ブレイブ17「ガチだぜ!キョウリュウグレー」

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 キョウリュウシアン=ラミレスに続き、スピリットレンジャー枠からキョウリュウグレー=鉄砕が登場!

 まだ素顔は登場していませんが、声の出演としてボウケンシルバーこと出合正幸さんの名がクレジットされており、隙のないキャスティング戦略を感じることが出来ます。

 「キョウリュウジャー」始まって以来の絶対的危機が描かれ、しかも割と簡単に乗り越える爽快感が上乗せされており、「キョウリュウジャー」ならではのスピード感溢れる強さを堪能。そこにややメンタル寄りな「強さ」の論理が織り交ぜられ、何となく「ゲキレンジャー」っぽい感覚も垣間見えます。

 デーボスの復活といった危機的状況を通奏しつつも、何故かスケール感には乏しく、この辺りの演出にはやや翳りがあったようにも見受けられますが、メンタル面の強さを体現すべく体技を積み重ねていくアクションは鳥肌モノの完成度。素面は「修行」のシーンで、そしてスーツアクションはナガレボーシ戦で。巨大戦はブンパッキー単独での活躍というサプライズ。様々な面で工夫が見られ、飽きさせない画面構成で繋いでいきます。

 今回のテーマは、実に東洋的な「弱さを知る事で強くなる」というもの。鉄砕(このネーミングが素敵過ぎる!)が東アジア大陸系という設定もあり、ベストマッチなテーマとして説得力に溢れています。

 興味深いのは、個々人の「弱さ」が、個々人の「得意技」を封じられた際に露呈するというロジックで、「弱点」を敢えて描写しないという申し合わせが「キョウリュウジャー」に存在するとしたならば、それを巧く解決しつつドラマを発生させる見事な措置だったと思います。そしてダイゴに関し、「弱さを見いだせない者に成長は望めない」というエキセントリックなロジックに進む事で、ダイゴ自身の比類ない強さ(劇中ではブレイブと換言)にまで言及しつつ、ダイゴがステップアップする為のエクスキューズをも用意しているという辺り、なかなか面白いと思います。

 まぁ、論理がエキセントリック過ぎるきらいもあり、その為にダイゴが単純に鉄砕の言いがかりに晒されているように見えてしまうのも、否めない処ですが...。

 ちなみに今回は、パワーアップ編としても成立しているのですが、いわゆるガジェット追加や新必殺技を生み出すといった、戦力増強ではない処がミソ。パワーアップの描写は、気合いと共に各々のパーソナルカラーのオーラが立ち上るといったものに留まり、後は矢継ぎ早のアクションによって「強くなった」事を表現するという、いわば「カンフーモノ」の語法を採用しています。気合いやオーラといった、実に東洋的で、また一方で説得力に欠けるものを描写しつつも、パワーアップを実感出来るのは、とにかく自分の得意技を信じてぶつけまくるという、実在感を伴ったアクションが根拠としてあるからでしょう。そのくらい、今回のアクション描写は充実していたように思います。

 件のオーラ描写は、ダイゴにだけ皆無だったという事を考えると、単純にパワーアップの有無を分かり易く映像で説明したものだと言え、テーマ的な面から言えば、「弱さ」を知ったか否かという部分をオーラの描写に託したのだと言えます。この描写がなければ、他の面々と攻撃の質や量はあまり変わらないのに、ダイゴの攻撃だけが弾き返されるといった、やや珍妙な印象を与えるシーンになったのではないでしょうか。

 さて、各々の修行シーンですが、獣電池の力を再確認する意味合いもあったようです。私なんかは相変わらず獣電池の番号と名前と効果が全く一致しないのですが、もうその辺りは諦めております(笑)。

 面白いのは、メンバーそれぞれの得意技を封じる獣電池が存在しているという処でしょう。イアンには、射撃に必要な視力を妨げる催涙効果ガス(臭いだけじゃなかったらしい...)、ノブハルには、腕力を低下させる「くすぐり」、ソウジには、素早い剣技の障害となる超重力、アミィには、足技に必要な安定感を狂わせる「目眩」といった具合に、実に巧く割り当てられており、獣電池の効果を再確認すると共に、各メンバーの得意技のダメ押し的な再確認にもなっています。

 そしてダイゴには、それら全ての獣電池の効果がのし掛かるという、とんでもないレッド偏重が見られました。しかしながら、ダイゴが「特別な人」でない限り今回のドラマは回転しようがないわけですから、ややユーモアを交えたこの措置は正解だったと思います。

 それにしても、ノブハルだけは「得意技がオヤジギャグ」という側面までフォローしたチョイスだった辺り、破格の扱いでしたね(笑)。

 実の処、この「修行」シーンと、超充実のアクション以外、ドラマとして見るべき処はあまりなかったように感じられます。ダイゴは強すぎるが故にそれ以上強くなれないという、アクロバティックでエキセントリックな、よく分かったような分からないような論理(いや、面白い事は面白いんですよ)を振りかざし、「ダイゴを戦隊から追放せよ」と言ってしまう鉄砕は、「頭が固い」というアピールよりも、「弟子を突き放して這い上がってくるのを待つ師匠」といったイメージであり、飄々としていてネガティヴな感情を持ち合わせないダイゴの中に、葛藤を生み出すまでのインパクトには欠けています。つまり、ダイゴは暴言を吐く鉄砕すらも真意を理解する対象として見ているように見えてしまうわけで、遂にここに来て「完全無欠のポジティヴヒーローならではの脆弱性(ドラマ喚起の弱さという意味)」が垣間見られる事になったわけです。

 おお...今回のテーマとシンクロしましたよ。

 もしかすると、「キョウリュウジャー」がダイゴを頂点に擁するが故に抱えるジレンマから、ブレイクスルーする展開が生み出されるかも知れませんね。苦悩するダイゴ自体はあんまり見たくありませんが、この辺りを巧く解決する「何か」を用意してくれているのではないかと、私などは期待してしまうわけです。

 と言いつつ、来週はお休み。次回は再来週という事で...。引っ張るなぁ...(笑)。