#18 交錯する想い その1

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 何となく「ガンダム00」では恒例になってしまった(?)、盛り上がり前の状況整理編といった雰囲気。

 タイトルが示すように、各キャラクターが特定の相手に対する想いを抱くものの、なかなかクロスしていかないという状況を描き、今後の展開に繋げていく感じです。


 やや唐突に、前回ラストから4ヶ月を経過させ、その間を少し曖昧にすることで、各キャラクターの変化を如実に見せるという手法がとられています。

 これにより、4ヶ月の間何があったかを緩やかに想像させ、また、その辺の描写を省くことで、別の重要事項に時間を割くといったことが可能になります。


 「ガンダム00」の油断ならんところは、こういう地味なエピソードに新情報をポンポンと入れてくること。

 なので、その辺りを取りこぼしの無いよう、取り上げてみようと思います。

 冒頭は、連邦政府大統領の演説から。

連邦政府初代大統領

 アフリカタワー崩落事件は「ブレイク・ピラー」と名付けられ、そこから4ヶ月が経過し、ようやく復興、送電が再開されたと語られます。

 この発表がなかなか曲者で、「メメントモリによって、軌道エレベーターの完全崩壊は免れた」とされています。

 連邦政府内で、実際にメメントモリがどのように使われたかを知る者は多かったものと思われますが、この辺りもちゃんとヴェーダによって情報統制されたのでしょうか。

 連邦軍の指揮権は、アロウズに完全に集約されたと発表しており、軍内部でもある種の「口止め」が行われたものと想像できます。


 ここで重要なのは、カティが行方不明であるということ。

 カティはメメントモリの真実を知っており、またセルゲイが死んだことで、自らの身の危険を感じたか、あるいはいよいよ反連邦の意志を固めて準備に入ったか...。


 この状況を考えると、セルゲイが密使としてハーキュリーの元へ送られたのは、「親友」としての交渉力に期待したわけでなく、口封じだった可能性が高いということでしょうね。

 沙慈を逃がし、マリーを逃がし、ハーキュリーのクーデターを事前に知っていたというセルゲイの行動は、ヴェーダに、そしてアロウズ上層部には筒抜けだったのでしょう。

 カティの思想も、ある程度関知されていたと見ていいのではないでしょうか。



 一方、トレミーはメメントモリ2号機を破壊すべく活動を開始。

 今回唯一の、本格的バトルシーンになります。


 ロックオンのケルディムガンダムが後方支援、ティエリアのセラヴィーガンダムが突破口を開き、そこにアレルヤのアリオスガンダムが切り込み、刹那のダブルオーライザーが目標破壊を担うという、定石な戦術がスピーディ。


 アリオスガンダムとGNアーチャーのドッキング形態である、アーチャーアリオスにはアレルヤとマリーが乗っています。

 戦闘中、マリーが勝手にGNアーチャーを分離させ、突入していきます。

 心配するアレルヤに、マリーのフォローを指示する刹那が良い感じ。


 図らずもアレルヤのヘタレっぷり(笑)と刹那の頼もしさが強調される結果に...。


 沙慈は刹那と共にダブルオーライザーに搭乗しています。


「協力するのは今回だけだ。衛星兵器を破壊する為なら...」


と沙慈のモノローグが。

 後で分かることですが、どうも4ヶ月の間、トレミーは戦闘行為を最小限にとどめて逃亡に明け暮れていたらしいのです。

 つまり、前回の出撃以来、沙慈がオーライザーに乗るのは久々ということ。

 沙慈は「衛星兵器の破壊」という、生命を損なわない作戦ならば、何とか出撃を決意できるようです。この時点では。


 刹那はトランザムライザーでメメントモリを破壊!

メメントモリ

 例の巨大ビームサーベルですね。



 さて、ここで場面転換。

 各地に潜伏しているカタロンの内の一つと思われる場所が登場。


 親ソレスタルビーイング派のクラウスばかりがクローズアップされてきましたが、中には「ソレスタルビーイングのメメントモリ攻撃により、アロウズの目がそちらに向く」と、別の実効性を期待している者が居ます。

 結局そこは、オートマトンによる襲撃を受けてしまうのですが...。


 アロウズの反連邦勢力殲滅は本格的であるようです。



 一方、クラウス、シーリン、マリナ達は片田舎の家屋に隠れています。

マリナと子供達

 戦力の建て直し等を熱弁するクラウスに対し、シーリンは、


「怖いのよクラウス。私達は、抗えない大きなうねりの中にいるような気がして...」


と不安げ。

シーリン

 その時、ラジオから何故かマリナと子供達の「TOMMOROW」が流れ始めます。

 どういうルートで流しているのかは不明。マスコミ関係に明るい池田が関与しているのかも知れませんが。



 メメントモリ破壊作戦の後のトレミー。

 マリーは厳しい目つきで、


「何か?」


と沙慈に。

マリー

 マリーのシーンは続き、今度はアレルヤが、


「マリー!」


と呼びかけると、マリーは、


「その名で呼ぶなと何度言えば分かる!私はソーマ・ピーリス。超人機関の超兵1号だ!」


と返します。


 セルゲイを目前で失い、それを討ったのがアンドレイだと知ったマリーは、ソーマ・ピーリスに戻ったのか。

 アレルヤのかわいそうな表情。

アレルヤ


「私が欲しくても手に入れられないものを、なぜそう簡単に捨てられるの?どうして...」


と呟くマリーの表情は、ソーマ・ピーリスというよりは、マリー・パーファシーのものに見えましたが...。


 アレルヤは、


「大佐に、彼女を二度と戦わせないと誓ったというのに、僕は...」


と後悔しきり。それに対し、ロックオンは、


「しばらくそっとしておけ。心の整理をつけるのに、時間は必要だ」


と言います。さらに会話は続き、


「しかし彼女に危険な真似を...」

「自分の考えだけを押しつけんなよ。大切に思ってるなら、理解してやれ。戦いたいという彼女の気持ちを」


とロックオンが締めます。

 ロックオンは、マリーが「ソーマ・ピーリス」を名乗るのは、虚勢を張っている所為ではないかと考えているようです。

 マリーは、自らを超兵と呼ぶことで、セルゲイを死に追いやった戦場に、身を投じたかったのか。

 また、セルゲイの死にショックを受け、自分を娘だと言ってくれたセルゲイの為に、セルゲイが父性愛を注いでくれた「ソーマ・ピーリス」でありたいと考えたのか。


 キャスト・クレジットが一貫して「ソーマ・ピーリス」だったのは、暗に今回の事態を示していたのかも。



 なお、アレルヤがウジウジしている間、沙慈もウジウジしています...。



 その頃、刹那は医療カプセルの中。

刹那

 擬似GN粒子の影響で、刹那の肩口の傷を中心に、代謝障害が広がっているというアニューの見解。さすがは再生医療の権威と言われるだけあります。

 ただ、刹那の場合、代謝障害の進行は極めて緩やからしい。しかも、ラッセの症状とはまるで違うとアニューは言います。


「何かの抑制が働いているとしか...」


というアニューの呟き。

 それが意味するところを無理矢理考えてみましたが、ダブルオーライザーのトランザムにその抑制効果があるのか、はたまた刹那に実はイノベイター的資質があったりして、とか。

 「ボトムズ」におけるキリコ・キュービィが生まれながらの「パーフェクト・ソルジャー」であったように、後者の展開もなくはないですね。


 ティエリアの、


「こういう時に、ヴェーダにアクセスできれば...」


というモノローグから察するに、ヴェーダならば、刹那の症状について、何らかの情報を保有しているかも知れません。

 なお、このティエリアのモノローグは、そのまま今回のラストとリンクします。

ティエリア


 刹那は治療中、ダブルオーガンダムを手に入れようとするイノベイターの策略を思い起こし、ツインドライヴの情報を手に入れたがっていると推測します。

 つまりは、リボンズがツインドライヴの情報を握っていないわけで、


「切り札は、俺の...ガンダム!」


ということになるのです。

 この「切り札」の意味は、イノベイターに対抗する際に優位に立つ為の切り札という意味でしょう。



 続いて、そのイノベイターに関する描写が挿入されます。


 王留美とリボンズの会話は興味深いので、ほぼ全て採録。

リボンズと王留美

王留美「正直なところ、今の状況に落胆していますわ」

リボンズ「落胆?」

王留美「情報統制と軍備増強。旧世代のやり方を世界規模に広げただけ。この後どうするおつもりです?」

リボンズ「人間が知る必要はないね。」

王留美「いずれ、全ての人類はイノベイターとなるのではなくて?」

リボンズ「それは違うよ。時代の変革期には、古きもの悪しきものを切り捨てねばならない。例えば富や権力を当たり前のように持ち、同種でありながら、大衆を上から見下ろす旧世代の考え方とか」

王留美「私のことを仰っているの?」

リボンズ「望まぬとも時代に取り残されていくのさ。君の美貌が時と共に劣化して行くように。華やかかりし頃の過去に固執し、他者を傷つけて安寧を得る。いけないことだと分かっているのに、やめることすら出来ないんだ。誰かが諭してやる必要があると思わないかい?」

王留美「それが、あなた方だと?」

リボンズ「人間の価値観は狭すぎるんだ。僕らはもっと広い視野で物事を考えている」

王留美「そうですか。なら、その広い世界の変革、期待しておりますわ」

リボンズ「一つ言っておくよ。君はイノベイターにはなれない」

王留美「!」

リボンズ「悲しいけど、それが現実なんだよ」


 この中で特に興味深いのは、王留美が「全ての人類はイノベイターになる」と思っていた点。

 王留美は理想主義者であって妄想主義者ではないので、「人類がイノベイターになる」為の技術や手法なりをある程度確認しているのだと思います。

 ネーナがその被検体のようなものであったとして、なおかつ失敗作だったとすれば、王留美がネーナを「使えない子」扱いしているのも納得できるような気がします。

 もしかすると刹那もイノベイター化の被検体とか...?


 妄想はさておき、リボンズは、王留美の利用価値はないと判断しています。

 そしてそのリボンズに、王留美と4ヶ月の間頻繁に会っていたことを指摘されるリジェネ。

リジェネ

リジェネ「ソレスタルビーイングの情報を聞き出していたんだよ」

リボンズ「そうかい。なら、そういうことにしとくさ」

リジェネ「クッ...」


 リボンズとリジェネの溝は深まっているようですね。

 しかも、この4ヶ月間、リジェネは完全に単独で動いていたことになります。

 リヴァイヴやヒリングが、比較的リボンズに忠実であるのに比べ、リジェネとティエリア兄弟(?)はどうも反逆型のようです。



 う~ん、実際に動いているところを見ると結構面白いのに、どうも文章では伝わらない。

 それだけ基本構造が地味ってことですかね。


 後半は、アロウズの行動開始とトレミーのミッション開始を。