ゴセイナイトを動けない状態にして、ゴセイジャーを存分に動かす…だと思ってましたが、実際は違ってました。
ゴセイグランド登場もあいまって、完全にゴセイナイトのターン。ゴセイジャー、一体何やってんの?
表面的には、「イイ話」の体裁をとっていて、特に今回の目玉キャラであるご両親のシーンには不覚にもウルッとさせられるのですが、ゴセイジャーの動きに関しては殆どがチグハグになっていて、結局何を語りたいのかがよく分かりません。
というより、ゴセイナイト販促!の一本以外の何者でもないのが、透け透けになっちゃってるのがイタい。もうちょっと主役陣のゴセイジャー達に花を持たせてあげてもいいんじゃないかと思いました。
今回、一番気になったのは脚本が「八手三郎」名義になっていたこと。この名前が出てくるということは、その裏に色んな事情を想像させてしまうということで…。
こういった重要回にメインライターの横手さんが登場していないのも奇っ怪ですし、そもそも横手さんは幽魔獣編のパイロットに関わっていないこともあって、何か制作上の軋みを感じてしまうのは、私だけではない筈。
ただ、今回の脚本は割とローテーションがはっきりしていて、単に大和屋暁さんの都合がつかなかっただけというオチも否定出来ません。八手名義には「名前を出せない人」という側面があるので、単に脚本家としての報酬を立場上受け取れない人物が、急場しのぎで登場しただけなんでしょうね。
いずれにせよ、ゴセイナイトが強すぎてツマンナイ。これが、私の今回の感想ですな。
しかしながら、ビジュアルは相変わらず素ン晴らしい。その辺のギャップに言及してみましょうか。
今回、チュパカブラの武レドランが差し向けたのは、河童のギエム郎。「ギエムロウ」と読みもそのままです。
ネーミングの元ネタは、「グエムル-漢江の怪物-」であり、水棲という点を共通させています。河童がUMAかどうかという議論はもうヤメにしときますが、デザイン的には、河童でありつつも幽魔獣たる不気味さが兼ね備えられていて、素晴らしいと思います。
河童と言えば、かつて「カクレンジャー」にて、現代風に大胆なアレンジを施され、鮮烈な登場を飾ったカッパが居ましたが、今回のギエム郎は怪物感が強調されていて、「カクレンジャー」における傑作デザインに並ぶ魅力があると言っても過言ではないでしょう。
その「カクレンジャー」ですが、何と今回、ニンジャレッドの小川輝晃さんと、ニンジャホワイトの広瀬仁美さんがゲスト出演されています(うまく繋いだw)。
私は初期戦隊が大好きですが、個人的な第二の黄金期として、「ジェットマン」~「カクレンジャー」が大好きだったので、このゲスト出演は実に嬉しかったです。小川さんも広瀬さんも、当時と殆ど変わってません。若い!広瀬さんなんて、当時はまだ13~14歳でしたけど、全然変わってないです。小川さんも超カッコいいですね、相変わらず。
広瀬さんのもう一つの代表作と言えば、何と言っても「シュシュトリアン」。丁度前述の黄金期と同時期だった為、こちらも必死になって見てましたねぇ。「中華魔女」や「ポワトリン」に全然興味が湧かなかったのに、「シュシュトリアン」には夢中でした(笑)。長女役の田中規子さんと自分の年がほど近いこともあって、結構熱を上げてましたよ。懐かしい。
あ~、思い出話でずっと引っ張りたいくらいですが、このくらいにして、折角このお二人が登場しているにも関わらず、あんまり意味のないポジションなんですよねぇ。
というのも、カクレンジャー夫婦の娘・可奈子がギエム郎の「人間を吸い取って誘拐するダニ」に捉えられてしまうわけですが、その事でゴセイジャーを逆恨みしてしまうんですね。まぁ、ここはごく自然な流れだと思います。
ところが、アグリが可奈子を守れなかった事で意気消沈してしまい、アグリのキャラクターとしてはかなり不自然であるのに加え、ニンジャレッドさんは護星天使なんて名乗る得体の知れない連中を、何故か途中から根拠なく信じてしまってひたすら娘の帰りを待ち続けてるんですよ。こりゃ、感情移入しろと言う方が間違ってますわな。
ただ、小川さんと広瀬さんのコンビネーションの良さと芝居の的確さ、更に私なんかは元カクレンジャーというバイアスがかかってしまっているので、イイ話に見えてしまうんですよね。ニクい処です。
アグリはと言うと、可奈子の両親が護星天使を信じて待っている事を知って奮起。一方、ギエム郎に捉えられたゴセイナイトは、そのゴセイパワーを存分に幽魔獣に利用されており、そのパワーの発現をアラタ達に探知されることにより、可奈子救出に繋がっていきます。
これらの流れは非常に有機的かつ無駄がなく、ギエム郎のパワーファイトに対抗するゴセイジャー達の軽やかなアクションのコントラストも抜群に効いていて、実に素晴らしいのですが…。
問題はその後。
ゴセイナイトがアラタの示す使命感を見て奮起し、一気に脱出するくだりは正に燃える展開なのですが、ゴセイジャーはギエム郎と武レドランに全く歯が立たず(この武レドランは抜群にカッコいいですけど)。結局ゴセイナイトが圧倒的な強さで片付けてしまうのでした。しかも、巨大戦まで完全にゴセイナイトの独壇場。ゴセイジャーは倒れているわけでもなく、呑気に見物…(絶句)。
しかしながら、一気に緊張感をそがれてしまった後のラストシーンは、今度は叙情性に溢れていて、良かったのです。まだまだゴセイナイトとゴセイジャーは分かり合えないという余韻が素晴らしい。
こんな感じで、良い所と悪い所が乱高下する不思議なエピソードでした。傑作に成り得たかもしれないのに、ちょっと勿体無い気がします。
この回は、スーパー戦隊シリーズ 天装戦隊ゴセイジャー VOL.5【DVD】に収録。
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