修羅場とも言える最終決戦。にしては、殆どキャラクターが死亡しないという意外な展開。しかも、死にそうになっていたら生きていたりと、衝撃シーンとホッとするシーンを交互に見せるあたり、かなり異様な感じに。
この異様さは何か、と考えた時、サブタイトルを振り替えると、ある一つのテーゼが分かります。
それは後回しにするとして、お話的なサブタイトルの意味を考えると、
- 人間を超えて純粋イノベイターとなった刹那と、イノベイドでありながらイノベイターをも凌駕したと豪語するリボンズの対決
- あらゆる怨恨を乗り越えたロックオン=ライル
- アレルヤとマリーに訪れる次なるステージ
- ティエリア、そしてリジェネが生命の概念を超えた意識体へ
- 沙慈とルイス、スメラギとビリーの、互いの状況を乗り越えた再会
といったところ。
あらゆるキャラクター主体のドラマや、用意された謎といった要素を、一気に回収していこうという姿勢が見られるので、やや駆け足というか、詰め込んでいる印象は拭えません。
しかしながら、ある程度ハッピーエンドを予見させる作劇法は評価できます。ソレスタルビーイングのテーマの一つである「咎を受ける」が、最終話でどのように描かれるかに期待がかかりますね。
そして、以前リジェネが語っていたイオリア計画の全貌は、殆ど真実だったことも明らかに。ある意味拍子抜けっぽいですが。
リジェネが言ったことをおさらいしておくと、
第1段階:ソレスタルビーイングの武力介入を発端とする世界の統合
第2段階:アロウズによる人類意志の統一
第3段階:人類を外宇宙に進出させ、来るべき対話に備える
となります。
第2段階におけるアロウズが、リボンズの傀儡になってしまったことを除けば、ほぼそのまま同じことをティエリアが言っています。
このあたりの詳しいことについては、本文中で触れてみたいと思います。
今回はキャラクタードラマ完結への道標を用意する展開なので、かなり場面転換が錯綜しています。
よって、ある程度整理しつつ、まとめてみたいと思います。
まずは前回の続きから。ダブルオーライザーとレグナントの対戦です。
アンドレイは、
「沙慈とかいう男!貴様がいる所為で、准尉は!」
と、少なくとも私が受けた印象としては、嫉妬丸出しなセリフ。
刹那は、邪魔だとばかりにアンドレイのアヘッドを戦闘不能にします。このシーン、アンドレイ機が撃墜されたように見えるのですが、実は大破を免れています。
「よくも中尉を!死ねぇぇっ!」
もう既にルイス・ハレヴィの発言ではなくなっています。
レグナントのビーム直撃を受けても、ダブルオーライザーはダメージを受けません。セラヴィーガンダム並の、あるいはそれを凌駕するGNフィールドを発生できるまでに、刹那の力=ダブルオーライザーの力は高まっています。
すると、ルイスはレグナントでダブルオーライザーを羽交い絞めにし、ガガ部隊の特攻を受けてもろとも滅びようとするのです。
つまり、ルイスはガガに登場しているイノベイド(デヴァインの皆さん)と殆ど同等になってしまったわけですね。
「人類初のイノベイター」とリボンズに吹き込まれながら、実際にはイノベイド化され、リボンズの傀儡にされていたということです。
本編はここでシーン切替ですが、流れを分かりやすくする為に、ルイス関係のシーンを続けます。
レグナントを破壊して脱出した刹那は、同時にルイスを救出しており、沙慈にダブルオーライザーを降りて安全な場所へ行くよう指示します。
この「安全な場所」が何処なのかは不明ですが、宇宙艇等を使用せず、遊泳で近場に漂着しており、しかも生命維持装置の有効な区画があることから、リボンズの母艦であるソレスタルビーイングの内部かと思われます。
ルイスの意識が戻り、沙慈は喜ぶものの、ルイスは突如沙慈の首を締め始めます。
「ソレスタルビーイング、パパとママの敵。死ねぇぇっ!」
ルイスは沙慈の首を絞めつつも涙を流し、沙慈の名を呟きます。沙慈の婚約指輪を目にしたルイスは...。
ここでひとまず、ティエリア関係に移ります。
リボンズに銃口を向けるティエリア。
「ティエリア・アーデ、君はイノベイターの分際で...」
「違う!僕達はイノベイターではない。僕達は、イノベイターの出現を促すために、人造的に生み出された存在、イノベイドだ!ヴェーダを返してもらうぞ。リボンズ・アルマーク」
「フフ...。そのイノベイドが進化を果たしていたとしたら?」
「何?」
「僕はイノベイドを超え、真のイノベイターすら凌ぐ存在となった」
「世迷言を!」
このやり取りで重要な部分をピックアップしてみましょう。
まず、リボンズの「イノベイターの分際で」というセリフに注目。
「イノベイターを凌ぐ存在」とも発言しており、これまで「イノベイター」である自分こそ、人類を導く存在だと豪語していたリボンズが、既にイノベイターをも下に見る存在になったと考えているからこその発言です。
続いて、ティエリアの言う「イノベイド」。
ガガ部隊に乗っているデヴァインの皆さんは、クレジット上「イノベイド」となっていましたが、ティエリアも、リボンズですらも本来「イノベイター」ではなく「イノベイド」。
即ち、真に「イノベイター」という言葉が指す存在は、人類から自然発生的に現れた純粋種イノベイターのみであり、リボンズ達は単なる自称に過ぎなかったということ。ややこしい。
ただ、リボンズはイノベイドでありながら、イノベイターとして自分が遜色ない存在だと常に考えていたであろうことは確か。それ故、自らを頂点とするイノベイド達を、イノベイターと称したのでしょう。
リボンズは、
「ヴェーダは渡さない。そうさ、人類を導くのはこの僕だ」
と言い、ティエリアは射殺。この銃撃シーンが凄惨そのもの。
ティエリアのファンは大いにショックを受けたのではないでしょうか。直後の展開は、なかなか想像できる類のものではありませんでしたからね。
ティエリアの「死」が描かれたことで、他のガンダムマイスターももしや...と危機感を抱かせる構成に。しかし、結構淡々と進行していくので、その辺りの危機感はやや薄味です。
今度は、スメラギとビリー関連。
ビリーはスメラギに銃を向け、投降を促します。
オートマトンと共に現れたことから、ビリーはスメラギを抹殺しにやって来たかのような印象を与えましたが、投降を求めるなど、実はかなり懐柔派だったようです。
後から判明することと併せると、ビリーはスメラギ=クジョウへの思いを断ち切った筈が、実はまだ断ち切れていなかったということなのかも知れません。
恒久和平実現のため、より優れた存在(リボンズ)によって統率されるのは論理的に正しいと考えるビリー。
「完全なる自由はモラルの放棄。その先には滅びしかないよ。秩序ある社会構造の中、限定された自由を満喫する。檻の中で守られた方が居心地がいい。それが平和ということだ」
「未来は、私達で作り出さないと意味がないわ。過去に犯した過ちを、自分たちで払拭しなくちゃ。本当の未来は訪れない。だから、私は戦う!」
こういったコスモスとケイオスの対立構造は、あらゆる作品で取り上げられており、作品的にもコスモスへと帰結してめでたしとなるものと、ケイオスへと帰結してめでたしとなるもの、2通りあります。「ガンダム00」は、後者を選択する物語というわけ。少なくともスメラギの中では。
そして、各キャラクターの行動も少しずつ描かれていきます。
ロックオンとサーシェスの死闘。そして、アレルヤのマリーを守る戦い。
Oガンダムの粒子残量もわずかとなり、ラッセの体も遂に限界へ。
細胞異常、吐血、痛みといった症状から推察するに、再生医療では根治できない悪性新生物であると推測できます。
つまりは、2009年時点におけるあらゆる疾病は、再生医療によって300年後に克服されるも、擬似GN粒子が現代における放射能のように作用し、新たな疾病を生んだというわけです。
ここで、1つ目の転機が訪れます。
リヴァイヴとヒリングがダブルオーライザーに圧倒され、トランザムアタック(何というベタなネーミング・笑)をかけます。
刹那も対抗してトランザム発動。ギリギリまで粘っていることから、対リボンズ用にトランザムの余力を残したかったのかも知れません。
トランザムの発動によって、あらゆる人物の声が届きます。
ルイスの悲鳴、そして沙慈の悲痛な叫びが聞こえる...。
沙慈はルイスの左薬指の指輪を見て、自分とルイスがこの広い宇宙に隔てられつつも、繋がっていたことを思い知るのです。
ルイスは沙慈への思いを、保存していた写真等の消去によって一旦断ち切った筈でしたが、指輪はそうさせてくれなかったという、何ともセンチメンタルな展開。でも、これでOKです。
ルイスは、激しい頭痛に襲われて意識を失ってしまいます。
まるで、ルイスが死んでしまったかのような沙慈の表情。
ティエリアやアンドレイもそうですが、今回はこういったフェイクの嵐が吹き荒れます。
次に、スメラギの声が聞こえる...。
「私は戦う!自分達の手で、未来を作る為に!」
「どうしてお前達は...どうして君は、分かってくれないんだ...そうやっていつも...」
この時点で、ビリーは自分の理論武装の牙城を崩壊させています。
「お前達は」と呼びかける時点では、かろうじてアロウズ仕官としての意志を保っていますが、「君は」とクジョウ自身を指してしまってからは、もう個人的な事情にシフトしてます。
分かりやすく、そして効果的なセリフです。
続いて、アレルヤの、マリーを呼ぶ絶叫が聞こえる...。
GNアーチャーは殆ど機能できないまでに破壊されてしまいました。
これは、マリー絶命かと思わせるフェイクです。
ラッセの苦悶が、ミレイナ、フェルト、イアン、リンダの声が聞こえる...。
ラッセはバイタルの低下を思わせる発言をし、他の面々は、苦闘の中、絶望感に苛まれ始めています。
そして、
「くそったれがぁぁぁぁっ!」
というロックオンの叫びが聞こえる...。
とにかく殺し合い至上主義のサーシェスを前にして、ライルの怒りとやるせなさ、そして違和感が爆発します。
戦場の叫びを聞いた刹那は、
「皆の命が消えていく...そんなこと、させるかぁぁぁぁっ!」
と感情を爆発させます。すると、その声にダブルオーライザーが反応。
ダブルオーライザー TRANS-AM BURST。
宇宙に広がっていくGN粒子。
「トランザム・バースト(TRANS-AM BURST)」は、イオリアが仕込んでいた更なる隠し玉だと思われます。
これについては、後にリジェネが説明しています。
初めてダブルオーガンダムに乗った時、刹那の叫びに呼応してツインドライヴが起動しましたが、あの場面はこのシーンに繋がるものだったと言っても過言ではないでしょう。
あれは、起動までのタイムラグではなく、刹那が乗らなければならなかったということを表現したように思えるのです。
トランザム・バースト発動後については、その2で。
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