1クールの終盤にして、大ボス・ドレイク自ら出撃&幹部・デレプタ退場という激闘編。
ドレイク役・飯塚さんの声をたっぷり堪能出来るという面では、年季の入ったファン的に大充実の一編なのですが、肝心のストーリー自体は今ひとつ盛り上がりに欠ける感じでした。
簡単に粗筋を記しておくと、モンス・ドレイクとデレプタが、かつて数々の星を滅ぼしてきたという攻撃方法を試すべく地上に現れ、実力アップを実感しているゴセイジャーを叩きのめすというもの。
ここに護星天使達の使命感等を織り交ぜて、最終的に天の塔を破壊した張本人であるデレプタを打倒します。
護星天使達の前半の様子は、ヒーロー物では伝統的な手法である「ヒーローの慢心」を踏襲しています。この「慢心もの」は、ヒーローの精神的な成長を描くという意味でドラマティックな効果を生み出し、傑作とされる作品が数多く出現しました。
代表的な例を挙げるならば、「帰ってきたウルトラマン」、「宇宙刑事シャイダー」等。いずれも上原正三先生の作品ですが(笑)。戦隊では「バトルフィーバーJ」でも同様の展開がありました。「帰マン」は非常に深く重々しいトーンのドラマを展開していましたが、「バトルフィーバー」では、突如その回だけ慢心しまくる隊員達が笑いを誘い、「シャイダー」では、これまた突如慢心しまくるシャイダーを登場させつつも、根性物の要素を取り入れて爽快感を感じさせるまでに昇華させた傑作です。
今回は、ゴセイジャーの戦力アップが実感としてある為、慢心というとちょっと違う気もしますが、パターン的には完全にこの「慢心もの」のパターンになっています。
では、「慢心もの」にしては何故盛り上がりに欠けたか。そのあたりを検証してみたいと思います。
今回のウォースターの刺客は…という書き出しが最近の恒例ですが、一応この書き出しに倣っておくと、ズティンマ星人・流星のデレプタ。天の塔を破壊した張本人です。デレプタはプレデターがネーミングソースだと思います。その容姿は、エイリアン系の怪物を彷彿させつつも、「ザ・フライ」の蝿男を思わせる部分もあり、なかなか気持ち悪いです。
このデレプタ、幹部扱いで、しかも小山力也さんという素晴らしいキャスティングを得ているにも関わらず、今回で突如退場となります。もしかすると、ウォースターはシーズン制をとっていて、ビービ虫の使い手であるブレドランを除いて、幹部が次々と交代する趣向をとるのかも知れませんね。こういったシーズン毎の幹部交代制は、古典的な手法として親しまれています。
今回はデレプタの過去もチラリと描かれます。かつて、モンス・ドレイクに刃を突き立てたデレプタ。ドレイクは、恐れを知らないデレプタを認めて右腕とし、数々の星々を荒らしまわってきました。その主たる方法は、ドレイクの胸に刃を突き立て、その内部にある超重力体(ブラックホール?)を発現させることで、衛星を引き寄せて母星を壊滅させるというもの。飯塚昭三さんの怪しげな呪文が響き渡る光景は、何者にも代え難い魅力に溢れています。
ただ、折角の飯塚さんのキャスティングも、ちょっとギャップを生じているんじゃないかということが今回で露呈します。
飯塚ボスキャラには、ハカイダーやサタンエゴス、ヘルサターン総統、宇宙刑事の悪ボスなんかを俯瞰すると、共通した魅力があることに気付きます。
あくまで私見ですが、そこには、悪辣かつ威厳があり、またヒール(いわゆるアンチヒーロー)としての要素もあるということです。全体的にデザイン自体がカッコよく、またどこか恐ろしい部分がワンポイントあります。ハカイダーでは、ヒロイックなデザインに露出した脳髄、ヘルサターン総統では、黒光りするダースベイダー的な雰囲気に恐ろしい鉄の爪…。
私自身は、モンス・ドレイクのデザインは好きなのですが、飯塚キャラとしてはやや違和感を感じました。顔面が端整すぎるのと、モチーフが蛾であるという派手さがその違和感の正体かと。何となく飯塚さんの声が窮屈な感じに聞こえてくるのが残念です。
さて、そんなわけでドレイク自体の違和感も盛り上がりに欠ける原因だと思いますが、もっと根本的な部分に問題があります。それは、これまで護星天使としての使命感に気付いていく事で戦力をアップさせてきたゴセイジャーが、また完全に使命感を忘れてしまい、またすぐに使命感を取り戻すという、やや安易な展開です。
確かに単編で見るとそれはそれで盛り上がるのですが、各々が過去のエピソードとのリンクを語るシーンを盛り込んでしまっている為、否応なく連続ドラマの一編として認識させられてしまいます。特にハイドに至っては、例のさかなクンの話がかなり近いこともあって、「この冷静沈着で思慮深いハイドが、この体たらく」という印象を強くしてしまい、更にはハイド自身をフィーチュアした場面が圧倒的に少ないという構成により、彼の存在意義を完全に欠いてしまってます。ここでアラタを前面に出しておきたい意図は理解出来るのですが、アラタにしても天然な感じで護星天使の使命感が染み付いているキャラクターだと認識していたので、今回のご慢心にはかなりの違和感を生じています。
もう一つ、この「慢心もの」をボスキャラ級がメインのエピソードに使ってしまったことにも問題があります。
大抵の「慢心もの」は、自分よりかなり格下の相手にも勝てなくなるというのが定石であり、それ故に盛り上がるものなのですが、今回は遥かに格上のキャラクター相手にそれをやってしまっているのです。
それでも百歩譲って、慢心していなければ現在の実力で充分勝てる相手になっているという展開を持ってくるならば、それもアリですが、ここにパワーアップ劇を入れてしまったのがマズい。つまりは、慢心していようがしていまいが、どちらにせよ勝てない戦だったわけです。
たまたま、ハイパーゴセイグレートが誕生したことでデレプタに勝てただけ。そんな風に見えてしまうのは仕方ない処だと思います。本当は、より強い使命感を取り戻したことにより、奇跡が起こったということなのでしょうが、これまでのエピソードでポンポンと簡単に奇跡が起こっているので、こりゃ慢心しても仕方ないわな(笑)。
もう一つ、アラタのライバルとして設定されていた筈のデレプタが、あんまりアラタに関わることなく敗れ去ってしまったあたりも、かなり収まりが悪い。なんだかなぁ…。
あぁ、ごめんなさい。パワーインフレ型戦隊の悪い面が、1クールでかなり露呈しちゃってるので、私も結構辛口になってしまいます。
映像面では見所はたっぷりありましたよ。
ハイドが海に浮かんでたり(笑)、ドレイクの儀式は壮麗なエフェクトで素晴らしい効果を上げていました。巨大戦の迫力は、デレプタが「化け物」と呼ぶのも納得の迫力。今回は火薬量もかなりのものでした。天装術の見せ方も良かったですね。特にドレイクを封じ込めるシーンの効果は抜群でした。また、ドレイクとデレプタが空を破って現れるあたりは、「ウルトラマンA」を彷彿させて嬉しかったり。
また、エピローグで一本の大樹を囲んで寝転ぶ姿が、エンディングの映像にリンクしていくあたりも良かったです。わざわざエンディングを旧バージョンに差し替えてあったりと、芸コマな部分がニクいですね。
ちょっと心配な面も色々と出てきたゴセイジャーですが、そろそろ新戦士登場編なんかが恒例としてありそうですので、その辺りでの盛り上がりを期待したい処です。
この回は、スーパー戦隊シリーズ 天装戦隊ゴセイジャー VOL.3 [DVD]に収録。
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