後半は、生きていた王留美、紅龍と、さらに追い討ちをかけるネーナ。
そして、グラハム・エーカーの再来と盛り沢山な内容です。
特に王留美とネーナの醜怪なやり取りは、演者のテンションも高く、必見です。
では、行ってみましょう。
ラグランジュ5の建設途中コロニーで、ソレスタルビーイングを待つ王留美と紅龍。何とあの大爆発から無事に脱出してました。ホントかよ(笑)。
王留美は、世界がリボンズのものとなるのを、何としても阻止したいようです。
ソレスタルビーイングは果たしてやって来るのか、ネーナはいつからイノベイターに付いたのか、と紅龍が次々と王留美に質問。
王留美はとうとうキレて、自分で考えろと言い出します。
「お兄様に当主としての器がなかったから、私の人生は歪んだ!だから私は世界の変革を望んだの...地位や名誉、資産すら引き換えにしても。そう、私は人生をやり直し、私だけの未来を手に入れる!最後まで付き合ってもらうわよ、紅龍。あなたには、その責任があるわ」
土壇場で初めて語られる王家の真実!
王家当主の正統な後継者は実は紅龍だったのだが、紅龍にはカリスマ性等、資産家としての資質がなかった為に、留美が当主にまつり上げられたということらしい。
何となくマリナの境遇に似ています。
しかし、
「何そのベッタベタな理由。くっだらない。やっぱりあんたバカよ」
とネーナが言い放つまでもなく、その理由は下らないものだと私も思いました。
結局、ソレスタルビーイングそしてイノベイターの有力な出資者である彼女も、単に私欲の為に動いていた、と。
ファースト・シーズンでは、イオリアの理想が云々言ってましたが、結局のところ、それは理論武装だったことになります。
言うなれば、王留美はアレハンドロ・コーナーあたりに極めて近い人物だったということですね。
ここからはネーナの独壇場。
ネーナは王留美を撃ち、紅龍がそれを庇います。
「留美、生きて...」
という紅龍が切ないですね。
ずっと留美に負い目があったのでしょう。最後は、身を挺して留美を庇うことで、「肉親として」というよりは忠義の為に散ったという印象を持ちました。
ネーナが、とどめとして紅龍の頭部を撃ち抜くという凄惨なシーンがありますが、まだ「イデオン」には及びません(笑)。
そして、ネーナの背後にはリジェネが。
「これで計画は加速する。イオリアでもなくリボンズでもない、この僕の計画が」
リジェネにはやはり、別の考えがあったようです。
当面は、ソレスタルビーイングにヴェーダを奪還させるという目的を果たそうとしているように見えます。
そこに、ダブルオーライザーが登場。
ちょっと待てよ?
刹那がここに到着するまで数日かかると言っていた筈。
ということは、王留美と紅龍がネーナの襲撃を受けて大爆発した艦から逃れ、ラグランジュ5に辿り着くまで、数日かかったという事か。
制御不能になった艦から脱出艇等で脱したとも考えにくいし、あのパイロットスーツのまま漂流して辿り着くなど、いくらなんでも無理があるでしょう。
しかも、王留美の怪我を考慮すると、数日経過してあの状態というのも不自然。
やっぱりここでも時間経過の描写が不徹底です。
もう、こういう些細なことを気にしてはいけないんだろうか...。
さて、刹那はダブルオーの制御を沙慈に預けてコロニーの中へ。
王留美を見つけた刹那は、ヴェーダの位置を記した紙片を受け取ります。
共に脱出することを提案する刹那でしたが、王留美は断ります。
「あなた達とは行けないのよ。求めてるものが違うのだから」
という留美のセリフの意味するところは後で判明しますが、先に書いておくと、ソレスタルビーイングも要らない(犠牲になってもらわなければならない)ということです。
この留美には、刹那の「変革」に気付く事の出来ない者という、突き放した視点が注がれています。
そして、コロニーを出た刹那を待っていたのは、ダブルオーライザーを「人質」にとったブシドー!
「4年振りだな、少年!」
仮面を外している!
遂に、謎だったミスター・ブシドーの正体が、グラハム・エーカーだったことが明らかになったのです。
ってのは冗談ですけど。
まぁ、一応、劇中では謎扱いだったわけですしね。
以下、刹那とのやり取りを完全採録。
「真剣なる勝負を!」
「何?」
「この私、グラハム・エーカーは、君との果たし合いを所望する!」
「そうまでして決着をつけたいか!」
「無論だ!私の空を汚し、同胞や恩師を奪い、フラッグファイターとしての矜持すら打ち砕いたのは他でもない、君とガンダムだ!そうだとも、もはや愛を超え、憎しみも超越し、宿命となった!」
「宿命!?」
「一方的と笑うか...。だが、最初に武力介入を行ったのはガンダムだということを忘れるな!」
「この男もまた、俺たちによって歪められた存在...分かった。果たし合いを受けよう」
「全力を望む!」
ここで、グラハムが吐いたセリフは「宿命」のくだり以外、割とまともです。
逆に、刹那が「果たし合いを受けよう」と言っているところが可笑しい。グラハムの「趣味」にノッてあげたところが笑えます。
ここ、笑い処ですよね?
リジェネは、ブシドーがリボンズの差し金であることを見抜き、自らの計画の停滞を一瞬憂慮します。
グラハムは、ブシドーの仮面を付け、
「これが私の望む道。修羅の道だ!」
と高らかに宣言。
「ダブルオーライザー!」
「マスラオ改めスサノオ!」
「目標を...」
「いざ尋常に...」
「駆逐する!」
「勝負!」
と、スーパーロボット系アニメに匹敵する名乗り合戦を繰り広げてくれます。
ドラマのテンションを上げていこうとする意図は、よ~く分かるのですが、ちょっとやり過ぎ感は否めないところ。
一方(って目まぐるしいな...)、小型艇(王兄妹は例の大爆発からこれで脱出したんでしょうか?)で脱出する王留美。
「ソレスタルビーイングも、イノベイターも、お兄様の命も捧げて、変革は達成される!私はその先にある、素晴らしい未来を...」
「そんなもの、あるわけないじゃない」
と、小型艇を木端微塵に破壊するネーナ!キャプしていませんが、この時の両者の表情が非常に凶悪。
遂に、王留美が退場。今度は引っ張りませんでした。しかしながら、ネーナに襲撃されるのはこれ1回で充分だったのでは...。
「散々人を物のように扱ってきた罰よ!あたしは生きる為なら何でもやるの。あたしが幸せになる為ならね。そうよ。イノベイターに従ってるのはその為。兄兄ズの仇だって討っちゃいないんだから。その時が来たら、盛大に喉元食いちぎってやるから」
「そういう君の役目も終わったよ。勝手をするものには罰を与えないと」
突如低い声で話し始めるハロ。
その言葉の主はリボンズ。
「君を裁くものが現れるよ」
無論、HAROはヴェーダの端末であるからして、リボンズはヴェーダ経由でHAROを操ったのでしょう。
ただ、画面の印象からすると、機械に対しても脳量子波を送って操作してしまう怪しげなエスパーになってしまってます。
ここでふと、サーシェスがネーナの脳裏に浮かびます。
「まさか、あいつが...面白い。兄兄ズの仇を...」
「そうだね、ある意味仇ではある」
現れたのはレグナントを駆るルイスでした。
レグナントは奇怪なモビルスーツ形態に変形し、為す術のないスローネドライをいたぶるように破壊していきます。
ルイスに気付く刹那は、
「やめろ!ルイス・ハレヴィ!そんな復讐は!」
と叫ぶのですが、当然ルイスには届きません。いや、届いたかも知れませんが、聞く耳を持ちません。
ルイスは、戦闘不能になるまでスローネドライを破壊し、ネーナを狙います。
ネーナは、
「あたしは作られて...戦わされて...こんな所で、死ねるかぁっ!」
と抗う姿勢を見せるのですが、ルイスは、
「そうね。死にたくないね。でも、パパとママは、そんな言葉すら言えなかったぁぁっ!」
と復讐の牙を全開に。それにしても、ルイス、凄い表情ですな。「Vガンダム」のカテジナを思い出させます。まぁ、ルイス自体カテジナの投影キャラに見えますが。
死に際のネーナの、
「畜生ぉぉぉぉぉっ!」
というセリフが、何ともネーナらしくていいです。
ただ、ネーナ・トリニティというキャラクター、どうも消化不良な感じがしますね。
結局、ルイスの敵という以上の役割は与えられなかったようです。出生等、謎が巧く機能しそうなキャラクターだっただけに、何となく残念です。
王留美が言うところの、ネーナに「イノベイターを欺く為に働いてもらう」という点も、当人達が完全に退場してしまった為、真相は推測の領域へと追いやられてしまいました。
「やったよ...パパ、ママ、仇をとったよ...ガンダムを倒したよ!褒めてよ。よくやったって、言って!」
ルイスは精神を崩壊させます。
「Ζガンダム」の最終話を思わせる場面です。まぁ、カミーユ本人の精神状態は、本人からすると幸福感に満たされていた印象がありますが、ルイスは逆ですね。
エンディング後は、再び刹那 VS ブシドー。
「生きてきた!私はこの為に生きてきた!たとえイノベイターの傀儡に成り果てようとも!この武士道だけは!」
と劇的に熱いセリフを吐くブシドー。
最初「このブシドーだけは!」と勘違いして、この人は「ミスター・ブシドー」という名をとうとう気に入ったのかと思ってしまいました(笑)。
刹那と真剣勝負をする為だけに生きてきて、その為ならどういう境遇に置かれようと構わないというのは、ある意味ネーナと似ています。
このセリフから、ファースト・シーズンのグラハムは「愛に生きる騎士」でしたが、セカンド・シーズンの彼は「宿命に殉ずる武士」を標榜していることが分かります。何となく。
勝負は付かず、両者トランザムを発動。
DNAの螺旋構造のような軌跡を描いて衝突!
「遂に、覚醒が...」
と呟くリジェネ。
既に刹那に関する何かを掴んでいる様子です。
そして、例のトランザムライザー全裸空間(笑)。
「ここは一体...私は既に涅槃に居るというのか」
「違う」
「少年!?」
涅槃とか、随分アジアンな文化にかぶれてますね。
一応、ニルヴァーナといった語句が西欧にあるので、特に違和感は感じませんけど。
「ここは、量子が集中する場所だ」
「何を世迷言を」
ほぅ、量子が集中...。もはや、科学的思考の入る余地はないような。
でも、何となく納得してしまうのは、やっぱり刹那が「悟り」の境地に入っているような描写故か。
「分かるような気がする。イオリア・シュヘンベルグがガンダムを、いや、GNドライヴを作った訳が」
「何!?」
「武力介入はこの為の布石。イオリアの目的は、人類を革新に導くこと。そう、俺は、変革しようとしている」
つまり刹那は、自分の今の状態こそが、イオリアの求めたものだと考えている、あるいは確信している様子なのです。
となると、イオリアの言う変革とは、戦いの果てに悟った(「悟り」を開いた)者こそが変革の代表者(=人類初のイノベイター)となり、人類全体の変革を導いていく、ということでしょうか。
さすれば、グラハムの言う「宿命」は正に宿命で、刹那との真剣勝負もまた、刹那を覚醒させる為に必要な道だったことになります。
刹那は、グラハムをして「俺たちによって歪められた存在」と評しています(この発言こそ、刹那の「悟り」を象徴してます)が、その評をも正しいと考えると、ソレスタルビーイングこそが、実は世界を歪める為の存在であり、それによって生じた歪みを幾つも目の当たりにした何者かが、ツインドライヴに触れることで「悟り」を開き、歪んだ世界が反作用で一気に平滑なものへ変質するのを見届ける。
そんな風に考えられはしないだろうか...と半ば深読みも交えて考えます。
別にその真偽を議論する気はないんですけどね。あと4話見れば大体は片付く筈ですから。
あくまで考えることを楽しんでいるだけです。
ということで、この部分に関しては議論が不毛になるのは明らかなので、反論なしの方向で(笑)。
pon太
1stシーズンの頃から、毎回、SirMilesさんのサイトが更新されるのを楽しみにしていました。
いつも、次回話までの待ちの1週間をSirMilesさんの論理的な解説を見て復習し次回話に繋げるのを楽しみにしています。
あと4回と思うと、SirMilesさんのサイトを拝見する楽しみも少なくなり、とても残念です。