遂に放映最終月に突入した「ガンダム00」。
あの人が、この人が、と矢継ぎ早に繰り出されるそれぞれの人生模様。ファースト・シーズンの終盤並に死亡者が出る鬱展開が圧巻です。
今回は「ガンダム00」の世界においては、何にも進展がないというか、プライベートな話の積み重なりでホントに大したことのない話なのですが、各キャラクター個々人の世界に限定すると、随分と大きな動きがありました。
ざっと挙げてみると...、
- 刹那 ... 人類初のイノベイターに?
- ロックオン ... ニールと同じく刹那に銃口を向ける
- アレルヤ ... マリーにトレミーの操舵を勧める
- ティエリア ... 異様にピリピリムード
- 王留美 ... 刹那にヴェーダの所在を教えてネーナに殺される
- 紅龍 ... 王留美を庇ってネーナに殺される
- ネーナ ... ルイスに殺される
- リジェネ ... 自分の計画の為にネーナを使ったり
- ルイス ... 念願の敵討ちを果たすものの人格崩壊?
- クラウス ... 宇宙に上がるつもり
- ブシドー ... 刹那に果し合いを所望した結果丸裸(笑)
という感じですね。
何となく「Ζガンダム」終盤のムードに似ているような気がします。
今回一番のトピックは、刹那の変革。でも、これって「ボトムズ」なんですよねぇ。
前例として「ボトムズ」があるだけに、展開が読めちゃったというか、主人公がやっぱり特別でなければ、お話の落とし処がないよねぇ、だとか。
ただ、落とし処にイノベイターを持ってきたことで見えてくるのは、イノベイターという存在が富野監督のガンダムにおける「ニュータイプ」の翻案であろうということ。
その点は、一応巧妙に隠されてはいます。
例えば、ニュータイプは宇宙に上がった人々の中で自然発生し、強化人間はそのニュータイプを人工的に再現したものなのに対し、イノベイターは(現時点では)元々イオリア由来で人工的に作られたものであり、刹那はそこに向かって自己進化する存在。
つまり、出処と後続の存在が逆転しているわけです。
しかし、その本質を見れば、「宇宙という広い空間でも円滑にコミュニケーションが取れる存在」という根幹は全く同じです。
アムロやシャアはその能力の片鱗を見せながら、結局はエゴイズムを相手にぶつけることしか出来なかった。大幅に端折れば、「ファーストガンダム」~「逆襲のシャア」はそういう物語です。
ガンダムが「ファーストガンダム」だけで終わっていれば、「宇宙という広い空間でも円滑にコミュニケーションが取れる存在」を予感させるラストで幕切れを迎えられたのですが、その辺の論議は長くなるのでやめておきます。
では、この「ガンダム00」はどうなるのか。
ニュータイプの新しい解釈を見せて、綺麗に終わるのか、はたまた単なるマクガフィンで終わるのか。
刹那をあんな風に描写し、イノベイターを落とし処にした以上、マクガフィンでは許されないでしょう。物語の根幹ですから。
それでは、今回のお話を追ってみましょう。
冒頭は、前回ラストの直後と思われるシーンで、沙慈と刹那の会話。
アニューを撃った刹那に、別の方法は無かったのかと問う沙慈に、刹那はあれしか方法が無かったと答えます。
刹那は、アニューが何者かに操られていたと感じており、ルイスも同様だと言います。
沙慈は、戦場の模様を感覚で把握する刹那を怪訝に思い、
「最近の君はどこかおかしいよ。今までとは何かが...」
と思わず口に。
その時、調整の為トレミーが停電。
暗闇の中、瞳を輝かせる刹那...。
この金色瞳、イノベイターの記号としてすっかり定着した感がありますが、振り返ってみるとファースト・シーズンでは、ティエリアがヴェーダにアクセスする時ぐらいしか、この描写がないんですよね。
それから、脳量子波を使っている際の視覚的描写としても使われていますが、実は超兵が脳量子波を使う際には明確な描写がないんですよね。
マリーの瞳と、アレルヤの右目は金色に近い色をしていますが、一応その辺りを考慮した上で、色指定されているのかも知れません。
前回のアニューのセリフでちょっと気になったのですが、アニューはマリーを「Cレベルの脳量子使い」と言ってました。
要するに、イノベイターより脳量子波のレベルが劣ると言いたかったのだと思いますが、以前リジェネが「GN粒子を触媒とする脳量子波によるコミュニケーション」とか何とか言っており、私はずっと触媒を必要としない超兵の脳量子波を全くの別物だと解釈していました。
何となくそのあたりの設定が曖昧になっているのが気になります。最近はリボンズも、GN粒子があろうがなかろうが、構わず色んなキャラを遠隔操作しているし。
一方、とりあえず危機を脱して安堵するブリッジクルー一同。
しかし、ティエリアはイノベイターがまた卑劣な手段を使って来ないとも限らないと警戒します。
スメラギはティエリアの言をそれとなく諌めるのですが、アニューのような「仲間の裏切り」を目の当たりにして、クルーの中に疑惑に似たイヤなムードが漂っており、それをこれ以上盛り上げて士気を下げるのは得策ではないと考えたのでしょう。
フェルトは先の停電の際、謎の暗号通信(実は王留美が発信したもの)を受信。
ラグランジュ5に、建設途中のまま放置されているコロニーがあり、暗号通信はそのポイントを指していました。
刹那がどうしても行きたいとスメラギに言っており、またイアンも「リンダがラグランジュ5で研究を続けており、うまくいけば新装備も手に入る」と賛成したことを受け、トレミーは針路をとることに。
で、今回はどうも時間経過に関して分かり辛い面が多々あるのですが、まずはこの部分。
刹那とイアンが暗号通信のことを知る描写が一切抜け落ちている為、フェルトが通信を受け取ってからどのくらいの時間が経過したのか、今ひとつ分かりにくい。
もっと言うと、暗号通信が届いていた時に、既に刹那とイアンはそのことを知っていたかのように見えてしまいます。
一方(なのか?)、アレルヤはマリーに、ラッセの代わりに艦の操舵をやって欲しいと提案します。
戦場に出させないという、セルゲイとの約束を守る為には、マリーをブリッジに縛っておくしかないと、アレルヤは考えたのです。
当然、マリー(というよりソーマ)は反対。
アレルヤは「ソーマ・ピーリス」と呼んでまで、彼女を説得しようとするのですが...。
まだマリーはアンドレイを激しく憎悪しており、彼を討つ為に戦場に出ようとしているようです。
それで、ここでも時間経過がよく分からないのですが、刹那はダブルオーライザーで一足先にラグランジュ5へ向かうことに。
ライルが現れ、刹那に先の事(ボコボコ)を謝るのですが、パッと見、このシーンは冒頭から数時間とて経過していない印象を受けます。
ところが、ライルは「この間は、すまなかったな」(記憶不明瞭)と言っているので、冒頭からはそれなりに(数日単位で)経過しているのではないかと思われます。
何となく非建設的な端折りが目立つような。
ライルは「戦うぜ」と刹那に宣言するのですが、その本心は、カタロンでもソレスタルビーイングでもなく、自分の意志でイノベイターを潰すというものでした。
そして、刹那の背中に銃を向けるのですが...。
結局引き金を引くことはありません。
「兄さん...」
と呟くライル。
ここでニールの存在がいきなりクローズアップされるのには、ちょっとビックリ。
ここでニールを思い浮かべたライルの心情は全然分からないのですが、一つ解釈を立てるとすると、
『ニールの仇も刹那、ライルの仇も刹那』
ということではなかろうかと。
ニールはファーストシーズンで刹那に銃口を向けていますが、それは刹那が両親の命を奪ったKPSAの一員だったから。この時ニールは笑って銃を収めています。
ライルは、アニューを撃った刹那に少なからず憎悪を抱いており、詫びていつつも銃口を向けるという行動に出ています。銃を収めたニールの心境はどうだったのか、とライルは考え、「兄さん」と呟いてしまったのではないでしょうか。
続いて、その頃のアロウズの動きが一気に描写されます。
グッドマンは圧倒的な戦力でソレスタルビーイングを叩き、カタギリ司令の期待に応えるつもり。
この時点で、既に連邦軍はアロウズに吸収された格好なので、「圧倒的な戦力」も調達できるわけですね。
彼は、イノベイターやブシドー達ライセンサーを疎ましく思っており、指令どおりに動いてくれる優秀な人材を欲しています。
ただ、グッドマンの浅薄なところは、イノベイターを疎ましく思いつつも、アロウズがイノベイターの傀儡軍隊であることには深慮がないということ。
典型的な「井の中の蛙」なのです。
先の戦いでダブルオーライザーに一撃でやられたリヴァイヴとヒリング。
2人の回想により、刹那がアニューを撃った後、どう行動して戦況を終局に導いたかが判明します。
前回はアニューとライルのシーンが強力すぎて、この辺のことをすっかり忘れてました。
なお、ルイスのレグナントも早々にダブルオーライザーによって無力化されてます。レグナントを破壊しなかった理由は...もう分かりますよね。
「あの戦い方、モビルスーツの性能だけじゃない。ダブルオーのパイロットは革新を始めている」
「はぁ!?何を言って...」
「そうでなければ、説明がつかない」
「純粋種だと言いたいわけ?」
「刹那・F・セイエイ。彼が人類初のイノベイターとなるのか?」
リヴァイヴのセリフが、何となくシャアっぽいのはご愛嬌。
2人の会話にて初登場したターム「純粋種」。人類から自然発生的に出現するイノベイターという解釈でよろし?
リボンズが選民思想の持ち主なら、刹那は救世主ということか。何だかテーマが宗教的だなぁ。
ところで、ルイスはガンダムへの憎しみをさらに募らせており、アンドレイが話しかけるも邪魔者扱い。
アンドレイ、可哀想な人街道を爆走中ですな。
そこにブシドーが現れ、ブシドーとルイスに特命が下ったことを告げるのですが。
ルイス、ブシドー共にリボンズの影響下にあるのはご承知の通り。
リボンズが何をしたかったのかは、今回のお話を見てもさっぱり分かりませんが、私は、終盤に向けて人員整理をしているんだと思います(笑)。
つまり、制作陣の分身として、リストラの大鉈を振るっていると。
なお、アンドレイは、その特命に同行したいと進言。
ブシドーは、
「好きにすればいい。私と准尉の機体に付いて来れるとは思えんがな」
とアンドレイに言います。
思ったのですが、ブシドーは皮肉を言ってもあまりイヤミにならないですよね。
そういう魅力って、なかなか計算じゃ出せないと思うのです。中村悠一さんの演技が素晴らしいということなのだろうか。
さて、ここで少しだけカタロン陣営のことが語られます。
シーリンは無事クラウスに合流しました。死亡の予感を漂わせていましたが、例のマリナとの別行動のシーンは、特にそのあたりを考慮したものではなかったようです。
クラウスは、地上にとどまるのは危険だと考えており、宇宙に上がると言います。
シーリンはいつものように不安視するのですが、クラウスは、
「私は悲観しない。現に、我々やソレスタルビーイングとは、違うやり方で、自分達の思いを伝えようとしている者も居る」
と答え、マリナと子供達の歌が世界に広まっていることを示すのでした。
「人々が平和を求めているんだと思う。マリナ姫の歌を通して、争いがなくなることを。共に生きることを。我々は、人を否定することばかり考えて、人と人が分かり合えることを、その道を、見失っていたのかもしれない」
「分かり合う気持ち...マリナはずっとそれを止めて、その先にあるものを信じて...」
クラウスは結構な理想(楽観)主義者ですが、ここに来て、それが爆発。
これまで散々互いに被害者を出しておきながら、相互理解を掲げるとは...と、ちょっと首を傾げざるを得ません。
ここで思い出して欲しいのは、ライルがカタロンと精神的に決別し、個人的な意志でイノベイター殲滅を目標にし始めたということ。
一番近い思想の持ち主だった(と勝手に私が思っていた)、クラウスとライルは、もう同じ方向に視線を向けていないわけです。
逆に、マリナと子供達の歌。
これは意外に自然な流れなのかな、という印象。マリナは徹頭徹尾、銃を握ることはなかったし、「こんなことしか出来ない」と自覚しながら歌を作っていたし。
ここで思い出されるのは沙慈の存在。つまり、刹那はマリナと沙慈という、2人の徹底的な平和主義者(この呼び方は適当でないかも知れませんが)に囲まれ、変革を余儀なくされたように見えるのです。これはなかなか巧いところ。
既にマリナにはメインヒロインたる風格や扱いはないように思われますが、主人公に影響を与える者としては、充分に機能していると考えられます。
後半は、生きていた王留美、紅龍と、さらに追い討ちをかけるネーナ。
そして、グラハム・エーカーの再来と盛り沢山な内容です。
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