epic41 「爆発!仲間の絆」

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 エリ編。しかも、感動編。

 クライマックスからラストに至る流れは、ホントに素晴らしかったですね。ちゃんとマトロイドは死んでしまうし、やるせなさを湛えたラストカットも完璧。こういった、ヌルくない話こそ、子ども達に見せたいと思う私なのであります。

 しかし、心から感動出来ないのが大人の悪い処なのよねぇ。

 さとう里香ちゃんの演技プランと芝居は完璧だったと思います。エリらしさとは何かをよく考えて立ち振舞っていたと思うし、泣き笑いの表情もホントに素晴らしい。はっきり言って萌えました(笑)。

 でも、ここまでやるなら、冒頭からしばらくはエリを孤立させて欲しかったですね。アラタとモネが中途半端に関わるものだから、エリの強い思いがおにぎりに集約されてしまって、何となく底が浅いんです。

 あと、「コロ」と名付けられたマトロイドが豹変した後、グダグダやってしまっているのも、苦悩というよりはモタモタしている感が強く、一旦ストーリーの流れを断ち切ってしまっています。

 「さとう里香ソロムービー」として堪能するなら、断然オススメ。ただし、戦隊モノとして見るなら、やや厳しい。そんな感じです。

 詳しくは続きにて。

 今回登場のマトロイドは、ニュートラルのアインI(アイ)。多分、「A.I.」から取ったネーミングだと思いますが、「アイーンアイーン」に聞こえて、志村けん御大を思い出してしまい、この点でかなりマイナス(笑)。

 いや、私は志村けんを「カラスの勝手」時代から愛してやまない人間ですけど、こんな真面目な話に「アイーン」が聞こえてくるのはどうかと思うので、やっぱりマイナスです。

 声は山口勝平さんというナイスキャスティング。勝平さんは口数の多いキャラが多いので、今回はアドリブも出来ずにフラストレーション溜まっただろうな、と勝手に想像してしまいます(笑)。それにしても、朴訥とした少年風のキャラクター、やっぱり巧いですねぇ。このキャスティングには、かなり助けられているのではないかと思います。

 このアインI、実はメタルAによって改造されていて、わざとゴセイジャーの懐へ飛び込ませて、「仲間意識」についてのデータを集めてくるという使命を帯びています。が、アインI自体は無自覚。スパイとしては完璧です。

 何故「仲間意識」にメタルAが興味を持ったのか。それは、メタルAを庇って負傷した事を、ブレドRUNが平然と「仲間を守る為なら当然」などと表現した事が発端です。これまでウォースターやら幽魔獣を平然と罠に陥れてきたヤツがよく言うな、と思いましたが(笑)、まぁ記憶が消去されている事によって、メタルAに対してのシンパシィを抱く素地が出来上がったと、強引に解釈出来ないこともないですな。

 しかしまぁ、これがシリーズ構成の底の浅さを露呈しているとも言えます。

 さて、アインIに、当初は同情心を抱いたエリが、色々と世話を焼くうちに、アインIを友達あるいは仲間として見るようになっていくわけですが、ここでスカイックのよしみでアラタを関わらせたのが問題。

 アラタに関しては、過去へのトリップ事件を通して、仲間への信頼を強固にすると共に、やや典型的戦隊リーダーにシフトした事が、今回「わざわざ」シーンを割いて描かれます。つまり、アラタもハイドの冷静さやアグリの強さを獲得した「島村ジョー」なキャラクターへの成長を匂わせたわけで、クライマックスに向けた段取りとして素晴らしいと拍手したのですが。

 その直後に、慎重論も一切とらず、しかも仲間の意見も殆ど聞かず、形式的にはリーダーの独断が受容される空間で、アインIを天知天文研究所に連れ帰るという「暴挙」に出ます。

 これってどうなんでしょう。やっぱりアラタは変わっていないし、フワフワしたその場のノリでエリを尊重するキャラクターに拍車がかかっている雰囲気を漂わせているのです。これではダメでしょう。

 どんな危険があるか知れない(実際は爆弾を内蔵していた)マトロイドを、大した調査もせずに、よりによって人間の少年である望の家に匿い、データスによる事後調査で済ますとか、もう訳が分かりません。はっきり言って、ヒーローモノとしての段取りは最低レベルだと思います。

 この話のパターンは、剣道仮面、カラクリ怪人、新頭脳ブレイン、クルシメマスオルグ等々、枚挙に暇がないですけど、ヒーロー側の警戒心のなさといった段取りのマズさは、歴代最高ではないでしょうか。

 もう一つの大きな問題として挙げられるのは、アインI豹変後の対応でしょう。

 話の流れとして仕方なかったとしても、今回は完全に地球の安全より自らの感情を優先して行動しています。ゴセイナイトにしても、批判者の立場を完全に忘却していて、ユルいことこの上なし。

 これは「老害」だと揶揄されて仕方のない意見かも知れませんが、昔の戦隊ならば、ここで容赦なく殺しにかかります。しかし、そこにはそこはかとない後悔の念や寂寥感が漂い、カタルシスを望めない展開が待っていたものです。そういう「痛み」がやっぱり必要だと思うし、少なくとも正義の味方として、当然の行動だと思うのです。

 独断で天罰を下せる権限があるのだから、地球に仇なす者は、容赦なく断罪しなさい!

 これが、今回最も感じた事です。

 なお、エリのキャラクター性は、優しさが成分の大半を占めるということが分かったのは、シリーズにとって大きな収穫だったのではないでしょうか。というのも、これはかなり正統派ピンクに近いからです。