武レドランが退場し、色々問題をはらみつつも盛り上がってキタ~!というところに、突如普通のエピソードが挿入される、このシリーズ構成の難解さ。というか、流れ読んでない!?
ここがエリの特性を存分にアピールするタイミングとは思えませんし、せっかくの「護星祭」というタームも、日本の七夕をずらす為の口実という域を超えるものでは全くない。色んな要素が、ここにこのエピソードを持ってくる意味を語ってくれません。
敵側にしてもそう。エルレイの匣、武レドランが云々せずとも、膜インが元から自在に操れるんじゃんといった印象。しかも、確かにエルレイの匣によって、幽魔獣がパワーアップするという描写はあるにはあるものの、眠りに伴う夢ほ食べる能力が、望みとしての夢を食べる能力にパワーアップしたというだけ。それ、元からの能力として設定されてても、全然問題ないじゃんという感じなのです。
ただ、純粋にエリ編として見た場合、これは確かに面白いし良く出来ています。
エリの魅力爆発…とまではいかないものの、かなりエリの本質に迫るエピソードであった事は間違いないです。
「ゴセイジャー」における、転がらない、扱いにくいキャラクターの二大巨頭が、スカイック族の二人なわけですが、ようやくエリは転がるきっかけを掴んだかな、と思います。というか、そうであって欲しい。
というわけで、シリーズ構成に関する問題を度外視して、とにかくエリの魅力を追ってみましょうか。
今回登場の幽魔獣は、獏のエルムガイ夢(エルムガイム)。
これだけ分り易いネーミングソースが、この期に及んで出てくるとは思いもよらず。説明不要だとは思いますが、「エルム街の悪夢」ですよ。
獏というモチーフもポピュラーですね。まぁ、いつもの如くUMAかどうかという点では、非常に疑問ですけど。とりあえず、「夢」というキーワードに関連するネーミングとモチーフなので、統一感は抜群です。
このエルムガイ夢は、正に獏そのものであったらしく、人が眠っている間に見る夢を食べる能力を持っていました。ただ、それだけ。これまでの幽魔獣が、元々のUMAの能力を拡大解釈する事で、人間に害を為すパターンを有していた事を考えると、ホントに今回の為だけに能力を矮小化された幽魔獣なんですよね。
これ、細かい事のように思えますけど、実は重要な事で、地球を腐敗させる事が幽魔獣のポリシーだという前提を、根底から揺さぶっているんですよ。確かに、この前提は不徹底過ぎる程不徹底で、新しい幽魔獣が出てくる度に、忘却の彼方へと押し遣られて来たんですが、ここに来て遂に、人間に直接の害を及ぼさない可能性のある幽魔獣が出てしまった事になります。
ちなみに、ゴセイナイトの前提も、地球を汚染する輩を排除するというものでしたから、いわばゴセイナイトと幽魔獣は表裏一体の存在。ゴセイナイトのポリシーがゴセイジャーに揺さぶられるにつれて、幽魔獣も本来の目的を失って行った感が漠然とありましたから、言ってみれば、遂にゴセイナイトのポリシーは、当初とまるで異なるものに変質したというわけです。
勿論、このままだと話が進まないので、エルレイの匣によって、「普通の幽魔獣」にパワーアップさせています。そう、エルレイの匣でのパワーアップというから、どんなに凄いのかと期待したら、普通の幽魔獣の水準になっただけでした。トホホ…。
しかし、この事で面白い事情が見えてきます。エルレイの匣は、幽魔獣の技術の結晶。これを使うことにより、エルムガイ夢は地球を汚染出来る能力を手に入れたのでした。ということは、即ち、エルレイの匣が幽魔獣本来のポリシーを取り戻すキーになっているという事ではないか。幽魔獣の滅びを企んだ武レドランが、すったもんだの挙句、膜イン達に与えたのは、幽魔獣本来のポリシーを取り戻す事だったという皮肉。
さて、エリについて述べようとか言っておきながら、延々と幽魔獣の事について語ってしまいました。この辺りで軌道修正。今度は本当にエリについて言及していきます。
今回のエリは、エルムガイ夢によって夢を食べられてしまった人々を救うべく、奮闘します。
エリも夢を食べられてしまい、その作用で大地に根を生やし、地球汚染の原因の一人となってしまうわけですが、エリの持つ沢山の夢が、やがてエリの「根」を消滅させるに至ります。
さらには、異空間で夢を失った人々に徹底的にポジティヴな姿勢を見せ、周囲の人々の夢を次々と取り戻させていく…。とまぁ、こんな感じです。
そのエリの魅力とは何か。それは、どんな状況にあっても楽観的だということです。
ただし、この性格設定は非常に扱いが難しく、その性格が特徴的に描写された際は、大体が空気を読まずにやたらポジティヴになっていて、周囲をやや苛立たせている…という感じでした。いや、勿論そればかりではなく、周囲の空気を和ませて、チームをポジティヴに導いていくという場面もありましたが、その面が存分に活かされる事は、あんまりなかったのではないでしょうか。
今回は、エリの楽観的という面がエスカレートして、どんな状況においても、微細な「夢」を発見しつつ、それを大きな夢への道標にするという、スケールの大きな性格を浮き彫りにしています。これは、なかなか見事。
他のメンバーが、どちらかというと戦闘における実効に直結するような「自己の発見劇」を展開していたのに対し、今回のエリは完全に精神戦における静粛な強さの発揮でした。こんな処も実にエリらしいのです。
一方で、ゴセイナイトに夢の存在を認識させ、それが人間の強さの一端を担っていると知らしめる役割も請け負っていて、これがまた効果的。ホント、エリの周囲に関するトピックならば、いい事づくめですな。
さらに、最後の最後、ダメ押しの一発が。
「護星祭」では、願い事をすることが出来るのは一つだけという設定でしたが、何とエリは、ゴセイナイトにも夢が見つかるようにと祈るのでした。それまでのエリの「夢」が、とにかく自分が楽しい事、いわば尽きせぬ煩悩の発露とも言える(笑)事柄だったのに対し、ここぞという時に示したのは、内包された横溢する優しさ。たまりませぬ(笑)。
なお、この難しいキャラクター・エリを支えているのは、ひとえにさとう里香さんなわけであります。分り易い表情を作り出す表情筋が素晴らしい。持ち前の天然系の可愛らしさが、ダイレクトに響いている感じですね。もう、手放しで褒めてしまうのであります(笑)。
ちょろ
こんにちは。
苦手なもろファンタジー編、おまけにどうやら今月一杯でサヨナラの雰囲気漂う幽魔獣の皆さんなのに今回はなぜかただの実験台とのこと、見るテンションかなり下がりました。それでも最後まで見てしまったポイントはご解説の通りですね。もし本編が「ロマンティック・アラタ」だったら、恐らく超下手な字でカード書かれる辺りで絶対にリモコン切ってます(笑)。
しかしエリもちょっとスーパーガール過ぎ、根が消えるまでにちょっとは苦戦してほしかったですか。朴念仁役のゴセイナイトが「夢を食べられてしまったのなら、食べさせるのが私のターンだ」とかなんとか、無理矢理カードを口に押し込もうとする図が見たかったかも(笑)。
エリが被害者一同を励ますハイライトですが、個人的に背中を一緒に押せなかったのは彼らの夢の内容のせいだったように思います。金メダル、結婚、有名になる、プリン・・小粒ですがどれも30分後にメダルにされてしまうような感じで、一人くらい利他的な希望があるとよかったかなあと。おかげでラストのエリの祈りが救いになった、とも言えますが。
予告編では第二部もついに?クライマックス、くれぐれも駆け足過ぎぬよう願いたいものです。
SirMiles
>ちょろさん
エピソード単体としては、とってもいい感じだったんですけど、ここに入れてくる意味が…。やっぱり同様の感想をお持ちになりましたか。
幽魔獣編のクライマックスは、あんまり想像がつかないというか、盛り下がってしまった感があるので、駆け足は免れないような気もしますよ。やっぱりシリーズ構成に難があるのかも知れませんねぇ。
天地人
だ~れか、背中抱いててくれ~♪
ひとりきり~じゃ、さみ~しす~ぎる~から♪
(中略)
いま~、胸~に~だいて~エルムガイム~(違)
って、ネタ古すぎ(?)
今回の重戦機(ヘビーメタル)じゃなくて、幽魔獣は夢を食べるということだそうですが、元ネタでいえば悪夢を見せるっていう方法もありだったんではないでしょうか。
まあ、エリの魅力満開な話なんでそんな事はどうでもいいか(おいっ)
ただ、エルレイの匣でパワーアップできるなら、もしかしてビービ虫無くても巨大化できるんじゃ(以下、自主規制)
SirMiles
>天地人さん
そうそう、エルムガイ夢という名前から、私も真っ先にエルガイムを連想しました(笑)。私はどちらかというと、ダンバインの方が好きですけど。
今回はエリが横たわっているという、見事な図で満腹になりましたね(笑)。それだけに、冷静になると、相変わらず粗が目立つというか。
あとは、エルレイの匣が単なる便利なハコにならない事を祈りましょう…。