#21 革新の扉 その2

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 後半は、生きていた王留美、紅龍と、さらに追い討ちをかけるネーナ。

 そして、グラハム・エーカーの再来と盛り沢山な内容です。


 特に王留美とネーナの醜怪なやり取りは、演者のテンションも高く、必見です。

 では、行ってみましょう。

 ラグランジュ5の建設途中コロニーで、ソレスタルビーイングを待つ王留美と紅龍。何とあの大爆発から無事に脱出してました。ホントかよ(笑)。

 王留美は、世界がリボンズのものとなるのを、何としても阻止したいようです。

王留美

 ソレスタルビーイングは果たしてやって来るのか、ネーナはいつからイノベイターに付いたのか、と紅龍が次々と王留美に質問。

 王留美はとうとうキレて、自分で考えろと言い出します。


「お兄様に当主としての器がなかったから、私の人生は歪んだ!だから私は世界の変革を望んだの...地位や名誉、資産すら引き換えにしても。そう、私は人生をやり直し、私だけの未来を手に入れる!最後まで付き合ってもらうわよ、紅龍。あなたには、その責任があるわ」


 土壇場で初めて語られる王家の真実!

 王家当主の正統な後継者は実は紅龍だったのだが、紅龍にはカリスマ性等、資産家としての資質がなかった為に、留美が当主にまつり上げられたということらしい。

 何となくマリナの境遇に似ています。


 しかし、


「何そのベッタベタな理由。くっだらない。やっぱりあんたバカよ」


とネーナが言い放つまでもなく、その理由は下らないものだと私も思いました。

 結局、ソレスタルビーイングそしてイノベイターの有力な出資者である彼女も、単に私欲の為に動いていた、と。

 ファースト・シーズンでは、イオリアの理想が云々言ってましたが、結局のところ、それは理論武装だったことになります。

 言うなれば、王留美はアレハンドロ・コーナーあたりに極めて近い人物だったということですね。


 ここからはネーナの独壇場。

ネーナ

 ネーナは王留美を撃ち、紅龍がそれを庇います。

紅龍

「留美、生きて...」


という紅龍が切ないですね。

 ずっと留美に負い目があったのでしょう。最後は、身を挺して留美を庇うことで、「肉親として」というよりは忠義の為に散ったという印象を持ちました。


 ネーナが、とどめとして紅龍の頭部を撃ち抜くという凄惨なシーンがありますが、まだ「イデオン」には及びません(笑)。


 そして、ネーナの背後にはリジェネが。

リジェネ

「これで計画は加速する。イオリアでもなくリボンズでもない、この僕の計画が」


 リジェネにはやはり、別の考えがあったようです。

 当面は、ソレスタルビーイングにヴェーダを奪還させるという目的を果たそうとしているように見えます。


 そこに、ダブルオーライザーが登場。


 ちょっと待てよ?

 刹那がここに到着するまで数日かかると言っていた筈。


 ということは、王留美と紅龍がネーナの襲撃を受けて大爆発した艦から逃れ、ラグランジュ5に辿り着くまで、数日かかったという事か。

 制御不能になった艦から脱出艇等で脱したとも考えにくいし、あのパイロットスーツのまま漂流して辿り着くなど、いくらなんでも無理があるでしょう。

 しかも、王留美の怪我を考慮すると、数日経過してあの状態というのも不自然。


 やっぱりここでも時間経過の描写が不徹底です。

 もう、こういう些細なことを気にしてはいけないんだろうか...。


 さて、刹那はダブルオーの制御を沙慈に預けてコロニーの中へ。

 王留美を見つけた刹那は、ヴェーダの位置を記した紙片を受け取ります。

王留美

 共に脱出することを提案する刹那でしたが、王留美は断ります。


「あなた達とは行けないのよ。求めてるものが違うのだから」


という留美のセリフの意味するところは後で判明しますが、先に書いておくと、ソレスタルビーイングも要らない(犠牲になってもらわなければならない)ということです。

 この留美には、刹那の「変革」に気付く事の出来ない者という、突き放した視点が注がれています。



 そして、コロニーを出た刹那を待っていたのは、ダブルオーライザーを「人質」にとったブシドー!


「4年振りだな、少年!」

グラハム

 仮面を外している!

 遂に、謎だったミスター・ブシドーの正体が、グラハム・エーカーだったことが明らかになったのです。

 ってのは冗談ですけど。

 まぁ、一応、劇中では謎扱いだったわけですしね。


 以下、刹那とのやり取りを完全採録。


「真剣なる勝負を!」

「何?」

「この私、グラハム・エーカーは、君との果たし合いを所望する!」

「そうまでして決着をつけたいか!」

「無論だ!私の空を汚し、同胞や恩師を奪い、フラッグファイターとしての矜持すら打ち砕いたのは他でもない、君とガンダムだ!そうだとも、もはや愛を超え、憎しみも超越し、宿命となった!」

「宿命!?」

「一方的と笑うか...。だが、最初に武力介入を行ったのはガンダムだということを忘れるな!」

「この男もまた、俺たちによって歪められた存在...分かった。果たし合いを受けよう」

刹那

「全力を望む!」


 ここで、グラハムが吐いたセリフは「宿命」のくだり以外、割とまともです。

 逆に、刹那が「果たし合いを受けよう」と言っているところが可笑しい。グラハムの「趣味」にノッてあげたところが笑えます。

 ここ、笑い処ですよね?


 リジェネは、ブシドーがリボンズの差し金であることを見抜き、自らの計画の停滞を一瞬憂慮します。


 グラハムは、ブシドーの仮面を付け、


「これが私の望む道。修羅の道だ!」


と高らかに宣言。


「ダブルオーライザー!」

「マスラオ改めスサノオ!」

「目標を...」

「いざ尋常に...」

「駆逐する!」

「勝負!」


と、スーパーロボット系アニメに匹敵する名乗り合戦を繰り広げてくれます。

 ドラマのテンションを上げていこうとする意図は、よ~く分かるのですが、ちょっとやり過ぎ感は否めないところ。



 一方(って目まぐるしいな...)、小型艇(王兄妹は例の大爆発からこれで脱出したんでしょうか?)で脱出する王留美。


「ソレスタルビーイングも、イノベイターも、お兄様の命も捧げて、変革は達成される!私はその先にある、素晴らしい未来を...」

王留美

「そんなもの、あるわけないじゃない」


と、小型艇を木端微塵に破壊するネーナ!キャプしていませんが、この時の両者の表情が非常に凶悪。

ガンダムスローネドライ

 遂に、王留美が退場。今度は引っ張りませんでした。しかしながら、ネーナに襲撃されるのはこれ1回で充分だったのでは...。


「散々人を物のように扱ってきた罰よ!あたしは生きる為なら何でもやるの。あたしが幸せになる為ならね。そうよ。イノベイターに従ってるのはその為。兄兄ズの仇だって討っちゃいないんだから。その時が来たら、盛大に喉元食いちぎってやるから」

ネーナ

「そういう君の役目も終わったよ。勝手をするものには罰を与えないと」

HARO

 突如低い声で話し始めるハロ。

 その言葉の主はリボンズ。

リボンズ

「君を裁くものが現れるよ」


 無論、HAROはヴェーダの端末であるからして、リボンズはヴェーダ経由でHAROを操ったのでしょう。

 ただ、画面の印象からすると、機械に対しても脳量子波を送って操作してしまう怪しげなエスパーになってしまってます。


 ここでふと、サーシェスがネーナの脳裏に浮かびます。


「まさか、あいつが...面白い。兄兄ズの仇を...」

「そうだね、ある意味仇ではある」


 現れたのはレグナントを駆るルイスでした。

ルイス

 レグナントは奇怪なモビルスーツ形態に変形し、為す術のないスローネドライをいたぶるように破壊していきます。


 ルイスに気付く刹那は、


「やめろ!ルイス・ハレヴィ!そんな復讐は!」


と叫ぶのですが、当然ルイスには届きません。いや、届いたかも知れませんが、聞く耳を持ちません。

 ルイスは、戦闘不能になるまでスローネドライを破壊し、ネーナを狙います。

レグナント

 ネーナは、


「あたしは作られて...戦わされて...こんな所で、死ねるかぁっ!」


と抗う姿勢を見せるのですが、ルイスは、


「そうね。死にたくないね。でも、パパとママは、そんな言葉すら言えなかったぁぁっ!」

ルイス

と復讐の牙を全開に。それにしても、ルイス、凄い表情ですな。「Vガンダム」のカテジナを思い出させます。まぁ、ルイス自体カテジナの投影キャラに見えますが。


 死に際のネーナの、


「畜生ぉぉぉぉぉっ!」

ネーナ

というセリフが、何ともネーナらしくていいです。

 ただ、ネーナ・トリニティというキャラクター、どうも消化不良な感じがしますね。

 結局、ルイスの敵という以上の役割は与えられなかったようです。出生等、謎が巧く機能しそうなキャラクターだっただけに、何となく残念です。

 王留美が言うところの、ネーナに「イノベイターを欺く為に働いてもらう」という点も、当人達が完全に退場してしまった為、真相は推測の領域へと追いやられてしまいました。


「やったよ...パパ、ママ、仇をとったよ...ガンダムを倒したよ!褒めてよ。よくやったって、言って!」

ルイス

 ルイスは精神を崩壊させます。

 「Ζガンダム」の最終話を思わせる場面です。まぁ、カミーユ本人の精神状態は、本人からすると幸福感に満たされていた印象がありますが、ルイスは逆ですね。



 エンディング後は、再び刹那 VS ブシドー。


「生きてきた!私はこの為に生きてきた!たとえイノベイターの傀儡に成り果てようとも!この武士道だけは!」


と劇的に熱いセリフを吐くブシドー。

 最初「このブシドーだけは!」と勘違いして、この人は「ミスター・ブシドー」という名をとうとう気に入ったのかと思ってしまいました(笑)。

 刹那と真剣勝負をする為だけに生きてきて、その為ならどういう境遇に置かれようと構わないというのは、ある意味ネーナと似ています。


 このセリフから、ファースト・シーズンのグラハムは「愛に生きる騎士」でしたが、セカンド・シーズンの彼は「宿命に殉ずる武士」を標榜していることが分かります。何となく。


 勝負は付かず、両者トランザムを発動。

トランザムライザー

スサノオのサランザム

 DNAの螺旋構造のような軌跡を描いて衝突!


「遂に、覚醒が...」


と呟くリジェネ。

リジェネ

 既に刹那に関する何かを掴んでいる様子です。


 そして、例のトランザムライザー全裸空間(笑)。

刹那とグラハム

「ここは一体...私は既に涅槃に居るというのか」

「違う」

「少年!?」


 涅槃とか、随分アジアンな文化にかぶれてますね。

 一応、ニルヴァーナといった語句が西欧にあるので、特に違和感は感じませんけど。


「ここは、量子が集中する場所だ」

「何を世迷言を」


 ほぅ、量子が集中...。もはや、科学的思考の入る余地はないような。

 でも、何となく納得してしまうのは、やっぱり刹那が「悟り」の境地に入っているような描写故か。


「分かるような気がする。イオリア・シュヘンベルグがガンダムを、いや、GNドライヴを作った訳が」

「何!?」

「武力介入はこの為の布石。イオリアの目的は、人類を革新に導くこと。そう、俺は、変革しようとしている」

刹那

 つまり刹那は、自分の今の状態こそが、イオリアの求めたものだと考えている、あるいは確信している様子なのです。

 となると、イオリアの言う変革とは、戦いの果てに悟った(「悟り」を開いた)者こそが変革の代表者(=人類初のイノベイター)となり、人類全体の変革を導いていく、ということでしょうか。


 さすれば、グラハムの言う「宿命」は正に宿命で、刹那との真剣勝負もまた、刹那を覚醒させる為に必要な道だったことになります。

 刹那は、グラハムをして「俺たちによって歪められた存在」と評しています(この発言こそ、刹那の「悟り」を象徴してます)が、その評をも正しいと考えると、ソレスタルビーイングこそが、実は世界を歪める為の存在であり、それによって生じた歪みを幾つも目の当たりにした何者かが、ツインドライヴに触れることで「悟り」を開き、歪んだ世界が反作用で一気に平滑なものへ変質するのを見届ける。

 そんな風に考えられはしないだろうか...と半ば深読みも交えて考えます。


 別にその真偽を議論する気はないんですけどね。あと4話見れば大体は片付く筈ですから。

 あくまで考えることを楽しんでいるだけです。


 ということで、この部分に関しては議論が不毛になるのは明らかなので、反論なしの方向で(笑)。