1クールと少しで最終回を迎えた「ゴセイジャー」。何と、戦隊シリーズ最短記録を作ってしまいました。
最終形態のハイパーゴセイグレートの登場を、何であんなに急いだのか疑問でしたが、なるほど、こんなに早い最終回を迎える為の準備だったわけですね。また、繰り返し結束の大切さを描いてきたのは、期間が短いが故の事だったんですよ。納得納得。
…って、納得出来るかぁっ!
ホントに一旦終わっちゃってどうすんの?ショッカーからゲルショッカー、ゲドンからガランダー、ブラックサタンからデルザー…。錚々たる先人達の知恵を踏襲しようよ。
ウォースターは、こんなに弱い護星天使ちゃん達に負けてしまって、他の数々の惑星の犠牲って、ドレイクの作り話かい。
ホント、何だよコレはって感じです。折角飯塚大先生を擁したモンス・ドレイクを易々と退場させる配慮のなさもさる事ながら、ブレドランにしても、公式サイトに「怪人」として掲載されちゃったってことは、あれで終わりってこと。野心家の面を見せていたブレドランを、簡単にドレイク万歳に仕立て上げ、挙句の果てに見せ場もなく宇宙船と一緒にお陀仏とは…。トホホ以外の何物でもないですわ。
さて、どうしようか。
私はそれなりに特撮ファンサイトを続けてきましたが、結構甘口を心掛けていたのです。しかし、「ゴセイジャー」は辛口にならざるを得ない。そうすると、私のポリシーに反するわけでして、続けるべきか続けざるべきか、悩んでしまうのです。
ま、今回のストーリーをまとめつつ、ゆっくり考えましょうか。
今回のウォースターの刺客は…というか、ボスのモンス・ドレイクが自らお出まし。モンス星人・惑星のモンス・ドレイクです。なお、そのサポートとして、彗星のブレドランも出陣します。彼は何星人か分かってないんですね。気が付きませんでした。
モンス・ドレイクは、デレプタや前回のターゲイトが倒された事で、遂に自ら出陣を決意。数々の惑星を滅ぼしてきたと豪語する割には、結構「右腕」となる存在に乏しいですな。
ドレイクの魅力の一つに、その派手派手しいデザインがありますが、やっぱり最大の魅力は飯塚さんの声でしょう。私は、ハカイダーはリアルタイムではなく、サタンエゴス、ベーダー怪物、ヘルサターン総統あたりから入った人ですけど、今DVD等で見返しても、それはそれは素晴らしいのです。宇宙刑事シリーズの悪ボスも全て飯塚さんであり(ドンホラーだけは序盤にて体調の関係で降板なさってますが)、曽我町女王と並んで、超々リスペクトなんですわ。
そういえば、何かの雑誌で飯塚さんは「曽我町ちゃん」を連呼されてましたが、共演がかなり多いんですよね。私が大ファンである曽我さんのお店にお邪魔して直接お話を伺った際も、「飯塚ちゃん」という呼称が何度か出てきましたので、かなり(仕事の上で)親しい間柄だった事を伺わせます。曽我さんのお話では、正にツーカーの仲だったとか。曽我さんは声優としてもベテランだった為、かつてオールアフレコだった戦隊シリーズでは、曽我さんがアフレコ教育係になってしまいました。それが途中で嫌になった曽我さんは、「飯塚ちゃんに任せたわ」と言って、飯塚さんに押し付けたそうです(笑)。飯塚さんは(曽我さんから見れば)嫌がらずに引き受けられたそうですが…。内心はどうだったんでしょうか(笑)。
曽我さんは既に鬼籍に入られ、一方の飯塚さんの声を聞く機会も結構減ったように思うので、私のように昭和特撮大好き人間にとっては、実に寂しい状況でございます。
…はい、閑話休題。
そんな飯塚さんを擁したドレイクなのに、一つ一つのセリフの魅力が結構乏しい上に、話自体がアクション主体になっている為、威厳ある振る舞いを描写しきれなかったのが惜しまれます。
ドレイクは、地球上の酸素という酸素を奪い尽くすという作戦に出ますが、何と、それが所謂酸素(O2)ではなく、酸素という元素(つまり、O)を奪うという内容。これによってあらゆる建造物や生物が消滅していくわけですが、何故か人間だけはその大部分の構成要素である水(H2O)が崩壊することなく、周囲の「気体としての酸素」が欠乏していくのでした。あれれ(笑)。
人智を超えた恐ろしい宇宙人としての存在感こそ印象づけられましたが、あんまり理知的ではない気がしますな、この話の運び具合は。
で、アクションとかビジュアルエフェクトとか、もう物凄くて壮麗かつ大迫力。これぞ東映戦隊シリーズ演出陣の底力という映像をたっぷりと見ることが出来ます。
また、アクションも大敵ドレイクに5人それぞれが知力・体力を尽くして挑んで行く様が良く描写されていて、大充実。まるで歯が立たない前半戦は、ワイヤーアクションと合成を駆使して縦横無尽にゴセイジャー達を吹っ飛ばしています。逆転のチャンスをつかむ後半戦では、一挙手一投足が緻密かつ大胆に計算されたアクションを展開し、一縷の隙を何とか突いて行くゴセイジャー達の連続攻撃が、見るものを興奮させます。
このように、アクション面やビジュアル面は、恐ろしく完成度が高く、物凄い魅力で画面に視聴者を引き込んで行くのですが、やっぱりストーリーがナンなので、これが浮いてしまっているんですね。
ストーリー上、特にヤバいのは天知親子でしょう。
親父はUFOの存在に気付きつつも、都合の悪いゴセイジャー達にとことんシカトされ(しかもクライマックスで緊張感を殺ぐ演技が…)、望は、酸素欠乏の中、友人達にサッカーの練習を促すという、意味不明の行動をとります。
望の行動は、一応「今出来る事をする」というポリシーの体現なのですが、今やるべき事じゃないだろうというツッコミは、メインターゲットの幼児でもするんじゃなかろうか。これは後に、ゴセイジャーによって記憶の消去が行われた際、知らないうちにサッカーが上達しているという結果(特訓の記憶の欠如)に現れ、望が天使の存在を意識するというくだりに繋がって来ます。が、それが感動を呼ぶかというとそうでもなく、どういうテーマにしたかったのか、実に不明確なのです。アクションの間にサッカーの特訓が随時挿入されるのも、少々間が悪い。
関係ない二つの出来事を並行して描くというのは、シナリオ的にも演出的にも実に難しい事なのですが、「ウルトラマンタロウ」なんかでは、田口成光先生が実に巧く描いてらっしゃいます。本当に何も関係ない出来事だったりするのですが、根底に流れるテーマの部分では共通していたりと、その爽やかな説教色がそそるのです。
今回は、折角「諦めないこと」をアラタが戦いの中で語るのに、望のエピソードが殆ど関連性を持っていない為に、説教色すら感じられません。
あと、ドレイクを等身大戦で追い詰める展開があまりにも素晴らしかった為に、巨大戦(ドレイクがビービ虫を喰らう描写は素晴らしい)の予定調和が何とも…。
「今の俺達なら、絶対に負けない!」という気合と共に、ドレイクに反撃の隙も与える事なく一撃必殺なんていう展開の方がすっきりしていたように思います。苦戦させておいて、ハイパーゴセイグレートが「降ってきて」、ブレドラン諸共爆破って(笑)。しかも、尺が短いので予定調和の匂いがプンプンし過ぎなのも問題です。
私が毎年楽しみにしているのは、先鋭化するマーチャンダイジングの要求に、制作陣がどう叡智を尽くして応えるか、その丁々発止のやり取りなのですが、今年はどうもその辺りに齟齬が生じている気がしてなりません。「仮面ライダーW」が非常に素晴らしいので、余計に問題が見えてしまってます。
次回予告は、スリリングな編集で期待感を高めていて、実に完成度が高いのが悩み処。
ま、次回を見て、この「ゴセイジャーを見たか?」の継続を決めることにします。
この回は、スーパー戦隊シリーズ 天装戦隊ゴセイジャー VOL.4 [DVD]に収録。
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