epic35 「パーフェクトリーダーを探せ!」

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 リーダーは誰だ!?

 まぁそんな感じ。しかし、これが「ゴセイジャー」らしくていいのです。ここで言う「ゴセイジャーらしさ」とは、勿論ユルいという事。本シリーズは気合の入ったお話になると、途端に破綻が生じて来るので、これくらいユルい話こそ最も合っている気がします。

 しかも、普通リーダー決定話を持ってくると、大体が「リーダーは自分だ」と主張する者同士で諍いなんかが起こって、泥沼を経て穏便に解決という筋道を辿るのですが、今回面白いのは、リーダーが誰であるかを全員一致で決めていってしまう処です。

 結果、ハイド、アグリ、エリ、モネの順でリーダーのポジションが回ってきて、最後はアラタがリーダーという肩書きに関係なくまとめちゃうという展開に。これはなかなか新鮮な趣がありました。

 マトリンティスが主張する「組織力」という言葉に翻弄され、このような事態に陥ってしまう事は、実に稚拙というか何と言うか。しかし、人間のように狡猾でなく純粋な護星天使達の魂を、巧く表現していると思えないこともない。とりあえず、「組織力」と「チームワーク」は似て非なる物であるという認識も良いと思います。

 というわけで、今回はなかなか良かったのですが、そうでない部分も含めて続きで少しばかり…。

 今回のマトロイドは、マッハのズテルS(ズテルエス)。何だか最近のウルトラに出てくる宇宙人みたいなデザインですが、メカ怪人としても相当ハイセンスでカッコいいですね。10サイのロボゴーグ10の才能の一つ「鬼才ブレイン」によって開発されたとあります。

 「ブレイン」と言えば、大月ウルフさんの「オー、ノー!ミスター・ブレイン!」が真っ先に思いついてしまうのですが(笑)。

 このズテルS、特に印象的な特殊能力があるわけでもなく、単に速いというだけ。超音速爆撃機のマトロイドであり、今回マトリンティスが展開する作戦には、あんまり関係ないのです。この辺りがちょっと弱い。

 その作戦とは、人類の収容施設を建造する為の労働力確保であり、ビービを統率して円滑に作戦を遂行するのが、ズテルSの役目です。つまり、超高速という能力以前に、統率力に優れたマトロイドという点の方が重要なわけです。

 ゴセイジャーがその「統率力」に対し危機感を抱く事によって、話が転がっていきます。

 それにしても、既にマトリンティスの設定には些かの破綻が見られるようです。

 帝国を名乗る割に、組織力の貧弱さが目立ちます。何故なら、中枢部はロボゴーグとメタルAの二人だけ(!)。後はその他大勢のマトロイドが取り巻いているに過ぎません。もっとも、特撮TVドラマではこんな事はよくある話で、戦隊だけに限っても色々と挙げられるでしょう。

 ただ、組織の奥行きを出す工夫といったものは常々行われていて、「サンバルカン」のブラックマグマは中枢だけ見ると少人数ですけど、市井の色々な場に機械人間のスパイが送り込まれている設定になっていたり、それ以外でもスペクタクルなカタストロフィーを描写して、少なくとも一小規模国家の大規模テロリズムといった雰囲気を出そうとしていました。

 しかし、今回のマトリンティスは、そういった工夫もなく、帝国を名乗るには小物過ぎるきらいがあるのです。一応、滅びた既存の大帝国をロボゴーグが復活させたという設定ですが、二人+アルファの帝国って、もう黄昏感が出まくってて寂しいじゃないですか…。しかも、戦闘員はよそから借りてきて運用してるし。

 そんなわけで、マトリンティスはビジュアル的な要素はふるっているのですが、バックボーンが弱すぎて、今ひとつノりきれないんですよねぇ。

 さて、ゴセイジャー側の描写は、なかなか好感の持てる感じでした。

 特に、リーダーに任命されたメンバーの行動が、それぞれ「らしい」感じで突っ走っており、こういう迷いのない状態は非常に心地良いものです。

 ハイドは、的確な状況判断から理知的に作戦を組み立て、迅速に指示。しかし、彼の慎重な性格は、数ケタの暗証番号を1番から順に試すという、何とも現実性に欠ける行動を生み出し、リーダーとしての資質が破綻してしまいます。ハイドらしいと言えばハイドらしいものの、彼の性格を単純にカリカチュアしちゃったのは、ちょっとマズかったのではなかろうか。

 まぁそれよりも、三回認証に失敗すると強制崩壊といった、暗証番号のプロテクトがかかっていないのには違和感ありありでしたが。だって、計算至上主義のマトリンティスにしては、全くセキュアじゃない。こういう処にも、マトリンティスの弱さが見えてしまいますなぁ。

 続いて、アグリは猪突猛進型をそのまま拡大した路線で、リーダーシップを発揮。敵陣突破や人々の救出等、スムーズに事が運びます。が、アグリのリーダーシップを阻んだのは、意外や意外、天知博士。天知博士に何故こんな処にいるのかと尋ねられて、アグリは答えに窮してしまうのです。

 しかし、これはアグリのリーダーシップに何ら影響しないのは明らか。たまたま、エリが正直に護星天使である事を告白してしまい、さらにそれがたまたま、天知博士に対して有効な「ゴマカシ」として機能したので、アグリがエリをリーダーに推挙したに過ぎません。

 バトン回しとしては結構強引ですけど、やっぱり強引だったらしく、結局リーダーらしい行動が描かれるのはアグリまで。エリはあたふたするばかりだし、次にお鉢が回ってきたモネにしても、皆を引っ張る程の技量はない。

 結局最後は、いつものように戦えば問題ないと考え、先陣を切ったアラタが「切り込み隊長」になり、チームワークを取り戻すといった展開になります。

 ほのぼのしてるなぁ(笑)。いいなぁ。

 で、巨大戦でもアラタの適当なリーダーシップは、アルティメットゴセイグレートなる新形態をも生み出し、正に切り札になってしまうわけですが、別にアラタがリーダーとして認められたわけではないのが、いいんですよね。

 結果、ゴセイジャーのリーダーは不在ということで。ただし、アラタは「戦隊レッド」らしさを一応見せてくれたので、便宜上のリーダーを彼としておいて、問題ないでしょう。