epic9 「ガッチャ☆ゴセイガールズ」

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 「バイオマン」で初めて女性メンバーが二人になってから、必ずと言っていい程盛り込まれるヒロイン編。今回も例に漏れず登場です。

 最近は、むしろ「アイドル編」的な扱いの娯楽編として成立させる手法が多用されますが、今回はコミカルかつライトな作風の中で、バトルを重視した構成となり、やや異色のダブルヒロイン編となりました。

 そもそも、前述の「バイオマン」からして、アクティヴなイエローとおしとやかなピンクという対照的なキャラクター付けがなされていたわけですが、「ゴセイジャー」でも、ザッパー(大雑把)なエリとダンドリスキー(段取り好き)なモネという、対照的なキャラクター付けがなされています。

 「ゴセイジャー」は、見た目の分り易さを重視する方針なのか、エリのシーンには自由人であることを示す極端なシーンが数多く盛り込まれ、モネには事あるごとに声を荒げて周囲を言い負かすシーンが多く登場しています。いわゆる、キャラクターが滲み出てくるタイプの演出ではなく、特に今回はそういった面が強調されており、それはそれで浅薄な印象を受けますが、ストーリーを回して行く上での分り易さという面では、これで正解でしょう。



 今回のウォースターの刺客は、ブスワ星人・女王蜂のイリアン。

 このネーミングは、恐らく「エイリアン」から採用されたものであり、女性的な語感を盛り込んだものだと思われます。また、「エイリアン」に漂っている蜂社会のモチーフが、そのままデザインやキャラクター造形に投影されていて、これまでにないネーミングとの一体感を感じさせます。

 声の担当はゆかなさん。こういう類のキャラクターでの出演を聞いたことがなかったので、興味深く拝聴しました。

 デレプタを「熱血バカ」、ブレドランを「ムッツリスケベ」と称するイリアンは、モンス・ドレイクも認める実力者とのこと。毒液で男性を奴隷化するという、悪趣味な星人です。これまでの星人の中でも、一際愉快犯的な性格が強調されています。

 今回は、このイリアンの作戦とストーリーの間にあまり必然性はなく、イリアンの嗜好から男性陣が次々と捕まったので、女性陣が活躍したという流れになっています。

 さて、話を物語冒頭に戻します。

 初っ端より、二人のヒロインのキャラクターの違いを如実に表すべく、シーンが重ねられていきます。モネは早朝ジョギング、エリは朝っぱらからおやつタイムと、対照的です。これは、特訓好きなランディック族と、楽天的なスカイック族の特徴を濃縮した表現でもあります。

 エリはテンソウダーを読みかけの本のしおりにしたりと、やりたい放題。見かねたモネは男性陣をも巻き込んで説教を開始します。このあたりのテンポはなかなかのもので、ギャグシーンにとって致命的な「間延び」が全く感じられません。

 途中で話はあらぬ方向へと展開し、とうとうアイスクリームの好みで対立するエリとモネ。「そもそも合わない二人」という望の評に説得力を与えています。アイスクリームの顛末では、アラタ一人を生贄とし、アグリとハイドはまんまと逃げおおせるのですが、こうしたキャラクターの配置が巧く、笑いを誘います。

 イリアンとの最初のバトルは、アグリとハイドが担当。スピーディなアクションが目を惹きます。イリアンの毒液攻撃によって二人が戦闘不能になると、アラタ、エリ、モネが参戦。アラタもやがて戦闘不能となり、エリとモネがイリアンと対峙するわけですが、ここでも二人のチームワークの悪さを強調。ただし、アクションはカンフーものの様なスピード感と流麗さを盛り込んでおり、一定以上の満足感をもたらしてくれます。

 エリは「何とかバスター・アッセンブル」等といったオリジナル武器を作り出そうとする天然振り。そうこうする内に派手な合成とエフェクトを伴ってエリとモネが吹っ飛ばされ、昏倒。その寸前、モネとエリの目前でアラタ達男性陣がさらわれてしまいます。

 「ゴセイジャー」が圧倒的にスポイルしている要素に「危機感」があるのですが、今回は割と危機感を感じさせる展開になっています。ただし、やっぱりその雰囲気はすぐに払拭されてしまいます。その原因は、主にエリにありますな。当然ながら(笑)。

 ここで、呑気で楽観的なエリをよそに、モネは木の中にも雌雄があると言いつつ、「雄の木々」に尋ねてイリアンの居場所を探り始めます。ランディック族ならではの能力。こういう超能力的な描写は、「ゴセイジャー」の魅力の一つに数えられるでしょう。

 途中、エリが鳥に鳴かないよう話しかけるシーンがありましたが、スカイック族ならではの能力で、鳥にも居場所を尋ねてくれれば良かったのになぁ、と思いましたが。

 そんなこんなで、「イリアンのハーレム」を探り当てたエリとモネ。ここからがクライマックスです。

 クライマックスに際しても、いきなり二人は仲間割れの様相を呈します。何と、モネがランディックパワーでエリを縛り付けてしまうのです。男性陣もこれには唖然。モネは単独でイリアンに立ち向かうのですが、やはり力不足。

 このシーンは割と唐突な感じで、「何で?」と思わせるに充分な効果があります。勿論、モネにはモネの考えがあっての行動だったわけで、束縛しておかないと、エリが無茶な行動をとるから…ということなのですが、実際には「それはちょっと」と思わせる展開が待っています。

 それは、モネによる束縛が、タカヘッダー・クロウヘッダー・プテラヘッダーのスカイックブラザー登場の契機になるというくだり。ホント、モネの束縛に耐えかねたエリの気合が呼び出したようにしか見えません…。当然、モネを助けたいという気持ちがスカイックブラザーを登場させたというエクスキューズは成り立ちます。しかし、流れからすると、どうもモネの束縛から抜けたいが為のスカイックブラザー登場に見えてしまう。これはちょっとどうかな、と。

 今回に限らず、新ヘッダー登場は何となく唐突に処理されているので、まぁ今回もこんなもんかなとは思いますけどね(笑)。

 とりあえず、エリが自由になってからは、モネとのコンビネーションが抜群になり、結局は、意見対立の度合いが戦いにおけるチームワークの乱れ具合と必ずしも一致しないということが示されます。

 要するに、全く性格の合わない二人であっても、互いを心配したり認め合っている気持ちは強固であるというわけです。これが今回のテーマ。アグリの目に、同じランディック族でなおかつ兄妹という関係にある自分とモネのコンビネーションよりも、エリとモネのコンビネーションの方が卓越しているように見えるという、象徴的なシーンがありましたが、時には同類よりも強固な関係が成立するということの提言ですね。

 巨大戦は、スカイックゴセイグレートが登場。トライダーバードアタックのような必殺技・スカイックストライクでイリアンを粉砕します。すみません、最近「トライダーG7」を見てるもので、既視感が(笑)。

 エピローグでは、再びアラタが生贄になり、エリとモネがアイスクリームを食べに行くくだりが。冒頭との対比になっていて、今度はエリとモネの意見が一致しています。なかなか巧い構成ですね。

 そして、次回。さ、さかなクンだと?

 この回は、スーパー戦隊シリーズ 天装戦隊ゴセイジャー VOL.3 [DVD]に収録。