セカンド・シーズン中でも(今のところ)異色中の異色と言えそうな一本。
何と言っても、セルゲイとハーキュリーの出番が殆どを占め、モビルスーツ戦も殆どないという凄い構成です。
イケメンキャラや萌えキャラを期待していると、そのオヤジ度に打ちのめされますが(笑)、この懐の深さはガンダムならではということでしょう。
「序章」と謳われるだけあって、かなり静かで重厚な雰囲気。しかも、連邦の情報操作の実態が明瞭に描かれるなど、1つのターニングポイントであることは間違いありません。
なお、「悲劇への」とされている意味は、実際にはまだ不明瞭ですが、メメントモリによる「悲劇」はある意味避けられない状況かも知れません。
キャラクターが大挙して退場する可能性も...。
では、順を追って見てみましょう。
ハーキュリー率いるクーデター部隊は、アフリカタワー低軌道ステーションを占拠しました。
ステーションからの移動手段や生命維持装置なども掌握しており、6万人もの市民の生命を掌握していることになります。
アロウズの蛮行を世に知らしめる。
それが、ハーキュリーによるクーデターの行動理念です。
ハーキュリーは、ステーションに在住する市民の解放と引き換えに、連邦議会の解散、反政府活動家4万5千人の釈放などを要求します。
連邦政府はこれに対し、アロウズを派遣して事態の早期解決を図ると発表しています。
ハーキュリーは6万人の市民を人質とし、アロウズ壊滅を図っているように見えますが、後で分かるように、真意は全く別のところにあります。
勿論、セルゲイはこのクーデターの要求を飲むとは思っていません。
この時点では、ハーキュリーの真意を察していない様子が伺われます。
ここで、セルゲイやハーキュリーの若い頃の回想が登場。
若き日のハーキュリーは、現在と同じく軍隊の理想像を掲げ、世界が緩やかに統一されていくのを望んでいたようです。
それに色々な側面から異を唱えるセルゲイとホリー。ホリーはセルゲイの奥さんです。
この議論、冷戦構造といった論が出てくるように、一見政治的要素が濃いように見えますが、実はハーキュリーの理想論に対するアンチテーゼを抱いているに過ぎないと思います。
つまり、ハーキュリーが軍のあり方に理想を抱いているのに対し、セルゲイやホリーは軍に期待しない視点での世界観を漠然としたレベルで持っているということです。
その為、「議論」にはならず、結論が出たようにも見えないのです。
なお、些細なことですが、制服姿からハーキュリーも人革連の所属だったことが分かります。
ここで、キム司令がセルゲイに極秘任務を。
このシーンでは触れられませんが、この「極秘任務」は、連邦政府の密使としてハーキュリーの元へ行くというものでした。
セルゲイがハーキュリーの親友であるということを、上層部は利用したわけですね。
時を同じくして、アロウズも動き始めます。
アロウズは既にステーションや地上の軌道エレベーター基部の包囲を完了。
グッドマンは、
「間もなく、オービタルリングへの設置作業を終了します。私も空へ上がって指揮を」
と報告しています。
ここでは触れられませんが、勿論これはメメントモリのことです。
場面は変わって、王留美周辺。
紅龍「このクーデターが世界を変えることになるのでしょうか」
王留美「さぁ?終焉の始まりかも知れなくてよ」
紅龍「それを、お嬢様はお望みなのですか」
王留美「...」
王留美はリボンズの企みを看過しているようです。
「終焉」がメメントモリの事を指しているわけではないようですが、何か大きな出来事が起こると直感していることは間違いありません。
紅龍はこの時点では、かなり王留美と思想を違えているみたいですね。
その頃、トレミーでは一連の出来事に関する分析が行われていました。
何故ヴェーダを掌握しているイノベイターが、クーデターを予測して阻止しなかったかを怪訝に思うスメラギ。
予測しつつ見逃していた可能性もあるが、結局アロウズが動くことには変わりない。
即ち、ソレスタルビーイングも動かなければならないという結論に至ります。
いきなり本題を述べてしまうと、イノベイターがクーデターを阻止しなかったのは、「アロウズを動かしたかったから」に他なりません。
アロウズが動く口実として、クーデターは利用されてしまったことになるわけです。
「そして、アロウズの裏には、イノベイターの存在がある」
「彼らが何をたくらんでいるとしても、それを解き明かすには現地に向かうしかないわね。それに、クーデターの情報を刹那が知ったら...」
「向かってるな」
「ああ」
「確実ですぅ」
ここで出番の少ない方々を一気に登場させたようですな(笑)。フェルトがなくてすみません。
イアンは、アフリカタワー到着までに火器管制を使えるよう、修復を急ぎます。
さて、いよいよアロウズのモビルスーツ隊出撃。
当然のようにオートマトンを使用します。
このオートマトンが、クーデター派の武装解除や掌握された管制を奪回するという目的のみに働くなら、それはそれで良かったのですが...。
一方、カタロンもピラーから侵入し、クーデターの地上部隊と合流しますが、地上に展開しているアロウズは一切攻撃して来ません。
どんどん軌道エレベーターに集結する各陣営。
アロウズがカタロンを攻撃しないのは...ここでも結論から言ってしまえば、メメントモリで一気に片付けようという魂胆だからでしょう。
同時に、ピラーからティエレンタオツーが上昇してきます。
このティエレンタオツー、既に「桃子」というカラーリングではなくなっていますが、さすがにセルゲイは遠慮したのでしょうか(笑)。
「迎えのモビルスーツを出せ。そのくらいはせんとな。あの機体には、私の友が乗っている」
ハーキュリーはティエレンタオツーを見るなり、すぐにセルゲイだと分かっており、同機はセルゲイのプライベート機と認知されているようです。
セルゲイを密使として送ったキム司令。セルゲイ派遣は、アロウズ転属の際の将官待遇をちらつかされての指示らしい。
「正規軍は、いずれアロウズに飲み込まれる。これも、時代の流れか」
セルゲイは軍に従順な士官ではありますが、その胸中にくすぶる違和感は、隠しようがなかったのかも知れません。
それ故、上層部に抹殺される対象になった可能性があります。
カティも自分の隊の動きに疑問を抱き、
「現海域で待機を続行!?何故だ、何故我が隊を動かそうとしない!?」
と苛立っています。
リヴァイヴ、ヒリング、デヴァインの3人は出番がなく雑談。
リボンズの真意は一切知らされていない模様。それでも不満は出ていないんですね。
イノベイターは案外お気楽な人種なのかも。
さて、ここでセルゲイの息子であるアンドレイが登場。
カティ達と同様、待機中の雑談です。
アンドレイは、当然幼い頃からハーキュリーを知っており、軍隊の理想を散々聞かされていました。
しかし、今は6万人の市民を人質にとる卑怯者とみなしています。まぁ、アンドレイの感覚からすれば当然というところでしょうか。
ルイス「反乱の理由など、関係ありません。我々は、アロウズとして反政府勢力を叩くだけです。平和を勝ち取る為に」
アンドレイ「ああ。勿論だ准尉」
ルイスのこの言葉、アロウズとしての使命感に燃えているようにとれますが、ルイスの本当の感情は復讐のみだと思わせるに充分な「浮いた言葉」ですね。
かつて、アンドレイはセルゲイの力を借りたくなかったが故に、ハーキュリーによる上層部への口添えで、人革連軍の士官学校に入学したという過去があります。
コネを利用するあたり、アンドレイのある種の情けなさが浮き彫りに。
ハーキュリーはホリーの死を不幸な出来事だとし、あまり父を恨むなと言うのですが、アンドレイは、
「父は、母を見殺しにしたんです!それは、あなたも同じです!」
と反論。口添えをしてもらいながらこの態度。ハーキュリーがセルゲイの友人でなければ、この場で「修正」されていたかも知れません。
父と同じ道は歩まないと決意しているアンドレイは、アロウズの「平和をもたらす力」に心酔しています。
過去の回想シーンは、アンドレイの視野の狭さを表現しており、アロウズの力を妄信する彼を、思想的に危険な人物として描写しています。
さて、ハーキュリーの所へ連行されてきたセルゲイは、密使として「連邦政府が要求を飲まない」ということを伝達しに来ました。
「何故無関係な市民を人質に?」
というセルゲイに、
「アロウズなどという組織を台頭させたのは、市民の愚かさなんだよ。彼らには目覚めてもらわねばならん。例え痛みを伴ってもな」
と応えるハーキュリー。
「市民の利益と安全を守るのが軍人ではないのか!」
「だから、ここでこうしている。」
「投降しろ。今なら部下たちの命を救うことが出来る」
「アロウズが許すとは思えんな」
という互いの主張の応酬は、動きがほとんどないのに、さすが見応えあり。渋すぎます。
とりあえず会談は決裂。
セルゲイに地上へ戻るように言うハーキュリーだが、セルゲイはここに残ると言います。
「命令を受けただけで、私がここに来たと思っているのか!私は、もう二度と...」
とセルゲイが言いかけたところで、オートマトン侵入の報が。
セルゲイは何を言いたかったのでしょうか?
それが今回で判明することはありませんが、続きはその2で。
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