GP-07「相棒アミーゴ」

 ボンベバンキが地下下水道の中を逃走している。そして背後からは、巨大な何者かが追ってきている。地上では、地面の下を移動する蛮機獣らしき反応をとらえて、追跡するギンジロー号があった。反応は2つある。「ダブルだろうがトリプルだろうが、この俺が撃ち抜いてやる」という軍平に、ガンパードは「こないだの戦いで、お前は3発もターゲットを外した」と指摘。自分は1発もターゲットを外さないと自信を見せるガンパードに、軍平は「ハンドルは俺が握ってるんだ」と腹を立てる。

 パイプバンキの反応を捉えて現場に向かった走輔達は、鉄塔が瞬時に錆びて崩れ落ちるのを目撃。その瓦礫の被害者を救出する際、軍平はガンパードの「今度は外すなよ」という言葉に集中力を乱され、マンタンガンを撃てなかった。ボンパーとの連絡の中で、地下を移動する蛮機獣らしき2つの物体が二手に分かれたと知ったゴーオンジャーは、走輔、連、早輝のチームと、範人と軍平のコンビに別れ、それぞれを追った。走輔達は、目前で鉄塔が錆びていくのを見る。

 一方、範人と軍平は池沼から巨大な物体が飛翔していくのを見る。すぐさま2人はゴーオンジャーとなり、バルカとガンパードの炎神キャストに炎神ソウルをセットした。現れたのはバルカ達からジャイアン族と呼ばれる炎神キャリゲーターであった。キャリゲーターは道を塞ぐ者には容赦しないと宣言し、バルカとガンパードを弾き飛ばした。連絡を受けた走輔達は、滅多に他の炎神と交わらないジャイアン族なら、ガイアークと手を組むことも有り得るのではと憶測。そこにボンベバンキが出現し「その通り」と付け加えた。その裏には、キャリゲーターの出現を逆手に取った、ケガレシア達の巧妙な策略があった。ゴーオンジャーがキャリゲーターを敵だと勘違いしたのを好機と見て、キャリゲーターをガイアークが招いたことにし、ゴーオンジャーを分断したのだ。走輔達はゴーオンジャーに変身して出現したウガッツ達をなぎ倒していく。「俺達は3人でも充分強いんだよ」と自信満々な走輔達は、ハイウェイバスターでトドメを刺す。しかし、ボンベバンキはすぐに巨大化を果たした。エンジンオー登場によって、一気に勝負が付くと思いきや、逃げ出すボンベバンキを追ったエンジンオーは、逆に「アカサビーム」の餌食となり、赤錆塗れになってしまう。合体を維持できなくなったエンジンオーは分離して炎神キャストに戻ってしまった。

 その頃、バルカとガンパードは「敵」であるキャリゲーターに向かっていくものの、その強大なパワーの前に成す術もなかった。そんな中、勝ち誇るボンベバンキが口を滑らせるのを聞き、キャリゲーターが味方になったというのが嘘だと知った範人と軍平、そしてバルカとガンパード。彼らはガイアークと戦うためにやって来たと言うキャリゲーターに、戦いを止めることを進言する。だが、先に手を出した奴は信用できないと、キャリゲーターは拒否。しかも、炎神の誇りを忘れ、何故「小さな生き物」を身体の中に入れているのかと非難し始めた。バルカとガンパードは炎神のソウルに相棒は不可欠だと説明するが、熱いソウルに自信のあるキャリゲーターは相棒など必要ないと言い、ガンパードを噛み砕こうとする。早く逃げるよう軍平に指示するガンパード。だが、軍平は「潰されるなら一緒だ! 俺たちは、相棒だろうが...」と拒否した。奮起したバルカもキャリゲーターに突進を続ける。彼らの激しく燃え盛る熱いソウルに感銘したキャリゲーターは、その熱さを信じてみることにした。「人間! 拙者も相棒とやらが欲しくなったでござる」キャリゲーターは範人と軍平に一緒に戦おうと言うのだ。キャリゲーターの背に乗るバルカとガンパード。キャリゲーターはボンベバンキの元へ急行した。

 情勢が変わったと見たキタネイダスは蛮ドーマを出動させてキャリゲーター達を襲撃するが、バルカとガンパード、そしてキャリゲーターは猛攻の末にこれを蹴散らし、遂にはキャリゲーターの特性を生かして炎神合体を遂げるに至る。完成したガンバルオーで、ボンベバンキに挑む範人と軍平。ガンパードガンは、今度こそボンベバンキに全弾命中した。バルカッターストームでボンベバンキを行動不能に追い込み、勝機を得たガンバルオーは、必殺技ガンバルグランプリでボンベバンキを仕留める。

 戦いが終わり、キャリゲーターの炎神キャストを見せる軍平。軍平は「相棒」のキャリゲーターをゆっくり休ませると言うが、範人は自分の相棒でもあると突っかかる。範人と軍平の追いかけっこはいつまで続くのか...。

今回のアイキャッチ・レースのGRAND PRIX

 ベアールV!

監督・脚本
監督
中澤祥次郎
脚本
會川昇
解説

 新たな炎神キャリゲーターと、2号ロボ(とあえてスーパー戦隊シリーズ流に表現させていただく)登場編。1クールも消化しないうちに2号ロボが登場するという流れは、近年の戦隊ではそれほど驚きがないものの、明確に異なるシルエットを持った2号ロボの、ここまで早期の登場はやはり珍しい。「超新星フラッシュマン」で3クール目にグレートタイタンが出てきて仰天した往年のファンにとっては、隔世の感があるだろう。

 通常2号ロボは、1号ロボが何の危機にも陥らない状況では出現しない。よって、その前哨戦は危機また危機という切羽詰った状況になるのが常だ。だが、それを明るく裏切るのが「ゴーオンジャー」流。ボンベバンキの行動は巨大な建造物を一瞬にして錆びさせ、カタストロフィ感抜群なのだが、その肝心のボンベバンキはかなり間の抜けた性質を持っていて愉快だし、対するゴーオンジャーも等身大ボンベバンキには殆ど苦戦することなく、しかも3人で充分強いことを証明する結果に。その後、巨大化したボンベバンキがこれまた間抜けで卑怯な戦法を用い、エンジンオーを赤錆塗れにして戦闘不能に陥らせることで、ようやく1号ロボの危機ということになる。そこにガンバルオー登場。一瞬にして片が付くという、まさにマッハな構成だ。しかも驚くべきことに、1号ロボであるエンジンオーの危機~2号ロボであるガンバルオー登場はほぼBパートに集約されているのだ。

 だからといって、急ぎ過ぎて内容が希薄かと言えば、そうではない。

 ボンベバンキが起こす事件の描写は、特撮の手間を掛けている様子が伝わってくるし、人々を助けるゴーオンジャーの活躍も戦隊らしくてカッコいい。キャリゲーターの出現目的は、ちゃんとガイアークと戦う為だと明言しているし、ゴーオンジャーは3人と2人のチームに分かれて伝統的な「捜査」をしている。ガイアーク側の、ケガレシアを中心とした「口調の伝染」に代表されるコメディ描写もふるっている上、キャリゲーターのキャラクター性も存分に描出され、そこに絡むバルカやガンパード、そして範人と軍平の内面にまで踏み込んでいるのはかなりの充実振りだ。

 まずは、今回の主役とも言うべきキャリゲーターを取り上げてみよう。

 戦隊ファンには待ってましたのキャスティングである津久井教生氏。「激走戦隊カーレンジャー」の副長ゼルモダ、「爆竜戦隊アバレンジャー」のヤツデンワニといった個性的で「オイシイ」キャラクターが印象的で、その他にも怪人役で度々ゲスト出演している常連だ。ファン人気も高いヤツデンワニを思わせるワニのキャラクターを再び担当するとあり、ファンとしては嬉しい配慮。そしてその喋りは、他の炎神と同様で非常に特徴的。方言で攻めてくるかと思いきや、歌舞伎口調という思いっきり振り切れたところに持っていくぶっ飛び振りが見事だ。バルカの妙なラテン口調(今回はさらにヒドくなっており、パスタの名前が混じるという、もはやパロディアニメな暴走振りが楽しい)との掛け合いで、実に賑やかなシーンが出来上がっている。そのギミックコンセプトこそ「百獣戦隊ガオレンジャー」に登場したガオリゲーターのリメイクであるが、ぶっ飛んだ性格付けが幸いし、全く異なる印象を与えるキャラクターとして成立している。噛み付き攻撃という分かり易い攻撃もビジュアルインパクトとの相乗効果でパワフルそのものだ。頑固者だが熱いソウルを感じるとその頑固振りが氷解するという性格は、ガンパードと被る部分がある為、ステレオタイプな炎神の性格設定が災いしていなくもないが、ビジュアル・ボイス双方がガンパードと徹底的に差別化されているので浅薄な印象は皆無だ。

 そのキャリゲーターに絡むのは、範人と軍平。「いきなり巨大化かよ」というセリフも秀逸な、敵だと思い込むくだり。その際に池沼の水を浴びて呆然とする様子。いずれも非常に楽しいシーンとなっている。そのままコメディ調で推移するのかと思いきや、バルカとガンパードがかなり本気でキャリゲーターにぶつかり、キャリゲーターも本気でガンパードを潰そうとする。双方の齟齬から炎神が「殺し合い」を始めるという殺伐とした展開になる。ただし、炎神達の愉快なキャラクター性によってその殺伐さは随分抑制されてはいる。そして、ガンパードと命を共にする覚悟の軍平にキャリゲーターが感銘を受けるという、ある意味定石とも言える展開が待っているのだが、切々と共闘を訴えるのではなく、「男は黙って」的な軍平の秘めたる熱さがカッコ良く、またこのシーンにより炎神にとって人間が必要であるということが示されるという効果ももたらされる。軍平に関してはとかく「いじられキャラ」の印象が強いのだが、今回は満を持してとも言うべきか、内面の正義感や熱いハートといった設定に忠実だった。ガンパードと喧嘩していても、実は強い絆で結ばれているという見せ方もウマい。

 新しい炎神が登場する際は、蛮ドーマが出動するというのはお約束となったのか、今回も特撮がなかなか豪華。キャリゲーターの操演も非常に生き生きしている。また、キャリゲーターがバルカとガンパードを搭載して爆走する様は、往年の戦闘母艦を思わせ非常に気持ちがいい。やはり、こういうキャラクター同士の連携によって遊びが広がる方式だと、特撮にも色々な「遊び」が生まれ、画面も活性化するようだ。ミニチュアを使った特撮には、やはり流麗なCGとは別種の迫力がある。

 そして、ガンバルオーの登場。合体方式はシンプルだが、エンジンオーとは見事に差別化されたシルエットが目を引く。エンジンオーへの炎神武装と同じくバルカとガンパードは腕として合体するのだが、エンジンオーに炎神武装した時とはかなり印象が異なる。それはエンジンオーに比べて本体がマッシヴだということもあるが、両腕が「手」として機能しないという点も関係あるだろう。ガンバルオーは2号ロボとしての登場に相応しく、エンジンオーが戦闘不能となった際に出現したが、スピードル達は錆に塗れて炎神キャストに戻ってしまっただけで、破壊されたわけでもなく、叩きのめされて痛々しい状態を晒す1号ロボというパターンは廃されている。そういう意味では、それほど危機感が盛り上がっているわけではなく、ガンバルオーのデビューは鮮烈とは言い難い。しかしながら、2号ロボに常にアドバンテージを奪われるというジレンマとは、完全に無縁になるというメリットの方が大きいだろう。2号ロボの登場が鮮烈であればあるほど、1号ロボの魅力はスポイルされていく運命にある。炎神というキャラクター性からすれば、それは許されない。微妙なバランスを保った構成に拍手したい。なお、ガンバルオーの活躍シーンでは、周囲に精緻なミニチュアセットが効果的に配置され、豪華な印象を与えている。

 さて、今回は範人と軍平がチームを組んでいることから、ゴーオンジャーの戦いは完全に3人+2人体制で進んでいく。ボンベバンキとの等身大戦では、走輔、連、早輝の3人体制のゴーオンジャーが名乗りから必殺技までを繰り広げており、3人戦隊としてのゴーオンジャーの魅力を感じ取ることが出来る。3人編成での戦闘では、ウガッツが大挙して登場しており、アクション面でもキャラクターの差別化に工夫が見られる。特にゴーオンイエローのヒロインという要素を前面に押し出したアクションは、ある意味懐かしい。そして、「俺達は3人でも充分強いんだよ」という走輔のセリフ、そして実際にボンベバンキを倒してしまう実力からは、ゴーオンジャーが3人でも5人でも成立する稀有で特殊な戦隊チームだということが感じられる。ここで注意すべきは、範人と軍平の2人でも、充分に戦隊チームとして成立している点だ。「超獣戦隊ライブマン」的編成でありながら、「忍風戦隊ハリケンジャー」におけるハリケンジャーとゴウライジャーの要素を踏襲していると言えよう。

 一方、ガイアークは益々「凶悪だが愉快な一団」という要素が強まっていく。このパターンでの失敗例は「超力戦隊オーレンジャー」がある(「オーレンジャー」のバラノイアには、「顔出し」のレギュラーが一切いない為、魅力に乏しかったと分析される)のだが、ケガレシアが「顔出し」出演である為、その辺りの不都合は払拭されていると見ていいだろう。三大臣に特徴的な語尾を設定したことで、それがふとした拍子に他人に伝染してしまうというだけで可笑しさを生み、そのきっかけがボンベバンキになっているという流れも非常に自然でウマい。アドリブも取り入れられていく傾向にあり、三大臣の掛け合いがコミカルな要素の一端を確実に担っていくに違いない。ケガレシアが電話にしか見えない通信機でボンベバンキに指示を出す様は実に楽しく、かつて「電子戦隊デンジマン」でベーダー一族のヘドラー将軍が、一般市民に電話をかけるという珍妙なシーンが存在したが、あのような(本人は至って真面目だが)珍妙さを押し出したシーン作りを狙っているものと思われる。しかしながら、ケガレシアがそういった行動をとると、どことなく可愛らしい印象を与えるのは、キャスティングの妙であろうか。

 ラストは、錆びてしまい応答すらないスピードル達をよそに、新たな炎神キャリゲーターの炎神キャストを巡って、自分の相棒だと主張する軍平と、自分の相棒にもして欲しいとする範人の間で楽しい争奪戦が繰り広げられる。スピードル達の状態を考えると、このようなコメディシーンで締めくくるのは異例のことだ。それほど、「ゴーオンジャー」というシリーズは1話1 話の後味の良さを求めているということなのだろう。後味も良いが、次回への「引き」も適度に残すバランス感覚には脱帽だ。