epic26 「護星天使、爆笑!」

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 いやぁ、これは傑作エピソードではないですか?

 色々なパターンの話を展開する「ゴセイジャー」ですが、やっぱりキャラの殻を破るようなコメディこそが、真骨頂なんですね。

 とはいえ、キャラクターのギャップといった面でギャグが映えるのは、やっぱりハイドなので、結局はハイドにまつわるギャグ回が傑出しているということになるのですが。

 今回は、そこにゴセイナイトが加わるので、余計に面白味が増しています。ただし、ゴセイナイトはハイドの醸しだす「ズレ」の味とは無縁であり、あくまでゴセイナイトというキャラクターの中でしか動いていない。これが凄い処なのです。つまり、ハイドはキャラクターの大枠の外にちょっとだけはみ出しつつ、面白おかしく立ちまわることによってコミカルさを出しているのに対し、ゴセイナイトはあくまでシチュエーションコメディになっているわけです。

 具体的には、ハイドの声を裏返した大笑いなんかは、オヤジギャグへの過敏な反応という「キャラクター崩し」と、キャラクターに似つかわしくない大袈裟なリアクションで笑いを取る「ギャップ芸」の合わせ技。対するゴセイナイトは、声色も立ち振る舞いも変えず、あくまでハイドに指示されたとおりのセリフを言ってみせたに過ぎません。この、ゴセイナイトがクソ真面目にやった事が、周囲(主に視聴者)とのギャップを生じさせている故に、そこに笑いが起こるのです。

 サブタイトルの感じから、寒いドタバタギャグ回を想像していましたが、意外に硬派なコメディを展開していて驚かされた本エピソードの詳細は、続きにて。ただし、私の夏季休業中の放送だったこともあり、申し訳ございませんが、やや手抜き気味です…。

 今回登場した幽魔獣は、天狗のヒッ斗(ヒット)。先にネーミングソースに言及しておきますが、「IT」という映画だとのことで。私はこの映画を見ていませんが、ピエロが立ちまわる内容のホラー映画らしいので、まぁ今回のヒッ斗の道化のような振る舞いとは一致しているかな、と。

 それにしても、もう天狗ともなるとUMAというより、昔ながらの妖怪の範疇になりますね。UMAというカテゴライズに相応しいものは、まだ結構あると思うのですが、如何せんメジャーなものとなると限られてしまい、子ども達に分からないようなものでは困るからでしょうねぇ。

 デザイン的には、カラス天狗とサソリを巧く融合させた感じで処理されていますが、それは天狗というモチーフを認識した後の話。前情報なしで見ると、実際は天狗というよりサソリの怪人のイメージが強く、割と分かりにくいデザインだとも思えます。

 また、天狗は山神というイメージが強く、今回のヒッ斗のような道化のイメージは想起し難い印象なので(あくまで私は、ですが)、どうもチグハグな感が否めません。笑った者を瓢箪に吸い込むというイメージは、西遊記の金角銀角あたりを想起させる為、余計にモチーフをはぐらかされている感じです。天狗も瓢箪持ってますけどね。

 さて、このヒッ斗、前述のように笑った者を瓢箪に吸い込んでしまうという能力の持ち主ですが、この能力によって、街の人々のみならず、ゴセイジャーの面々が次々とその術中にハマってしまいます。そして最終的にハイドだけが、他の面々と笑いのツボが全く異なる為、難を逃れている構図となります。

 ハイドのツボは、ズバリ、オヤジギャグ。あからさまなダジャレに激しく反応してしまうという、論理的に複雑な事象を読み解く思考を持ちながら、至極単純明快な笑いにしか反応しないあたり、ハイドの意外な面を見た感もあり、また逆にハイドらしいと言えばハイドらしくもあります。

 ヒッ斗は、くすぐり風や放屁という、笑いに関しては奥の手とも言える技も繰り出す策士でもあり、ゴセイジャーもその技の餌食となってしまうわけですが、ハイドは、笑いのツボがズレているのと、一度見た技への対抗手段を編み出す能力に長けている事から、難を逃れているわけです。一方、ゴセイナイトはそもそも笑いなど意に介さないクールさが売りですから、ヒッ斗の罠にはかかりません。

 今回は、このハイドとゴセイナイトのコンビネーションが、どのように完成されていくかというプロセスでもあるのですが、それこそが今回の白眉になります。

 結論から言ってしまうと、「本人たち大真面目、周囲は大笑い」。つまり、クールな芝居をハイドとゴセイナイトがやっているので、本来の彼等のキャラクターを崩すことなく、その上で、二人が繰り広げる「共同作戦」が通例の感覚との温度差を生じている為、ユーモアが生まれるといった具合なのです。

 この絶妙な構成によって、ギャグコンビを組んでしまったという感覚で処理されることなく、ハイドとゴセイナイトの信頼感といった部分を巧く描くことに成功しています。これは素晴らしい処理です。

 「共同作戦」の内容は、咄嗟の思いつきでハイドがボケ、ゴセイナイトがツッコミを演じ、ヒッ斗の「自らも笑えば瓢箪に吸い込まれる」という弱点を突く事。漫才の内容は、ハイドのツボであるオヤジギャグではなく、コテコテに寒いボケツッコミ漫才でしたが(でないと、ハイド自身が笑ってしまいます)、これ一応、ハイドの研究の成果なんでしょうねぇ。そこがまた笑いを誘うんですけど。

 で、この漫才は間から抑揚から何から全てメチャクチャで、演出がわざわざ「ピューッ」と風を吹かせるまでもなく、本当に寒いのですが、これを、演出がしっかり狙ってやっているのが凄い。

 ハイドとゴセイナイトの漫才は、完全にヘタクソな失敗作でしたが、視聴者的にはこれが爆笑モノ。いわゆるスベリオチというやつですけど、ヒッ斗が笑ったのは、このスベリオチに対してだったのか、それとも漫才の内容そのものに対してだったのか、今一つ掴めないのが惜しい処です。

 ゴセイナイトは、ハイドの作戦が図に当たった事から、彼の戦略家としての才を認めたようですが、その辺りを多く語らないのは、逆に奥ゆかしくて良かったと思います。

 ちなみに、アクション面では、瓢箪を使って往年のカンフー映画のようなコミカルな動きを見せていました。こういったアクションに対する貪欲な姿勢は、画面に奥行きを与えます。「ゴセイジャー」自体、アクション面に影響するような縛り(例えば、忍術とか拳法とかチャンバラとか)が設定されていないので、アクションの見せ方はかえって難しいと推測されますが、毎回工夫を凝らして魅せてくれるのが嬉しいですね。