ブレイブ18「つかんだッ!カンフーひっさつけん」

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 一週のお休みを挟んでの、前後編の後編です。

 ダイゴがどのように「強さを克服するか」という、ある種のパラドクス的命題を「キョウリュウジャー」らしいテーマで巧く解決してみせた一編となりました。

 今回の場合の「強さの克服」というのは、即ち「弱さを見出し、それを糧とする」という感覚でしたが、むしろ「弱さ」というより「ウイークポイント」として扱われており、メンタル面で比類なき強さを誇るダイゴに相応しい解決だったのではないでしょうか。

 ダイゴの「弱点」とは、「仲間を失う事に対する怖さ」でしたが、実は空蝉丸も登場当初は同じだった事が思い出されます。空蝉丸の場合は、滅私でそれを為そうと試みて失敗(笑)したのですが、ダイゴはどこまでもストレートに自分を前面に押し出す事により、それを更なる強さへと変換していきました。

 そのストレートさ故に、ダイゴの強さに抱かれる危険のある悪い印象、即ち「レッド偏重」、「チートキャラ」、「深みがない」といったものは、払拭されてしまいます。「レッド偏重」どころか、仲間を惹き付け、仲間を最大限頼る、他のメンバーが居てこそ成立するレッドであるのは勿論、「チートキャラ」の片鱗こそあれ、ストーリーを強制的に完了させるデウス・エクス・マキナにはほど遠い。また、ダイゴの父というメンタル面での支えのみならず、他のメンバーとの一方通行でない有機的な関係性が示す通り、「深みがない」とは言えない造形である事は確かです。

 さらに、そのストレートさは、「解決」をビジュアルで示す際にも表現されました。

 キョウリュウグレーの頭に傷を付けて見せろという、格闘系スポ根もの的にベタな展開が嬉しく、実際その通りにダイゴがやって見せたものですから、胸がすくと言いますか、ノスタルジーにすら浸れる感覚がありましたね。キョウリュウグレーの頭部に、わざわざヒビを書込むというマンガチックな表現も流れにマッチしており、面割れまで持って行かない事で硬度の高さをちゃんと担保している辺りも、さすがといった処です。

 また、このヒビを入れるシーンが、ダイゴの素手によって行われたのも象徴的です。

 というのも、その前にキョウリュウグレーと一戦交える際、ダイゴは変身して「敗退」しており、後の「解決」シーンと併せて、強さ=キョウリュウチェンジではないという事を画面で遺憾なく表現しきったわけで、メンタル論をクドクドと語る陰鬱な作風ではなく、カラッとした「弱点克服譚」になっています。これも「キョウリュウジャー」の作風に最大限配慮が行き届いた制作姿勢となっていて、ブレがないですね。

 今回は、このような苦境のダイゴをフィーチュアする作風とあって、ダイゴはこれでもかと動き回ります。特に印象的なのは、何度も言及して申し訳ないですが、やはり「解決」シーンですね。

 キョウリュウグレーの構えを真似るダイゴの動きは、非常にキレがあってシャープであり、キョウリュウグレーのキャラクターにピタリとマッチした重々しい構え(!)とは対照的な良さに溢れていました。ずっと気になって仕方がなかったのですが、この鉄砕拳の構えの最初の部分が、実は「ダイレンジャー」のシシレンジャーの名乗りポーズ、即ち獅子拳と全く同じで、ああ、これは「ゲキレンジャー」よりも、むしろ「ダイレンジャー」の熱さだったんだな...と、思い知らされる事となりました。前回は、鉄砕が仕掛ける幻術によるテストの様子が、何となくメンタリズムに根ざした「ゲキレンジャー」っぽい色彩を帯びていたのですが、今回のダイゴの、文字通り身体を張って克服しようとする姿は、とにかくフィジカル・フィジカル・フィジカルで押してくる「ダイレンジャー」に近い作風だったわけです。

 勿論、「ダイレンジャー」も力の源に関する言及には、精神性が多分に含まれていたのですが、やはり常に絶叫と共に己の肉体を酷使して戦うというイメージが強いので、今回のダイゴの(「演技に対する」も含めた)気合いの入りっぷりに、近い印象を抱いてしまいました。

 さて、鉄砕に関してですが、彼は一番最初に「キョウリュウチェンジ」を果たした勇者であり、その説明によって一気に格を高めました。ただの、文字通り頭の固い古株ではなく、畏るべき大先輩といった風格が備わった事で、ダイゴに対する「仕打ち」も一気にその説得力を増し、また、その境遇から孤独な戦士であった事も窺い知れる事により、ダイゴの言う「仲間」、「戦隊」というタームの重みが増していくという、多重的な仕掛けが秀逸です。

 一方で、何故かヒッピー風の髪型をした釣り人に変装して登場する、お茶目な面を披露。「頭が固い」と常々言っている割には、このような柔軟性を見せる辺り、正に正体不明(笑)。演ずる出合さんは、ボウケンシルバー=高丘映士役で、既に「ミステリアスかつちょっと抜けたヤツ」というキャラクターを見事に勤め上げた事もあってか、鉄砕にも同様のキャラクターに「引き寄せられた」のかも知れません。

 ただ、この妙にニヤけた釣り人の姿があった事で、「頭の固さ」が、ちょっと我を張っているという解釈に傾く事となり、より鉄砕というキャラクターの深みを増したような気がします。確かに頑固ではあるのですが、根拠のない頑固さではなく、ちゃんと筋の通った、そしてダイゴにも容易に理解される「想い」が根幹にある頑固さである、と感じられるわけです。

 それにしても、スキンヘッド姿には驚かされましたね。あれ以上にキョウリュウグレーを表現する「造形」もないでしょう。公式サイトによれば、あれは特殊メイクだったそうですから、物凄くリアルな「造形物」ではないでしょうか(笑)。

 巨大戦では、キョウリュウジン カンフーが登場。アンキドン&ブンパッキーが腕となる、いわゆる現時点でのスピリットレンジャーのフル装備となります。カミツキ合体後の名乗りは、「少林寺」の集団鍛錬を意識した、やややり過ぎ感のある超楽しい画面。アクションはCGを多用して「カンフー」の名に相応しい動きを演出しており、やや格闘ゲームっぽい画面作りが行われていますが、これは完全に狙ってやっているのだと思います(笑)。メインとなるガブティラに変化がない為、キョウリュウジンのバリエーションは印象がやや弱くなってしまうきらいがあり、このようにアクションで変化を付けていく方法論は、正しいかどうかは別としても、適確ではあるでしょう。

 しかしながら、巨大戦はCGを多用しつつも、抑えのカットではオープンセットによる巨大感が必ず表現されており、この辺りには伝統的な巨大戦の良さを踏襲していくという意気込みが感じられます。

 次回は、空蝉丸メインで妙なエピソードを披露してくれるようですが...。楽しみですね。