ブレイブ13「ジャキリーン!ハートをまもりぬけ」

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 屈指のギャグ編。

 ソウジをメインに据えて彼の「鈍感力」の凄まじさを生真面目に描いて笑いを誘い、そこに周囲が妙な言動を添えてさらに笑いを増幅させる、キャラクター主体のコメディにおける模範パターンを構築し、視聴者を満足させてくれます。

 無理矢理なギャグを力任せに挿入する事もなく、自然体でキャラクターを動かして笑いを取るのは、実は脚本的にも演出的にも非常に難しいのですが、サラリと爽やかに笑わせてくれて、しかも各キャラクターの魅力をコミカルな演技の中から引き出すという離れ業までやってのけるとは、凄いですね。

 今回のコミカルな言動の中には、イアンと空蝉丸の珍妙な学生コスプレや、女装ダイゴと非モテノブハルの茶番恋愛劇といった、少々無理矢理感が漂うものもありましたが、それは近年の過剰なギャグ描写の中ではごく控え目に見えると思います。しかも、イアンと空蝉丸は「恋愛作戦」を知らないアミィの足技(!)でノックアウトされ、ダイゴとノブハルの場合は敵をおびき寄せる為の作戦行動だったという風に、劇中のリアリティとのバランス感覚をしっかり保っている辺りが秀逸。ギャグ描写が浮きっぱなしになる事なく、それぞれのシーンが有機的に繋がっていく醍醐味を味わう事が出来ます。

 さて、メインを努めるソウジは、胸の内に剣に対する熱い思いを秘めつつも、朴念仁的なキャラクターとして成立していましたが、今回はそこに「恋愛に対して異常なまでに無頓着」という要素が付加されました。

 このテのキャラクター設定は、既に百出で枚挙に暇がないといった感じではあるのですが、かといって代表的なキャラクターがすぐには挙げられないという、やや影の薄い気の毒な「属性」だと思います。ただし、メインに据えられた際には、その「鈍感力」がコミカルな言動を導き出して、たちまちコメディを成功させてしまうという利点があります。

 ソウジにしても、「イアンと正反対の」生真面目な求道者だが、まだ若いという設定がある時点で、既にキャラクター的にほぼ完成しており、恋愛に関するトピックが描かれる必要も殆どないと言って良いでしょう。そこに敢えて「奥手」どころか「興味がない」、「鈍感にも程がある」という要素を付加したのは何故か。そこには、イアンとの対比をより鮮やかにする効果を狙ったのではないかと思われる節があります。

 キョウリュウジンのフォーメーション等から言っても、また戦隊の歴史から言っても、ブラックとグリーンは表裏一体であり、特に「ゴーオンジャー」ではセットで描写されていて、印象深いものとなっています。「キョウリュウジャー」のメンバーのストラクチャは、ダイゴを頂点とした三角形が、ダイゴを中心にいくつもぶら下がっているような図式で表現出来ると思いますが、その中でも、イアンとソウジの正反対振りは、裏を返せば強固な繋がりを想起させるもので(実際に劇中でもそういう描写が存在)、あまりセットで行動する描写がなくとも、二人の関係の強固さが漂っているのは間違いないでしょう。

 面白いのは、空蝉丸が両者との絆を構築した証として、プテライデンオー・ウエスタンを登場させた事でしょう。ここで笑えるのは、ソウジとは冒頭での稽古があり、しかも戦闘時に共同戦線を張っていたから分かるものの、イアンとはソウジの恋愛問題に介入する際に行動を共にしただけ(笑)。いや、本当は空蝉丸の好奇心へダイレクトに影響してくるイアンの思慮とか、まぁ色々あるにはあるんですけど、劇中のビジュアルからは、例の珍妙コスプレ作戦しか印象に残らないわけでして...。まぁ、とりあえず、空蝉丸とイアン&ソウジの信頼関係も、今回ちゃんと構築されたということで...めでたし。

 ところで、前述のようにダイゴとノブハルのコスプレ作戦も良い感じにキレていました。

 恐るべきはダイゴのセーラー服姿! 一見して男性だとは分かりますが、スタイルがあまりにも良くて驚きでした。さすがですねー。デーボスの悪事を挫くためには、羞恥心すら関係ないという「ブレイブ」に目眩を覚えると共に(笑)、そのまま変身までしてしまう勢いの良さには脱帽いたしました。普通は、変身バンクとの整合性を取る為に、変装を脱ぎ捨てて一瞬で普段の姿に早変わりするというカットが挿入されますが、それすらもありませんでしたからねぇ。勢いをスポイルするようなカットは、全て捨て去ってしまう思い切りの良さが素晴らしい限りです。

 一方のノブハルは、ここに来て何故か非モテキャラという属性を与えられ、それを推進する方向でのギャグとなりました。非モテの延長戦上にある「変装」の秀逸さに加え、仲間に気付かれないダイゴに対して、ノブハルはすぐに分かってしまうというオチまで付けられており、ここまで「非モテ」をアピールされる戦隊ヒーローは、覚えている限りでは「ジェットマン」のイエローオウル=大石雷太以来ではないでしょうか。

 雷太はいわゆるキレンジャーの90年代版であり、太った気弱な男という「典型」でしたが(その意味では二代目キレンジャーの延長線上に位置)、ノブハルの場合は、マスクも端正でスタイルも良いのに、その性格や習慣等で損をしているタイプであり、実は「デンジマン」のデンジイエロー=黄山純がそのオリジンではないかと思わせる部分もあります(実は、「デンジマン」の男性陣は劇中、デンジグリーン=緑川達也以外、全員非モテキャラ扱いされていますが)。

 この黄山の話が出たので、ついでに言及しておくと、ソウジのような鈍感キャラの戦隊におけるオリジンも、この黄山であると考えられます。

 調理担当の黄山が買い出しに行く青果店で、何故かいつも割引をしてもらえるという話から、実はその青果店の娘が黄山を気に入っているという事が分かるのですが、鈍感で奥手の黄山には何の事だかさっぱり...というエピソードがあり、やがて娘が敵の罠に堕ちて黄山を追い詰めていくという、コミカルながらもサスペンスフルなお話でした。このエピソードが好評だったのか、次作の「サンバルカン」では、これまた非モテキャラ扱いされたバルパンサー=豹朝夫が、敵にその「恋愛耐性のなさ」を利用されるというエピソードが用意されています。

 ただ、黄山や豹の「恋愛耐性のなさ」を形成する「鈍感さ」と、ソウジの「鈍感さ」は、かなり異質であり、ソウジは求道者として恋愛に興味がない故に女心を露程も理解出来ないという描写は、ソウジ自体のルックスやモテ能力の高さとのギャップを説明するに十分な「理由」として成立しています。黄山や豹といったオリジンの持つ要素を、ノブハルとソウジに巧みに振り分けた結果なんですね。

 勿論、アミィについても言及しておきましょう。

 今回のアミィは、ソウジに思いを寄せる「りん」のライバルキャラに「なってしまう」中盤から、「良きお姉さん」に変貌する終盤まで、様々な表情を見せてくれます。

 特に「良きお姉さん」の顔が素晴らしく、女子大生としてのライフスタイルを垣間見せるなど、これまで何故かアミィから感じ難かった「プライベート」の匂いを醸し出す事に成功しています。演者である今野さんの実年齢は16歳で、実はりん役の藤沢玲花さん(19歳)より年下なのですが、藤沢さんの演技の的確さも手伝って、見事に年上のお姉さんに見えました。アミィはその少女性と「放っとけない」という母性っぽい面が見事に両立したヒロインになりつつあると言えるのではないでしょうか。そこに華麗な足技が加わるのですから、近年では最強でしょう(笑)。

 次回はそのアミィ編。またまたコミカルなお話になりそうです。