#10 天の光 その1

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 今回はリボンズの企みが静かに、しかし大胆に進行する様が描かれます。

 しかも、ソレスタルビーイングはそれに殆ど気付くことなく(つまり王留美が知らせることもなく)、淡々とオーライザー調整に向けて動いているという異色の展開。


 例によって、各陣営の動きをまとめていった方が分かり易いので、そのように進行していきます。

 冒頭は、前回のラストにチラッと出てきたスメラギの学生時分がバッチリ回想されます。

 前回、ビリーとクジョウはそれなりの仲だったのだと想像しましたが、そうではなかったようです(前回の記事にもそれに関するコメント頂いてましたね。ありがとうございます)。

ビリーとクジョウ

 リーサ・クジョウ=スメラギは17歳でカレッジを卒業するほどの秀才であり、その卒業論文はビリーやカティが感心する素晴らしいものだった模様。


ビリー「卒業したら会えなくなるね...寂しくなるな」

クジョウ「5つも年下の小娘に言うセリフじゃないと思いますけど?」


という会話に、スメラギの少女性を垣間見せてイイ感じ。

カティ

 一方、カティは次々に発表した戦術予報で7つの紛争に勝利をもたらし、AEUに佐官待遇でスカウトされる天才肌。

 クジョウの夢は、「戦争が止められないのなら迅速解決し、被害を最小限にとどめて人命を救うのが夢」とのことで、その実現に最も近い位置にあるカティは、クジョウの憧れであるといいます。


 カティは、


「出来れば敵同士にはなりたくないわね」


と言います。

 まぁ、いわゆる出来過ぎた展開ではありますが、現在のスメラギとカティの互いのポジションと、互いへの思いを考えさせ、2人の実に悲しい運命を印象付けています。


 さて、今回新しい中東の国が登場。

 その名は「スイール王国」。


 スイール王国は、レアメタルと世界随一の情報産業によって中東諸国有数の豊かさを誇り、中東一の軍備も備えているらしく、スイール王国が行動を起こせば他の中東諸国が追随するほどだそうです。

 その為、連邦はその存在を危険視し、アロウズを派遣しています。

 なお、スイール監視にはセルゲイが駆りだされています。これが後に大変な事態へとつながるのですが...。


 シーリンの発案により、カタロンはスイールの影響力を利用しようと画策。

クラウスとシーリン

 スイールの情報、中東で行われている連邦の悪政をカタロンのネットワークを通じて流すという作戦により、連邦世論を中東に向けさせようという企図です。


 後に「池田」なるカタロン構成員(池田秀一さんを意識?どこにもオマージュ的雰囲気はありませんが)の持つネットワークにより、スイール王室がカタロンとの会談に応じます。

スイール国王

 しかし、これによってクラウスが身を寄せるカタロン支部の支部長が...。


 一方、カタロンと行動を共にしているマリナは、アザディスタンの様子が気になって仕方がありません。

 しかし、アザディスタンは連邦の情報操作により情勢が伝わらない上、国境は封鎖されており、視察に向かうことすらできない状態。


 シーリンはマリナに、戦ってアザディスタンを取り戻せと言います。

 マリナは「戦いは戦いを呼ぶ」と反論。

 シーリンは溜息と共に、


「いいわ。あなたはそうやって何もしないでいればいい。私は戦う。そうしないと国は取り戻せないから」


と言い放ちます。

 かつて同じ思いで動いていた2人にも、今では断絶が見られます。

マリナ

「刹那...今なら分かるわ。故郷を、クルジスを失ったあなたの気持ちが。自分の足元が消えてなくなるような、この喪失感...。こんな気持ちになっても、何故あなたは戦うことが出来るの?」


と言うマリナ。

 現在、最も拠り所のない状態のキャラクターこそ、このマリナと言えるでしょう。


 傷心のマリナを少しばかり癒すのは、カタロンが保護している子供達との触れ合い。

 ダビッドは江戸川コナンの声を持つスイール出身の少年。

マリナとダビッド

 つまり、カティ役の高山みなみさんの担当。知識として知っているので同一人物の声だと分かりますが、高山さんの芸達者ぶりを知らない方にとっては、別人の声に聞こえますよね。


「スイールがやられちゃうって本当?」

「どうして皆仲良くしないの?」


と直接的な質問をマリナにぶつけてきます。

 マリナの苦悩は余計にえぐり出されるのです。


 マリナ、ガンダム00の暗い人担当になりつつあります...。



 続いて、アロウズの描写をまとめてみましょう。


 アロウズは既にソレスタルビーイングがラグランジュ3あたりに潜むと推測しており、グッドマンはその追撃命令をカティに下します。

カティ

 カティの心情は複雑です。


 かつて同志と認めていたクジョウの存在を思えば、ソレスタルビーイングの追撃に際して胸中は穏やかでないはず。

 エミリオを失った例の事件が、クジョウの中でしこりとなって残り、それ故にソレスタルビーイングの理念に傾倒したのか...とカティは推測しています。


 ただ、カティはクジョウの心情を理解こそすれ、ソレスタルビーイングの理念には理解を示しません。

 カティは、紛争はなくならないと考えているのです。


 スメラギのプライベートが酒にまみれているのと(最近ではあまり描写されなくなりましたが)、カティが凛とした軍人然としているのは対照的で、エミリオの存在がこの明暗を分けたのは間違いなさそうです。



 一方、カティの知らざる所で、驚愕の戦術が展開されていきます。

リントとグッドマン

 リントは特命を受け、グッドマン指揮の元で「天からの雷、神の裁き」と称する破壊兵器「メメントモリ」の運用に向けた準備を進めています。


 この「メメントモリ」は低軌道上に配備されており、宇宙から超高熱線を照射して地球上の特定エリアを焦土と化すというトンデモ兵器です。


 「メメントモリ」とは哲学用語からのネーミングと思われ、「死を思え」といった意味があります。

 要は死を意識することで生における執着の虚しさを説くといった雰囲気なのですが、キリスト教文化における一つの指針でもあります。

 「天からの雷、神の裁き」とグッドマンは表現しましたが、上記を意識したネーミングだと仮定すれば、「死の前では抵抗など空しい」という傲慢さをよく表現していると思います。


 A-LAWS というネーミングと共に、なかなか徹底していますね。



 とりあえず前半はこんなところで。

 後半に続く。