ブレイブ12「ブットバッソ!せっしゃとキングどの」

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 荒れすぎ! 止められない! といった感じの、サービス満点過ぎる6人体制完成編。

 アミィを介して微妙な距離感を見せていた前回から想定され得る、一般的な追加戦士の「浮き方」が継続されるのかと思いきや、一話で、しかもAパートで殆どの状況が解決するという飛ばしっぷり(笑)。その上、新ロボまで一気に出してしまうという、ホントにどうにも止められない勢いが凄い。

 骨子となるストーリーは、子供の洗脳譚に異空間ものをプラスしたオーソドックスなもの。6人目の正式加入に敢えてオーソドックスな題材を選ぶ辺り、相当な自信の表れと見る事も出来るかと思います。実際、分かり易い単純明快なストーリーの上で、ダイゴと空蝉丸の信頼関係構築を深く印象付ける事に成功しており、一見アクション一辺倒にも見える本編に漂っている、骨太な語り口が視聴者にちゃんと伝わっていて、実に良い感じです。

 今回はとにかく勢いが凄まじくて、鑑賞後には爽やかな読後感が残る好編。そして、メインとなるダイゴと空蝉丸の関係は、これまでならば少なくとも2〜3話くらい費やして描かれるものが、ギュッと凝縮されてAパートに収まっている...というのは、冒頭に述べた通りです。

 まずは、二人の関係の変化について整理してみましょう。

 空蝉丸は、かつてダイゴに瓜二つの「御館様」に仕えており、その主を今回登場のデーボ・タンゴセック(放映日がこどもの日!)によって失っています。この「御館様」とダイゴが血筋的に繋がっているとか生まれ変わりだとか、そういった理屈は一切抜きで、(少なくとも現在の処)ただ単に「似ているに過ぎない」としている処がミソ。ここに理屈を導入すると、「ダイゴの話」になってしまい、空蝉丸の葛藤がスポイルされる事になります。また、折角の山下真司さんによるダイゴの父の存在感も薄れる事となるわけで、余計な要素を持ち込まない潔さが賢明です。

 空蝉丸は「御館様」を失った事をきっかけとしてドゴルドに魅入られ、その「御館様」の今際に発せられた「優しさが仇となる」という言葉に縛られる事となります。正に陰陽師風に言えば「呪(シュ)にかかった」状態となったわけで、空蝉丸はその押さえきれない「ひとの良さ」と、呪との間で苦しむのでした(楽しそうに悩んでいるように見えてしまうのは作風故なのでご愛敬)。

 アミィが空蝉丸の苦悩を知って彼に寄り添うのが前回で、今回もその続きが描かれるわけですが、それはすぐに綻びとなります。皮肉なことに、アミィは空蝉丸の呪を解くキャラクターになるわけではなく、呪の方に引き寄せる役割を果たしていたのはご覧の通り。しかし、逆にアミィの手際の悪さが、ダイゴの中にあった空蝉丸への印象の悪さを氷塊させるきっかけを作っており、キャラクターの動きを重層的に連続させ、急激にダイゴと空蝉丸を接近させる辺りのストーリーテリングは、やはり見事としか言いようがありません。

 タンゴセックの能力により、ダイゴと空蝉丸を二人だけで孤立させるという構成は、わだかまりのあるキャラクターの和解譚として、しばしば用いられる常套手段ではありますが、そこに「洗脳された子供」という別の定番を持ち込む事で、若干ソフトな雰囲気になっており、二人がギスギスした雰囲気を作り出す暇をあまり与えないようにもなっています。あくまでダイゴの身を案じて戦いから遠ざけようとする、ある意味身勝手な空蝉丸と、それを誰も予想だにしない方法で裏切って戦いに参加するダイゴ。この両者の強烈な個性が一つになった時のカタルシスは、それがAパートである事を感じさせない超濃厚密度で、正に「呪が解けた」感覚を我々にも与えてくれるわけです。

 そして、ここで興味深いのは、ダイゴの「四の五の言うな」という「嫌理屈」な姿勢と、「戦隊のメンバーは手下ではなく仲間」というポリシーでしょう。

 前者からは、ダイゴの持つ直感的に正邪を見極める感覚の鋭さが感じられます。今回判明したのは、ダイゴは「誰でも受け入れる」わけではなく、自分が直感的に仲間であると感じた者を受け入れる男であったという事でしょう。その証拠に、冒頭では空蝉丸の事を「感じ悪い」と評していました。この冒頭の描写は、ダイゴの直感に曇りを感じてしまうかのように思わせてしまうきらいがあるものの、空蝉丸が自ら張っている障壁(つまり嘘を吐いている事)に対する嫌悪感であると解釈出来、実は既に空蝉丸の本質を見抜いていたのだとも考えられます。というより、その解釈の方が恐らく自然で正しいでしょう。故に、その障壁を取り去った空蝉丸に対しては、理屈抜きで仲間になれると堂々と言ってのけるわけです。

 後者からは、スーパー戦隊シリーズの本質が感じられます。元祖「ゴレンジャー」では、アオレンジャー役の宮内洋さんが当初「一人のヒーローの下で働く役などイヤだ」と固辞した話は有名ですが、リーダーやサブリーダーといった役割分担こそあれ、基本的に上下関係などないという企画ポリシーを示されて納得したと伝えられており、現在でもそのポリシーが普遍性を有しているわけです。絶対的リーダーの代表格としては、「シンケンジャー」のシンケンレッドがありますが、立場こそ「殿と家来」でも、実質は「上下関係を超えた仲間」を爽やかに描くドラマでしたので、やはりいかなる異色作であろうと、テーマは普遍的だったと言えます。

 さて、ダイゴと空蝉丸の信頼関係構築はAパートでほぼ終えて、Bパートはアクションのつるべ打ち!

 と、その前に冒頭でも、前回アミィが披露した変身ステップをアクションに活かす秀逸なシーンが、全メンバーに登場。それぞれの個性的なアクションスタイルを維持しながら、変身ステップを踏む演出の素晴らしさは特筆モノで、「バトルフィーバー」が頓挫してしまった「ダンスアクション」の完成形を、30年以上経て披露し得たという...イイ話。

 で、Bパートですが、Aパートも含めて、ダイゴと空蝉丸は異空間内で変身不能であるというシチュエーションあり。それをフルに活かした生身アクションの連続が、これまた素晴らしいものでした。ダイゴの身軽さを押し出したアクションと対比させるように、空蝉丸は武道風の力強い「殺陣」を見せており、変身後のアクションとの連続性を担保したものとなっていました。今シーズンのアクション性の高さは、そのケレン味の高さも手伝って完成度が非常に高いですね。

 変身後のアクションは、6人での完全新撮名乗りを皮切りに、採石場の地の利を活かした縦横無尽のアクションを展開。スピード感溢れるワイヤーアクションや、抜群の迫力を誇るパイロテクニック、ケレン味とメリハリのある剣戟。この上ない盛り上がりを持つ等身大戦でした。公式サイトにある「最終回のつもりで撮った」という言に納得です。

 巨大戦では、ライデンキョウリュウジンが初登場。追加ロボとの強化合体にしても、従来は数々のドラマを経てやっと完成するようストーリーが組まれ、強化合体自体をドラマティックに演出していましたが、今回は実にアッサリ。それは即ち、ドラマ内ではダイゴの理屈抜きの姿勢の反映の結果であり、また制作的な話の上では、一体目の大きな強化合体に多くのドラマを割くよりも、もっと重要な事項が今後計画されている...という事。アッサリしすぎてやや印象が薄くなってしまう感もあるものの、とにかく派手で楽しければ万事OKという制作姿勢は、時勢的に歓迎すべきでしょうね。

 次回はコメディ編でソウジ編という、実に取り合わせが心憎い回になりそう。楽しみですね!