epic42 「情熱的ハイド」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 やっぱりハイド編はいいなぁ。

 ハイド編は、いじりがいのあるキャラクターであるハイドを立ち回らせる事で、笑いをとるというパターンが多かったのですが、今回はシリアス編。いわば、クソ真面目なハイドがそれをネタにされる事なく、クソ真面目が故に危機を脱していくというパターンになっていて、これが実に味わい深いのです。

 ただ、冷静・冷徹が基本形のハイドを逸脱する形のサブタイトルが付いている事にも明らかなように、ハイドの仲間に対する思いがグッと前に出てくる辺り、やはり最終章へ向けての段取りが感じられます。前回がエリの底なしの優しさを再確認した話だったとすれば、今回はハイドのキャラクターをウェットなメンタル面で強固にするものだったと言えるでしょう。

 一方で、年末商戦に向けたデータスの販促ビデオとしても一級。意外とデータスをフィーチュアした話が少ないのは、それだけデータスが扱いにくいキャラクターであるというより、単なるマスコットに近い存在だったからで、ハイドが機械扱いする発言も仕方なし。今回はマスコット扱いを劇中で批判して見せることによって、データスをゴセイジャーの仲間に引き上げる目的も垣間見えます。

 そんなわけで、今回はあんまりツッコミ処がなかったように見えるのですが、それでもまぁ、あるにはあるわけで。続きをどうぞ。

 今回登場のマトロイドは、イミテイションのサロゲDT(デーティー)。「ディーティー」ではなく、「デーティー」らしい。

 データスを模したデザインが秀逸で、等身もちょっと高い。しかし、ここまでやるならニセモノではなくて改造されたデータスということにした方が、ドラマ的には盛り上がれたのはないでしょうか。あるいは、データスへの擬態能力を持っていて、スパイを働くとか。

 何となく中途半端になってしまっているのが惜しまれます。デザイン自体はとってもいいんですけどね。

 胸のディスプレイに「DEATH」なんてのが書いてあるのが笑えますが、実際、データスは「です」を語尾に付ける一方、サロゲDTは「DEATH」を付けていて、このあたり、「タモリ倶楽部」の「クイズDEATH」を思わせるんですよね。って、こんなネタ分かる方って、いらっしゃるんですかね?

 なお、このサロゲDT誕生に至るまでには、実際にデータスの拉致・解析が行われていて、その拉致に至るまでの流れが割と杜撰(笑)。

 まず、失敗続きのメタルAは、ロボゴーグから作戦立案を禁止されます。というわけで、今回のメタルAとブレドRUNは、完全にロボゴーグの作戦通りに動く役割。この二人が、国際会議の会場をミサイルで爆破するという脅迫を仕掛け、代わりにデータスを引き渡すよう要求します。

 結局、データスは自ら敵の手に落ちるんですけど、このシーンでは、ハイドの「機械」発言がちょっとだけ作用しているんですよね。しかし、この時はハイドの態度にショックを受けているように見えるデータスですが、実はハイドの事をよく分かっていて、自ら捕まりに行ったという事らしい。何だかチグハグというか、後から辻褄を合わせた感じが拭えません。

 そのハイドの「機械」発言は、恐らくゴセイナイトも含めたゴセイジャーの中で、最もハイドの思考パターンがマトリンティスに近いという、危うさを持たせたものだと思うのですが、単に発言に対する無思慮さの発露として処理されてしまったのは、ちょっと残念。やっぱり、後から辻褄を合わせている感じがします。

 つまるところ、ハイドは元からデータスを機械などではなく仲間として認識しており、ハイドの行動パターンに照らしてデータスの行動を評価した時に、「機械にも関わらず落ち着いていられないのか」という苛立ちが、「機械」発言となった。そう結論づけられているんですね。

 ということは、この話はハイドのちょっとした発言に、周囲(特にモネ)が振り回されただけの話であり、ハイド中心のシーン以外がやや空疎に感じられるのは、その辺りが原因なのだと思います。

 逆に、メタルAがデータスを、「機械のクセに測定不能値を出した」と評して動揺するラストは良かったんですけどね。

 それと、ミサイルは結局発射され、ゴセイジャーが身を呈して阻止したわけですが、全力で阻止出来るなら、何もデータスを渡す事もなかったであろうという…。今回は話の流れとしてはいいのですが、こういう細かい筋運びがちょっとずつつまずいている印象があります。

 後のデータス水没についてもそうです。

 水分に弱いという事を最大限にアピールしているにも関わらず、水没即再起不能ではなく、ハイドの修理で何とかなってしまうという…。サスペンスとしての仕掛けは、一切無効になってしまってます。

 ただ、このハイドの修理という行為が、「命がけ」かどうかはともかく(笑)、絆の再確認という展開を生み出し、後のドラマに深く影響を及ぼすので、省略不可能。というか、エンディングから逆算して、この辺りも辻褄合わせっぽさが濃厚だったり。

 そういうわけで、やっぱりハイド編として見ると見所沢山なんですが、全体的に散漫でグイグイ引っ張られる類のドラマではなかったのが残念。マジス絡みのメンタルな部分を前面に出した処も、素晴らしかったんですけどねぇ。

 なお、今回オープニングの主題歌が二番になったり、エンディングが多分劇場版仕様の主役陣歌唱バージョンになったり、いよいよお祭りムードも加速中。次回はマトリンティス総攻撃ということで、クライマックス感も加速中。年末という雰囲気が増してきましたね。