幽魔獣編最終回ということで宜しいか。
とにかく、膜インと筋グゴンが倒され、エルレイの箱も消滅したことになり、これで幽魔獣の根は絶たれたわけです。
「ゴセイジャー」は、敵組織が変遷していくシリーズですが、その境界がいわゆる1クール13話程度という括りではなく、もう少し暦に歩み寄る感じで段落を付けているので、やや中途半端(要するに、区切りがついたかどうかが分かりにくい)。演出自体も、何か匂わせて終わるというのが常套句のようなので、余計に幽魔獣が全滅したかどうかが今一つ明瞭ではありません。例えば、今回ならばビービの巣(?)がまだ残っているという具合です。
そして、予告で新組織が登場すると判明。予告でようやく幽魔獣編が終わったと気付かされるわけで、構成的にどうなのかと苦言を呈したくなるのは、私だけではないでしょう。
しかしながら、今回は全体を通してなかなか完成度が高いと思います。
完全に最終回のノリでやっているということもあって、テンションも高め。あらゆるシーンのそこかしこに気合の入り具合が感じられ、見る方もグッと引き込まれる感覚がありました。
というわけで、気分がいいので(笑)、今回は珍しく、望というキャラクターの意味が生きたという視点で、話を進めていこうと思います。
前回、やはり膜インは倒されていませんでした。
何と、膜インはわざとゴセイジャーのゴセイパワーを受け、それを吸収して四散、エルレイの匣の力によって世界中に飛び散り、粘菌ネットワークを形成して地球そのものと一体化しようと目論んでいたのです。
今回は「設定のダイアログによる説明」だけではなく、ビジュアルも端的で明快なものが作成されており、これまで小粒な印象が否めなかった幽魔獣のボス・膜インの強大さが、ここにきてようやく開花したと言っていいものになっています。
この膜インの陰謀を砕くべく、護星天使達が戦いを挑む構図になっているのですが、そこに望の誕生日パーティが、ごく薄~く関わっています。
少なくとも今回において、この「薄~く」という感覚が宜しい。
以前私は、望が殆どストーリーの根幹に関わらない事に対して、色々と批判して来ましたけど、今回、望の役割が非常に明確だった事で、正に目からウロコとなったのです。
今回、望は誕生日パーティをアラタ達と一緒に楽しむ事を第一に望んでいます。アラタ達の聞いている処では、幽魔獣打倒を優先して欲しいという発言をしますが、本音はアラタ達に早く戻ってきてパーティを一緒に楽しみたい。
そんな望の望み(ややこしい)は、やがてマスターヘッドに伝わり、それがゴセイジャー達の目の前に大きな奇跡となって現れるわけです。
この展開から分かる事は、望が、いわゆる主人公に密着して示唆を与えるようなタイプのキャラクターではなく、小さな望みを持って一日一日を生きている、普通の人間の代表だということ。
望自体、ウォースターや幽魔獣絡みの事件に巻き込まれる事は殆どなく、ゴセイジャーが戦っているという理解はあるものの、それは人間の理解を越えた部分で展開されている程度の認識しかしていないのです。
これはつまり、ゴセイジャー達に対して人間代表としてエールを送る役ではなく、極めて利己的に、しかし友人としてのデリカシーは保って、ゴセイジャーと接する役だということです。
それならば、天知博士の護星天使に対する蒙昧振りも、理解出来るというもの。天知博士は、ごく普通の人間である望の、ごく普通のお父さんである以外の、何者でもないのです。だって、自分の子供の友達について、あれこれ詮索しないでしょ?父親って。
以前、天知親子を、ゲストキャラがレギュラーの体裁をとっている構図として貶めましたけど、実はこの二人、ゲストというポジションはとっくに超越していて、たまたま護星天使と接点のある、傍観者代表としての側面が強い事に気付いたのでした。
そうすると、過去のエピソードも含めて、随分見通しがスッキリしてきます。
今回は、たまたまマスターヘッドに、ごく普通の人間・望の、小さな望みが伝わりました。マスターヘッドは、この世界では守護神のような存在であり、あまねく人々の幸せの芽を摘みとることを、良しとしません。視聴者の分身に近いキャラクターの意志が、「ゴセイジャー」世界の完全超越者である存在に伝わる、ミクロからマクロへの視点移動のダイナミックさが、今回の白眉となります。
望のポジションがはっきりする事で、ようやくアラタのポジションもはっきりしてきます。
今回は、レッドらしい言動も散見されるものの、やはりメインとなるのは望との繋がりでしょう。アラタは望の元に帰る事を目標に幽魔獣に挑み、望もそんなアラタの帰りを待っています。ごくごくプライベートな視点が、やがて世界を救う端緒になるという、私の大好きな展開となったわけです。
これはつまり、今回望がプライベートな視点を一貫して持ち続けたことにより、アラタもその視点で向きあうことが出来た結果だと思います。アラタは、使命云々を振りかざす事はあっても、やっぱり望の友達だ(=視聴者に近いレッドだ)というキャラクター性が、ここに来てようやくはっきりと見えてきたような気がします。…まぁ、これから先、裏切られる可能性は多々ありますけど(笑)。
さて今回は、類稀なるビジュアル面についても多くの言及が必要です。
まず、膜インが作り出した「幽魔ホール」の表現。これはもう、宇宙刑事シリーズの魔空空間、幻夢界、不思議時空のイメージでしょう。ロケーションの瞬時の切り替えや、逆回し等を用いたシュールで不思議な映像表現は、およそ不可能な映像表現がなくなってきた昨今への、ある種のアンチテーゼになっていて興味深い処があります。
また、膜インの本体が心臓として浮遊する空間は、昭和仮面ライダーシリーズにおける、不気味な「首領の本体」をイメージさせ、ある種の懐かしささえ漂わせていました。また、スタジオのホリゾントにカラフルな照明を激しく揺らし当てるという表現は、前述の宇宙刑事的な表現だと言えます。
このシーンの膜インは、いわば逆さづりになった状態なのですが、タレ目で頭頂に口吻があるというデザインが逆転する事になり、つり目で下部に口吻がある状態となり、その恐ろしさを増幅させています。これは実に創意工夫に富んだ処置だと思います。
さらに、巨大戦が凄い。
ゴセイアルティメットの変形シーンは、最近では珍しいフルミニチュア処理。システマティックに変形していく様子は、往年の戦隊ロボを彷彿とさせます。デザイン的には、デルタメガやタイムジェットγ等を思わせますね。
今回の巨大戦、オープンセットのカットの物凄い巨大感は勿論、スタジオ撮影におけるミニチュアセットに、これでもかという程に気合が入っており、本当に最終回のノリなのが凄いのです。
ごく私的な話ですが、最近発売された「ウルトラマン80」のDVDを見ていて、ミニチュアの精度の凄さを目の当たりにし、「もうこんな豪華なミニチュア特撮にはお目にかかれないだろう」などと寂寥感を感じていた処に、これですよ!
まぁ、必殺技が安易だとか、そういった面はもう最近の戦隊では当たり前なので目を瞑りますけど、とにかく今回の巨大戦の情景的なリアリティは、「どうしちゃったの?」と身を乗り出すくらいの凄さでした。正に「80」の情景が蘇ったかのようでした。
最後に、天の塔の礎がゴセイアルティメットになった事により、天の塔自体の建造の目処が立たなくなり、しかも、マスターヘッドまでも姿を消してしまうという事態になりましたが、ここはどうも説明不足。データスのセリフだけで説明されているという、膜イン側の手厚い扱いとは違う、妙に安直さの残る処理でした。
従って、ゴセイジャーが孤立無援という状態になった事も、今一つ伝わっておらず、その後のパーティの賑やかさで余計に霧散してしまいました。この要素は、かえって次回に回した方が良かったのではないかと思いますねぇ。
さて、いよいよ次回からは「マトリンティス帝国」なる一団が登場。どういう展開になるか、楽しみです。
ちょろ
こんにちは。
なかなか面白いですね、仮面ライダー丸3つ。主人公2人のドラマに興味が持てます。
人間は欲望の容れ物というアンクが今後無私的妹さんに影響されるのでしょうか、
そんな並みの脚本を小林女史の計算高い構想がどう超えてくれるか楽しみ。
一方その前番組は・・今回は「究極の玩具セールスを起こせ」。
肝心な逆転場面でまた気合いだけと過保護奇跡、もういいやになってしまいます。
わたしプロ野球の阪神ファンなもので、付箋ソフトでデスクトップに「奇跡は起こすためにある」と貼ってあるんです。ゴセイジャー並みに簡単だったら楽勝なのですが(笑)。
アルティメット変形は確かにさすが、男の子の財布を軽くしそうですね。
懐古的に楽しめたのはやはり、エスカレーターを転びながら昇ったら出ました不思議空間(笑)。
ダークな青バックに敵の心臓と空中戦、YouTubeあたりでレーザーブレードのテーマを合わせてほしいものです。
さて、いくらなんでも次の敵こそ最強最後、当然当初は大苦戦。
せっかく一時的にせよ孤立無援になったのですから、いっそナイト先生も助けずこてんぱんに。
以下「甘えてどうする。お前達はまだ限界を超えていない」とかなんとか、天使全員緊急合宿特訓に突入。体術と能力を駆使して奇跡を手作りして見せる回を期待・・できますかね(笑)。
SirMiles
>ちょろさん
ちょろさん的には、今回はダメでしたか?
私は、降ってくる奇跡ではなく、一介の少年の小さな望みが伝わって起きた「現象」と捉えることが出来たので、結構満足しちゃったのですが。
特訓話、実は戦隊シリーズ全般的に、あんまりないんですよね。
恐らく、制作側は「特訓=ライダー」という認識があって、意図的に避けているような気もします。ゴセイジャーでやってくれたら、逆に面白いと思いますけどね。
ザタンゴールド
・天の塔が妙にあっさり破壊された上に、何時まで経っても直らない
・通信が不鮮明で、肝心なところを言ってくれない時もある
・ブレドランがヘッダーの力を使えた=実は元護星天使?
以上の理由から「実はマスターヘッドが黒幕」という展開を想像していましたが、見事に外れました(苦笑)。
一応明確な死が確認されたわけではないので、死んだと見せかけて暗躍する可能性はあるかもしれませんが、その場合はゴセイアルティメットという強力な装備を与えた理由が分からなくなってしまうのでほぼゼロでしょう。そもそもそんなことをしたらブレドランとポジション被っちゃいますし。
SirMiles
>ザタンゴールドさん
もう、黒幕も謎も因果地平の彼方に飛び去ってしまった印象ですが(笑)。
この際、オムニバスだと思って見てしまうのもアリかなと。何か思わぬ仕掛けが登場したら、感動は倍化されること請け合いです。
とは言ったものの、一話ごとの出来不出来が激しいのが難点ですねぇ。
天地人
先週の感想が恥ずかしい(汗)
今週の話を見てから書き込めばよかったです。
しかし、ゴセイジャーはホント宇宙刑事の影響というか、意識した絵柄や設定が多いですね。
思わず「モトシャリアーン」と画面の前で叫んでいる自分がいました(苦笑)
いっその事、幽魔界では幽魔獣はエルレイの匣の力により、通常の3倍にパワーアップするのだとか、言ってほしかったです。
SirMiles
>天地人さん
宇宙刑事もそうですが、今回ゴセイジャーの変身シーンのバックにミルククラウンのような模様が使われていて、「ウルトラマンタロウ」のようだと思いました。
宇宙刑事は、何度も復活の話があったそうですが、私は復活しても昔のような雰囲気や勢いを再現するのは難しいと思ってます。なので、こういう形で雰囲気の継承が行われるのは、歓迎ですね。
ちょろ
こんにちは。
今回は、というより今回も残念だったという感想ですね。
これまでくどくど書いたことを繰り返してもしかたありませんので、単純に「なるほど面白かった」と思えなかったということで。
奇跡を作る材料はどれだけご都合でもよいのですが、なにがしかヒーローの工夫が加わっていないとわたしの評価センサーは反応しないようです(笑)。
SirMiles
>ちょろさん
確かに安易といえば安易ではありますね。
「絶対的」に「面白い!」と言えるエピソードだったかどうかは微妙かも知れませんが、私の「相対的」な評価では、とりあえずOKだったということで。