クリスが!
リヒティが!
そして、パトリック・コーラサワーが(笑)。
影の薄いモレノ医師も...。
ということで、怒涛のクライマックスに向け、水島監督も昔の富野監督ばりに「皆殺し」状態に持って行ってます。
前回の「ロックオン・ショック」があまりに強いインパクトを放っていた上に、やや美化された演出をとっていたからか、今回は非常に後味の悪い回に。
アレルヤとティエリアも、ロックオンと同じ道を辿るのではないかと予想されていましたが、今回は延命。
で、今回はあまりにクリスとリヒティが可哀想な感じだったので、2人の死に関しては後に回すとして、先に批判点を。
クライマックスに際し、プトレマイオスのクルーを「片付けていく」のは富野ガンダム的な感覚ですが、どうも2シーズン制が悪い方向に影響しているような。
ロックオンは主演陣の一人だった為、キャラクターに深さがありましたが、クリスとリヒティはあまり掘り下げられたエピソードがなく、今回急にプライベートを語らせるという、ちょっと浅薄な演出が(思いきり死亡フラグな雰囲気が漂うのもどうかと)。
守秘義務があったという説明もありましたが、個々人の性格まで秘匿できるわけではなく、やはり話数の少なさがキャラクターの深みをスポイルしているように思えます。
「Zガンダム」のヘンケン艦長やエマ中尉の死には、可哀想という感情以上のやるせなさを抱かせ、また死ぬことに歴史の動きのきっかけを感じさせました。
が、残念ながら、クリスとリヒティの死にそこまでの感情を抱くことは出来ませんでした。
逆に、今回生き残ったティエリアのキャラクターに神懸かった味が出てしまった為、余計にそう思わせているような気もします。
さて...。
今回は、宇宙のみでストーリーが展開。
プトレマイオス相手に苦戦するGN-X部隊。
セルゲイとカティは、GN-Xの約半数を失ってしまったという芳しくない戦果から撤退を考えますが、国連から増援があるとのこと。
それはアレハンドロの駆る、7基もの擬似太陽炉を搭載した巨大モビルアーマー「アルヴァトーレ」。
擬似太陽炉が沢山くっつけられている様子は、異様で恐怖を抱かせるに充分なインパクト。
ファーストガンダムにおけるモビルアーマーのコンセプトと思しき「怪物的シルエットを持ったメカ」を忠実に踏襲していて逆に新鮮です。
アレハンドロ自らが駆るというのも、ボスキャラっぽくてインパクト大です。
そして、アルヴァトーレを中心としたGN-X部隊による、プトレマイオス殲滅作戦が開始されます。
戦力が拮抗するなどということはなく、圧倒的にプトレマイオスが不利。
初編でガンダムが各陣営に味わわせていた感覚を、逆にソレスタルビーイングが味わうことになるわけです。
味方は大破していき、GN-Xの名も知らぬパイロットも命を散らしていく。
この雰囲気はガンダムのクライマックスに相応しいものです。
ティエリアが刹那に詰め寄り、
「貴様だ! 貴様が地上に降りたばかりに、戦力が分断された! 答えろ! 何故彼が死ななければならない! 何故...彼が...」
と言えば、スメラギがティエリアの頬を打ち、
「敵はまだ居るのよ! 泣き言を言う暇があったら手伝って!」
と叱咤する。
ティエリアを中心にストーリーが回り、スメラギの厳しい言動が危機感を煽るという素晴らしいシーンでした。
また、
ティエリア「私はロックオンのカタキを討たなければならない」
アレルヤ「あまり、熱くならない方がいい」
ティエリア「そうはいかない...!」
この会話に、ティエリアのポジションの変化が如実に現れています。
ロックオンの影響は非常に大きかったわけですね。
結局、ティエリアは戦う道を選びます。
それはガンダムマイスターの総意。
さらに、
スメラギ「生き残る覚悟」
刹那「死の果てに、神はいない...。存在すること、それは生きること...亡くなった者達の思いを背負い、世界と向き合う。神ではなく、俺が、俺の意志で!」
ここで、生き残ることに覚悟が要るという、逆説的な思想が見えてきます。
ソレスタルビーイングのメンバーは、どうやら死することに対する覚悟は当然の前提であるようです。
世界の標的になって当たり前の活動をしているわけですから、滅びの道を歩む自覚があると。
ただ、トランザム発現あたりから、別種の覚悟を強いられるようになったと言えます。
それは、生き残る覚悟。
生き残って、さらに世界を変えるペインを感じ続けること。
それには、相当な覚悟が要るということです。
これは、第2シーズンのテーマかも知れません。
ところで、作戦としては、強襲コンテナとエクシアがアルヴァトーレの迎撃、キュリオスとナドレが防衛戦を担当。
そんな中、ナドレのトランザムモードが登場。
ギリギリまで耐え、切り札として使うティエリアに、戦士としての鋭敏な感覚を垣間見ることが出来ます。
そのナドレによって、パトリックがとうとう宇宙の塵に...。
「セミヌードのクセに!」
とナドレを見て言うパトリックに、相変わらず笑わせてもらいましたが、このセリフ等から全く退場の予感がしなかった為、かなり衝撃的でした。
カティはパトリックを心配するそぶりを見せており、何ともやるせない展開に。
パトリック=不死身論は、あっさり消去されてしまいました。
「あっ...」
のセリフと共に(合掌)。
一方のアレルヤはいきなりハレルヤで登場し、ソーマとセルゲイの部隊を迎撃。
ハレルヤならではの、GN-Xを切り裂くという凶悪振りが、逆に興奮度を高めます。
ソーマはアレルヤを「出来損ないの被検体E-57」とみなし、完璧な超兵としてのプライドが戦意を高揚させます。
キュリオスはトランザムモードにはならず、ハレルヤの驚異的な戦闘能力によって次々とGN-Xを撃墜しますが、逆に機体を大破させていくことに。
ちなみに、ソーマとセルゲイはどうやら生き残っているようです。
そしてさらに...。
何故か土壇場に新たな謎を提供してくれるのが凄い。
冒頭は2年前に刹那が他のガンダムマイスターに紹介されるという場面。
ロックオン「いいじゃねぇか。俺等は相当の覚悟を決めて組織に入り、ガンダムマイスターになった。年齢なんて関係ねぇ。そうだろ?」
刹那「あんたは?」
ロックオン「コードネームはロックオン・ストラトス。成層圏の向こう側まで狙い撃つ男だ。お前もガンダムで世界を変えたいんだろ?」
刹那「ああ」
ロックオン「俺もだよ、刹那」
という会話に、グッと来るのですが、問題はヴェーダの選抜だと説明するスメラギに刹那がハッとする1カット。
見る限り、「刹那はヴェーダの選抜ではない」ような印象を受けます。
これは一体どういう意味なんでしょうか。
第1シーズンで残される数々の謎の一つになりそうです。
ここからは、クリスとリヒティの最期に向けた一連の動きを。
刹那達が戦う道を選んだことを知り、プトレマイオスのクルーが自らの素性を漏らし始めます。
フェルトは天国の両親とロックオンに生き残る故の手紙を(「ロックオンへ」と思いっきり日本語で書かれているのはツッコミ処だが...)。
クリスはコロニーに育ての親が居るものの、いい思い出は何もなく、逃げるように家出し、ヴェーダに選ばれてソレスタルビーイングへ入ったといいます。
リヒティは、両親は軌道エレベータの技術者だったが、太陽光発電扮装で死亡したという過去が。
フェルトはロックオンへの手紙をデュナメスのコクピットへ置き、刹那の提案でそこにハロを残していきます。
私としては、これが何らかの伏線のように思えるのですが...。
その時、敵襲を感知、ガンダムが出撃していきます。
直後、アルヴァトーレからGN粒子の奔流が放たれ、プトレマイオスの左舷後方をえぐる!
アルヴァトーレはラッセの攻撃をものともせず、プトレマイオスに甚大なダメージを与え続けます。
スメラギとイアンはデュナメスを積む強襲用コンテナに移動。
クリスは機転を効かせてウソをつき、フェルトを強襲用コンテナに移動させます。
ブリッジに残ったのは、リヒティとクリス。
リヒティ「生き延びますよ」
クリス「分かってる。フェルトにもう叱られたくないもの!」
この2人の会話は、結末を知った後に再度見ると実に切ないものがあります。
生き延びる覚悟を決めた2人に、最期の時が迫っているのです。
そして、1機のGN-Xがプトレマイオスのブリッジを撃つ...!
全壊したブリッジに立つ2人。
リヒティの半身は、実はサイボーグ化されていました。
両親を失った太陽光発電紛争で、彼もまた、半身を失っていたのでした。
この、土壇場で過酷な運命を見せ付ける演出は、見る者にも過酷な感情を強います。
クリス「バカね、私。すぐ近くにこんなイイ男いるじゃない...。」
リヒティ「本当っすよ...」
クリス「見る目ないね、私」
この会話の後、リヒティは眠るように旅立ちました。
ただ、この機械化された身体は、この時代における技術を垣間見せており、これまたある種の伏線のような気がします。
続いて、フェルトとクリスの通信を介した会話へ。
クリスの
「ロックオンの分まで、生きてね...。お願い、世界を、変えて...お願い...」
というセリフは、これまで買い物キャラでしかなかったクリスを一気に悲劇のヒロイン化してしまいました。
このクリスの最期、血反吐を吐きつつ気丈に喋るという、非常に悲しいシーン。
富野監督の云う「TVなら、平気で隠します」というポリシー(?)からは遠いもので、むしろ劇場版(や深夜枠)の基準で作っているような気がします。
イデオンやエヴァ等に免疫のある人なら良いですが、最近のガンダムブランドは敷居をもっと低く設定されているので、一考の余地はあるかと。
この後の、フェルトによる
「クリスティナ・シエラァァァァァァ!」
の叫びは秀逸で、感情を徐々に発露させていった彼女の、感情の爆発を見ることが出来ます。
リヒティとクリスの最期は、ロックオンに続き、爆風に吹き飛ばされるというものでした。
このあたりは、ちゃんと「隠して」るのかな。
リヒティとクリスとはいかなるキャラクターだったのか。
それは、飄々として明るく振舞っているという共通点を持ち、共に思い出したくない過去を持ち、深層で互いに必要としていた、プトレマイオスの中の小さくも強い絆だったのかも知れません。
キャラクターの掘り下げこそあまり行われず、唐突な死によって退場となった2人であり、シリーズ構成的には今一つですが、このシーンだけ取れば、凄まじい悲劇感と感動があって良かったのではないでしょうか。
最終シーンは、アレハンドロに刹那とラッセが斬りこむというもの。
アレハンドロは、
「忌々しいイオリア・シュヘンベルグの亡霊共め! この私、アレハンドロ・コーナーが、貴様らを新世界への手向けにしてやろう!」
と遂に悪役らしい言動を露にしました。
アルヴァトーレに強襲用コンテナが破壊され、刹那のエクシアとラッセが脱出。
「エクシア、刹那・F・セイエイ、目標を駆逐する!」
という、刹那渾身の宣言は、第1シーズンの最終回である次回への期待感と、キャラクターの末路に関する不安感を充分に煽っています。
見るのが辛くなったファンも多いことと思いますが、あと1本を確実に見ましょう。
時間帯が変更になっているのでお間違いなく。
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