#07 再会と離別と その2

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 さてさて、お待ちかねのアレルヤとマリーの再会。

 意味深なサブタイトルから、私はソーマ・ピーリス殉職話だと想像してましたが、その予想から遥か離れた因果地平の彼方にて、アレルヤとマリーが新たな生命の...と訳の分からんことを言ってしまいそうな、そんな(今回だけに限れば)衝撃的ハッピーエンドを迎えることとなりました。

 墜落したアリオスガンダムとアヘッド。

 その衝撃に気を失ったアレルヤとソーマ。

 アレルヤは先に気が付き、アヘッドのコクピットを開け、ソーマを発見します。

 すると、ソーマは鋭い手刀を振りかざし、アレルヤに襲い掛かる!

アレルヤとソーマ

「モビルスーツがなくとも!出来損ないの貴様などに!」


 このセリフには、何となくですが、ファーストガンダムのクライマックスに対するオマージュが感じられます。

 それにしても、格闘ソーマの動きは一瞬「Gガンダム」かと思いましたよ。


 取っ組み合いの中、アレルヤの叫びがソーマの中のマリーを呼び起こしていきます。

マリー

「アレ...ルヤ」

アレルヤ

「マリー...マリー!マリー・パーファシー!」


 この「マリー・パーファシー」連呼にはちょっとウルサイ感じがしますが、まぁよくある話で「名前を覚えてもらう」意図が大きく出ているような気がします。


 にしても、ソーマからマリーへ、表情の変化が非常に巧いと思います。それと喋り方も。



 さて、何故こうも簡単にマリー・パーファシーの人格が復活したのか、ですが。


 恐らく、4年前に出会っていてもマリーの人格は復活していないと思います。

 セカンド・シーズン開始までの間、セルゲイによって至極真っ当な「人間的な扱い」を受けて来たことにより、超兵ではなく、人間的な思考を育てられ、感情を上手に表現できるようになったことが、マリー復活に大きく寄与していることは、想像に難くありません。


 また、結局脳量子波の干渉だけでは、アレルヤの想いは届かなかったようにも思えます。

 アレルヤは脳量子波を失い、超兵としてのアイデンティティを失ったことで、より人間へと接近しました。

 その人間・アレルヤの必死の叫びは、脳量子波よりもダイレクトにソーマ・ピーリスの心を撃ち抜いたのではないでしょうか。


 つまり、超兵の心を溶かせるのは「人間」しかいなかった、ということになります。



 ストーリーの方に戻ります。


 アレルヤは2つの機体を調べましたが、どちらもシステムダウンしており、救助を待つしかない状態。

 身動き取れない中、二人は話し始めます。

アレルヤとマリー


 アレルヤはマリーに、何故ソーマ・ピーリスだったのかと問います。

 マリーが把握しているところでは、違う人格を植え付けられ、失っていた五感を復活させられたとのこと。

 恐らく超人期間は、ソーマを超兵として軍に送り出すことにより、組織としての存続を図ろうとしたのではないか、と結びます。

 ソーマは超兵1号であり、それまで成果を出せていない故、このような非人道的な策に出たのでしょう。


「でも、そのおかげであなたの顔を初めて見ることができた。あなただってすぐに分かった。脳量子波のおかげかしら」

マリー

「僕も、君と言葉が交わせるようになるなんて、思ってもいなかったよ」

アレルヤ


 五感を失っていた頃に出会っていたという、SF的設定が生きた名会話です。


 逆に、マリーから超人期間脱出後のアレルヤの行動を尋ねられるのですが、この部分は何度か語られてきたことなので、省略します。

 一つだけ特筆事項を挙げるとすれば、アレルヤは「超人機関と世界を呪っていた」ということで、その為にソレスタルビーイングに入ることを受け入れたと発言していることです。

 実はかなり私怨が入っていたことが伺われます。


 マリーは、ソーマの人格と記憶を持っており、アレルヤが超人機関を全滅させたことも知っていました。

 しかし、マリーは4年前に「ソーマがハレルヤを殺した」とも認識しており、この点を以て何故か「お互い様」的妥協点に持っていこうとします。


 つまり、マリーは超人期間に対して何のシンパシィも抱いておらず、その眼中にはアレルヤしかいないことが分かるのです。

 理屈が通ってなくても、雰囲気が良ければ何となく納得してしまうことって、あるじゃないですか(笑)。

 あの雰囲気なんですよ。あの。

 もう二人の世界なのですぅ(笑)。


 二人の世界はどんどん続きます。


 アレルヤはマリーを救いだしたことで目的を達成してしまい、次に何をすればいいのか分かりかねている状態。


「こんな僕が、君にしてあげられることなんて...」


 そこにすかさずマリーの殺し文句!


「いてくれるだけで、嬉しいの」


 キタ!


「マリー...」

「だって、あなたに出会えたのよ。五感がなく、脳量子波で叫ぶしかない私に、反応してくれたのはあなただけ。あなたのおかげで、私は生きていることに感謝できたの。そんなあなたを、この目で見つめることが出来る。話すことも、触れることだって。こんな時が訪れるなんて...」

「マリー」

「神よ、感謝します...アレルヤ」


 思わず全録してしまいました。よく喋ってます。マリーは。



 そこにセルゲイのジンクスIIIが。

ジンクスIII

 セルゲイは外に出てきたアレルヤの声を聞き、かつて重力ブロック救出に協力したガンダムのパイロットであることに気付きます。

 しかし、そこはやはり連邦のスミルノフ大佐。銃を向けて言い放ちます。

セルゲイ

「中尉から離れろ!ソレスタルビーイング!」


 しかし、セルゲイがいきなり発砲するような愚漢でないことを知っているマリーは、いきさつを詳細に話します。

 ここで、セルゲイは超人機関に憤るのです。

 既に、非人道的な超人期間と、かつて人道行為をしたアレルヤは、同じ天秤に載らなくなっているわけです。

アレルヤとマリー

 ここからはアレルヤ、マリー、セルゲイの見応えあるセリフの応酬です。


 実は、このセリフの応酬、字面だけだとホントに面白くないのです。

 三者ともあまり感情的にならず、妙に陣営のイデオロギーを強調していたり。

 けど、画面からは素晴らしいテンションが伝わってくるんですよね。

 このシーン、余程テンションを上げて演じられたのではないかと。


 とりあえず、全録してみました。

 以下、ア:アレルヤ、マ:マリー、セ:セルゲイで。


ア「マリーは優しい女の子です。人を殺めるような子じゃない。マリーはあなたに渡せない。連邦やアロウズに戻ったら、彼女はまた超兵として扱われる!」

セ「だが君はソレスタルビーイングだ。君といても、中尉は戦いに巻き込まれる」

ア「そんなことはしません!」

セ「テロリストの言うことを信じるほど私は愚かではない!」

ア「信じて下さい!」

セ「私は君の、いや、君たちのバカげた行いによって、多くの同胞や部下を失っている。その恨み、忘れたわけではない!」

マ「やめてください、大佐!」

ア「撃って下さい」

マ「アレルヤ?」

ア「その代わり、マリーを、いえ、ソーマ・ピーリスを二度と争いに巻き込まないと誓ってください」

マ「何を?アレルヤ?」

ア「いいんだ、マリー。君が幸せでいてくれるなら。...撃って下さい」

セ「承知した」

マ「いやぁぁっ!」


 アレルヤを庇い、倒れるマリー!

アレルヤとマリー

 私はここで「あぁ、やっぱり...」と思いました。


 ところが、セルゲイの銃は頭上に向かって放たれていたのでした。

セルゲイ


「た、大佐...」

「たった今、ソーマ・ピーリス中尉は名誉の戦死を遂げた。上層部に報告すべく帰投する」

「大佐...」


 くぅっ!

 カッコ良過ぎるセルゲイ・スミルノフ!


「そういえば礼を言っていなかったな。5年前、低軌道ステーションの事故。救助活動に参加してくれたこと、感謝する」


というアレルヤへの謝辞も、やっと言えたという感じがこもっています。

 ソレスタルビーイングという怨敵に謝辞を述べることはできないが、娘に等しいマリーの、伴侶となるかも知れないアレルヤには、セルゲイも礼を述べざるを得なくなってしまった。そんな感じがよく表現されています。


 マリーはセルゲイに、対ガンダム戦のみに徴用し、他の作戦に参加させなかったことを感謝すると述べます。

 セルゲイは、マリーのその言い方に、自分の知っているソーマではないことを痛感するのですが、マリーの口調はちゃんと変わっていて、セルゲイならずとも、もうソーマ・ピーリスは存在しないと思い知らされるところが見事。


 ここからはもう、涙なしには見られない会話が続いていきます。


「それから、私の中のソーマ・ピーリスがこう言っています。あなたの娘に、なりたかったと...」

マリー

「そうか。その言葉だけで充分だ」

セルゲイ


 セルゲイの胸に飛び込むマリー!


「生きてくれ。生き続けてくれ。彼と、幸せにな...」

「今までありがとうございました。大佐!」

マリー

セルゲイ


 とっても感動的なシーンです。

 が、私はここで思ったのです。もうセルゲイはソレスタルビーイングに対する戦闘行為に踏み込めなくなるのではないか、と。

 これから先、セルゲイは連邦内部からアロウズの解体に尽力していくのか、老兵は去り行くのみとなるのか、いずれにせよ、マリーとアレルヤの居るトレミーを攻撃することはなくなるのではないか、と思います。



「マリー...ありがとう、生きていてくれて。ありがとう、こんな僕に生きがいをくれて...」

「アレルヤ...」


という会話も、勿体無いので一応載せておきます(笑)。



 さて、ロックオンは捜索中、セルゲイのジンクスIIIと遭遇します。

 セルゲイは光通信でアレルヤの位置をロックオンに教えています。

 ここでまたセルゲイの男気に感服。


「ピーリス...」


という呟きは、ソーマが「ピーリスという名で呼ばれていたことを、忘れたくない」と言っていたことを思い出して発せられたものと想像できます。

 植え付けられた人格、勝手に付けられた名前。

 そう告白され、セルゲイの心中は掻き毟られたのではないでしょうか...。



 そして、アレルヤの位置を把握したロックオンは、現場に到着。

ロックオン

「何だ?散々捜し回らせといて、女連れか?...ははっ、やるじゃないの」

アレルヤとマリー


 ここでサブタイトル!

 ニクい演出に唸らされました。



 エンディング後は、アレルヤ発見に湧く一同で。


沙慈「君でも、笑うんだ」

刹那「嬉しいことがあれば、誰だって笑うさ」

刹那

「おお~。なんか彼女さんと一緒みたいですぅ」

ミレイナ

「かっ、彼女!?」

ラッセ

「どうして!?」

フェルト

「あの子ったら何やってるのよ!」

スメラギ


と、何だかギャグシーンになってしまいました。


 そのほのぼのムードのまま終わるかと思っていたら、ティエリアの前に現れるリジェネ!


 どうやって自分の処へ来たのかと戦慄するティエリアに、


「同類だから分かるのさ」


とリジェネ。


「な、何故だ?何故、僕と同じ容姿をしている?」

ティエリア

「それはDNAが同じだからさ。塩基配列パターン0988タイプ」

リジェネ


「まさか、君は...」

「イノベイター。リジェネ・リジェッタ」

「イノベイター...」


 こんな感じで、ティエリア・クローン説は堂々と語られたわけですが、さて、次回はイノベイターの話になるようですね。

 いよいよティエリアにスポットが当ります。