第49話「宇宙最大の宝」

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 バスコとの宿命の対決が大変盛り上がり、この後どうするのかと思っていましたが、しっかりと更なる盛り上げを見せてくれました!

 今回の骨子は、ズバリ「宇宙最大のお宝」が何であるかという事、そして、インサーンの最期。そこに、「大いなる力」の本当の継承が織り交ぜられ、さながら「ゴーカイジャー」のテーマ性の総括ともいうべき内容に仕上げられていました。

 あと二回を残すのみとなった本シリーズですから、総括に近い内容が今回に与えられるのも、当然の成り行きでしょう。しかし、そういったシリーズ構成の足枷を一切感じさせる事なく、むしろ「やっと宇宙最大のお宝に辿り着いた」という感覚を強く前面に出す事が出来ているのは、そのシリーズ構成自体が綿密だったという事でしょう。

 ところが、主人公周辺の事情が綿密である事に反して、本来の敵であるザンギャックの扱いがあまりにも軽いのは周知の通り。今回も、インサーンというキャラクターが特に掘り下げられる事もなく、「ワルズ・ギルを守れなかったダメな幹部の一人」という背景のみで始末されてしまいました。ザンギャックの軽視ともいうべき事態は、本シリーズの暗部ではありますが、曲がりなりにも最終決戦をザンギャックとの総力戦に持ち込んでいく構成に関しては、レジェンド大戦に始まった物語を綺麗に完結させるものとして、評価出来るのではないでしょうか。

 続いては、細部について。

 今回は、ゴーカイジャーの面々が見た幻空間の中に限定された登場ではありましたが、先輩ゲストが大挙五人も登場しました。

 バスコが、サンバルカン、チェンジマン、フラッシュマン、マスクマン、ファイブマンの大いなる力を奪った時点で、この5つの戦隊に関するエピソードがオミットされる事は予想され、特に私が好きな「サンバルカン」に関するエピソードを期待出来ない状況は、非常に残念でした。今回の登場が、その渇望を満たすものであったかと言えば、それは否と答えざるを得ないものの、それでも劇場版を含めれば、33大戦隊からそれぞれ少なくとも一人はゲスト出演を果たした事になり(唯一現時点で「ジュウレンジャー」が未登場。次回にゴウシが出演)、あらゆる困難障壁を乗り越えて、この一大お祭り戦隊を彩る先輩ゲストを揃えた事に、素直な賞賛を送りたい所存です。

 今回登場したのは、まず、「サンバルカン」より(二代目)バルイーグルこと飛羽高之。当時の地球平和守備隊の空軍将校という設定を生かして、空軍高官を思わせる制服に身を包み、五人の代表格として、ゴーカイジャーに力を託す役割を演じました。飛羽役の五代高之さんは、「カクレンジャー」にも鶴姫の父という重要な役回りで登場されてますが、「サンバルカン」時代から変わらない、正に太陽戦隊を地で行く笑顔が印象的です。

 続いて、「チェンジマン」からは、チェンジグリフォンこと疾風翔。チェンジマン随一の優男の雰囲気は、現在もそのまま。和興さんは「メタルダー」や「ジャンパーソン」への出演も印象的で、特に「ジャンパーソン」での敵キャラの熱演は、疾風翔や「メタルダー」の北八荒のイメージを覆すに充分でした。今回、優男の柔和な笑顔の裏に、鋭さを兼ね備えた貫禄を感じる辺り、さすがと言うべきでしょう。

 「フラッシュマン」からは、グリーンフラッシュ・ダイが登場。「フラッシュマン」と言えば、反フラッシュ現象と呼ばれる症状によって地球を離れる事を余儀なくされるラストが、切ない余韻を残すシリーズですが、「ゴーカイジャー」の世界では、レジェンド大戦への参加が物語るように、地球とフラッシュ星系を行き来可能な状況にある事が推測出来、少しばかり救われた気分になるのがいい処。今回登場したダイこと植村喜八郎さんは、「フラッシュマン」当時を彷彿させる衣装とアクセサリーを身に着けていて、嬉しい配慮です。植村さんは、「ファイブマン」で敵キャラであるシュバリエを演じており、ダイの野性味溢れるパワフルさとは異なる、独特の美意識を持ったキャラクターとして成立しており、一説にはシュバリエの登場によって、「ファイブマン」の視聴層が拡大されたとも言われています。

 「マスクマン」からは、ブルーマスクことアキラが登場しました。この人選は、かなり意外でした。「マスクマン」の五人を演じたキャストは、全員が芸能界を引退されてはいるものの、レッドマスク=タケル役の海津亮介さんの芸歴が最も長く、出演されるとしたら海津さんだと思っていたからです。アキラ役の廣田一成さんの「マスクマン」当時の人気は物凄く、その人気がきっかけとなってアキラの主役回が増やされたという逸話もある程。現在も、その少年のような雰囲気は変わらず。中国拳法の達人だけあって、道着姿も堂に入っていました。

 「ファイブマン」からは、ファイブイエローこと星川レミが。メンバー最年少で、男女の双子で、音楽の先生で、カンフーの達人という、今考えてみれば相当にてんこ盛りの設定を持つヒロインでしたが、それ程、当時アクションが出来る女優を制作側が推していたという事でしょう。そのレミを演じたのが、成嶋涼さん。当時は肉体派でありながらコケティッシュな笑顔を振りまく少女といった趣でしたが、「カクレンジャー」での花のくノ一組・サクラ役で、妖艶さも兼ね備えた魅力を放ちました。今回は、「ファイブマン」から21年の時を経ての同役での出演でしたが、当時より美しさに磨きがかかっており、「音楽の先生」の雰囲気が拡大されたような印象でした。素晴らしい。

 ともあれ、五人それぞれ、極力オリジナルのイメージを尊重した出で立ちになっているのは特筆すべきでしょう。「ゴーカイジャー」における戦隊愛の炸裂振りを見られましたね。

 この先輩ゲスト登場のくだりの発端には、バスコが無理矢理奪った大いなる力を、「正規の手順」を踏まずに使って良いものか...という鎧の疑問があったわけですが、マーベラスやルカも、その疑問に同調したのが興味深い処です。つまり、マーベラスやルカも、遂に明確にスーパー戦隊の精神に共感するまでになったという事なんですよね。

 そして、遂に登場した「宇宙最大の宝」。

 アカレッドがマーベラスに教えたかった「地球の正義」や「人々の絆」こそがお宝の正体といった、肩透かしなものもアリだとは思っていましたが、まさか、これほど究極の実益を伴う「宝」だったとは。良い意味で裏切られました。しかも、「宇宙を作り替える」程のパワーを発揮するものでありつつ、そこに「34のスーパー戦隊の力」という代償を提示するとは! ギリギリまで選択の苦悩を迫る構成が実に見事です。ザンギャックとの決着が必須とはいえ、めでたしめでたしで終わらない「引っ掛かり」が用意された事に、見応えを感じます。

 ちなみに、ナビィが本当に「扉」に変化したシーンは、「比喩でない扉」という点で、意外性と分かりやすさを両立させており、楽しいシーンになっていました。

 さて、ザンギャック軽視も甚だしいバスコ編でしたが、しばらくザンギャック不在とも言うべき状況だった事に対し、それなりの理由が付けられていたのは、評価出来るのではないでしょうか。劇中では、インサーンの「科学者としてのプライドを賭けた戦い」が時間稼ぎと称されていましたが、実は、バスコの一件自体も「嵐の前の静けさ」であり、レジェンド大戦を超える大艦隊集結の為の準備だった可能性が示唆されているわけです。

 戦隊、特に近年のシリーズは、年間の盛り上がりポイントが幾つも用意されている為、クライマックスを最高潮とする事に、それなりの苦慮が見える場合もあります。昭和の第一期ライダーのように、最終ボスを「無力で得体の知れないもの」とする事で、敵組織のヒエラルキーの異様さを演出する方法論が継承されたり(代表格は「サンバルカン」)、最終ボスが最強の存在であったり(これには多くのシリーズが該当)、クライマックスを主人公や敵のドラマで盛り上げ、「決戦」に重きを置かなかったり、色々なパターンが見られます。

 「ゴーカイジャー」の場合、あらゆる面で、最強の敵がバスコだった事に異論はないと思いますが、その後に、「大艦隊」という要素を持って来る事で、これまでのパターンの「いいとこ取り」をしようとしている節があります。これは画期的な事で、戦隊総決算という意味合いの強い本作ならではと言えるのではないでしょうか。いずれにせよ、最終回まで高いテンションを持続出来るのは、喜ばしい事です。

 この辺で、今回の豪快チェンジについて。

 まずはマジレンジャーにチェンジ。防御の為にマジカルカーテンを発動していますが、マジレンジャーは記念すべき「最初の先輩ゲスト編」だったわけで、実際にそのような意図があって登場させた可能性があります。

 クライマックス戦では、今回の先輩ゲスト由来の豪快チェンジを披露。しかも、それぞれがオリジナルの変身シークェンスを再現し(特にグリーンフラッシュの「シャット・ゴーグル」は、一瞬アイムの素面が見える処まで再現されていて感涙モノ)、各メンバーのチェンジに合わせた主題歌インストが流れるという、これ以上のサービスがあるかという素晴らしさ。トリが「サンバルカン」という事で、宙明サウンドに乗って戦う戦隊の勇姿を見られるという、「VSギャバン」との絶妙な共時性に興奮必至でしたね。

 まず、マーベラスはバルイーグルにチェンジ。バルカンスティックを日本刀に変化させ、「飛羽返し」を披露するなど、サービス満点でした。ジョーはブルーマスクに。オリジナルは、随一の小柄な戦士でしたが、今回は長身のブルーマスクという意外性が良いです。ルカはファイブイエローにチェンジ。メロディータクトで優雅に戦う姿がオリジナルを彷彿させました。ハカセはチェンジグリフォンに。チェンジソードをちゃんと登場させてくれたのが嬉しいポイントでした。当時、剣と盾を合体させると銃になるという、そのカッコ良さに痺れ上がった記憶があります。アイムは前述の通り、グリーンフラッシュにチェンジ。プリズムカイザーで殴りまくるという、アイムの戦闘スタイルとしては意外な活躍が良い感じでした。

 今回は、巨大戦でもチェンジマンとマスクマン由来の「大いなる力」が使用され、その徹底振りに驚かされました。

 チェンジマンは「パワーバズーカ」由来という順当な描写。パワーバズーカは、「ジャッカー」のビッグボンバーを、よりメカニカルかつスタイリッシュに発展させた、「合体バズーカ」のパイオニアですが、その魅力は現在に至っても色褪せていません。

 マスクマンは2号ロボであるギャラクシーロボの、「鉄拳オーラギャラクシー」から。座禅を組んだり、純粋な格闘型ロボであったりと、その特殊性は、現在におけるロボットの個性分けの端緒と言えるのではないでしょうか。

 というわけで、大充実の前哨戦でした。「ゴーカイジャー」、最後の最後までやってくれそうです。