モネとハイドのコンビがメインの回。
御存知の通り「ゴセイジャー」では、個々のメンバーに属性が設定されており、それらの組み合わせによって生じる齟齬や和解、結束といったドラマを多く展開していますが、今回は猪突猛進型のモネと、冷静沈着なハイドを組み合わせることによって、同様のドラマを構築しています。
私としては前回がアレな出来だったので、今回はどうだろうと恐る恐る見ていた部分はありますが、それなりに面白いと言える水準に達していたので、ホッとした処です。
しかしながら、1クールも消化したこの時点において、まだ仲間同士の結束に問題を抱えているという展開は、些か食傷気味。とはいえ、次回がモンス・ドレイクとの決戦をフィーチュアしたイベント編になっているようなので、15話で一区切りさせる意図があったのかも知れません。
で、筋運びは面白いのに、今ひとつ燃えられない感があるのも事実。その辺は続きで触れてみようと思います。
今回のウォースターの刺客は、スアイラゴ星人・衛星のターゲイト。ネーミングの元ネタは「スターゲイト」でしょうね。今回は非常に分り易いです。
声は何と稲田徹さん。「稲田さんとかけまして、戦隊ととく。その心はドギー・クルーガー」というくらい、戦隊ファンには浸透していますが、稲田さん、今回はデカマスターばりの渋さに悪辣さを加え、恐るべき巨悪を印象づけています。
ターゲイトは、幹部級扱いで登場。元々ウォースターの構成員は、幹部級と毎回の登場怪人級の区別が、デザイン的にも立場的にも不明瞭であり、その意味では、「仮面ライダーストロンガー」の後半戦であるデルザー軍団を彷彿させます。実際、1エピソードのみの者にしてもゴセイジャーを苦戦させまくって幹部に劣らない活躍を見せたり、逆に幹部でありながらデレプタのようにあっさりと倒されてしまったりと、わざとやっている感もあります。
ただ、このターゲイトは稲田さんの声ということもあるでしょうけど、割と幹部の匂いが高い。デザインも頭部以外は極めてヒロイックに処理されていて、ブレドランの向こうを張れる印象があるのです。それだけに、あっさり1エピソードで倒されてしまう事に、少々違和感がありました。
そうですねぇ、印象が近いキャラクターを挙げるとすると、前述の「ストロンガー」の大幹部デッドライオン(こいつは造形物が他の奇っ械人と変わらなくて、逆に笑っちゃうけど)や、「ジェットマン」のジュウザ。特に後者は全ての幹部の上に立つ存在なのに、前後編で倒されてしまい、逆に強烈な印象を残しています。あと、「シャイダー」のヒムリーなんてのも居ましたね(このエピソードは超傑作なので必見)。
さて、そのターゲイトはモンス・ドレイクが直々に招聘したヤツであり、異次元のスポットを作り出して、あらゆる物体をその中に落とし込んでいくという、恐るべきパワーを持っています。しかも、瞬間移動能力も身につけていて、ちよっとしたチートです。モンス・ドレイク要らないじゃんというくらい(笑)。
この設定が見えた時点で、すでに対峙するゴセイジャー側のパワーインフレも約束されてしまったように見えましたが、何と、今回はニューカマー、ニューアイテム一切なし。持てる知恵と身体能力と判断力を駆使して、このターゲイトに対処するという、何とも「ゴセイジャー」らしからぬ展開になりました。
新たなパワーが「降りてくる」のに慣れていると、逆にこういった展開が地味に感じられてしまい、そこが今ひとつ燃えられない要因になっているのかも知れません。何とも贅沢な話ですが、逆にそのように感じられてしまうシリーズ構成が、もはや後のない状態にまで追い詰められてしまっているとも言えるでしょう。つまり、ずっと目に見えるパワーアップがないと、シリーズのドライヴが止まってしまいかねないという状態であり、正にパワーインフレそのものの状態なのです。
う~ん、憂うべき状態になってしまいましたが、とにかく今回は今回として、見ていこうと思います。
ターゲイト戦においては、まずハイドが異空間に飲み込まれ、放っておけなかったモネが、半ば心中状態でハイドと共に異空間に飲み込まれます。この際、ハイドは極めて冷静に自己犠牲の精神を披露しており、この言動がなかなかカッコいいのです。逆に、モネはその後先を考えずに飛び込むという性格を、そのまま行動に露呈させており、このコントラストが抜群でした。
実は、冒頭モネが料理を作りすぎて、ハイドが咎めるというくだりがあったのですが、ここで微妙な違和感を抱いていたので、私はこのシーンで溜飲を下げたわけです。
その違和感とは、ハイドがモネを子供扱いする部分に対するもの。
ハイドが無気になっている部分を除けば、これはこれで問題のないシーンなのですが、これまでのエピソードの積み重ねとの整合性が、やっぱり取れていない。
モネに「おっさん」呼ばわりされたハイドが無気になるシーンは面白くはあるものの、ハイドの性格上、もっと静かに睨み付けるような印象があるし、大体大人を名乗るのであれば、軽くあしらうくらいの配慮は欲しかったですね。また、モネは後先を考えないタイプではあっても、無知性なガキという印象は、これまでのエピソードから全く感じられず、一番年下という設定もあくまでキャラクター設定上のものであって、本編では殆ど生かさせていません。モネ役のにわさんと、アグリ役の浜尾さんは、実年齢と劇中年齢とで逆になっているそうですが、作劇が巧緻でないので、それがそのまま透過されてしまって、最近では「お兄ちゃん」すら(萌えはするもののww)違和感がある状態です。
この冒頭のシーンに対する違和感は、異次元に落ちていくシーンによって払拭されはしました。後々の展開に対する仕掛けとしては、作劇上非常に有効ではあります。ただ、これまでの積み重ねが薄いので、やっぱりこの二人の対立と結束には、あんまり燃えられないのです。残念。
その後、モネとハイドを救出するよりも、街に対する被害を防止することを英断するアラタ達が描かれ、護星天使の使命感を巧く出しています。しかも、モネとハイドについては諦めるのではなく、あくまで脱出してくれる事を信じているという事を織り込んでおり、絆の深さをも印象づけているのです。
が、ここにもマズいポイントが。
この時点で、きっと二人は助かると強く信じているアラタ達なのですが、いざ二人が戻ってきて見事なコンビネーションを披露すると、その様子に対して、当のアラタ達が不思議がるのです。じゃあ、脱出を信じて疑わない根拠って…?もしかして、ハイドにだけ期待してた(笑)?
まぁそんなわけで、ちらほらと綻びはあるのですが、異空間から脱出するきっかけとなる描写はイイ線いってます。
モネがガムシャラに異空間の壁にパンチを叩き込んでいた処、その衝撃波がいびつに伝導する箇所をハイドが見つけます。ここで、ハイドは考えているだけでは状況を打開出来ない事を悟り、モネは考えなしには状況を打開出来ない事を知り、互いが互いに不足している部分を補完すれば、閉塞した状況を打破出来るという結論に至るわけです。コンビネーションとは、正にそういう事なので、語のプリミティヴな感覚として響くシーンですね。
その後は、空間の縦軸を非常に巧く使ったアクションが展開され、それが実に素晴らしい効果とエキサイティングな効果を生んでいました。「ゴセイジャー」はこういっビジュアル面の素晴らしさが突出しています。
ちなみに今回、ブレドランがほくそ笑んでいる(ように見える)様子が挿入されましたが、何か彼に関する波乱が待っているのかも知れません。こちらも非常に楽しみですね。
なお、モネ…というかみっきーのエプロン姿が、ビジュアル的にはイチオシでした(笑)。
この回は、スーパー戦隊シリーズ 天装戦隊ゴセイジャー VOL.4 [DVD]に収録。
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