソウジがそのドリンクで眠気を制御し、アックムーンのシールド(低反発枕型)を破壊した時点でキョウリュウジャーの眠気が解消されるのではなく、ドリンクを各人に飲ませるというくだりにまで到達させた事。これにより、りんがドリンクをソウジの為「だけ」に作ったという前提がぶっ壊され、ラストのりんの激怒(?)を増幅させたのは巧い処です。各々の工夫されたマズそうな表情にも要注目。

 それにしても、りんは件のドリンクを「マズいもの」だとは認識していなかったようで、味見はしなかったのでしょうか。まぁ、作った料理を味見して自ら昏倒してしまうエスパー魔美よりはマシで良かったですね(笑)。

 この逆転劇、りんのお陰ではあるのですが、ちゃんとソウジの努力が盛り込まれていて、実はそちらがメインとなっているのも良い処です。ソウジは基本的に武道家であり、努力を惜しまないストイックな求道者。眠気と戦いつつ新たな技で勝機を見出そうとするソウジの姿には、素直に感動せざるを得ません。逆転後の名乗り省略大会や、お子様的に心配なネタである「Yes No枕」に象徴されるように、全体的にコミカルな味が横溢している本編の中にあって、ソウジの努力は非常にヒロイックで格好良く、その魅力が際立っているし、第三者ながらもキョウリュウジャーに勝利をもたらす女神となったりんとの関係も、質の高い爽快感が備わっています。こんな感じで「キャラクターの日常」との連続性が巧く描かれるシリーズは、掛け値なしに面白いのだと思います。

 新幹部エンドルフを迎え、新展開の後半戦。次回は早くも弥生が再登場ですよ♪