当たり前ですが、やっぱり静かな話の後は派手な話が来ますね。
イノベイターからヴェーダの奪還を目論むソレスタルビーイング。作戦はほぼ順調に進行するかに思えたが...という筋書き。
ただ、それに全員が一丸となって邁進するわけではなく、刹那はあくまで沙慈のルイス奪還をサポートするという役割を重視。実質的にイノベイター確保を担当したのはティエリアのみで、ロックオンやアレルヤ、そしてマリーはトレミー防衛戦に徹しています。
ドラマとしては、沙慈とルイスがらみが見応えある話ではありましたが、スメラギを中心とした戦術モノとして見た場合、結構ちぐはぐというか、力押しな作戦で、トリッキーな面白味といったものが感じられなくて残念。
また、ちょっと沙慈&刹那の出撃が個人的動機になり過ぎていて、トランザムライザーもその為だけの落とし処として機能しています。その割には、結局、沙慈の戦いの意味を再確認するというヌルい展開に帰結してしまい、カタルシスもない。
むしろ、エンディング前のアニューと、エンディング後の王留美が鮮烈だった為、何となく本編がそこに至るまでの消化エピソードに見えなくもない。
画面は派手なのですが、ドラマの充実度は逆にやや低かったかな、と思わせるエピソードでした。
さて、基本的な流れとしては、アロウズの追撃を逆手に取り、イノベイターを確保し、ヴェーダの所在等を尋問しようという作戦を展開するというもの。
その一方で、沙慈と刹那は敵に切り込みつつ、ルイスを奪還するという行動をとります。
では、流れを追ってみましょう。
マリナやクラウス達の隠れ家が保安局に見つかって襲撃されたのは、前回ラスト。
マリナが子供を庇って撃たれるか...という引っ張りでしたが、当然というか、拍子抜けというか、銃声はクラウスのものでした。
クラウスが怒りに燃えながら抵抗している間、マリナとシーリン、そして子供達は20世紀に作られた防空壕で脱出します。
途中、シーリンがマリナに護身用の銃を手渡すのですが、マリナはシーリンの銃を受け取りません。
「それを持ったら、この子たちの瞳を、真っ直ぐ見られなくなるから...」
いいセリフなんですが、もしもの時に子供達を守ることが出来ないという矛盾もはらんでいます。
マリナ周りは、とりあえず美談にしておくという方針なのかも知れませんが、その辺りには触れられていません。
シーリンも、マリナの態度を批判するのですが、主に「銃を取らない戦い」への理解度が低い故の批判という雰囲気になっています。
その頃、トレミーとアロウズの戦闘がたけなわに。
臨戦態勢をとるガンダム。
刹那と沙慈の乗るダブルオーライザーが、先行して敵を叩きに行きます。
そして、リヴァイヴのガデッサに、ティエリアのセラヴィーガンダムが迫る!
一方で、勝手に先行してアンドレイを探すマリー。
「どこに居る!アンドレイ少尉!」
ロックオンはアニューを思いつつアロウズのモビルスーツを次々と撃破していきます。
「お前らをぶちのめせば、アニューが何処の誰だろうが!」
このセリフ、アニューの出自の曖昧さに疑問を抱きつつ、それを否定するライルの葛藤が見え隠れします。
あまり目立たないセリフですが、今回のエンディングへとダイレクトにリンクしていきます。
その頃、リボンズは、脳量子波で戦況の報告を受けていました。
刹那の細胞異常が致死レベルに達しているはず、というヴェーダの予測がありながら、刹那が特に不足なく戦闘に参加していることを知り、
「まさか、変革を始めたというのか。刹那・F・セイエイ」
と呟きます。
このセリフの意味は非常に曖昧で、というよりわざと曖昧にされているようで、刹那自身は「意識の変革」を自覚しており、一方のリボンズは刹那の「肉体的な変革」を示唆しているように見えます。
前回、脳量子波に反応を見せる刹那の描写があったのですが、刹那はやはりイノベイターに近い者、あるいはそれを超える者として設定されているような印象が、少なからず出てきていますね。
その刹那は、ヒリングの急襲にトランザムを発動。そして、トレミーに接近する隕石を排除すべく急行します。
偽装隕石に気付いたのは沙慈。ルイスだと直感するあたりで、沙慈のキャラを立てています。
このトランザムライザーの加速粒子の影響で、ハレルヤがお目覚め。
隕石からはアンドレイとルイスのアヘッドが出現。
スメラギの指示でラッセが迎撃ミサイル発射しようとしたその時、刹那と沙慈の「やめろぉぉぉっ!」という脳量子波が!
「ずっと待ってた!会いたかった!」
「兵器ではなく、破壊者でもなく、俺と、ガンダムは、変わる!」
このシーンなんですよね、問題は。
刹那はルイス以外のモビルスーツをかなり落としているように見えるのですが、ルイスだけは落とさせまいとしているのです。
ドラマの流れ的に、これは当たり前と言えば当たり前のことなんですが、
「兵器ではなく、破壊者でもなく、俺と、ガンダムは、変わる!」
とまでは言えないんじゃないかと。
引き金を引けない沙慈に影響されて、あらゆるモビルスーツのパイロット生還率を上げつつ無力化するという戦い方を展開するのなら分かるのですが、ちょっと中途半端なんですよね。
私情に流されない刹那が、私情で行動する刹那へと「変革」していくのでした...(う~む)。
ルイスは、脳量子波を通じて沙慈の声を聞きます。
トランザムライザーの粒子放出量が、通常の7倍を示しており、結果として、刹那の声はトレミーのクルーにも聞こえたのです。
「聴こえたわ刹那。あなたの声が、あなたの想いが...」
沙慈に影響された刹那に、更にスメラギが影響されるという流れなのか。
残り話数が少ないながらも、そのあたりは膨らませてくるのではないでしょうか。
互いの意識に干渉し合い、幻覚の中にある、沙慈とルイスの二人。
「この景色を、もう一度君と見ようと、そう思ったんだ」
「もう、会わないと決めていたのに」
「でも、僕たちはこうして出会えた。ずっと待っていたんだ。君を...この宇宙で。戻ろう、ルイス。あの頃へ」
この後の沙慈のセリフも、「ちょっと待て」な感じがしました。
というのも、散々沙慈は現実を見てきているわけで、自分達がここで戦場からリタイアしても、「日常」と呼べるものには戻れないのではないか、という気がしたからです。
沙慈もルイスも、最前線のあらゆるものを見過ぎて来た以上、それらを無視して連邦政府の庇護に預かることは出来ないのではないかと思うのです。
私は、これに対するルイスの答えを期待しました。勿論、
「出来ない」
とルイスは答えます。
しかし、前述のような理由で「戻れない」と言うのではなく、あくまで「ソレスタルビーイングを倒す為、そして両親の敵を討つために」という私怨を振りかざすのです。
つまり、この2人、こうやって数奇な再会を果たしても、結局「何も変わってねぇ」ということです。
終盤、沙慈は「何も変わらない」と呟くのですが、この状況とリンクさせているのなら、手放しで「凄い」と言いたい。
この「幻覚」には続きがあって、「自分の意志で変わった」と言うルイスに、沙慈が「ウソだ」と言うくだりがあります。
ルイスが本当は優しいこと、わがままを言って相手の気を引く不器用なところ、本当は寂しがり屋なことなどを並べて、沙慈はルイスにアピールしていきます。
こういう極々プライベートなアプローチには、好感が持てるところで、大袈裟なイデオロギーを振りかざすルイスに対し、徹底的に個人的な事柄で切り込んでいく様子は、素直に涙を誘うものでしょう。
ここでアンドレイが登場。
「奇怪な幻術で、准尉を惑わして!」
と、どこかで聞いたようなセリフ。
「邪魔だ」とダブルオーライザーに跳ね飛ばされる姿が、やや可哀想です。
一方、リヴァイヴのガデッサと相まみえるティエリアのセラヴィーガンダム。
ティエリアはトランザムを発動させ、一気にガデッサを破壊します。
当然の如く脱出するリヴァイヴ。しかし、機動性に勝るセラフィムガンダムが脱出艇を追い、遂に確保。
「君には聞きたいことがある。答えてもらうぞ、イノベイター!」
と詰め寄るティエリア。
リヴァイヴは、沈黙して素直に従っています。勿論「ある目的の為」にわざと捕まったわけです。
実際ソレスタルビーイングは、本作戦の当初の目的をここで果たしたことになります。
しかし、まだルイスとアンドレイを巡る戦闘は継続中でした。
マリーがGNアーチャーでアンドレイを襲撃します。
「何故だ!何故大佐を殺した!」
「ピーリス中尉...なぜ生きて!」
「答えろ!」
「あなたも、裏切り者かぁっ!」
「貴様が言うセリフかぁっ!」
もはや両者とも作戦などお構いなしになっているのですが、それだけ私怨絡みが増大している様子が伺えて、なかなか迫力があります。
結局、アンドレイはルイスのアヘッドを牽引して撤退していきます。
マリーは「大佐の敵」であるアンドレイをなおも追おうとするのですが、我に返った(?)アレルヤが制止します。
「やめろぉぉっ!」
という沙慈の声と共に迫るダブルオーライザー。
「もうやめてくれ...何も、変わらない。敵を討っても、誰も生き返ったりしない。悲しみが増えるだけだ。こんなことしてたら、皆どんどんおかしくなって、どこにも、行けなくなる。前にすら進めずに...」
この沙慈の訴えが、各々の心に響いていきます。
今回のこのバトル、沙慈がソレスタルビーイングにおけるキーパーソンになっていく過程だったんですね。
遠くからこの戦闘を眺めていたブシドーさんは、
「とんだ茶番だ。あのようなぬるい戦い。私の好敵手であることを拒むか、少年。ならば、私にも考えがある」
と何やら意味深な発言。
刹那の戦闘は決してぬるいものではなかったと思いますが、ルイス関係の行動に関して、何か思うところがあったのでしょう。
修羅の如く、戦場で破壊の権化と化す刹那であって欲しかった、というところか。
その頃、シーリンはあらかじめ決めておいた、クラウスとの合流ポイントへ、マリナや子供達と共に向かっていました。
マリナは子供達と、先に休憩の為の小屋へ行くよう、シーリンに言われます。
シーリンは、様子を見る為別の道へ。
何となくイヤな予感がするのは私だけでしょうか。
そして、戦闘後のトレミー。
「沙慈...」
という心配そうな刹那の呼びかけに対し、
「戦うよ。ルイスを取り戻す為に、僕は、僕の戦いをする!」
と沙慈。
ここで、刹那は沙慈の、沙慈は刹那の影響を受けていることが明確に。
極端に戦闘へ特化した人間と、極端に戦闘から逃避しようとする人間が出会い、互いが異なる自分を模索するという図式ですね。
そしてこちらは、戦闘後のアロウズ。
ルイスは沙慈を思い、膝を抱えて漂っています。
その様子を見るアンドレイ。
アンドレイの、
「准尉、思いを断ち切れないのか。ならば私が果たそう。君が望むことを。君の願いを」
というモノローグが登場。
勘違い男道まっしぐらですね(笑)。もう、ブシドーとは違うキレっぷりで、このまま突っ走って欲しいところです。
後半は、イノベイターの策略が本格化します。
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