走輔達ゴーオンジャーは、大翔達ゴーオンウイングスから合同訓練を持ちかけられたが、大翔達はなかなか現れない。苛立つ走輔達に、軍平は「俺が考えた通りならきっと」現れると言う。そこへ、須塔兄妹が現れた。突然大翔は何の真似だと言いつつ、一通の書状を投げつける。それは、ゴーオンジャーからの合同訓練依頼であった。双方に同様の手紙が届けられたことで、ガイアークの罠かと疑う一同。だが、その手紙を出したのは何と軍平であり、ゴーオンウイングス出現を、ゴーオンジャーのアマチュア精神脱出のチャンスと考えての行動であった。軍平の「同じプロとして」という言葉を「話にならない」と突っぱね、去っていく大翔と美羽。軍平はまだ諦めないつもりだ。
その頃、携帯サイトではヒーローの人気投票がおこなわれており、走輔が1位、軍平は何と万年最下位を喫していた。範人は絶対軍平にも1位を取らせる、とヤル気を見せる。
自信満々のヨゴシュタインが街に送り込んだノコギリバンキ。その反応をキャッチしたゴーオンジャーは、直ちに現場へと急行する。そこへ、ゴーオンウイングスも登場し、どちらが相手をするか睨み合いとなる。だが、その背後ではまだ人の残ったビルが倒壊しようとしていた。ゴーオンウイングスは迷わずノコギリバンキ打倒を選択、走輔達は人々の救出に向かった。範人は軍平に、この場に残ってノコギリバンキと戦うよう促す。残った軍平はゴーオンウイングスの戦闘に協力しようとするが、あらゆる戦法が空回りしてしまい、逆に戦況を悪化させることとなった。走輔達は人々の救出に成功するものの、ビル倒壊に紛れてノコギリバンキは逃走してしまう。
軍平の失態と救出劇により、携帯サイトの人気投票では範人が1位を獲得、軍平はコメントすら投稿されず最下位のままとなってしまう。軍平は、ゴーオンウイングスと共闘できないのは自分の所為だと言い、このままでは絶対終わらせないと決意して出て行った。軍平は一人、木立の中で特訓しつつも、何故大翔と美羽が自分をプロと認めてくれないのかと頭を抱えていた。そんな軍平を見た範人は、何かを思い付く。
それは、大道芸人に化けて背を高くする竹馬に乗り、ノコギリバンキを誘い出すという作戦だった。範人はこの作戦でノコギリバンキを誘いだすことに成功する。軍平に手柄を立てさせようとする範人だが、結局範人だと見破った軍平が隙をつくり、ノコギリバンキを逃がしてしまった。軍平は激怒して「だからアマチュア扱いされるんだ」と範人達をなじる。そんな軍平に、走輔は「俺たちはプロでもアマでもなく、ゴーオンジャーだ」と言うが、軍平は納得できない。ガンパードも「そんなゴーオンジャーに自らの意思で飛び込んだ」のは軍平自身だと諭すのだった。軍平はあることに気がついた。
再び出現するノコギリバンキに、ゴーオンジャーは対峙する。しかし、ノコギリバンキが切り倒した展望台は、中に子供達を残しつつ今にも倒壊寸前の状態にある。軍平は、「大事なのは自ら飛び込むことだ!」と言い、ノコギリバンキの懐に飛び込んだ。そして、ノコギリバンキの緩んだ左腕のネジに気が付き、それを範人にも気付かせた。そして軍平は、範人に後を託してゴーオンウイングスと共闘させ、自らは倒壊する展望台からの子供達の救出作業に急ぐ。範人がノコギリバンキの弱点であるネジを外し、ゴーオンウイングスがウイングブースターで止めを刺した。同時に、軍平と早輝が展望台の倒壊を凌いでいる間、走輔と連が子供達を救出することに成功した。
ノコギリバンキは巨大化して反撃を開始する。ゴーオンジャーはエンジンオーG6で応戦。ゴーオンウイングスはトリプターとジェットラスで援護した。その援護に応え、見事にノコギリバンキを打倒するゴーオンジャー。悔しがるヨゴシュタインに、「たまには空気でも汚してみたらいいぞよ」と呟くキタネイダス。ヒラメキメデスはその言葉に何かをひらめき、ノコギリバンキのパーツを回収した。そして、そのパーツから、新たな蛮機獣が今誕生しようとしている...。
例の携帯サイトでは、遂に軍平が1位を獲得した。それを見て嬉しそうにはしゃぎまわる軍平。どうやら本人は気にしていたようだ。
一方、大翔は何か嫌な予感を感じていた。そして、巨大な空飛ぶ炎神らしき物体が、とある空港の格納庫に降り立とうとしていた。
スピードル!
監督・脚本- 監督
- 諸田敏
- 脚本
- 宮下隼一
タイトル通り、基本的には軍平メイン編。ウイング族や、大翔、美羽といった須塔兄妹といった新キャラクター目白押しの展開から、少し外れた挿話といった趣となっているが、前回走輔達と多少なりとも打ち解けた感のある美羽を、再び引き離しているなど、少々細部が荒い印象がある。「軍平の本音」ということだが、話のオチからして「本音」は携帯サイトでのランキングを気にしていたということが強烈に印象付けられてしまい、本来の「本音」であろう「走輔達のアマチュア意識からの脱出を常に気にしていた」という部分が弱くなってしまったのも問題だろう。だが、その「本音」が本音だとしても、軍平のゴーオンジャーへの溶け込み振りからして、違和感があるものだと言わざるを得ないだろう。
さらに別の不満を挙げるとすれば、須塔兄妹が単なるイヤなヤツになってしまっているところだ。登場時から前回にかけて、大翔と美羽は実力のある者故のプライドから生み出される「ごもっともな」発言が、いちいち走輔達の気に障るという構図だった。ところが今回は、単に上から見下ろしているだけの発言に終始しており、「エリートの味のある厭味」と形容できるような旨味がすっかりスポイルされてしまった。前述のように「単なるイヤなヤツ」なのだ。大翔と美羽、共に魅力的なキャラクターだけに、非常に惜しい。本エピソードは全体的な流れを形成するものとして特段重要なものではないが、逆にこういった挿話だからこそ活きるキャラクターの魅力というものが、あまり感じられない。それは軍平に関しても言えることで、期待された暴走振りもこれまでと比べれば中途半端さが否めない。
私としては珍しく酷評に近いものになってしまったが、いっそのこと、徹底的にギャグ編にすれば良かったのではないか、とも思える。というのも、各所に設けられたギャグ描写が、いつもながらに高水準だったからである。
冒頭の合同訓練に関する手紙からしてギャグである(と思っていい)。妙に仰々しく毛筆体の縦書きで書かれた書状は、往年の東映特撮TVドラマで多用された「悪の軍団が何故か丁寧な日本語の書状で挑戦状をよこす」というシーンのパロディだろう。年期の入った特撮ファンならば「やってくれた」と思ってしまう筈だ。逆に、その珍妙なルールを分かっている者は、敵の罠だと感じるだろうし、劇中でも走輔や大翔達はそう考えてしまう。年季の入ったファンであればあるほど騙されるのだ。そして、それが軍平の手で書かれたと知るや、大いにズッコケることになる。この仕掛けは実に楽しい。軍平の暴走系ギャグは続き、手紙の文面が悪かったのではと思い始める。捻り出した文句は「ひろとくん」で、やはりわざわざ毛筆を使って書くなどギャグ描写として申し分ない水準を達成している。その後、大量のノコギリを吊るして特訓するという、本人が大真面目なだけに笑えてしまうという絶妙なシーンも登場。とにかく軍平のギャグ描写は事欠かない。
範人に関しては、軍平とゴーオンジャー同期であるというシンパシィが彼を駆り立てるという設定になっている。大道芸人に変装し、独特のアクションでノコギリバンキを翻弄するシーンは素晴らしいの一言。また、様々な職業を経験し、器用であるという範人の特性を違和感なく利用したものとしても評価できる。しかしながら、範人の行動の裏づけとなる動機については、「軍平の暴走を範人なりのやり方で何とか食い止める」というだけで充分なのだが、余計な要素が付加されて中途半端になってしまった。それについては後述する。
敵であるノコギリバンキもいい味を出している。妙に丁寧な態度なのは武士をイメージしているのだろうが、その物腰とは裏腹に、ホントに自分より高い物を切り倒すことしか考えていないところがユーモラスだ。五代高之氏の声が一瞬知性派を匂わせておきつつ、実は短絡的で機械的な思考の持ち主だというギャップが面白いのである。
ノコギリバンキの項とは重複するが、やはり五代氏のことに触れないわけにはいかない。五代氏はスーパー戦隊シリーズの古くからのファンならば、当然の如く記憶しているであろう「太陽戦隊サンバルカン」の二代目・バルイーグルである。異論諸説あるだろうが、現在に続くスーパー戦隊シリーズのレッド像は、この二代目・バルイーグルである飛羽高之で一つの完成形を見せたと言って良い。それまでのレッドは、例えばアカレンジャーがそうであるように、チームのキャプテンとしての役割が特に強く、仲間に的確な指示を与えることのできる人物として描写されていた。ところが、飛羽高之はまず事件の渦中に自ら飛び込んで求心力を発揮するタイプとして描かれ、それが戦隊レッドのスタンダードになっていく。この危険に自ら率先して飛び込むという性格を拡大したのが、所謂「斬り込み隊長型」レッドであり、近作のレッド像として重宝されている。また、個人に特別な必殺技のバンクシーンが初めて与えられたのも、この二代目バルイーグルの特徴だ。ここより数年(個人的にはレッドマスク・タケルのドラマが極端にフォーカスされる「光戦隊マスクマン」まで)、数作を除きレッドが特別な主役扱いされる戦隊が続く。
ノコギリバンキについて付け加えれば、ノコギリによる破壊描写が工夫されており、ことは重大ながらも見ていて楽しいシーンがふんだんに挿入された。普通に切断を想像できる規模のものは、破壊用のレプリカできちんと表現し、破壊が難しい信号機などは、CGの合成を駆使してかなりうまく処理されている。また、ビルを切断するなどの荒技を等身大でやってしまうのも見事。自分より高いものを切断するというポリシーを掲げているにも関わらず、自分の背丈より遥か頭上によじ登って丁寧に切断していく様子は不条理かつ説得力があって笑える。このように、ノコギリバンキの行動原理が単純でビジュアル的にも分かり易い為か、その周辺のシーンには秀逸なものが多い。ゴーオンジャーが絡むのは倒壊する建物から人々を救出するシーンにおいてだが、その救出劇もレーシングバレットの効果的な使用を見せるなど秀逸な点が数多く見られる。ゴーオンウイングスとの戦闘シーンも、体術を駆使した大翔と美羽の美しいコンビネーションが流麗・華麗であり、JAEアクションの一つの完成形を提示している。軍平の乱入で少しずつコンビネーションを乱されるという描写も、アクション主体で見せており、完成度が非常に高い。
さて、細部を検証すれば相応以上に健闘している本エピソードが、中途半端に思える最大の要素は何だろうかと考えてみる。大翔と美羽に関するキャラクターの不徹底など幾つか考えられるが、最たるポイントは「携帯サイトでのランキング」だろう。これが徹頭徹尾ギャグとして用意されたならば何も問題はない。問題は範人の動機付けに利用されてしまったこと、軍平の「本音」がこちらにフォーカスされてしまったことだ。
携帯サイトでゴーオンジャー人気がランキングされること自体は面白いアイデアであり、ヒーローの存在が世間に周知されているという世界観が、パブリックに示された稀有な例としても評価できると思う。また、その人気ランキングを気にしつつヒーロー稼業に勤しむという姿勢も、ゴーオンジャーならではのキャラクター性と言え、これまで築かれてきたものと何ら齟齬を生じるものではない。今回の問題はその使い方であり、軍平のプロアマ意識への俗物的介入、範人のシンパシィへの即物的介入が、二人の動機を散漫にしていることが問題なのだ。逆に、この携帯サイトのランキングが動機であるとはっきり言い切るような流れであれば、このような違和感は生じなかったに違いない。
ただ、「合同訓練」なるキーワードが、今後ゴーオンジャーとゴーオンウイングスが結束を固めるストーリーへの布石となるのは、恐らく間違いないことであり、外せなかったものだというのは感じられる。つまり、「合同訓練」「プロとアマチュア」といったキーワードが重く、「携帯サイト」というキーワードが軽薄すぎる。この両者が同時に動機になることなど、本来考えにくいのだ。
思想的に違和感が生じてしまった本エピソードの中にあって、はっきりとイデオロギーを名言して救われた感のあるシーンが一つある。それは、走輔の「俺たちはプロでもアマでもない。ゴーオンジャーだ」という熱いセリフが発せられるシーンである。この言葉には溜飲が下がった。この時点で「プロ」や「アマ」といった区別を未だに軍平がしていたことに関する違和感はあるにしろ、走輔がゴーオンジャーのイデオロギーを体現していることと、ゴーオンジャーの存在がタクティクスを超えた地平にあることが明瞭に示されて心地良いことこの上ない。また、あらゆる面で精神性(ここでは、一生懸命念じれば奇跡が起きるというスピリチュアルな展開という意味)を否定してきたゴーオンジャーだが、自分の可能性を信じるという面は否定していないという点で、今回もそれが徹底されたと断言していいだろう。懸命に体を動かすことで人々を救出する様子は、正にヒーローに相応しい。
エンディングでは、炎神ジャン・ボエールがお目見え。特別編成の為、1週開くことを鑑みての「引き」の措置だと思われる。唐突感は否めないが、期待を効果的に煽っているのも確かだ。
天地人
ヒラメキメデス。「害地目一番の暴れん坊ことハッパバンキがいなくなったら、誰が害地目のリーダーになればいいのですか。」
ヨゴシュタインはじっとノコギリバンキの方を見る。
ケガレシアとキタネイダス。「そうか」
ヨゴシュタイン「そうだなり」
ノコギリバンキ「(バックの太陽を背に刀もといノコギリを振り回し)バル・イーグル(って違う)」
という事(おいっ)でノコギリバンキの声を演じるのは、飛羽高之こと五代高之さんなんですね~(嬉)
しかし、最近の軍平はおいしいですね。
Around-50
管理人さんは
GP-17「正義ノツバサ」の解説で以下のように述べていらっしゃいます。
「ただ、気になる点もないことはない。というのも、ゴーオンウイングスの持つ意識は、初期編における軍平と同種だからだ。軍平も当初は走輔達をアマチュアだと言い、かなりの皮肉を込めて接した。今回のゴーオンウイングスは、その軍平も含めてアマチュア視しているが、スタンスとしてはそっくり同じだと言える。(中略)
しかし、努力と知力で困難を乗り越えてきたゴーオンジャーの成長振りを、またもアマチュア呼ばわりされるのは少々寂しい。寂しい以前に、同パターンを繰り返していることも痛いマンネリになっているのではないか。」
けれど、私なんかは、軍平はいつの間にゴーオンジャーに内在するアマチュア意識の問題を忘れてしまったのかと思っていたぐらいですから、そのあたりの疑問に答えてくれた今回の話は、うれしく感じました。
今回の話は、当然ながら、GP-17を受けての話であり、そして、多くの視聴者も常日頃感じている「ゴーオンジャーは従来の戦隊に比較して素人集団である」という意識に対する製作者サイドのひとつの回答ではないかと思うのである。
SirMiles(管理人)
>Around-50 さん
確かにGP-17を受けての話だという解釈は成立しますね。私も忘れていたわけではないですよ(笑)。
ただ私としては、GP-17では、軍平はもうゴーオンジャーがプロアマを超えた存在になっていると思っていた故に、ウイングスの挑発(?)に腹を立てていたような印象があり、今回の軍平の感情に少々唐突感を覚えたのです。
というわけで、このような解説を書かせて頂きました。
ゴーオンジャーのイデオロギーはしっかり描写されていたと思いますが、今一つ、いつものように楽しめる話ではなかったので、少し辛口に過ぎたかも知れません。
不快に思われたならば、申し訳ございませんm(_ _)m
Around-50
>管理人さん
おっしゃるように、今までの多くの戦いの中で、軍平の抱いていた危機感は解消されていたと見るのが自然なのかもしれません。
そうであれば、今回の話に対する管理人さんの違和感は正しいものなのだと思います。
(17話を観直しましたが、確かに須塔兄弟に抗議しそうな軍平がいました)
ところで、今回の解説を読んで特に不快な感じは受けませんでした。
ただ、GP-17でマンネリを嘆いていた解説を読んでいたので、今回の解説がどのようになるのか、興味はありましたが。
私は特撮が好きでよく見ます。戦隊シリーズもマジレンあたりから、結構、見るようになりました。
だから、つまらない話のときは、(いい年をして)容赦の無い批判をすることも多々あります。
でも、好きな作品だからこそ、賛否両論あって当然だと思うし、いろんな意見を聞いてみたいとも思っています。