モネがメイン。もうね、荒川脚本でね、趣味丸出しですね(笑)。
というのも、モネがチアダンスをするというのが今回のテーマなのです。モネというか、みっきー(にわみきほさん)のチアダンスがメインなわけです。
一応、古典的なヒーロー番組の手法を見せてくれています。それは、難しい手術を控えた子供の為に、ヒーローが勇気付けるという展開。ただし、その子供(今回の「みく」)は特段ゴセイジャーへ憧れているわけではなく、あくまでモネのチアダンスに元気をもらっていたという点が、パターン外しになっています。
普通、素面の方としか交流がない場合、そのドラマと変身後のドラマは繋がらないものですが、電気を吸収されると病院が困るという展開にもっていくことで、ちゃんと繋げています。
そして、その展開には私の大好物である上原脚本的な「アレ」が隠されているのでした。これについては後述。
なお、ビジュアル的な最大のトピックがモネやゴセイイエローのチアダンスだとすると、ガジェット的な最大のトピックは、何と言ってもデータスハイパー。今回も例に漏れず唐突ではありましたが、ビジュアル的には素晴らしいカットが続出しています。これについても後述しますので、続きをどうぞ。
今回のウォースターの刺客は、ダイケシ星人・電撃のヨークババンガー。ネーミングが本当に最高(死語で言うところの「サイコー」)で、語感が素晴らしい。「ウルトラマンA」のカイテイガガンとか、「仮面ライダースーパー1」のスパイダーババンに通じるセンス(?)。元ネタは恐らく「ニューヨーク東8番街の奇跡」だと思われますが、元ネタ探しも段々と困難になってきてますなぁ。
このヨークババンガーは、ドレイク様直々の指揮により、またドレイク様直々の支援により活動。その為、身体の一部が破損してもドレイクのパワーですぐに復活してしまうという強敵です。特性として、周囲の電気という電気を吸収し、それを放電するという能力があり、その能力によって破壊活動を行います。
いよいよドレイク本人が乗り出してきたという感を強めていますが、それは次回の予告を見ると納得。ちゃんとお膳立てがされているのには感心します。しかしながら、結構中途半端なところがあり、例えばクライマックス戦では一切力を貸していなかったりと、単なるストーリーの盛り上げ役になってしまった感もあります。
さて、このヨークババンガー関連の流れとは別個に、モネがみくを励ますというくだりがあるわけですが、実はこのモネの役割は、殆どアバンタイトルで終わってしまうという凄い構成。「みくちゃん しゅじゅつ がんばって」というイルミネーションを、天装術を用いてビルに施すのですが、これが実に分かりにくいのが難点。このイルミネーションの仕掛けについても、ステップで電気を起こすことによって発動したものだと説明されてますが、後々のヨークババンガー戦における描写があるまでは「??」。とにかく今回の天装術の分かり難さはかなり問題だと思います。
そもそも、天装術にちょいと科学的な理屈がついてしまう時点で、私自身どうかと思ってしまうのですが、チアダンスを何とか結びつけるには、こういう手法がベストだったのかも知れませんねぇ。
で、そのチアダンス。
みっきー(もうニックネームで呼んでしまってますが)のチアダンスのキレ、凄い!変身後もスーツアクターさんかなり頑張ってたと思いますが、素面のキレの方が数倍凄かったです。どうやらチア自体の経験があったようで、納得。というか、経験者ということから逆算してこのエピソード作ったんでしょうね(笑)。
みくとの交流は前述のようにアバンで終わってしまっているので、その後どう関わるかと思っていたら、予想通りヨークババンガーの電気吸収によって手術室への電力供給が止まるという展開でした。ただし、予備電源の存在や、電力がない間の手動による呼吸補助など、医療ドラマ的な面で割と適度な情報量を盛り込んでおり、そのあたりの手際の良さに感心しました。
ここで、前述の「私の大好物である上原脚本的なアレ」について述べておこうと思います。
ヨークババンガーの被害は、医療機関の電力供給ストップよりも、放電による破壊活動の方が甚大に描かれています。つまり、このあたりは命の重さが云々といった議論になってくるわけですが、いわば、みくの手術どころじゃない被害があるということ。
ここでモネは、みくの手術を最優先に考えます。大勢よりも深く関わった人一人を救う為に戦う。これぞ上原正三先生が好んで描いたヒーロー像です。これはつまり、ドラマを転がしやすい、ドラマに感情移入しやすいという結果を生む為の方法論でもあるんですが、70~80年代の、最もヒーロー番組(アニメも含めて)が華やかだった時代の、熱さの要因になっているのだと思うわけです。今回モネがとった行動は、このパターンにピタリとハマります。
故に、変身後にチアダンスを踊るなんていう珍妙な展開でありながらも、「一人の為に踊っている」というバックボーンが強固だからこそ、感情移入が違和感なく果たせると。これが、「世界中の人々の笑顔の為に」踊ってるんだったら、こんなに感情移入出来ません。その理由は簡単です。チアダンスで笑顔にならない人だっているかも知れませんから。
まぁそんなところで、今回モネがヨークババンガーを倒すという結果を、みく一人に捧げるからこそ、チアダンスアクションに説得力があったわけです。
さて、アクション面での工夫が今回もはっきりと見られました。
初戦は、ほぼ完全に射撃アクションのみという潔さ。ガンアクションのみで組み立てるという、思い切った構成は、戦隊では珍しいです。二戦目は、これまたほぼ完全に格闘アクションのみ。モネがアグリのゴセイバスターを拝借して二丁拳銃になる処で初めてガンアクションが出てくるので、効果的なコントラストになっています。
最後に、データスの巨大戦に関して。
データスの巨大化やハイパー化は、前述のとおり唐突ではあるのですが、ビジュアル的には目を見張るものがありました。実際、ダイスオーの筐体が巨大化しているという陳腐な画が出来てしまって当たり前の処を、これだけの迫力で見せられたのには、様々な工夫があったからです。
一つは、あおりアングルの多用。そして、オープンセットによるカットの挿入。マンガ的な描写、例えばビルを押しのけて巨大化する等の挿入。これらが重層的に効果を発揮し、データスをカッコ良く見せています。「ゴセイジャー」は巨大戦に「オッ」と思わせる工夫があって、楽しいですね。
この回は、スーパー戦隊シリーズ 天装戦隊ゴセイジャー VOL.3 [DVD]に収録。
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