#06 傷痕 その1

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 スメラギとカティの過去がほぼ明らかになり、その「傷痕」が描かれる。

 沙慈の行動が、カタロン基地壊滅という「傷痕」を残す。

 セルゲイの優しさが、逆にソーマに超兵であるという「傷痕」を認識させてしまう。



 今回のお話はこんな感じ。


 ガンダム00はサブタイトルが時に安直になってしまうこともあるのですが、今回はビシッとトータリティが保たれている感じがします。



 前回、土壇場に登場して期待させ、今回の冒頭でもそのシーンをそのまま繰り返して期待させたサーシェス。

 ところが、いつの間にか刹那はマリナを連れて帰ってしまい、結局サーシェスはその後一切登場しないということに。

 まぁ、ガンダムがなかったので対抗しようもなかったわけですが。


 ということは、


「そうよ、そのまさかよ!」


というのは、サーシェスの独り言だったってことですかね。



 では、今回も行ってみましょう。

 今回は演出がかなり凝っている為、情報が錯綜しています。


 把握しやすくする為、まずはスメラギことクジョウと、カティの過去に何があったのかを先に整理してみましょう。



 クジョウとカティは、AEUの「優秀すぎる」戦術予報士でした。

 当時のスメラギことクジョウは、こんな感じ。

クジョウ

 で、前回スメラギがつぶやいていた「エミリオ」という名前。謎どころではなく、今回で顔まで鮮明に明かされています。

エミリオ


 かねてより、何度も出てきた「スメラギの忌まわしい過去」は、AEUの戦術予報士である2人が優秀すぎる故に引き起こされたものとされています。


 その顛末は(情報が少ない為、かなり勝手な想像が入ります)...


 まず、クジョウとカティは、戦況に関する情報を受け取ります。その情報を元に、クジョウとカティはそれぞれ戦術予報を立てたわけです。

 実は、2人が受け取ったその情報は誤った情報でした。


 恐らく、この作戦では部隊を2つに分け、別方向から同時に敵軍を叩くというものだったのではないでしょうか。

 「優秀すぎた」2人は、その誤情報を元に、それぞれの部隊に戦術を指示したのです。

 受け取った情報は即ち敵軍の位置でしたが、そこにはそもそも敵軍など存在しなかった為、2部隊が互いを敵軍と誤認し、同士討ちする羽目になったのだと思われます。


 クジョウが指示した部隊には、クジョウの恋人(以上の存在っぽいですが)であるエミリオが所属しており、この同士討ちによってエミリオは戦死。クジョウは心に大きな傷を残すことになります。


 今際の際のエミリオの言葉は、カタロンのメンバーも口にしていることから、この世界では有名な言葉なのでしょう。


「かの為に生まれ、かの為に死す。それが運命というなら、抗うこと叶わず。見えない道を旅し、行き着く先にある物は、命の終焉。それこそが神の導き」


 何やらジハード的な含みがありますけど。



 なお、この事件は当然カティにも重い過去としてのしかかっているらしい。

 リント少佐に指摘されて激昂しているところから、スメラギほどではないにしろ、大きなトラウマにはなっているようです。



 ここで幾つか疑問が。



 まず、優秀すぎたのならば、何故誤情報を見抜けなかったのか。

 これは優秀すぎた(つまり戦果をあげすぎた)故の、一つの慢心があったと考えられそうです。それだけに、2人の後悔は深い。

 だから、スメラギはいつも大胆な作戦を立案する割には心配性だし、カティは正攻法の戦術に拘ってしまうのでしょう。


 続いて、何故戦術予報をコンペティションではなく、パラレルにしたのか。

 思うに、作戦の骨子は既に2人のカンファレンスで決定しており、その先の詳細を2人がそれぞれ立案したのでしょう。

 ここでも、2人が優秀すぎた故に、チェック機構が働かない状態になっていた可能性があります。



 大いに想像を介入させて自己解決。うん。



 では、今回のソレスタルビーイング側の動きに移ります。



 カタロンの被害は甚大。

 3年以上かかって築き上げたカタロン基地が壊滅したわけですから、クラウスにとっては一瞬で水泡に帰したという感覚だったでしょう。

 シーリンはクラウスが生きていてくれただけでも嬉しそうでしたが、クラウスのショックの深さは端々で描写されています。


 当然のことながら、カタロンの連中はソレスタルビーイングに疑いの目を向けます。

 これを、ライルが止めるのがいいんですよね。立場が的確な感じで。


 ティエリアは、マリナを除けば唯一の部外者である沙慈に、まず疑念を抱きます。

 戻って来た沙慈に、ティエリアが、


「誰だ君は?アロウズのスパイか?」


と尋ねるシーンは緊張感抜群。沙慈のヘタレっぷりも凄いことになっています。


 事情を知ったティエリアは沙慈を非難しますが、やっぱりティエリアは随分人間的になっており、すぐに制裁との名目で銃を向けるようなことはしなくなりました。

 ここではビンタのみ。

沙慈

「何という、何という愚かなことを...」

「こんなことになるなんて、思ってなかった。僕は、戦いから離れたかっただけで、こんなことに...そんなの、僕」

「彼らの命を奪ったのは君だ!君の愚かな振る舞いだ!自分は違う、自分には関係ない、違う世界の出来事だ。そういう現実から目を背ける行為が、無自覚な悪意となり、このような結果を招く!」

「僕は、そんなつもりじゃ...」


 前回、私は沙慈を擁護しましたが、ティエリアの「無自覚な悪意」という言葉に、目から鱗が落ちる感覚を味わいました。


 ちょっと法学をかじったことがあるのですが、「悪意」の定義はくだけて言えば「招く結果が分かっていること」であり、沙慈の行動は定義的に「善意に基づくもの」です。


 ところが、招いた結果が甚大であるとき、それは「善意」だろうが「悪意」だろうが関係ない。

 咎はないかも知れないが、結果論から言えば充分過失にあたる。

 その過失は「軽はずみ」が原因であり、ティエリアの言う「無自覚」に直結する。

 ティエリアの言う「無自覚」とは、置かれた状況を一切考慮せず、勝手な行動に出ることを言う。


 ...と、次々につながっていったわけです。私の中で。


 ソレスタルビーイングもカタロンも、戦場の中で生きているが故に、自分の行動に必要以上の注意を払わなければならないわけで、同じ状況に置かれている沙慈が民間人だからという「逃れ」は許されないということでしょう。


 ここ、一足先に自分から戦場に飛び込んだ(?)ルイスとは、対照的になっています。

 そこがまた巧い。


 身の危険にさらされている沙慈は、結局ソレスタルビーイングと行動を共にすることに。

 トレミー自体安全だとは到底言い切れませんが、今のところはベター・チョイスですかね。


 なお、ここでカタロンの惨状を見たスメラギは、例の過去を思い出して、倒れてしまいます。

 これにより、トレミーは強硬な囮作戦を取らざるを得なくなります。


 また、刹那はマリナを連れていつの間にか戻って来ています。

刹那

 シーリンはアザディスタンの現況を知るも、マリナの帰還を喜んでいました。

マリナとシーリン


 サーシェスの件は、刹那の脳裏によぎる程度で、何だかなかったことにされているぞ...?


 ここで、ライルの思慮が働いたのか、カタロンはソレスタルビーイングの補給と支援を得て、別の場所へと移ることになります。

 情報の出所を知らないクラウスは、一体誰が流したのかとライルに問います。


「スパイの俺にそれを訊くのか?」


と自分がスパイであると明言。

ライル

 当然、ライルに沙慈のことは知らされていないものと思われます。

 ただ、ライルはこの時点でスパイがいるとは思っていないのではないか、とも。

 でなければ、徹底的に探すでしょうし、そもそもカタロン内部にそのような人間は入り込めないとすら、思っているのかもしれません。仲間を疑いもしていないので、自虐的に自分をスパイと称したような気がするのです。


 カタロンの支援は王留美が担うことになるのですが、やはり王留美はソレスタルビーイングの財力の要であり、ソレスタルビーイングのブレインたる人物の一人でもあるようです。

 ただ、現在のソレスタルビーイングの態度の軟化には心底納得しているわけではないご様子。


王留美「お優しいことね。新生したソレスタルビーイングは。一体誰の影響かしら?」

紅龍「お嬢様、その手配は私に」

王留美「ネーナ・トリニティにお願いするわ」

紅龍「何故です?」

王留美「あなたに脳量子波が使えて?」

紅龍「そ、それは...」

王留美「イノベイターを欺くためにも、彼女の能力は必要不可欠。あなたでは分不相応なのよ、紅龍...いえ、お兄様」


紅龍

 お、お兄様...。


 いきなり驚愕のネタばらしですか。違和感バリバリなんですけど(笑)。

 これは推測ですけど、王留美と紅龍は純血統とそうでない兄妹なのではないでしょうか。

 妹を「お嬢様」なんて呼びませんよね、普通。

 周囲を欺く理由があるとしても、密室でも「お嬢様」ですから、普段から「お嬢様」なんでしょう。


 というわけで、ネーナがカタロンへの支援物資を届けることに。

ネーナ

 ネーナの出番は少ないままですが、この簡単な会話で色々なことが分かります。


  1. ネーナが脳量子波を使えること。つまり、超兵のテクノロジーが使われているかも。
  2. 脳量子波でイノベイターを欺けるということ。これはイノベイターも脳量子波を使えるということか。
  3. 王留美はイノベイターを利用しようとしていること(利用というより敵視している感じではあるが)。


 こんな感じで、ネーナの活躍はこれから増えていくことでしょう。



 さて、カタロンの移動に際して、アロウズが攻撃を仕掛けてくることは明白。

 そこで、スメラギを欠いてはいるものの、トレミーとガンダムを囮にするという強硬的戦術をとって、カタロンから目を逸らすという作戦を展開していきます。


 この作戦、今回は終了まで描かれませんでしたが、かなり危機を招くのではないか、と予想。



 では、パート2に続く。