第50話「決戦の日」

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 最終回前話として、先輩ゲスト編として、そしてスーパー戦隊の王道として。全てにおいて成立している素晴らしいエピソード。「バスコ後」の不安を完全に払拭してくれました。

 大艦隊相手の、巨大戦における「大いなる力」オンパレードに続き、ダイランドーとの等身大戦への持ち込み方等、流れも自然で無理がなく、最初から最後まで一気に見せてくれました。

 都合により、あまり長い文章は書けませんが、個人的に気付いた点を中心にツラツラと続きに書いて参ります。


 まず、大艦隊の襲撃の突拍子も無いスケールの大きさに比べ、等身大戦はダイランドーとゴーミン及びスゴーミン、ドゴーミンといった、割と少数編成であり、「何故大艦隊でそのまま地球を滅亡させない?」といった疑問も。

 しかしこの展開、実は結構リアリティがあるのではと私は思います。

 アクドス・ギルが夜明けまで殺戮を保留したのは、よくある「悪の組織の余裕」というヤツで、これこそ王道中の王道なんですが(笑)、夜明けと共に少数編成のダイランドーを遣わしたのは、ゴーカイジャーなき、ひいてはスーパー戦隊なき世界の制圧に、大艦隊の総攻撃などという膨大なコストをかけるまでもない...という打算が働いたからにほかなりません。むしろ、地球に存在する軍事組織等が動いた場合、いつでも大艦隊をけしかける用意があるという意味で、ゴーカイジャー相手の大空中戦は、良いデモンストレーションとなったのではないでしょうか。

 また、地球の建造物等の「資源」を根絶やしにするような真似は、掠奪という観点からすると大いに無駄であるとも言えるでしょう。いずれにせよ、単にスケール感の問題だけ取り上げて、今回の筋運びに予定調和という瑕を見出す事はナンセンスでしょう。

 さて、冒頭から繰り広げられた大空中戦は、TV版では初となるゴレンゴーカイオーの登場というスペシャル感溢れる展開に始まり、豪獣神にメガウインガーが合体した「ウイング豪獣神」も登場するサービス振り。他の大いなる力由来の「強化パーツ群」も全て登場し、更にはダイナマンのスーパーダイナマイトの巨大戦バージョンや、ジェットマン由来のジェットフェニックスも登場し、とにかく凄い事になっています。

 尺自体は結構短いのですが、この尺でここまで出し尽くすカット割りの妙味が素晴らしく、この充実振りが、却って大艦隊に敗れた際の無力感を際立たせています。最終戦としての迫力と、最終戦直前のドン底とも言える試練が、同時に実現されているわけですね。

 この戦いでガレオンも豪獣ドリルも沈み、ゴーカイジャーは散り散りになってしまうわけですが、ここからが今回の白眉とも言えるくだりとなります。

 それは、かつて面々が出会ったゲストとの再会、そしてスーパー戦隊関係者との邂逅。

 まず、鎧はスーパー戦隊関係者どころではない、「先輩ゲスト」そのものズバリである、マンモスレンジャー・ゴウシと出会います。この土壇場で、正に奇跡の登場(劇場版含め、34戦隊で「ジュウレンジャー」のみが未出演でした)。そしてこの土壇場で、「先輩ゲスト編」としてのダメ押しとも言える「スーパー戦隊の覚悟」を鎧に説くという、燃える展開には感涙必至です。

 それにしても、ゴウシ役の右門青寿さん、当時と変わらない男っぷりですね。当然、渋みをグンと増しているのですが、重い瓦礫を持ち上げる姿は、当時のゴウシのパワフルさそのものでしたし、「知恵の戦士」としての知性派の面にも磨きがかかっていて、最終回直前のゲストとして申し分ないセレクトだったと思います。「ジュウレンジャー」自体の思い出語りをし始めると、ソガマチ女王の思い出語りになってしまい、際限がなくなってしまうので、今回はちょっと控えます(笑)。

 いや、やっぱり「ジュウレンジャー」関連のみ、ちょっとだけ語っておきましょう。以前、曽我町子さんのお店にお邪魔した際の話になりますが、ちょっとした有名譚である「ジュウレンジャー」でのバンドーラ降板騒動は、ご本人の口からお聞きしたので本当です。

 降板決意の決め手となった「コスムガワノシトイ(反対から読むと「いとしの我が息子」)」という「下らない呪文の強要」ですが、これがシリーズ開始半年くらいの出来事だったそうで、この段のシリーズ構成で、既にバンドーラの息子・カイの存在が予定されていた事に驚きました。

 ただし、この降板騒動、スタッフ間ではそれほど有名ではないようで、もしかすると、曽我さんのリップサービスが含まれていたのかも知れません。それよりも、「パワーレンジャー」における契約やマネジメントの問題、そして、吹き替え現場での他のキャストとの思い入れの違いから来る温度差(そりゃ、ご自身が思い入れたっぷりに演じたキャラクターに声をアテるんですから・笑)が、かなり曽我さんを苦悩させたらしく、曽我さんにとって、バンドーラ=リタ・レパルサというキャラクターは、愛憎半ば、否、愛も憎も極まるキャラクターだったようです。それ故に、このような降板騒動をエモーショナルな口伝として、ファンに聞かせて下さったのかも知れません。

 さてさて、ゴウシ以外にも、意外なゲスト陣が花を添えてくれました。

 一人は、「ゴセイジャー」のレギュラーだった、天知博士。「ゴセイジャー」のテーマの一つであった、「諦めない強い心」を説くセリフにグッときます。「ゴセイジャー」自体は、シリーズ構成やキャラクター描写の面で、やや不徹底さが目立つ作品ではありましたが、そのシリーズ全体に感じられる包容力が印象的でした。天知博士自体、不徹底の発露とも言うべきキャラクターでしたが、最後の最後でゴセイジャー達の師であるマスターヘッドと一体化する事により、包容力の象徴となり、キャラクターを完成させました。「ゴセイジャー」の視聴者ならば、天知博士が懸命に人々を救出する姿に、護星天使の使命感と近しいものを感じ取れたのではないでしょうか。

 そして、驚くべきゲストとして、「マジレンジャー」の山崎さんこと、山崎由佳が登場。マジレッドのぬいぐるみを手渡すシーンには、感涙必至です。演ずる平田薫さん、凄く大人っぽくなって綺麗でしたねぇ。感慨深いものがあります。「勇気と云う名の魔法」というセリフが素晴らしすぎました。

 ゴウシ、天知博士、山崎さんという、スーパー戦隊縁のゲストを見渡すと、全て「ファンタジー戦隊」である事が分かります。極端に言えば、ファンタジー戦隊の美点は、メンタル面を強調しても厭味にならない事でしょう。何しろ、メンタリティがそのままスピリチュアルなパワーへと転化される構造になっている場合が多いからです。スーパー戦隊の精神性を説くには、うってつけのセレクトだったのではないでしょうか。

 そして、「ジュウレンジャー」こそがファンタジー戦隊のパイオニアであり、「マジレンジャー」こそがファンタジー戦隊の極北「魔法の戦隊」であり、「ゴセイジャー」こそがファンタジー戦隊の究極形「メンバーが天使」である事に気付きます。これは、「ゴーカイジャー」がファンタジー戦隊の色濃い影響下にあるという事の、一つの根拠になると言っても過言ではないでしょう。

 一方で、「ゴーカイジャー」へのゲストの再登場。

 まずは、ゴーゴーファイブ編に登場した親子。身を呈して母親と妹を守る少女・ミクが印象的。ゴーピンク・巽マツリとの出会いにより、恐怖を乗り越えて命を守るゴーゴーファイブのスピリットが、確実に幼い少女に継承されていたというくだりになっています。これは巧い。

 そして、もう一人は、レンジャーキーで変身した最初の一般人である少年。彼はマーベラスに「この星の価値」を示唆した重要な人物でしたが、ここに来て、マーベラスがその価値を認めてみせるという、驚きの展開を見せます。スーパー戦隊になれない少年と、スーパー戦隊の力を手に入れた男。この二人のやり取りは、「ゴーカイジャー」のテーマを浮き彫りにしました。マーベラスが見出した「この星の価値」、それはスーパー戦隊の存在が、地球人に勇気と力を与えているという事実。ザンギャックの蹂躙にも絶望する事のない、宇宙でたった一つの貴重な惑星。「宇宙最大のお宝」を凌駕する価値が、この地球にはある...そう、マーベラスが感じた事は想像に難くありません。

 故に、スーパー戦隊の権化たる鎧と、反対の答えを導き出したマーベラス達五人の対比が、実に鮮やかでした。スーパー戦隊の覚悟を、平和の為に役立てようとする鎧は、正にこれまでのスーパー戦隊の精神そのものでしょう(=失われる事で生み出されるValue。しかもこの考え方はバスコと同じ!)。一方で、マーベラス達宇宙海賊は、スーパー戦隊の存在そのもの、そしてスーパー戦隊に支えられた地球に価値があると考えます(=存続する事自体のValue)。この価値観の相違によって生み出されるドラマにより、「地球を守る義理のない宇宙海賊」という、「ゴーカイジャー」の矛盾(勿論、この矛盾は意図的なものですが)を鮮やかに止揚してしまった。それが、今回の凄さです。

 このくだりで、鎧は、宇宙最大のお宝を破壊(!)し、マーベラスに海賊の一員と認められます。一方で、宇宙海賊は、35番目のスーパー戦隊として、地球人に認められます。ここでも、止揚が見られるわけです。

 名実ともにスーパー戦隊となったゴーカイジャーのラストバトルでは、今回の先輩ゲストであるゴウシにあやかって、ジュウレンジャーとなりました。鎧がドラゴンレンジャーにチェンジ。ドラゴンアーマーをマーベラスのチェンジしたティラノレンジャーに渡す事で、アームドティラノレンジャーが登場するという、「ジュウレンジャー」の体験者ならば鳥肌モノのシチュエーションでした。これは素晴らしい。「ジュウレンジャー」の主題歌インストとまではいきませんでしたが、それでも、アームドティラノレンジャーの登場だけで満足でしたね。

 というわけで、気づけば、結構長い文章になってしまいました。いよいよ次回は最終回ですね!