ライルとアニューの悲恋を徹底的に押し出した作風。
演出もそこにターゲットを絞ったものと見え、あまりにツボにハマるカットやBGMの間が秀逸。これはこれで実に感動的です。
けれども、そこにフォーカスしすぎて、「そこはどうなの」的なポイントも多々。
特に、ソレスタルビーイングの意識とかイデオロギーとかの感覚は、もうどうでも良くなっているような気がします。
トレミーのクルーは、それぞれの目的がバラバラであり、私情でしか行動していない印象すら抱かせます。現在はかろうじて結果を同じベクトルに向けてますが。
ソレスタルビーイングはトレミーだけでなく、他にも多数の人員を抱えているものであり、ファースト・シーズンにあった「監視者」といった存在は、ほぼ完全に無効化されているきらいがあります。
つまり、最前線で行動するトレミーがこんな調子では、ソレスタルビーイングの理念も何もないわけで、そこを封印してキャラクタードラマにひた走る感覚は、ちょっとどうかなと。
一方、イノベイター関連は残り話数が少ないながらも、謎を上乗せして興味を引いており、このあたりはラストへの期待を加速させます。
しかし、ここに来て私は一つのペシミスティックな予想を立てつつあります。
それは、「来るべき対話」という言葉が、実はマクガフィンではないか、ということ。
考えてみれば、「来るべき対話」の中身は何でもいいわけで、イノベイターはその言葉を信じてリボンズの思惑に従い動いており、ソレスタルビーイングはそうやって動くイノベイターを何とかしようと奮闘しているだけです。
イオリアの思想すら、ソレスタルビーイングとイノベイター双方の動機付けになっているに過ぎず、思想の中身は、極端に言えば何でもいいのです。
作劇上、イノベイター(=リボンズ)の完全勝利が有り得ないことは明らか。
となれば、リボンズの言う「来るべき対話」は果たされないことになる。
刹那が何かにブレイクスルーを果たし、その「来るべき対話」を担うことになったとしても、実際はそこを描かずとも物語を終わらせることは十分可能です。
つまり、その辺の謎は曖昧なまま完結するのではないかと思うのです。
私は、別にそれでいいと思います。
後から明かされて拍子抜けとか、よくある話じゃないですか。
話が逸れました。
さて、今回のお話は...。
アニューがイノベイターとして覚醒し、リヴァイヴと共にダブルオーライザー奪取を企むも、スメラギの戦術によって失敗。
しかし、ただでは起きないイノベイターは、トレミーやオーライザーに重大な被害をもたらし、それを好機に攻撃を加えてきます。
その中で、ライルとアニューは...。
...といった感じ。
では、順にストーリーを追ってみます。
リヴァイヴにヴェーダの所在を尋問する一同。
ヴェーダは本来、イノベイターが使う為に用意されたものだと言うリヴァイヴに、スメラギはイオリア計画の真意を問います。
リヴァイヴは、「来るべき対話の為」と答えるのですが、すかさずアレルヤが、
「話が見えないな」
と畳み掛けます。しかし、リヴァイヴは余裕で、
「それが人間の限界ですよ」
と応答。ロックオンは、
「てめぇが万能だとは思えないがな。現にこうして捕まってる」
と皮肉たっぷりに揶揄するのですが、リヴァイヴは、
「わざと、だとしたら?」
と答えます。
そこに、ラッセがアニューに撃たれ、ミレイナが人質にとられたというフェルトの連絡が!
アニューがイノベイターだと知り、驚く一同。
ラッセ撃たれてしまいましたね。ただ、急所は外れていたようで、もしかするとアニューの中に残っていた罪悪感といったものが、そうさせたのかも知れません。
アニューはリヴァイヴと同タイプであり、思考を繋ぐことが出来るといいます。
ロックオンは、薄々感づいていたのでしょう。遂にこの時が来たかといった感じの、厳しい表情を浮かべます。
リヴァイヴが男性型ということからか、ロックオン以外はアニューとの容貌の近似性に気付かなかったようですが、キャラクターデザイン的には瓜二つなので、仕掛けとしては少々弱かったかな。
リヴァイヴは、自分に何かあればアニューがミレイナを手にかけると脅迫し、余裕綽々で行動を開始。
「アニュー、後は手筈どおりに」
と脳量子波で指示しています。
この時、アニューはダブルオーガンダムを強制発進させようとしていたようです。アニューがダブルオーガンダムを、リヴァイヴがオーライザーを奪取する予定だったのでしょう。
館内システムはウイルスに汚染され、照明などが制御不能に。アニューは、その卓抜した頭脳でトレミーのシステムを熟知している筈ですから、このくらいのハッキングは当然ですね。
一同は手分けしてミレイナを探し始めます。
刹那はすぐに「こっちだ」と言ってミレイナのところへ辿り着いていますが、脳量子波を感知したものと推測出来ます。
はっきりとは描かれていませんけれど。
ここでマリーが登場。脳量子波を感知してアニューの元へ。
アニュー「あなたの存在を失念していたわ。Cレベルの脳量子使い。出来損ないの超兵」
マリー「全ての元凶はお前たちだ。大佐の仇を!」
しかし、ロックオンが止めに入ります。
「ライル...」
あからさまに動揺するところが、何となく可愛らしいですね。
「俺を置いて行っちまう気か」
「私と一緒に来る?世界の変革が見られるわよ」
「オーライ、乗ったぜその話。おまけにケルディムも付けてやるよ。そういうわけだ刹那。今まで世話になったな」
「そうか、分かった!」
ロックオンを撃つ刹那。
一瞬ロックオンを心配するアニュー。
ロックオンは、隙を見せたアニューからミレイナを奪います。
刹那「大丈夫か?」
ロックオン「当てることねぇだろう...ったく」
一流の芝居でした。
「人質を奪還された?...女なんかに作るから、情に流されたりする」
と、リヴァイヴはオーライザーを奪って発進させます。
リヴァイヴはイノベイターの性差について、ある種の差別意識を抱いているようです。
確かにヒリングに対しても、リヴァイヴはあまりいい印象を抱いていない感じがします。
ダブルオーガンダムを牽引し、ケルディムガンダムがトランザムを発動させてリヴァイヴのオーライザーに追いつきます。
リヴァイヴ「この機体を傷つけるつもりかい?」
刹那「俺たちには、優れた戦術予報士が居る」
直後、赤ハロがオーライザーの制御を奪い、ダブルオーライザーへのドッキングモードに移行。
このあたり、なかなか爽快に事が進んでいきます。
「ロックオンの言った通り、万能には程遠いようだな」
と刹那。
「仕方ない、オーライザーは諦めるよ。でも、手土産の一つぐらいは、欲しいな!」
と、オーライザーのコクピットを破壊して脱出するリヴァイヴ。
当然、オーライザーの出力がダウンします。
タダでは起きないイノベイターという感覚が活写されていますね。
しかも、これは単なる腹いせではなく、ちゃんと後の襲撃に意味をもたらします。
一方、アニューの乗る小型艇を狙うロックオン。
しかし、
「私を撃つの?」
というアニューの幻影に、ロックオンはトリガーを引けません。
「何て情けない男だ!ライル・ディランディ!俺の覚悟はこんなものか!こんなぁっ!」
三木さんの演技のテンションが凄まじい為、このロックオンは実に痛々しい。
「ホントは愛してるのよ...ライル」
アニューのこの言葉の真意は何か。
再三、私はアニューを無自覚スパイだと言ってきましたが、このセリフに触れても、結局その説は揺らぎません。
恐らく、アニューが一般人として放たれた際、イノベイターとしての自我を抑制する処置を施されたものと思われます。
リヴァイヴが近くに来るまで、本当に無自覚であり、リヴァイヴが接近した後のアニューはイノベイターとしての自我が覚醒しつつも、それまでのアニューの自我と同一です。
難しいですが、突如「元々はイノベイターである」という記憶が蘇った、とでも言えばいいでしょうか。
引き合いに出す話がちょっとズレるかも知れませんが、「スパイ大作戦」という古いアメリカのTVドラマに、主人公の女スパイが事故で記憶を失い、そのまま罠にはめる筈の男と恋に落ちるというエピソードがあります。
そのエピソードは、最終的に記憶が戻り、立場を利用してミッションを達成するという筋書きなのですが、エンディングで、女スパイがふと悲しげな表情をするのです。
アニューの様子は、この女スパイによく似ています。
ただ、アニューの場合そのあたりの心情描写があまり徹底されてなくて、それが今回の「?」な感覚を助長している気がします。
愛していると宣言する割には、結構ライルを揶揄するような事を平気で言っているし、躊躇する時とそうでない時の差が激しすぎます。
一応、脳量子波の影響を受けている描写を挿入して、アニューの性格描写を切り替えたりしているのですが、実際はどこまで本気なのか分からないような描写になってもいます。
さてその頃、リボンズはルイスを自室に呼んでいました。
この2人の会話で、ルイスの常用していた薬が細胞異常を抑制する薬だったことが判明。
そして、モビルアーマー・レグナントがルイスに与えられます。
エンプラスはこれのプロトタイプだったということですね。
「人類初のイノベイターとなって、この世界を導いて欲しい。いいね、ルイス・ハレヴィ」
「分かってるわ、アルマーク」
「アルマーク」と言うあたりに、2人の関係の特殊性が現れています。
それにしても、ルイスが「人類初のイノベイター」とされているとは。明確に脳量子波を使う描写も登場しました。
なお、薬の効能が判明したことで、ルイスの強化人間っぽい発作はフェイクだった...と言いたいところですが、この薬、ルイスのイノベイター化に伴う苦痛を取り除くものかも知れません。
ルイスのイノベイター化に関しては、サプライズとして用意された要素であり、あんまり深く物語には関わってこないのではないか、と勝手に予想してますが。
どうなんでしょう?
一方、トレミーのシステムはズタズタにされ、復旧までかなりの時間を要することに。
しばらくダブルオーガンダムも出せないというイアンの報告も。
しかし、イアンはオーライザーのコクピットをユニットごと取り替えて、復旧をなるべく早く済ませるんですから、大したものです。
その頃、ロックオンと刹那は。
「アニュー、どうしてなんだよ、くそっ!」
「彼女は、戦場に出てくるぞ。この機会を逃すとは思えない」
「分かってるよ。言われなくてもやる事はやる。相手はイノベイターだ。俺たちの敵だ。トリガーぐらい...」
「強がるな。もしもの時は俺が引く。その時は俺を恨めばいい」
「カッコつけんなよ、ガキが」
「お前には、彼女と戦う理由がない」
「あるだろう!」
「戦えない理由のほうが強い」
「...」
このシーンのロックオンは、三木さんがわざと狙っているとしか思えないほど、イタいキャラになっています。特に「ガキが」と揶揄するあたり、なかなか衝撃的です。
アニューがイノベイターだったことに関しては、薄々感づいていつつも、やはりショックが大きかったという展開がいいです。
ファースト・シーズンと比べ、私情挟みまくりなガンダム・マイスターですが、そこが良いという人と、そこが悪いという人、両方があると思います。
なお、この間のトレミーの操舵はティエリアが担当していましたが、
「心許ないのは分かってるわ」
と言いつつスメラギが操舵を担当することに。一応、艦の操舵技術を持っているようです。
交代したティエリアは迎撃に就きます。
後半は、イノベイター達の追撃です。
km
人それぞれ目的がバラバラでありながらベクトルがとりあえず「戦争根絶」であったり、多少の私情が入るのはファーストシーズンも同じな気がします。程度の差はあると思いますけど。
「監視者」の存在も、4年前にCBが滅ぶのが計画の内だったのから、現在それが機能していない(存在しない)のはある意味当然、なのかな?
セカンドシーズンは「武力による戦争根絶」ではなく、「打倒アロウズ」のみが目的になってますよね。劇中で刹那だか誰かが「違う、俺たちの標的はアロウズだ」(曖昧)とか何とか言ってましたし。
あくまでも戦争根絶にこだわるなら、一話でシーリンが心配していたようにカタロンや、連邦がその対象になってもいいはず。ファーストシーズンでもそんな話ありましたしね。
SirMiles(管理人)
コメントありがとうございます。
確かに、程度はあれファースト・シーズンにも私情入りまくりなのは、否めないところです。
まぁこれは、あくまで好みの問題だとは思いますが、私はファーストガンダムとかゼータあたりの雰囲気が好きなので、ファースト・シーズンにあった「何となく政治的で難しそうな雰囲気」が好きだったんですね。
セカンド・シーズンは各キャラの心情描写など、非常に見応えがあって、これはこれで大好きなのですが、ちょっと冷静に見てしまうと、そのテンションに付いて行けなかったり(笑)。
アレルヤが大好き
こんにちは。私はガンダムシリーズ初視聴なのですが、「紛争根絶の為の武力介入」というイオリア・シュヘンベルグの理念がとっても面白いなと思って見始めたので、それを実現しようとしているCBが好きでした。
ファーストシーズン前半だと、命令違反をして人命救助をしたアレルヤが営巣に入れられたり「君はガンダムマイスターに相応しくない」と言われたりする訳です。
セカンドシーズンは刹那やティエリアは成長し情緒豊かになるのですが、例えばアレルヤがアリオスを使ってマリーを取り戻すと言うところなど、ティエリア、そこでこそ否定してやってよ、ガンダムの個人目的使用反対!という気持で一杯でした。
「イオリアにガンダムを託されたマイスターズが自分たちの意志で戦う。」というのもいいですが、今のところ、彼らの戦う目的というのがあまり崇高なものに思えないです。それなりのものがあるのだとは思うのですが、視聴者に伝わってこない。
セカンドシーズンでも、トレミークルーの他にもCBには多くのメンバーがまだいる描写があったので、その理念というものは当然あるべきなのではと思うのですが。
セカンドシーズンはエモーショナルにするという監督の発言があったと記憶していますがし、恋愛要素は尺の都合でファーストシーズンに入れられなかったとも聞いています。セカンドシーズンの方が面白くなったという方も多いとは思いますが、私は、情緒性が足りないくらいのファーストシーズン前半の方が面白かったです。
一年半わくわくしていたガンダム00、せめてファーストシーズンの始まり方に私が抱いた期待感を裏切らない終わり方をしてくれるように期待しています。