GP-44「聖夜ヲマモレ」

 キレイズキーを倒したと思ったのも束の間、キレイズキーはムゲンゴミバコに身を隠して攻撃をやり過ごしていた。すぐさまキレイズキーはムゲンゴミバコにゴーオンジャーとサンタクロースを吸い込んでしまう。吸い込まれた彼らはあらゆる場所へと飛ばされてしまうのだった。

 走輔、連、軍平は「つくし幼稚園」に飛ばされて来た。そこには警察から逃げて身を隠している銀行強盗が居た。たちまち人質になってしまう走輔達。走輔は子供達のクリスマスを台無しにする犯人らに怒りをたぎらせる。

 大翔と早輝は、ススキの生い茂る薄暗い場所に飛ばされた。早輝は「大翔さんといれば怖くないわ」と微笑むが、そこに現れたのはお化けの集団だった。慌てて逃げ惑う大翔...。

 範人と美羽、そしてサンタクロースが飛ばされてきたのは、とある海岸だった。「早く皆の所へ戻ろう」という美羽だが、サンタクロースはどこかで異次元プレゼント袋を落としてしまったと慌てふためく。探して欲しいとの頼みに、早く戻らなければと渋る範人。しかし、美羽は早く袋を探そうと言いだす。

 その頃、キレイズキーは至るところに球状の装飾を飾りつけていた。キレイズキーによれば、その装飾は「スペッシャルなエネルギーの詰まったボール」だという。飾り付けが終わった暁には、起爆装置で一斉に爆破し「ヒューマンワールド年末ジャンボ大掃除大作戦」を完遂させる作戦なのだ。

 早輝のゴーフォンにボンパーから連絡が入る。しかし、大翔は怯えていて動けない状態だった。大翔と美羽は幼い頃、祖父の怪談を聞くのが好きだったが、その話があまりに怖すぎて、それ以来お化けが須塔兄妹唯一の弱点になってしまったらしい。見かねた早輝は突如鹿児島弁で大翔を鼓舞し始める。

 一方、サンタクロースの異次元プレゼント袋は、見つけたところでゴミ収集車に回収されてしまった。諦めムードのサンタクロースを励ます美羽は「クリスマスは一年中で一番キラキラした日じゃなくちゃいけない」と訴え、範人、サンタクロースと共に更なる追跡に走っていく。

 同じ頃、幼稚園での強盗犯人の横暴を見かねた走輔は、遂に犯人を罵倒し飛びかかる。銃を向けられても毅然とした態度で臨む走輔。犯人は銃の引き金を引いた! が、そこに立っていたのはゴーオンレッド! 銃弾を跳ね返し「人間相手に変身するのは反則だが...悪ぃな!」と言って犯人を確保するのだった。

 走輔達はガイアークの元へ向かい、キレイズキーと対峙する。ムゲンゴミバコをいきなり弾き飛ばされたキレイズキーは、本気モードに突入し、ドッキリウムを飲み干した。巨大化したキレイズキーに、走輔はキョウレツオーで立ち向かう。

 範人と美羽、そしてサンタクロースはゴミ収集車を追いかけて来て、ゴミ焼却場へとやって来た。だが、ゴミの山から異次元プレゼント袋を見つけ出すのは至難の業だ。

 大翔はなおも恐怖のるつぼにあったが、早輝がお化けを投げ飛ばしてスマイルを浮かべているのを見て、勇気を与えられた。「早輝みたいな妹も、いいかも知れない」という大翔に、早輝は「お姉さんにならなってあげてもいいかな」と応える。大翔と早輝は順当にお化けを蹴散らしていくが、扉が開いて外の眩しい光を見るにつけ、全てを悟る。ここは遊園地のお化け屋敷だったのだ。お化け役の係員に怒鳴られる二人...。

 一方、キョウレツオーとバスオン、ガンパードの戦線は苦戦を強いられていた。そこにトリプターとベアールVが到着。早輝の「大翔が大変でさぁ」という言葉に「呼び捨て!?」と驚く一同。気を取り直してエンジンオー、ガンバルオートリプターを完成させ、キレイズキーを迎撃する。

 さらにその頃、異次元プレゼント袋を探しあぐねていたサンタクロースと美羽に、範人は美羽の鋭い感覚を使ってみようと提案する。自分の能力は誰かの意志を感じるものであり、こういう時には使えないと言う美羽だったが、範人はクリスマスイヴだから絶対に奇跡が起こるという。それを受けて美羽が集中し始めると、範人とサンタクロースも手を取り合って一緒に集中した。すると、美羽は的確にその場所を感知。範人が掘り起こしてみると、そこに異次元プレゼント袋があった。

 キョウレツオー、エンジンオー、ガンバルオートリプターはキレイズキーの力の前に敗色濃い状態。その間にウガッツ達は「ヒューマンワールド年末ジャンボ大掃除大作戦」の準備を完了。後は起爆装置のスイッチを入れるのみという絶望的状況の中、セイクウオーバルカが到着し、起爆装置を破壊した。エンジンオー、ガンバルオー、セイクウオー、キョウレツオー、そしてゴローダーGTの5大ロボが揃い「無敵の音を轟かす、ゴーオンオールスターズ!」と名乗りを上げたゴーオンジャーは、キレイズキーに連続攻撃を見舞い、エンジンオーG12で止めを刺した。

 落胆するケガレシアとキタネイダス。景気付けに飲みまくることに決めるのだった。2人をよそにムゲンゴミバコのインジケーターが不気味に点滅を繰り返す...。

 無事平和なクリスマスイヴを迎えたヒューマンワールド。ゴーオンジャーはサンタクロースを手伝い、一緒にプレゼントを配ることに決めた。

今回のアイキャッチ・レースのGRAND PRIX

 バスオン!

監督・脚本
監督
渡辺勝也
脚本
古怒田健志
解説

 2008年最後のゴーオンジャーは、クリスマス編の後編。結局このエピソードの解説を書くのは年明けの2009年に持ち越してしまったが、当方年末は多忙だった為、ご容赦のほどを。

 当エピソードは2008年最終編に相応しく、ゴーオンジャー全員にまんべんなく見せ場を作り(連と軍平はやや損な感じだが)、なおかつ巨大ロボ勢揃いというサービス満点ぶり。しかも、大ボス級という触れ込みのキレイズキーを早々に退場させてしまうなど、思い切った方針も見られる。シチュエーション、アクション、演出どれをとっても「イイ仕事」だ。

 ただ、どうしようもなくスケールが小さいのも確かなところで、それこそあらゆるシチュエーション、演出がスケールの小ささを際立たせている...。まずはそこに言及し、後から褒めちぎりたい(笑)。

 最初の小スケールなシチュエーションは、キレイズキーの「ヒューマンワールド年末ジャンボ大掃除大作戦」。ウガッツ達が「スペッシャルなエネルギーの詰まったボール」を飾り付けていく。しかし、あの規模では東京都心部の破壊くらいしか為し得ないのは明らかで、「ヒューマンワールド」が東京都心一帯くらいの広さしかないような印象を与えてしまう。しかもキレイズキーは、この作戦によってヒューマンワールドの人間全てを滅ぼすかのような口ぶりであり、余計に狭い世界という印象を強くしてしまうのだ。まあ、ヒューマンワールドがゴーオンジャー周囲の狭い世界を現しているような感覚は、今に始まったことではない。もっと言えば、特撮TVドラマの常として、日本(さらにもっと言えば東京)の平和=地球の平和という感覚は拭い難いものであるからして、「ゴーオンジャー」における同様の感覚も致し方ないということだろう。

 「ヒューマンワールド」の小ささは、キレイズキーの駆使するムゲンゴミバコの効果にも現れる。世界のあらゆる場所へ飛ばすという効果を説明しているにも関わらず、郊外らしき場所の幼稚園に遊園地のお化け屋敷、そして郊外のゴミ焼却場へ走って行ける距離にある海岸...。ここでも「ヒューマンワールド」がたかだか郊外どまりになってしまっているのだ。「世界のあらゆる場所」がこれでは...。ここはもっと大風呂敷を広げて「パリもどき」「砂漠もどき」「ドイツの古城もどき」なども許容出来た気がする。ただ、近郊ならではの話の展開が面白いだけに、これを頭から否定することができないのも確かだ。また、ラストの「ゴーオンジャーもプレゼント配りを手伝う」という締めくくりから言っても、ヒューマンワールドを広げすぎると都合が悪い。

 さて、ここからは褒めちぎりモードに突入。

 まず感心したのは、幼稚園で銀行強盗相手に変身したことだ。走輔は「掟破り」と言っていたが、ここにも感心した。ゴーオンジャーは正義の味方であって秩序の味方ではない。走輔が変身したのは、子供が楽しみにしているクリスマスをぶち壊すという、「走輔の考える正義」に反する行為に対する怒り故だ。軍平が元警察官であったことはほぼ忘却された状態になっているが、そんな軍平もゴーオンジャーに入った時点で(というより警察を退職した時点で)秩序ではなく正義の味方に鞍替えしているのは周知の通り。今回の走輔の行動はそのイデオロギー的側面をより端的に示している。難しいことを考えずに見ても、犯人の銃弾を跳ね返すゴーオンスーツという演出は鳥肌モノのカッコ良さを発揮している。銀行強盗という、ガイアークより遥かに身近な(?)脅威から守られたという感覚からして、幼児達の反応も定石ながらストレートで嬉しい。

 続いての話題は、やはり大翔と早輝のコンビ。今回は大翔と早輝、範人と美羽という、異色の組み合わせが嬉しいのだが、その中でもこの大翔&早輝はその特殊性が際立つコンビになっている。以前、大翔役の徳山氏が、アドリブでお化けを怖がる演技をしたことに端を発していると言われる、今回の大翔の設定。広げ過ぎな気もするが、大翔が「ゴーオンジャー」の中で最もいじり甲斐のあるキャラクターであることに、もはや誰も異論はないだろう。今回のお化けを怖がる様子は、大翔の持つある種の威厳を打ち砕く凄まじさ。耳をふさいで「ヒョ~(?)」という奇声を発するのがたまらなく可笑しくて可愛らしい。大人の男の可愛らしさとは、こういう様子を指すのだ(?)。早輝が母性本能(姉性本能?)をくすぐられるのも無理はない。その早輝のお姉さん振りも注目に値する。以前にも書いたが、早輝は当初少女性を強調されており、途中から、特に美羽が登場してからは頼りになる女性という面を強調し始める。今回はその最たるもので、何と「大翔のお姉さん」を宣言するのだ。実年齢自体は徳山氏と逢沢氏は10歳近く離れている(!)のだが、逢沢氏もこの1年を通して随分と大人っぽくなっており、徳山氏と対峙しても全く違和感がない。また、「大翔さん」から「大翔」へと呼び方が変化するあたりも、両者の関係性を端的に表し、なおかつフェティッシュな魅力がある。なおここで「さん」付けで呼ばれるゴーオンジャーは皆無となり、最年長扱いの大翔と最年少扱いの早輝(範人は元から呼び捨て)の間に存在していたいわゆる「上下関係」はなくなった。

 ゲストキャラとしては異例の2話連続登場となった桜金造氏のサンタクロースは、今回それほどクローズアップされていない。前回は異次元プレゼント袋が勝利の鍵となったが、今回はその異次元プレゼント袋に対し、単なるクリスマス用の道具としての性格しか与えられていない。しかし、それだけに袋探しに躍起になる美羽の姿がまぶしく映る。勝利の鍵を懸命に探すのではなく、子供達の夢の為に一生懸命になる姿がイイのだ。またここでも、美羽と範人というこれまた異色の組み合わせが素晴らしい効果を生んでいる。最近は崩れ気味だが元来クールな魅力を発揮していた美羽、そして常にドキドキを標榜しあらゆることに好奇心を持ちつつ、意外に冷めた視点を持ち合わせる範人。この、ある種醒めた2人がサンタクロースに関わるというシチュエーションの面白さには是非とも酔うべきだ。なお、異次元プレゼント袋のくだりは最も尺が長く、今回のメインと言っていい。

 範人&美羽の話題を続けよう。クリスマスというイベントこそ、範人がいかにも好みそうなものだが、真っ先に袋を探そうと言いだしたのは美羽。美羽は子供達の夢が大事だという趣旨の発言をし、別の場所に居る走輔と見事なシンクロを果たす。ここでの範人はまだ袋探しへの積極性を発揮していない。が、サンタクロース自身がゴミ焼却場で諦めかけた時、動き始めるのが誰であろう範人その人だ。範人は「クリスマスイヴだから奇跡は絶対起こる」という、非常にメルヘンチックな発言をしており、彼の少年性を遺憾なく発揮している。果たして、その「奇跡」は美羽の超感覚が無機物に反応するという形で表現されるわけだが、逆に「この程度」の奇跡にとどまっていること自体に好感が持てる。特にこのシーンでの美羽の表情のキラキラ感は、美羽のキャッチフレーズ「キラキラ世界」の面目躍如と言えよう。

 「ゴーオンオールスターズ」のスペシャル感も良い。エンディングではエンジンオーをはじめとする4大ロボのダンスが見られるが、ここにゴローダーGTを加えて5大ロボとしたところがポイント。やはり奇数チームのバランス感が、如何ともしがたい魅力を放つのは確かなようだ。ただ、キレイズキーを取り囲んでボコボコにする様子はちょっと厳しい。確かにキレイズキーは強敵だったが、前回通常攻撃の連続にて、打倒まであと一歩というところまで追い込んでいるだけに、恐ろしく強敵であるという感覚は薄く、5大ロボに苛められているようにも見えて悲しい感じは否めない。ただ、爆発の中を直ちに各炎神に分離し、エンジンオーG12に再構成していくくだりは実にカッコいい。ここは、ドッキリウムの力で分身攻撃を行うキレイズキー迎撃の為に、5大ロボでの行動が必要だったという流れにでもして欲しかったところだ。

 そのキレイズキーであるが、大ボスキャラのフェイクとしてはほぼ成功だったようだ。私自身も、前回のラストではやられキャラなのかレギュラー化されるキャラなのか判別は付かなかったし、キレイズキーの造形自体もかなり完成度が高く、このまま退場するのは惜しいと思わせた。七つ道具という設定も良かっただけに、本当に勿体ない感じだ。ムゲンゴミバコだけが残ったわけだが、これが何かを引き起こすのは間違いなさそう。次に何が起こるのか、残りあとわずかとなった「ゴーオンジャー」への期待は些かも薄まることはない。