ミラクルゴセイヘッダー登場編。古の封印されたヘッダー、古びた青銅の剣への擬態、武レドランの意味深な言動等々、どれをとっても上質の旨味。雰囲気もたっぷりです。
1クールで私が問題点として挙げていた「降ってくる奇跡」もかなり緩和されており、これはゴセイナイトとのコントラストによる使命感とポリシーの顕在化による処が大きいと思います。
いわゆる「再生怪人」譚も盛り込まれていて、非常に充実度の高いエピソードなのですが…。
ちょっと物足りない。
その物足りなさはどこから来るのか。前置きをこのくらいにして、続きの方で紐解いてみたいと思います。
今回登場の幽魔獣は、ブロッケン妖怪のセマッタ霊(セマッタレイ)。ブロッケン妖怪はUMAというより自然現象の呼称に近いものなので、実際モチーフとしてどうなのかとは思いますけど、まぁ現象の正体が不明だった時代には、少なくとも「妖怪」だったので、よしとしましょう。
ネーミングソースは、「ペット・セメタリー」とされていますが、この映画は死者の蘇生がテーマになっているので、今回の再生幽魔獣軍団に合致していると言えるでしょう。また、ブロッケン妖怪には実体がないという事を活用し、エピソード内で巨大な姿を見せたり、当初の再生幽魔獣軍団が単なる蜃気楼だったりといった展開を見せています。モチーフと活躍ぶりが巧く一致した好例だと言えるでしょう。
このセマッタ霊が、いきなり巨大な姿で登場するのが今回の冒頭。巨大戦を冒頭に置いてみせる等、パターン破りが試みられています。
ここでのセマッタ霊は、派手にゴセイグレートと戯れてみせる役。そこにゴセイナイトも巨大化した姿で登場します。ここが今回で最もインパクトのあるシーン(スーパーゴセイジャーよりも…)。ゴセイナイト自体が巨大なグランディオンヘッダーに変形するので、ゴセイナイトのまま巨大化が出来てもそれほど違和感はありません。しかし、これはセマッタ霊の幻影投射能力に便乗しただけでした。そう、私もまんまと騙されてしまったわけです。
こんな感じで、「意外性」をバンバン積み重ねていく作劇法ならば、今回は大充実回になったのですが…。
ちなみに、この巨大な幻影を投射する能力というのは、「ウルトラマンA」のヒッポリト星人を彷彿させますね。ただし、ヒッポリトの場合は完全に脅迫の手段だったので、今回のセマッタ霊のように、派手に暴れて気を引くという行動とは、かなり印象が異なります。
さて、このセマッタ霊の幻は、実は囮の囮。普通だとこれが陽動で、裏に静かなる陰謀が隠されているパターンですけど、今回は、セマッタ霊の「芝居」に気付かせることによって、武レドランの発見したアバレヘッダーをゴセイジャーに認知させ、武レドランの破る事のできない封印をゴセイジャーに解かせるという、凝りに凝った二重の作戦だったのです。
実にトリッキーで意外性のある作戦ですけど、残念ながらこれが見応えには直結しないんですねぇ。
まず、作戦の概要が殆ど武レドランの口から語られる為、ビジュアルで納得させられているわけではないということ。そして、巨大戦のインパクトが大きかった為に、武レドランの行動が今一つ印象に残りにくいこと。その後の、アバレヘッダーを使役する武レドランがカッコ良すぎて、そこからは完全にパワー戦に突入してしまい、トリッキーな展開を望めなくなったこと。この三つが主に問題点として挙げられます。
まぁ、トリッキーな展開を望むのは、多分今回の主旨に反していると思われるので、見当違いの指摘だとは思います。が、折角の「緻密な作戦」だったので、もう少し徹底しても良かったのではないかと思いますね。
ところで、アバレヘッダーの存在を知っており、さらにスーパーゴセイジャーへのパワーアップを目撃した時に、「そんな能力はなかったはず」といった発言をしていることから、武レドランは護星天使とかなり深い繋がりがあるようです。エピローグで膜イン達に詰め寄られていた事からも、幽魔獣ではハグレモノに近い雰囲気を漂わせていますし、色々と謎がありそうですね。この辺りの「引き」は抜群で、楽しみです。
逆に私が個人的にとってもイマイチだと思ったのは、ミラクルゴセイヘッダー登場のくだり。ビジュアル的には、相変わらず素晴らしいクォリティで魅せてくれるし、ガジェットそのもののデザイン的には、クリアパーツの使用によるハイセンスなイメージが素晴らしいのですが、話の流れが厳しい。
アラタがアバレヘッダーの心の叫びを訊こうとして、武器を捨て、武レドランに近づくあたりはいいでしょう。その根拠自体は、ちょっと弱いような気もしますが。
その後、凄い破壊力を発揮するアバレヘッダーが、何やら色々と口から吐き出すのですが、アラタがそれを浴びても平気なので、どうも違和感があります。
そして、アラタ自体のキャラクターがやっぱりブレている。今回はあまり「語りかけ」がなくて好印象でしたが、逆にここで使って欲しかったですね。アラタの無償の優しさがミラクルゴセイヘッダーを覚醒させるというくだりで処理すると、説得力が増したのではないでしょうか。
最後に、アバレヘッダーを手にした瞬間、別のミラクルゴセイヘッダー群が飛び出してくるというのが、ご都合主義的、予定調和的過ぎて興醒め。全員が同時にスーパーゴセイジャーになる都合があったのは分かりますが、安易。もうちょっと練るべき部分があったのではないかと思います。例えば、ゴセイレッドの手にしたゴセイテンソードから放たれる四条の雷光が、各地に散らばるミラクルゴセイヘッダーの封印を一気に解くとか。
スーパーゴセイジャー自体は、かなり挑戦的なデザインですね。従来の戦隊のパワーアップ武装は、結構シンプルだったのですが、このスーパーゴセイジャーに関しては、結構装飾的になっていて、パワーアップが分り易い。「デンジマン」で村上克司御大が戦隊の枷とした「シンプルであること」とは、かなり外れている気がしますが、実際の装飾は胸部から肩部にかけて集中しているので、戦隊ヒーローのシルエットを崩してはいません。
そのアクションは、流麗かつ一撃必殺型で統一されており、通常のゴセイジャーが器械体操的な(いわゆる「JAC」的な)アクションとすれば、このスーパーゴセイジャーは剣劇的な(いわゆる「剣友会」的な)アクションだと言えるでしょう。再生幽魔獣とは、それぞれ因縁のあるメンバーが戦っており、以前のエピソードを踏まえた発言があったりと、ニヤリとさせる演出が光っていました。
このように、ビジュアル、アクションはやっぱり素晴らしいのです。一歩、あと一歩踏み込んだストーリー構成の組み立てがあれば、バッチリなんですけどねぇ。
この回は、スーパー戦隊シリーズ 天装戦隊ゴセイジャーVOL.6【DVD】
に収録。
天地人
武レドランですが、堕天使というか、かつては護星天使だったのではないかと思っていたのですけど・・・
今回の話で、自ら結界を破る事が出来なかったので、やっぱり違ってましたね。
まあ、そろそろゴセイジャー自身のパワーアップ話が来るかとは思っていたのですが、管理人さんの言われる通り、もうちょっと工夫がして欲しかったです。
自分としては、今回はあくまでゴセイレッドのパワーアップにして、次回以降に一人ずつ東映お得意の争奪戦をからめた展開を期待したのですが
(って、予告で既に全員してますけど)
まあ、この展開の速さがゴセイジャーらしいといえばそうなんですけどね。
しかし、ここに来て強さのインフレ状態がまた出てきそうな悪い予感が(苦笑)
SirMiles
>天地人さん
武レドラン護星天使説は、私も支持しています。
結界が破れないというのは、「翼をもがれている堕天使」ならば、まぁ有りうることではないでしょうか。
というより、細かい部分をさておいて強引に堕天使にすることが、このシリーズなら可能でしょうから(笑)。
強さのインフレ、出なければいいんですけど…。