GP-13「侠気マンタン」

 ゴスロリファッションの少女がヒキガネバンキに追われていた。悲鳴を聞きつけたゴーオンジャーは少女の元へ駆けつける。ヒキガネバンキから首尾良く少女を助け出した連だが、ヒキガネバンキには逃げられてしまった。

 少女は空の彼方からやって来た「ぷーこりん」と名乗る。その不思議系な言動から、走輔達は首を傾げたり頭を抱えたり。「どうせだれも信じてくれないんだ」と泣き出すぷーこりんだったが、連だけはその涙を見て信じることにした。

 一方その頃、ヘルガイユ宮殿ではケガレシアがドックーゴ親分を接待していた。ドックーゴは、ぷーこりんを連れてくれば、武器でも金でも好きなだけ渡すという条件をガイアークに提示したのだ。そこにヒキガネバンキが帰還。早くドックーゴを追い返したい三大臣は、ヒキガネバンキがぷーこりんを連れ帰るのを楽しみにしていたのだが、ヒキガネバンキは手ぶらで帰って来た。ドックーゴは激怒し、「ぷーこりんを連れて行ったゴーオンジャーのところへ案内しろ」とヒキガネバンキに詰め寄る。ヒキガネバンキはその迫力に圧倒され、ドックーゴの子分を自称した。

 ぷーこりんは、八代続く家系を継がせたがっている父から逃げ出して来たのだという。ぷーこりんの夢は、宇宙一のテーマパークを作って子供達を笑顔にすることだったが、父は分かってくれないというのだ。連には、自分の実家も老舗の割烹旅館で、小さい頃から父親に包丁を握らされて仕込まれたという過去を持っていた為、ぷーこりんの気持ちがよく分かった。連はレース関係の仕事に就きたいと誠心誠意説得して分かって貰えたと語る。だが、ぷーこりんは父親の頑固さと物凄い怖さの前に怖気づいている様子。

 そこへヒキガネバンキとドックーゴが出現。ドックーゴはぷーこりんに「帰るぞ!」と一喝。連はぷーこりんとドックーゴが親子であるという事実と、ドックーゴのあまりの迫力の前にすっかりひるんでしまう。だが、利害が一致すればガイアークとも組むという理屈を許せない連は、ぷーこりんを絶対に渡さないと宣言。そこに走輔達が合流するが、連は勇気をふり絞り、ヒキガネバンキを4人に任せ、ドックーゴに1対1の勝負を挑むことにした。連が勝てばぷーこりんは渡さない。しかしドックーゴが勝てば連を子分にするという条件だ。

 まずは、ケガレシアの壺振りによる丁半で勝負。連は賽の目を的確に読んで論理的に判断し、見事二六の丁を言い当てる。ところが、ドックーゴはそのド迫力でサイコロを脅し、ピン六の半にしてしまった。

 続いて、花札タワーの下に敷いたシルクのクロスを引くという勝負。実力は互角だったが、ドックーゴの気合が花札を脅かしてしまい、花札タワーは崩壊。ここでは連が勝利する。

 頭に血が上ったドックーゴは、日本刀を連に渡して真剣勝負を挑む。ドックーゴの刀さばきは凄まじく、連はたちまち追い詰められる。だが連は「夢は諦めたら終わりだからだ!」と言い、なおもドックーゴに挑みかかった。そんな連をドックーゴはあしらい、遂に丸腰の連に刀を振り下ろした!

 ところが、刀はぷーこりんに白刃取りされる。「好きにさせんかい! うざいんじゃ!」と啖呵を切るぷーこりんの迫力に、ドックーゴは圧倒されてしまう。唖然とする連にゴーオンジャー大ピンチの連絡が入った。最初は善戦していた走輔達ゴーオンジャーも、ヒキガネバンキの実力の前に徐々に不利な状況へと陥っていったのだ。連は即座に合流し、ゴーオンブルーに変身。5人揃ったゴーオンジャーのスーパーハイウェイバスターがヒキガネバンキを退けた。

 ヒキガネバンキは巨大化して反撃を試みる。ゴーオンジャーもエンジンオーG6で迎撃に出た。ヒキガネバンキの巨大マシンガンを、スピードを生かしてかわしたエンジンオーG6は、G6グランプリを決める。ヒキガネバンキはドラゴンズの優勝を夢想しつつ崩れ去った。

 事件の後、ドックーゴはぷーこりんが一人前になったことを認め、九代目を継いだ上で夢を追いかけるというぷーこりんを見守ることにした。子供達を笑顔にする優しい極道集団になる、それがぷーこりんの新しい夢だった。ぷーこりんは感謝の気持ちをこめて、連の頬にキスをする。ぷーこりんとドックーゴは、頭から光る触覚を露出させ、空飛ぶ円盤を呼んだ。ぷーこりんとドックーゴは本当に空の彼方からやってきていたのだ。

今回のアイキャッチ・レースのGRAND PRIX

 ベアールV!

今回の連トリビア

 「女性の悲鳴は、通常4000ヘルツ」

監督・脚本
監督
諸田敏
脚本
荒川稔久
解説

 前回に引き続きコメディ編。前回がシチュエーションコメディであったのに対し、今回は様々な小道具を利かせたビジュアル重視のコメディに仕上がっている。

 連メインの回だが、何と言ってもドックーゴ親分役の菅田俊氏のインパクトが大。その菅田氏と言えば、年季の入った特撮ファンにとっては「仮面ライダー ZX」と「特捜ロボジャンパーソン」でお馴染み。近年ではVシネマでそのド迫力を披露している菅田氏だが、やはり特撮ファンとしては「ZX」の主人公・村雨良と、「ジャンパーソン」における宿敵ビルゴルディこと帯刀龍三郎が忘れられない。「ZX」は雑誌展開がメインの作品であり、TVドラマとしては特番として「10 号誕生!仮面ライダー全員集合!!」が1本作られたに過ぎないが、歴代ライダー役者随一のスタイルの良さと武闘派を思わせる精悍な表情により、現在でも根強い人気を誇る。何と言ってもパンチパーマの主人公は珍しく、特撮TVドラマ全般を見渡すと、他に「秘密戦隊ゴレンジャー」のアカレンジャー・海城剛ぐらいしか思いつかない。一方「ジャンパーソン」の帯刀は、途中より主人公のジャンパーソンの発展型バイオボーグ・ビルゴルディに変身するというキャラクターで、そのインパクトとヒールとしての凄まじいまでのカッコ良さが、これまた現在でも根強人気を保っている。今回の菅田氏のゲスト出演は、むしろVシネマ系の印象を強く押し出しているが、ファンとしては実に嬉しい。

 その菅田氏演ずるドックーゴ親分の娘であるぷーこりん役は、前年に「仮面ライダー電王」に小林カスミ役でゲスト出演して強い印象を残した小野明日香氏。年頃故か1年でも結構印象が変わっている。今回も父親絡みのエピソードであるということは置いておくとして、ゴスロリファッションでいきなり登場したり、言動が某アイドルを踏襲していたりと、菅田氏に負けじとなかなかのインパクト。宇宙人と設定されたことで、文字通り「宇宙人」として片付けられてしまうというオチも非常に可笑しい。今回はこの親娘で本エピソードの全てが決まってしまったと言っても過言ではないだろう。

 その強烈なゲストと対峙するのは、ズバリ正解・香坂連。以前、メインの回で範人のウソを何の疑問も抱かずに信じてしまうという役回りを演じたが、今回は信じるという行為がもっとポジティヴに生かされる形となった。つまり、以前は範人の分かり易いウソでさえ盲目的に信じるという行為だったものが、一件ウソに見えるものの中に真実を見出して信じるという行為に変化しているのである。1クールを経て、こういった細かい部分で精神的成長を描いているのは興味深い。もっとも、連の信じるという行為自体のバリエーションに過ぎないのかも知れないが(「ゴーオンジャー」ならばそれも充分有り得る)。いずれにせよ、連の滲み出る優しさがスポイルされるものでは全くない。

 ぷーこりんとドックーゴの親娘に積極的に付き合っているように見えて、実はしっかり振り回されている連。だが、ロジカルな思考の持ち主である連の振り回されっぷりこそが面白いのだ。ところどころに連なりの極端にロジカルな部分を見せているのも、良いコントラストを生んでいる。特に、丁半勝負で賽の目を当てて見せるなど、その動体視力とスーパーコンピュータ並のシミュレーション能力が楽しく、連の薀蓄だけでない頭脳明晰振りが伺える。ここでは自分のロジカルな思考に自信すら見せている様子が描かれ、より頼もしい連像を作り出しているのが興味深い。勿論、いつもの連の特徴である、裏表のない優しい語り口も存分に発揮され、一語一語を大事に語りかける独特のセリフ回しもより磨きがかかっている。悩み事を聞きだすのに、自分の体験談を引き合いに出すなど、カウンセリング能力も卓抜しているということらしい。

 今回の注目は勿論、連 VS ドックーゴの3番勝負だ。まず前述した丁半勝負。ここでは前述の賽の目シミュレーションの他に、ドックーゴの気合でサイコロがビビるという楽しいカットが織り込まれる。続いての勝負は、かくし芸大会も真っ青の、花札タワーの下に敷いたシルク製クロスを引き抜くというもの。花札勝負という、いかにも仁侠映画なネタを、このような勝負に仕立て上げるセンスが抜群だ。ここでも連の緻密な計算が働くが、気合と共にやってのけるドックーゴも凄い。この時の菅田氏の表情、そして眼光の凄まじい迫力は、まさにVシネマのヤクザ役。スローモーションでとらえられているにも関わらず、一切表情のブレがないのは驚嘆に値する。そして最後は真剣勝負。ドックーゴとの絡みでは、怯えたり勇気を奮い立たせたりを繰り返す連であるが、片岡氏の柔和な表情はそのどちらも爽やかに描き出し、特に最後のこの真剣勝負では、このような状況におかれた「カタギ」の者が見せるリアリティ溢れる表情を見せてくれる。なお、ここでの刀を振り回すアクションは凄まじい完成度だ。菅田氏の任侠時代劇さながらの素早い刀さばきは、それこそ「タマを取る」迫力であり、この完成された「芸」に片岡氏がどれだけ拮抗するかは、それこそ懸念という二文字に値する感覚だったが、その「懸念」は見事に払拭されていた。片岡氏の刀そして体さばきは完璧と言えるほど様になっており、怯みつつも懸命に刀を振るうという、連の感情を表現する演技としての完成度も申し分ない。ワイヤーアクションもスパイス程度に織り込まれ、アクション展開の活性化にも余念がない。ヒキガネバンキを一瞬で子分にする迫力を持つドックーゴには、結果的に追い詰められてしまうこととなったが、その分、ぷーこりんの「真剣白刃取り~啖呵」がより鮮烈なオチとして映る構図も見事だ。

 一方で、ガイアーク側もこの親娘に振り回されている。

 「金でも武器でも好きなだけ」という条件を提示するドックーゴを迎え入れ、接待するシーンからして既に飛ばしている。ケガレシアの姐さん振りも板に付いているが、何故かウガッツが正座してかしこまっているのも可笑しい。ヨゴシュタインのセリフもこの雰囲気に合わせた口調になったりで(「ナぁ、キタネイよぉ」)、パロディを心から楽しんで送り出す精神が嬉しい。両者の関係としては、ドックーゴがぷーこりんを連れ戻す為にガイアークと組むという構図だったが、ドックーゴが割と気のいい父親像に帰結した為、ここではガイアークが根源的に悪の権化という印象はまるで失われており、1クールにして早くも悪側の設定が崩されている。これはバリエーション展開を好しとする視聴者側と制作側の見解一致と見るが、いかがだろうか。後述するケガレシアの壷振り等の変身を登場させるのにも極めて都合が良くなる上、見た目に楽しいものになることは間違いないだろう。

 ヒキガネバンキは、ドックーゴが自らぷーこりん奪回に動き出した為、ストーリーの縦糸の周囲をうろつくゴロツキと化す。しかしながら、ヒキガネバンキの強さは蛮機獣の中でも上位にランクしており、何故か存在感はある。クライマックスに至る流れの中で、連を除く4人のゴーオンジャーを圧倒する様は、名古屋弁でおどけていながらもなかなかカッコいい。合成も派手な上、ゴーオンジャー側のやられアクションも秀逸、さらにはわざわざバンク対象の必殺技をやられ用途に合成しなおすという手間もかけられており、ヒキガネバンキの強さを引き立てている。毎度のことだが、この細部の作りこみ具合が本当に気持ちいいのだ。

 そして極め付きは「ケガレシア姐さん」である。ガイアークがセッティングしたと思しき座敷で壷を振る及川氏の和装が実に艶っぽい。メイクはケガレシアのものをほぼそのまま使用しているが、多少派手に見えるだけであまり違和感はない。むしろケガレシアのメイクは、悪の幹部にしては大人しいということなのかも知れない。悪の幹部役が1クールを経てすっかり板に付いたのか、岩下志麻氏の「極妻な色気」に通ずる雰囲気を醸し出していたように思う。迫力という点ではまだまだかも知れないが...。そしてこのシーンで和装のケガレシアは見納めかと思いきや、「ビックリウムが満ちてくるでおじゃる~」で突如再登場して笑いを誘った。こういったお遊びの小気味良さは格別だ。次回予告では、ケガレシアの変身がまたしても見られるようであり、これは是非とも定番化して頂きたい要素である。

 巨大戦は、一気にエンジンオーG6でカタを付けるという急いだものだが、鳥瞰ショットに実景を合成してリアルに見せるなど、「オッ」と一瞬うならせるシーン作りが効果的。いわゆるパワーアップ合体であるエンジンオーG6が、スピードに長けるという逆転的発想もお見事で、積み重ねられたゴーオンジャーの危機的状況を一気に払拭するカタルシスに溢れている。

 今回は、仁侠映画のエッセンスをパロディとして取り込んだ上で、正義と悪という概念を解体してみせたエピソードである。明快な勧善懲悪を謳ってきた「ゴーオンジャー」が、本格的にスーパー戦隊黎明期のバラエティ要素を取り入れてきたという証であり、またそれを成立させるだけの懐の深さを証明して見せたとも言えよう。そこには、勧善懲悪に疑問を投げかけるといった重いテーマ性こそ皆無だが、とにかく爽快感を追求する姿勢には真っ当な評価が与えられてしかるべきであろうと思う。現在のところマーチャンダイジングとの連携も好調かつ良好で、2クール目からの新展開に大いに期待できそうだ。