セルゲイ・スミルノフ大佐に敬礼!
今回はその一言に尽きます。
結局、ハーキュリーの真の思惑である「市民にアロウズの蛮行を知らしめる」という事は、アロウズのメメントモリによって打ち砕かれた形に。
ところが、アフリカタワーに集結した各陣営は、目前で繰り広げられる惨状を打破すべく、自然に団結していく。
そんな、軍事力とは別個の「見えざる力」による統一が果たされるかも知れないという、希望的観測を提示してみせました。
が...。
マクロでの意思統一には光明が見えたものの、ミクロでは齟齬をきたしたまま、悲劇が展開されることになったわけです。
「散りゆく光」、それはピラーの外壁がキラキラと輝きながら落下する様であり、多くの人命が散っていく様でもありました。
アンドレイが嫌いになった人も多かったのではないでしょうか(笑)。
セルゲイはホントに人気キャラでしたからねぇ。
では、いつものように参りましょう。
冒頭は14年前のお話。
14年前、軌道エレベーターを作る多くの技術者達とその家族を守る為、セルゲイは、妻・ホリーの所属する部隊を残し、全軍を最終防衛ラインに後退させました。
最終防衛ラインをとるか、ホリーの命をとるかという苦渋の選択に、セルゲイはホリーの覚悟を信じて最終防衛ライン死守を選んだわけです。
「父は軍規を守り、母を殺したんだ」
と、アンドレイは当時を振り返って呟くのですが、幼いアンドレイにとって、母の死は相当なショックだった筈。
だから、一概にアンドレイの想いを批判できないというところに、今回の悲しさがあります。
さて、メメントモリ発射の報は各陣営に届き、各陣営がそれぞれの反応を示します。
トレミーはその蛮行に激震。
カティはメメントモリ発射決定に際し、怒りを露に。
「こんなことが許されるのか!衛星兵器で低軌道ステーションを攻撃しようなどと!」
「それでもやるでしょうね」
「何っ!?」
「司令は恒久和平実現の為、全ての罪を背負う覚悟でいます」
ビリーは当然だと言わんばかりの態度です。
この作戦に決定を下したのは、ビリーの伯父であるホーマー・カタギリ司令ですから、ビリーが尊敬する伯父のことを悪く言わないのは当然ですね。
ただ、やはりビリーには主体性のなさというか、感情に流される様子が伺えます。多分、自らが危険エリアに待機していれば、意見を違えていたことでしょう。
この見方はちょっと意地悪ですかね。
「メメントモリ...人類は死を思い、平和の尊さを考えねばならんのだ」
とホーマー・カタギリ司令のモノローグが流れますが、このモノローグを鵜呑みにするのであれば、ビリーの言う「全ての罪を背負う覚悟」が、彼にはあると言えるでしょう。
それだけに、ビリーの発言は「人ごと」に聞こえてしまうのです。
アロウズは、クーデターで人質になり事実を知った市民をも、反連邦勢力とみなした。ハーキュリーは、ようやくそれに気付きます。
その頃のリボンズとリジェネの会話。
リボンズ「人類は、過去から何も学ばない」
リジェネ「だから、イオリア・シュヘンベルグはイノベイターを創造した。人ならざる者が、人より寿命を持って人類を滅亡から救う。そして、来るべき対話に...それが出来るのは僕達だけさ」
リボンズ「君は、僕に作り出されたことを忘れているようだね。言わば君にとって、僕は創造主」
リジェネ「...」
リボンズ「人類を導くのはイノベイターではなく、この僕、リボンズ・アルマークだよ」
この会話から、リジェネはイノベイターとしての自分に、ある種の理想像を重ねているのに対し、リボンズはあくまで自分以外のイノベイターすら駒に過ぎないと考えている模様。
また、リジェネは、リボンズによって作られたものであろうことも判明しました。
となると、リボンズのみがオリジナルということなのか、それとも、オリジナルの4種のDNAパターンを持つイノベイターが既に居て、それぞれのコピーがリボンズによって作り出されたのか。
この辺りは、まだよく分かりません。
さて、メメントモリの発射準備は着々と進行中。
「刮目せよ。1世紀以上かけて作り上げた人類の英知が滅びる様をな...」
ホーマー・カタギリ司令の、憂いを帯びた決意の重さに対し、グッドマンは殺戮と破壊を愉しんでいるのが分かります。
アロウズとは言え、志が同一ではないということでしょう。
危険を察知し、カタロン部隊がピラーから脱出します。
すると、正規軍がカタロン部隊を追撃。
周辺に展開していたガンダムの中、ロックオンのケルディムガンダムが怒りにまかせて飛び込んでいきます。
ティエリアとアレルヤは、ロックオンの迂闊な行動に焦りつつも、彼に続いていきます。
この時点では、正規軍はトレミーにとってまだ敵対者です。
スメラギはメメントモリ発射を止める為に、何としても空に上がると言いますが、イアンは整備未完を理由に反対。
そこに、怪我が完治していない刹那が登場。
メメントモリを止めるべく、ダブルオーライザーを出すと言います。
刹那の状態が充分でないからか、オーライザーにパイロットが必要だというイアン。
刹那「オーライザーに乗れ」
沙慈「えっ、僕が?」
刹那「6万もの人命がかかっている。これは、守る為の戦いだ」
沙慈「守る為の...」
この「守る為の」という言葉、沙慈やマリーの戦う理由になっていくようです。
若干都合のいい言葉ではありますが、マリーはともかく沙慈を動かすのに、これ以上適当な言葉はないものと思われます。
沙慈は今回、かなり前向きな姿勢で発進していきます。
「沙慈・クロスロード、発進します!」
沙慈の発進コールは今回の見所の一つではないでしょうか。
白いパイロットスーツもなかなか似合っています。
事態が進行する中、1人残って全てを見届けるというハーキュリー。
彼は、セルゲイにここでの出来事を後の世に伝えろと言います。
「そんなことで罪を償うことは出来ん!貴様は軍人だ!軍人なら市民を守れ!1人でも多くの市民を救い、その上で死ね!」
セルゲイの熱さが印象に残る名場面。
ハーキュリーはアロウズの行いの犠牲になる市民を、ある程度は勘定していましたが、まさか皆殺しになるとまでは予想していませんでした。
この時点で、目撃者である市民全滅もやむなしと諦めており、せめてセルゲイに証言者となって欲しいという思いがあったものと思われます。
しかし、セルゲイは市民を犠牲にして自らが証言者になることより、助かる可能性のある市民を出来るだけ救うという道を選びます。
それは、14年前の決断と本質的に同じです。
そして、14年前にホリーの心配をしたハーキュリーも、現在において本質的に変わっていないことが示されるわけです。
というわけで、セルゲイとハーキュリーはモビルスーツで出て、市民の避難の援護に回ることに。
この時点では外壁落下という惨劇を予想していません。
アロウズはダブルオーライザー接近を関知し、デヴァインのエンプラスを迎撃に向かわせます。
「ブリングの仇!」
何だ、やっぱりブリングのことが気になっていたんですねぇ(笑)。
刹那は、トランザムの為のチャージ完了を機に、
「トランザムライザー!」
でダブルオーライザーをトランザムに移行。
いつの間にか「トランザムライザー」なんて名前が付いてます。
トランザム・ダブルオーライザーの略なんでしょうけど、ちょっと微妙...。
デヴァインは光の奔流の前に消滅...。
ちょっと退場早かったですね。使いにくいキャラだったんでしょうか。
で、刹那はトランザムライザーの超巨大ビームサーベルでメメントモリを両断しようとします。
イデオンソードかよ!というツッコミが可能な、超スーパーロボット振り。
燃えるシーンではあるのですが、ちょっと笑ってしまいました。
この画像だと、トランザムライザーがメメントモリを破壊したように見えてしまいますが(苦笑)、これはメメントモリ発射の様子。
結局、トランザムライザーの超巨大ビームサーベルは、メメントモリの発射装置破壊にまでは至らず。
メメントモリは発射されてしまいます。
超巨大ビームサーベルで凄いカタルシスを感じさせつつ、その直後にコロッと裏切るあたり、かなり確信犯的ではあります。
この直前まで、私はメメントモリでピラーの根元を破壊してぶっ倒すのかと思っていましたが、高軌道ステーション辺りを破壊することで、ピラー外壁のオートパージ機構を動作させ、その破片を地上に落とすという作戦でした。
成層圏より上の外壁は大気圏突入時に燃え尽きるが、それより下のものは、
「地上に落ちる!」
ということ。
それにしても、何でオートパージするんでしょうか。
一応、理屈としては簡単に壊れるようにしておいて、他の設備への波及を防ぐというセオリーが思い浮かぶんですけど。
この場合、オービタルリングを伝わって他のピラーへ被害が及ぶのを防止する為、自壊を促進させるということは考え得ます。
もう一つは、巨大な破片にならないよう、細かく壊れていく機構が必要だということですね。これは劇中で充分描かれていたと思います。
ただ、やっぱり地上に近い部分がオートパージされるのは、地上に対してリスクが過大ではないかと。
まぁ、軌道エレベーターが倒壊すること自体、想定されないまま周辺に市街地が出来上がったとも考えられますけど。
ドラマ的な盛り上がりを優先して、ちょっと足元が弱かったような感じを受けます。
なお、セルゲイの思いとは裏腹に、地上へ避難するリニアトレインが次々と巻き込まれていきます。
ハーキュリー「私は...」
セルゲイ「しっかりしろ!今は被害を防ぐことだけを考えるんだ!」
この2人の会話は、空虚に響きます...。
ここで、異変に気付く3人。
外壁の破片がパラパラと落ちてきて、このままでは麓の人口密集地に甚大な被害が出ます。
後半は、スメラギの思いが伝わり、各陣営がこの事態を収拾すべく団結していく様子と、セルゲイの最期を。
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