#07 報われぬ魂

  • 投稿日:
  • by

 今回は何だか鬱展開でしたね。前回ソレスタルビーイングのポジティヴな面を描いておいて、今回でそれを裏返すとは、なかなか凝ったことをします。


 前半は刹那とアリー・アル・サーシェスがらみ。

 どうもサーシェスはクルジス共和国の内戦時に、少年ゲリラを率いていた人物のようで、刹那はその頃に精神的なダメージを負っているようです。

 幼い頃の刹那は、サーシェスの指示で無抵抗の女性を射殺し「聖戦に参加することを許された戦士」となります。この女性は刹那の本名(? ちなみに「ソラン」と言っている)を呼んでいることから、どうも肉親らしい。このあたり、ガンダムっぽくなくてちょっと鬱すぎる設定な気も。

 刹那は「神」という言葉を度々口にしてますが、幼い頃はサーシェスの言う「神」を信じており、その後ソレスタルビーイングに参加するまでの期間に、それを撤回したのかも知れません。当時を思い出す刹那の表情は狂気に憑かれているかのように描かれています。それはつまり、「射殺したこと」で自分の手が取り返しのつかないほど汚れたことを悟っているということです。


 さて、そういう過去を抜きにすると、サーシェスはカッコいいですな。


 パイロットの力量がそのままモビルスーツの動きに反映されると言うか、かつて「モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを教えてやる」と述べた赤い人(説明は不要でしょうが、シャアのことです)がいましたけど、まさにそれを体現して見せているわけです。

 結局、刹那が我を忘れるまで、エクシアはサーシェスのモビルスーツに手も足も出ませんでした。しかも、その後でこれでもかとガンダムマイスターの猛攻が描かれているので、余計にサーシェスの実力の程が引き立ちます。

 さらに、ロックオンの銃撃をよけてしまう! 現時点では、グラハムより遥かに強敵でしょう。


 サーシェスを確認すべく、コックピットから出てしまう刹那。


 コックピットから出るという行為は、ガンダムではお馴染みのシーンですけど、ガンダムマイスターの守秘義務が前提である故に、かなり緊張感のあるシーンになってます。後のシーンで、サーシェスは幼い頃の刹那の動きを、エクシアの動きにオーバーラップさせたようですが、少年ゲリラの中でも刹那は優秀だったのでしょうか。


 しかし、エクシアの動きから刹那を連想するとは、体術の癖がモビルスーツの癖になるほど操縦性が優秀だということですな、本作に登場するモビルスーツは。


 後半はガンダムマイスターが徹底的に、かつほぼ一方的に、モラリアの軍備という軍備をバンバン殲滅していく展開。


 その直前にティエリアが刹那に対し、「今度また愚かな独断行動をとるようなら、君を後ろから撃つ」と物騒なことを言っています。さすがはティエリア。実にタカ派な人ですわ。


 殲滅終了後、沈黙した軍の前にたたずむ4体のガンダムは、まさに死神の佇まい。

 この感覚は、やっぱり「ガンダムW」に近いものがあります。特に初期の。


 その後、ロックオンによる刹那の「修正(言うまでもなく、殴ることね)」が描かれ、直後のやり取りに各々のポジションが明確に現れます。


 刹那「俺は降りない。エクシアからは降りない」

 ティエリア「ならば、見せてもらいたいな。君がマイスターである理由を」

 刹那「俺の存在そのものが理由だ」

 ティエリア「何?」

 刹那「俺は生きている。生きているんだ」


 刹那の答えは謎ですけど、ニュアンスは伝わってきます。

 もしかしたら、選民的感情を抱いているのかも。


 そして、今回最大の鬱展開は、ラスト間際。

 ソレスタルビーイングをテロリストと捉えるシニカルな視点。

 テロリズムへの嫌悪感を如実に表現していきます。


 それはまず、ソレスタルビーイングが動いたことで、結局AEUの軍備増強路線は国民感情の同意を得るところとなり、モラリアに貸しを作ったことで、PMCとの連携を密に出来るという、皮肉な展開を招くことで語られます。

 勿論、これは「いつものこと」なのですが、絶対的な必要悪になっていく主人公達はなかなかに哀れです。


 そして、ソレスタルビーイングの武装解除を要求する同時多発テロの勃発。

 いつも冷静なロックオンは、テロを憎むあまり熱くなってしまう。

 ティエリアはガンダムマイスターもテロリストと変わらないという見解を持ち、同時多発テロすらも予測に含まれると言います。


 つまりポジティヴな視点の代表がロックオン、ネガティヴな視点の代表がティエリアということが明らかにされた訳です。アレルヤは…今のところ置いておく。


 では、主人公である刹那はどうか。


 彼は同時多発テロを紛争行為と見做し、ガンダムマイスターとして直ちに動くべきだと主張するのです。


 ここで、刹那がガンダムマイスターであることを証明して見せたような気がします。ポジでもネガでもなく、超越した視点の持ち主。ソレスタルビーイングの「目的」を神格化している雰囲気すら感じられます。


 刹那の「神」はソレスタルビーイングのイデオロギーなのか…?