ブレイブ10「ザンダーッ!ゴールドふっかつ」

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 仕事が忙しく、更新が滞ってしまいましたm(_ _)m

 ブレイブ10と11は連続で視聴しましたので、リアルタイムの捉え方にはなりませんが、その辺りご容赦の程を。

 さて、今回は前回から直結する前後編的な内容という事で、キョウリュウゴールド復活劇がメインとなりました。追加戦士らしい謎めいた雰囲気を残したままエンディングを迎える「引き」や、圧倒的な強さを見せる丁寧なアクションシーン、新ロボの登場を強烈にアピールする巨大戦といった、あらゆる定番要素をしっかりと消化する作劇・演出には好感が持てます。

 一方で、空蝉丸一辺倒にならない、各キャラの描き分けの緻密さも高ポイント。特に、アミィとソウジの脱出劇は、ダイゴが信頼した二人の「ブレイブ」をこんな形で見せるのか! という驚きに満ちており、追加戦士劇ならではの張り詰めた空気をフッと和ませる効果がありました。

 他にも、トリンやキョウリュウシアンといった「年長者」の惜しみない協力体勢も描かれる等、追加戦士登場編として一級の仕上がりです。

 今回は、前回ではかなり難解だったドゴルドと空蝉丸の関係が、少し整理されたような感もありました。

 両者の関係が特に顕著になったのは、囚われの身となっているソウジとアミィを救出しようとする空蝉丸と、それを阻止しようとするドゴルドとが、一連のカットで描かれたシーンでした。このシーンを見ると、空蝉丸とドゴルドは表裏一体。例えるなら、優しい男が満月を見て凶暴な狼男になるといったテイストであり、「オリジナルのドゴルド」という触媒があるにせよ、やはりドゴルドは空蝉丸その人であるという感じ。それは、味方に刃を向けることに対する腹立たしさが、ドゴルドとしての原動力になっていたという、皮肉に満ちた状況を憂う彼の姿からも窺えます。またそれは、ドゴルドとしての行動が、空蝉丸自身の記憶として残っているという事でもあり、空蝉丸というキャラクターを形成する悲劇性の高さを物語ります(次の話でその辺りは崩壊寸前になってしまうのですが・笑)。

 その空蝉丸を救う過程については後述する事として、復活後の彼の強さは、筆舌に尽くしがたいものとして演出されました。これぞ追加戦士。

 例年、あまりにも鮮烈な登場を果たした追加戦士は、徐々に戦隊メンバーに埋没し、その強さがどんどんスポイルされていく(正しくは、当初のメンバーの能力が追いついていく事でそう見える場合が多い)のですが、それが予見されるにしても、キョウリュウゴールドの戦力に関する演出は、例年を凌駕する鮮烈さを放っていたと思います。

 まず、空蝉丸その人の眼光の鋭さ。演ずる丸山敦史さんは、レギュラー陣の中でも年長者に属するだけあって、安定した芝居を披露。落ち着きのある風貌で、戦国の人間らしい眼光の鋭さを表現しており、役柄にピッタリです。

 変身アクションは、戦国の世とサンバの組み合わせの違和感を避けるべく、吉田兄弟のような和風ダンス・ミュージックをバックに、歌舞伎を意識したステップを取り入れた舞によって変身を果たすという、鮮烈なもの。数ある日本の伝統芸能の中でも、歌舞伎のステップには緩急の強い派手なものもあるので、このチョイスは大正解。サンバに比肩しうるものとして、その存在感を遺憾なく主張していると思います。

 変身後のアクションは、殊更時代劇の殺陣を意識するものではなく、随所に前述の伝統芸能的な動きを取り入れつつ、「獣電戦隊」の統一感を意識したものとなっており、追加戦士だけが妙に浮いてしまうという感覚が避けられていました。ただし、追加戦士はマーチャンダイジングにおける重要な役目を負っているのは周知の通りで、当初のメンバーが持たない新型武器の猛烈アピールが展開され、他のメンバーと差別化されるのは当然。件の武器はザンダーサンダーと呼ばれるもので、今回のサブタイトルでもアピールされています。

 このザンダーサンダー、必殺技を放つ際に描き文字風のエフェクトが加えられており、それが「カクレンジャー」における演出を想起させてくれました。こういったケレン味のある演出は、いつ見ても楽しいものですね。

 そして、プテライデンオーの「正義化」。

 前回も指摘した、キョウリュウゴールドの「ガオレンジャー」におけるガオシルバーとの類似性ですが、「正義化」により、プテライデンオーもガオシルバー専用ロボであるガオハンターとの類似性を見せたことになります。

 ガオハンターの真に画期的であった所以は、悪形態のガオハンターイビルと、正義形態のガオハンターとで、外観にギミックによる差異が付けられていた事です。しかも、トイが悪側から正義側にパッケージ変更までされるという、徹底的なイメージ戦略も図られました。これにより、「ガオレンジャー」のパワーアニマルシリーズは、更なる人気を得る事になったわけですが、いかに「ガオレンジャー」が戦隊トイ展開におけるエポックであったかが、よく分かります。

 今回のプテラゴードン、及びプテライデンオーは、ギミック的には目の部分を覆うシャッター状のバイザーが上がるというシンプルなもので、ガオハンターのように頭部のイメージがガラッと変化するようなものではありませんでしたが、「目が隠されていた」というシンボリックなギミックにより、「正義化」を端的に見せる事に成功していました。また、プテライデンオー形態時に羽織っていた黒マントを脱ぎ捨てるという演出が、巨大戦らしからぬケレン味で痛快そのものであり、その存在感を遺憾なく印象づける事となりました。個人的には、マントを脱ぎ捨てずに色が変わるとかにして欲しかった気もします。あのマント、格好良かったですからねー。

 さて、他の面々を見ていくと、追加戦士編でありながら、その個性がしっかりと描かれている事に気付きます。

 まず、ダイゴは、ドゴルドの剣術を破る為に、ソウジの父・源流に会いに行くという、予想も付かない行動を採ります。源流も源流で、剣術に関する文献を多量に所蔵していたり、その文献に基づいて瞬時にそれを再現(稲妻エフェクトまで付加)したりと、超人振りを発揮! これは春田純一さんだからこそ納得出来るのであって、他の演者では違和感があったでしょう。既に、源流は「バトルフィーバー」の倉間鉄山に匹敵する「超人」としての存在なのかも知れません(笑)。

 ちなみに、ダイゴはダイゴで、源流の再現する剣術を瞬時に見極め、対抗策を一瞬で編み出すという超人振りを発揮。とにかく、これまで何話もかけてやっていた事を、圧倒的なスピード感で解決していく今シーズンの勢いは、本当に凄まじいと思います。

 イアンとノブハルは、今回頭脳担当という事で、獣電池を活用したプテラゴードン攻略を。その過程が楽しいものとなっており、猛スピードで進行するストーリーの緩衝材として機能していました。

 ソウジとアミィは、ダイゴ達に「信頼を礎とした放置」をされている状態で、「誰も助けに来る見込みがない」、そもそも「端から助けを期待していない」という、戦隊史上でも珍しいシチュエーションに置かれる事になりました。これの打開策をどうするのかと思いきや、何とアミィのお行儀の悪さがフルに発揮されるという意外性! 足でリモコンを操って録画予約が出来るという「特殊技能」により、ソウジの捕縛を解いてみせるという、誰も予想し得ない脱出法を見せてくれました。これがあまりにも強烈だった為に、追加戦士編である事を一瞬忘却の彼方に追いやってしまう効果がなきにしもあらずでしたが(笑)。とにかく、アミィという「お嬢様ヒロイン」の「キャラ壊し」の凄さを、まざまざと見せつけられる事になったわけです。

 そして、空蝉丸を救いたいと願うトリンの覚悟と、アミィの機転によって現れるラミレス(今回はキョウリュウシアンの姿でのみ登場)。二人のスピリットを獣電池に込めて放つという、説得力のある演出によって、これまで登場したキョウリュウジャーの戦いに関わる全員が、キョウリュウゴールド復活に向けて、正に一丸となったわけで、この上ない新戦士復活編となったように思います。

 それでは、続いて次の回へ。